拳突き上げた先に 作:それを言うなら
プロローグ
■【
俺達――PKクラン<アル・カポネ>は今、『トリスメギストス』にいた。
それはここに封印されているとされる<UBM>を探すためだった。だが、
「どうだー? 見つかったか―?」
「いやー、見つかりません。ジョンナー」
「ジョンナー言うんじゃねぇよ。チッ、こっちもダメか。一体何処いるんだ<UBM>の野郎」
ジョンナーとは俺の名前『ジョン・デリンジャー』とクランオーナーを混ぜた用語だ。
どっかのメンバーがそう言って以来、意外と合っているとか言われ、そう呼ぶメンバーが増えていった。
それくらいは遊びの範囲だと、俺も見逃している。これはさっきまでの一連の流れも最早テンプレート。いつもやっている流れだ。
「探索型の<エンブリオ>使っても見つからないとなると、そういう探知無効みたいなのが掛かっているのかも知れません」
『トリスメギストス』に来て3日経った。この山は入るのでさえ苦労する馬鹿らしい山でレジェンダリアでは、入るのをおすすめしないとどいつもこいつもが言う。wikiにもそういう情報が乗っていると、誰も入らない。
「今度は霧が濃くなってきたぞ」
その理由は気候の変わりやすいさ。気まぐれのように気分が変わる気候に対応し、様々な装備を用意しなければいけない。そのため準備のためのコストを幾ら払っても抑え切れない被害に俺はイライラしていた。
「(ダメか。<DIN>から高い金出して買った情報だぞ。無駄にすんのか)」
その辺の岩場に座りながら被害からのリターンを考えていた。<UBM>は貴重だ。<超級><超級職>のキチガイ共が幾らでも狩っていきやがる。
あいつらは別格だといつも感じる。俺の【
「(負け犬なんぞに、居る場所はねぇ)」
<Infinite Dendrogram>は可能性を感じる世界でもあるが、それ以上に行き詰まった時にどうすればいいかが難しいゲームだと、俺は感じていた。
エンブリオも第6形態に入り、500レベルまで全てのジョブを伸ばしきってしまっている。
ビルドの見直しも、俺は必要がないと感じてしまった。
全てを取り消して、新しい道に入るというのは俺はしたくなかった。【
「(後はどんなチート装備で身を固めるか。だな)」
【
アルター王国にフィロガという闘技場の現チャンプが居たが、ネット公開されたフィロガの試合を見た時は俺は俺の限界を感じてしまった。
――噂されている装備強化能力の<超級エンブリオ>。
一見すると相性がよく見えたが何もかもが、俺と相性が悪い。
「(あんな奴が、1位のアルター王国は可哀想だ。まっレジェンダリアも大概だがな)」
1位の連中はぶっ飛んだ奴らばかりだ。挑戦する気にもならない。
そうした才能持ちが
「巫山戯んじゃねぇ。俺がここで止まるだと。そんなことあってたまるか」
そういった感覚を捨て、意識を奮い立たせる。俺はもっと強くなる。強くなるために、既存品の装備なんかが目じゃない程の装備。誰にも奪われることがない自分だけの特別な【特典武具】。
なんとしても手に入れる。
「ジョンナー」
「あ? どうした?」
「なんか変な小娘を発見しました」
「は?」
3日探索したが人影も何もなかった『トリスメギストス』で人影?
「追跡は? マスターか?」
「出しました。マスターまでかどうかは……接触を避けるために遠目だったんで。【
「わかった。リアルで連絡取れるやつ用意しとけ。デスペナルティになったらそいつ通して連絡してもらえ。人影は追跡だけにしとけ。マスターだった場合は殺しも脅しにならねぇ」
マスターだった場合はデスペナルティになるだけで3日居なくなる。むしろ逃げられてしまう。それは不味い。情報を持っているやつは一人でも欲しい。
マスターは、いざとなったら自害することで逃げられてしまうので拷問はあまり意味を成さないのだ。
まぁ、
奴らなら、殺さない程度であれば拷問もいいだろう。と言っても『トリスメギストス』に人影などさっきので初めてだが。
「他の奴らは一旦休憩にするぞ。TYPE:キャッスル持ちの中に入って、休憩だ」
「うっす。サブオーナーに伝えときます」
「(そいつを追跡して、どうなるか。明日中に何もなければ引き上げだな。コストが掛かりすぎる)」
<UBM>は沢山いるが、出来るだけ競争相手が居ない場所を選んだ弊害が出てしまったか、とにかく急がなければいけないと気持ちを焦らせた。
もう時間がない。
どん詰まりに入った俺を、俺達を救うために俺は歩き出した。
さっきまで霧が出ていたはずが、今度は雹が降り出した。普通ではありえないことが起こる。誰もが近寄らない危険地帯『トリスメギストス』。
そこから、また一つの物語が始まる。
三行まとめ
1.見つからない<UBM>
2.どん詰まりのジョンナー
3.人影?