あなたの個性は増強型ですか?いいえ違います 作:ヒロアカ面白い
「実技総合成績出ました」
試験官の一人がそう告げると、巨大スクリーンに本日行われた市街地演習のリザルトが一斉に表示される。
その情報に一同が一通り目を通した後、今度は手元のタブレットを操作する。画面が切り替わり、戦闘記録映像が流れ出す。
そして一つの映像に審査員の目が留まる。
逆立った金髪に赤い瞳の三白眼。獰猛な笑みと高笑いを上げながらロボットを次々と爆破しまるで他を寄せ付けないスピードでポイントをもぎ取る少年
「まずはこいつだな!まさか、救助活動レスキューp0で1位とはなあ!!」
「「1p」「2p」は標的を捕捉し、近寄ってくる。後半戦で他が鈍り散り散りになったロボを探しているのとは反対に派手な“個性”で寄せつけ、迎撃し続けた」
「…ひとえにタフネスの賜物だ」
彼の評価を一通りし終えて審査員の一人が画面を切り替える。緑色の縮れ髪、大きめの瞳にソバカス。少し頼りない印象の少年が演習場を駆け回る。そして、最後に巨大なロボットを一撃で殴り飛ばした。
「対照的にヴィランp0で7位…」
「あぁ、その子な。アレに立ち向かったのは他にもいたけど…ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」
「そうそう!思わず『YEAH!』って言っちゃったからな」
「しかし、自身の衝撃で甚大な負傷…まるで発現したての幼児だ」
「ほんと妙な奴だよ!あそこ以外はずっと典型的な不合格者だったんだよな」
「細けえことはいんだよ!俺はあいつ気に入ったよ!」
「『YEAH!』って言っちゃったしな」
「巨大ロボを一撃でといえば彼もだな」
映し出されたのは金髪の周りより一回り体格が大きい受験生
ビルの壁を使って人にぶつからず高速移動している
「見た目とは裏腹に機動力も高い」
「何より最後、あんなデケェ瓦礫をぶん投げるなんてなさっきの受験生も良かったがこっちも半端ねぇな」
「それより重要なのはこれでしょう」
スクリーンに映ったのは先程の受験生が渡した小瓶の液体を飲んだ怪我人がたちまち治っている場面だ
「彼の個性は【血癒】詳細は手元の資料に書いてありますが注目すべきはその治療速度と対象の体力を使用しない点です」
「稀有な治癒系の個性か…更に戦闘力も申し分なしですが……」
「同着1位とはこれはまた…」
爆豪勝己ヴィランポイント77 レスキューポイント0
血流流血ヴィランポイント42 レスキューポイント35
まだ若干の寒さが残るが太陽の光が降り注ぎじんわりと暖かい
春も間近に迫っている日の昼前
拳藤は友人達と一緒に帰っていた
彼女らの制服の胸元には赤い花飾りそして手には黒色の賞状を入れる筒が
そう今日は植欄中学校の卒業式
クラスメイトとは教室で写真を撮って別れた
「ーーーってなことがあってね、ってちょっと一佳大丈夫?」
「へ!?あ、ああ大丈夫だよ」
「……やっぱ雄英のこと?」
「うぐっ」
ここ一週間拳藤は心ここにあらずといった感じだ
実技試験では25Pと合格圏内とは言いがたい
「でも併願で普通科も受けたんでしょ?普通科からヒーロー科への編入もあるそうだし一佳なら大丈夫だよ」
「……うん、ありがと」
「じゃ私こっちだからじゃーねー」
「ただいまー」
すると廊下からドタドタ音を立てて先に帰ってきていた母が玄関に出てきた
いつもは落ち着いてるのに何かあったかなと思っていると一封の封筒が目に入った
「一佳、雄英からきたよ」
すぐに母から受け取り部屋に入る
やはりわかりきった結果でも緊張するなとふと思い、息を整えて封を開く
中から何か円形のものが出てきて根元のスイッチを若干震える手で静かに押す
『私が投影されたー!』
「お、お、オールマイト〜〜!!??」
数々の国民栄誉賞を打診されるもこれを固辞
この国のNo.1ヒーローが現れた
ヒーロー志望云々以前に誰もが驚くだろう
『ひとまず落ち着いてくれたかな拳藤少女それでは講評といこう
まず筆記試験なかなかの好成績文句無しだ
だが実技試験は25点残念ながら合格ラインには惜しくも届かなかった』
分かってた分かってたけど改めて突きつけられるとやはり辛い……
思わず目元が潤んでしまう
『それだけならね、我々が見ていたのはヴィランポイントのみにあらず!他の怪我を負った受験生をハンソーロボに送りさらに圧倒的脅威を前にして怯まず真っ先に救助に向かった自己犠牲の精神!それらを評価して拳藤少女レスキューポイント45P!!』
あまりのどんでん返しにうまく笑えず口が引きつってしまう
「やった……」
自分が正しいと思った行動が評価されて、つい漏れてしまった心の声
『来いよ拳藤少女、ここが君のヒーローアカデミアだ』
映像が止まり静かになった部屋あまりのことに脳が追いついていかないがそれでも合格した
このことが彼女の頭の中を占めていた
ピロリンとポップな携帯の着信音が響く
『どうだった?』
『合格したよ』
『そうか!よかった拳藤』
『大どんでん返しだけどな』
『それでもそれはお前の力だ、自信持てよ拳藤』
『おう』
通話を切りふと思う
そういえばこいつとは変な関係だよな
家も近いのに一週間前まで知らなかったし話してみたら意外と喜怒哀楽しっかりしてるし話も合うし
「とりあえず母さんに報告しよっと」
その足取りはここ最近で一番軽かった
麗らかな春の日。
窓から日差しが差し込んできてゆっくりと瞼をあげる
大きなあくびをしながら布団を畳み洗面台に向かう
冷たい水で顔を洗い目を覚ますと昨日の晩のあまりを適当に用意して食べ身嗜みを整え雄英高校の制服の袖を通す
三年間でき慣れた中学の制服でなく雄英の制服なので少し背筋が伸びるような気になる
アパートを降りたところで糊の効いた制服を纏い、もう見慣れたサイドテールを靡かせる一佳が、降りてきた
話は変わるが二人とも雄英からだいぶ遠いので雄英から徒歩15分程度のところの同じアパートをたまたま借りていた
男子のネクタイとは違い、ボタンが付いているネクタイも靡かせる彼女であるが、男勝りな彼女にはネクタイが良く似合う。
「おーい流血おはよう、待ったか?」
「俺も今来たところだ、それにしても似合ってるぞ」
「お、嬉しい事言ってくれるねあんたも似合ってるよ」
「なんなら男子の制服でも似合うんじゃn「うっせ」
つい思ったことを後先考えず喋り腹に肘鉄を食らう
身長差もあり丁度いい位置にあるのでなかなか痛い
「馬鹿なこと言ってないで行くよ」
「分かった分かった……って一佳なんかお前ネクタイ変だぞ」
「へ?そうか?初めてだからスマホで見ながらやったんだけどな」
そういや一佳のとこはネクタイなかったなとか思いながら彼女がネクタイを直しているのを見ていると
「う〜〜分からん、流血やってくんない?」
「お、おう、別にいいけど」
パァッと晴天のように明るい表情で、ネクタイを渡してくる
それを受け取り襟を立たせて慣れた手つきでネクタイを結んでいく
その時一佳の顔がかなり近くあることに気づいた
それと同時に朝にシャワーを浴びているからだろうか
フローラルな香りが、眼前に佇む髪からふわりと鼻腔を擽ってくる
こんな近くに異性がいることがなかった流血にとってなかなか気恥ずかしい
さっさと終わらそう
後は大剣を通すだけというところで
ーーーふにゅ
あ、柔らかい
頭の中に浮かんだのはそれだけだった
一瞬固まってしまい目だけ動かして一佳の顔を見ると
「……」
ただ真っ赤だった
そこからは流れるようにネクタイを結んだ
「あ、おいネクタイ結べたぞ」
「お、おうありがとな」
別に流血がわざと触れたわけでないことは一佳も分かっていたしそれで怒るわけでもない
なんとなく気まずいまま二人はヒーローとなるための学び舎へと向かうのであった。
気まずい空気も雄英高校についたらそんなものがなくなった
仰々しいセキュリティゲートを潜った後は、一佳と共にヒーロー科一年生の教室へ足を運ぶ
「.「でかいな…」」
一佳と俺が同じ感嘆の声を漏らす。確かにでかい。俺達の目の前には教室のドア、個性のためのバリアフリーだろうか
今日から清く正しく強いヒーローを目指すための場所「1-B教室」がそこには有った
なんとなく緊張してドアを開けると、中の光景が目に映る
暖かな日差し、窓ごしに見えるそよ風に揺れる校庭の木々、現役のプロヒーローが教鞭を振るう教卓に巨大な黒板
そして、教室の中に並べられた20組の机
自分の席に荷物を置いて一佳と喋っているとカラカラと軽くドアの開く音がした
黒色の丸い瞳、優しげな表情、同じ制服なのに膝下よりちょっとだけ長くしたスカート丈、そして何よりも特徴的な頭部、植物の蔓の様な長い髪を靡かせた少女が入ってきた
「あら?随分お早いのですね?おはよう御座います」
「おはよう」
「…あれ?もしかして塩崎さん?」
「はい!ご無沙汰しております。拳藤さんも無事に合格なさったのですね?」
「…?知り合いか?」
「あぁ、入試の時にちょっとね…。紹介するよ、こちら『塩崎茨』さん」
「塩崎茨と言います。どうか、よろしくお願いします」
「よろしく、にしても結構早く来たんだな」
「はい、本日は大切な入学初日。遅れるような事があってはなりませんから…つい足早に来てしまいました」
「うんうん分かる分かる。…それと隣のこいつが」
「血流流治、改めてよろしく」
「ふふふ、よろしくお願いします」
次第にB組の教室に人が一人また一人と増えていき賑やかになる
「…おい手前ぇ、あの0Pぶっ倒した奴か?」
拳藤達と喋っていると声をかけられたので振り向くとそこにはしっかり鍛えられた肉体、小さめの黒目、銀髪が鬣のようにワイルドな印象を与えてくる少年が立って此方を物凄い睨んでいる。
「ああ、他の会場で倒されたか知らないが瓦礫を投げて倒したのは俺だ、名前は血流流治よろしく」
右手を出して待つと彼はがっしりと掴んだな
「スゲーじゃねーか!アレに挑める奴なんてなかなか居ねぇ!オレは手前ぇのこと気に入ったぜ!俺は鉄哲徹鐵よろしくな流治!」
ガハガハと大笑いしながら彼は右腕をブンブン振る
意外と気さくな人らしい