拳突き上げた先に 作:それを言うなら
プロローグ
■????■
「ここには世界がある。ここには夢がある。私達はここで救われる」
そう言って、春ねぇ――春夜は<Infinite Dendrogram>を始めた。
親にも見向きもされず、体が弱かった春ねぇはいつもゲームをしているときは楽しそうだった。
ニュースやブログの記事で同じ様な体の弱い子達が、遊ぶ姿を見て、春ねぇは憧れを抱いていたのだ。
そうして、少しずつお金を集めて買った<Infinite Dendrogram>を春ねぇは楽しみ、僕だけがこの現実に取り残された。
その時抱いた嫉妬心を未だに覚えている。僕にとって家族は姉の春夜しかいなかった。だから、嫌だった。春ねぇを取られるのが。
春ねぇはそうして本当に何処かへ言ってしまうのではないのか?
気持ちの奥から溢れる嫉妬心を、春ねぇの前で必死に抑えた。
僕も春ねぇと一緒に遊びたかった。そう思い少しずつお金を集めていった。高くて、いつから一緒に遊べるようになるか分からない。当時小学校の僕にはろくなお金もなかったのだ。
「私もお金出すから一緒にやろうね」
そう言った春ねぇの顔に、喜んだ矢先のことだった。
姉が死んだ。
心臓麻痺だった。
<Infinite Dendrogram>のVRゴーグルを付けたまま死んでしまっていたのだ。
第一発見者は僕で、全く動かない春ねぇに違和感を抱いたことを覚えている。
ゲームをやっている途中は基本的に寝ているということは聞いたが、顔色が明らかにおかしかったこと、異常に汗をかいていた春ねぇに気づき、体を触ったら異常に冷たかった。
どうすればいいかわからず、家にも電話がなかった家を飛び出し、外に出て助けを叫んだ。それを聞いて近所のおばちゃんが電話をかけてくれ、正式に死んでいることが発覚した。
終始涙を流していた。そうして病院に来た親に言われた一言で、僕は全てを恨むこととなる。
「ようやく死んだか」
何を言っているか分からなかった。だって、死んだのは貴方達の”娘”なはずなのに。
「お前らがっ! お前らがちゃんと春ねぇを見ていなかったから!! なんで、何でそんなこと言うんだよ!!」
叫んだ声を二人は無視して病院を出ていった。家の墓に入れられたが、結局葬式については行われなかった。
そんな全てが嫌になった僕は、中学校から寮がある私立学校を希望し、”
寮に移る際、あの人達が隠していた死んだ春ねぇの<Infinite Dendrogram>のVRゴーグルを見つけ、それを持っていった。
「(きっと、春ねぇはこっちにいるはずだ)」
心臓麻痺だって、不思議だった。いきなりあんなのが起こるなんて信じられない。
きっときっと――
「春ねぇは生きてるはずなんだ」
こうして、僕はゲームを始めることになる。この<Infinite Dendrogram>を。
そこで時には負けて、時には勝って、出会った仲間たちと、様々な旅をすることを、僕は体験していくのだ。
春ねぇを。僕のたった一人の家族を探すための冒険が――
――今、始まる。
三行まとめ
1.姉が死んだ
2.両親はクズ
3.姉を救うためゲームスタート!