拳突き上げた先に   作:それを言うなら

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短かったため二視点回。

修正 高位快癒万能霊薬→快癒万能霊薬
今更すぎる修正……


謎と心配

■【魔拳士】クラウン・スプリングス■

 

「つまり、今の情報はそこまでと?」

書いてあった情報。カレンさんの<エンブリオ>の詳しい能力を省いた情報がそこに乗っていた。

「そう、全くお手上げ。どうやっても無理なのそれ以上は。他にもティアンを当たってみて調べたのだけど。そこから推測されることは。

1.【別空間に入っているのではないか】

2.【別空間に入るにしても、幾つかの決まった入り口がある】って程度」

「そこまでわかるだけでも、凄いと思うんだけどね……。って、5日前?」

「そう、今日なのよ。誘拐される日。だから助けてくれると嬉しいの」

そう言えば、俺達がこの街に入ったのは今日だ。今までは、レベルを上げるために各地を転々としていたから、カレンさんにとって俺たちは何処にいるかわからない存在だった。事前に声をかけてくれれば協力したのだが……気遣ってくれたのか。

「さっき言ったように他マスターにも協力を仰いでいるわ。犯行はいずれも日が落ちた直前に行われている。その時間に協力できるマスター全員で包囲網を作る」

「もしも<UBM>だった場合は早いもの勝ち?」

「その通りよ」

「妥当だね。PKが発生するのは嫌だけど。その可能性は?」

「私を信用して欲しいとしか。そのためのメンバーには揃えたわ。恨みっこなし」

カレンさんの顔は真剣そのもの。この夜に終わらせる気だ。だからこそ、1つ言わなければいけないことがあった。

「俺が囮になるのは?」

「……というと?」

「俺を子供の姿にすれば囮になるんじゃないですか?」

レジェンダリアにはそれが出来るマスターが居る。きっと彼もこのクエストなら協力してくれるはずだ。

「まだそういった所の検証が出来てないわ。件数も少ないから情報が足りない。それをするのはデメリットが大きい段階だと私は思うの。それでもやりたい?」

「やります」

きっと、俺ならば行けるはずだ。何せ元の年齢はまだ13歳。十分子供の範囲なはず。

「【呪術王】は遠征中よ。今レジェンダリアにはいないわ。だけど」

エリーさんはアイテムボックスから一つのポーションを出した。

「希望者がいたら出す気だった<幼体化ポーション>がここにはある。問題点としては1日中<幼体化>付与されてしまうのと、回復するためには<快癒万能霊薬(エリクシル)>しか無理だけど、そっちの準備までは間に合わなかった」

<幼体化>。体が小さくなり、ステータスが小さくなる比率により、減少していく状態異常。<Infinite Dendrogram>に置いて、不味い状態異常の一つだ。

「つまり、弱体化したまま戦うってこと?」

「その通りよ。やめる?」

「やります」

これも、即答した。疑問もない。手段があるなら、どんな手段だって試してみるべきだ。

「……本当に、貴方は凄い子ね」

「僕はやめたほうが良いって言うよ? どう考えてもまずいよ。難易度7なんでしょ? 1対1で弱体化したまま戦うなんて正気じゃないよ」

「だけど、それじゃあ辞める理由にならないだろ?」

この言葉を言うと、カレンさんはニコニコして笑い、デコは深い溜め息をついてしまった。

勿論デコの言っていることはわかる。まだ上級職じゃない俺が、<エンブリオ>もまだ第一形態である俺が、戦うべきではないことを。しかし、根本的な見落しを2人はしている。

「俺だけじゃないだろう? マスターは」

きっとカレンさんが集めてくれたメンバーなら助け合いも出来る。カレンさんの<エンブリオ>の詳しいことは知らないが、追跡能力があることは知っている。ならば、俺を追跡すれば皆で戦うことも出来る。

助けが来ないなら死ぬ気で俺が何とかする。

「俺は、大丈夫だって。思うからやる」

「ブハッ!!」

そんな俺の声に吹き出したモノがいた。俺の手からその声は響き、また呆れるように喋った。

「いやぁ、呆れたマスターです。通常じゃ考えられないことを平然と言う」

「煩い」

「いやいや、言わないと収まりません。マスター貴方はトビッキリの――」

黙らない手の甲にある卵を、テーブルに打ち付ける。

そうすると声は黙り――何か堪えている。相変わらず嫌なヤツだ。

「やりますね」

「クラウンがそれで良いって言ったら曲がらないでしょ。僕はそれで良いよ」

「私も、サポートするわ。少し提供して欲しいものがあるの。良いかしら?」

そうして、カレンさんに幾つかの提供物を渡し、アイテムを買い足して準備は整った。

もうすぐ夜になる。

良い子は寝る時間だ。

 

■【軽双銃士】デコレーション■

 

クラウンはいつもこうだ。リアルの知り合いである僕は、いつもクラウンの頑固さに付き合わさせることになる。

大体【魔拳士】はかなり変な到達の仕方をした。

まず【拳士】と【魔術師】を取ると言った時点で、可笑しい。何でそんな組み合わせを選ぶか、僕にはよく分からなかった。

だが、【魔拳士】はそれに見合う性能をしている。かなり特殊だがその特殊さゆえ1対1で、上級職の僕と戦っても見劣りしない戦いを見せてくれる。

【軽双銃士】に火力があまり無いのもあるし、僕の<エンブリオ>は全く戦闘向きでないためでもあるが、それでも5分5分の戦いが出来ている【魔拳士】の能力の高さを感じさせた。

でも、一抹の不安が残る。クラウンの<エンブリオ>は意志があるようで、アレはよく言っていた。

「マスターは誰にも本当の心を見せたことはありませんよ」

それは、リアルでもだろうか。クラウンは、どこまでが道化師であるのか。

「どうすれば、クラウンの本音が見えてくるのかな」

準備を済まし、配置に付く。

クラウンは<幼体化ポーション>を飲み、別の所に配置されている。

近くにマスターが居ると襲われない可能性があるのと、実際に襲われるかが分からないため、様子見の意味も兼ねていつでも助けられる位置にはいてもらっている。

ステータスが幾らか弱体化されているが、他のマスターの強化を得て、通常状態に近いステータスに戻ったクラウンなら、僕達が助けが来るまでなら凌ぐことが出来るだろう。多分。

「……大丈夫かな。本当に」

何か嫌な予感が胸の中をモヤモヤさせる。何度かこういうこともあったが、特にクラウンの<エンブリオ>の言葉が胸に刺さる。

「とにかく、要警戒。クラウンに異常があったら、すぐ駆けつける」

僕に出来ることはそれだけだ。これ以上の被害を出すのは好ましくない。それに折角の<UBM>だ。逃がすのは勿体無い。

まだ僕達二人は<UBM>のMVP特典武具を貰ったことがないのだから、そろそろ一つ持って箔を付けていきたい。

「クラウン。いっつも無茶するもん」

空を見上げると霧がかかっていた。この先を暗示するように、嫌な霧だった。




三行まとめ
1.ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから
2.曲がらない主人公
3.フラグを積み重ねるデコ
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