指揮官と仕事とHK416   作:が、画面の向こうの人形が僕を見てる!

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エイプリルフールが終わったので。


指揮官と終わった嘘とHK416

 指揮官がこの基地から立ち去ってから一時間が経ち、私はまだその場から動けずにいた。コン、コンと扉をノックするその音で漸く私は金縛りが解けたように動けるようになった。依然として体は重いままだが。

 

「指揮官、入っても良い?少し話があるのだけど」

 

 扉の向こうから聞こえた声は私が良く聞き馴染みのある繕ったような高い声で、普段は不快感が立ち込めるそれに私は飛び付いた。何でも良いから助けが欲しかった。

 

 

 

「45ッ!」

 

 

 

 私は扉を開き、まるで母を見付けた子供の様にその人物に近寄って、縋る様に抱き締めた。

 

「え?ちょ、ちょっと416?どうしたのよ、良いから離れて、もう嘘を吐いて良い時間は終わったのよ………ねぇ416?」

 

 私の様子が可笑しい事に気が付いたのか45は私を抱き締め返して「どうかしたの?」と優しく訊いてきた。

 ゆっくりと指令室に入ると客人用の大きなソファーに二人で座り、そして話を始めた。

 

「45…実は、もう、気付いていると…思うのだけど……」

 

 『指揮官が指揮官を辞めて、この基地から出て行った』その事実は私が口にしようとすれば、それは剰りにも重く、指揮官の様にまるで冗談みたいに軽々しく口には出来なかった。話そうとすればする程に私の眦からは涙が溢れ出して、喉が震えた。

 しかし45はそんな私に「大丈夫だから、ゆっくりで良いわ」と子供に言い聞かせる様に囁いた。

 

「あ、ありがとう……それで…し、指揮官が……」

 

「指揮官がどうしたの?」

 

 鼻を啜りながらどうにかその言葉を絞り出した。 

 

「指揮官が、辞めるって……基地を、で、出ていって……しまったのよ…」

 

 身体が震えて涙がより溢れた。人形だからこの程度では狼狽えないと頭で言い聞かせようとしても駄目だった。

 

「…そう、良く話してくれたわ416。」

 

 すると45は私をぎゅっと抱き締めて続けてこう言った。

 

「普段は蚊帳の外から眺めてるだけだけど、貴女がここまでなるんだもの。任務に支障を来たされたら困るし、今回は私がどうにかするわ」

 

「45…」

 

「だから貴女は安心して眠っていて頂戴。起きたら全てが終わっているわ、あれは唯の悪い夢だってわからせてあげる」

 

 私は安心して45の胸の中で眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

* side change : UMP45

 

 

 

 

 

 

 

 

 すっかり夢の中へ旅立った416をソファーに寝かせて、近くにある指揮官の部屋から毛布を持ってきてかけておく。少しは安心できるだろう。

 さて、指揮官がこの基地から出ていったとの事だが、今日はエイプリルフールだ、一縷の希望にかけて先ずは上着に付けているGPSを確認しよう。

 このGPSは普段は余り使わない、何故なら指揮官は殆ど指令室に籠りっきりで仕事をしている為だ。それに居なかったとしても他の人形が居場所を知っているので態々確かめる必要はない。

 懐から無線を取り出しナインへ連絡を取り、居場所を確認する。

 

「ナイン、聴こえてるかしら?」

 

『通信良好!バッチリ聴こえてるよ!』

 

「そう、それはよかったわ。指揮官の上着に付けてたGPSは今何処?」

 

『ちょっと待ってね……あった!資源備蓄倉庫だよ』

 

「了解、貴女も其処に向かって貰える?」

 

『了解!今行くよ!』

 

 ナインの情報を信じるならば、指揮官は資源備蓄倉庫に居る事になる。果たして素直に其処に居るだろうか。居てくれたら良いのだけど。あの指揮官の事だ、きっと対策をしているに決まっている。とは言え向かわない訳にはいかないが。

 

 案の定そんな願いは通じず、資源倉庫には指揮官の上着だけが残されていた。しかもポケットにはご丁寧にメッセージが書かれた紙切れ一つ。

 

『今更捕まる訳には行かない、見付けてみろ』

 

 それは私の敵愾心の様なモノに火を着けた。

 

「絶対に見付けてやるわ……覚悟しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 資源備蓄倉庫から見付かった指揮官の上着を手に私とナインは作戦を練っていた。

 指揮官はこの基地の人形に好かれている。指揮官が居なくなったと知れれば大多数の人形が混乱に陥るだろう。その為、指揮官は信頼できる404小隊の仲間達で探す必要がある。

 私達404小隊は現在4体の人形が所属している、少数精鋭と言う奴だ。その為誰か1体が抜けるだけで戦力はガクッと落ちる、今回は早期に見付けるのは少し厳しそうだ。まあ、かと言って指揮官を見付けられないと言う訳にはいかないのだが。

 一先ず自室で眠りこけているG11を叩き起こして指揮官探しに参加してもらうことにする。いつもは何かにつけて休もうとするが今回はちゃんと協力するらしい。正直助かる。

 

 実を言うと、指揮官が何処に居るかは大体の目星が付いている。余談だが私は416の次にあの指揮官と居た時間が長いのだ、考え位は判る。しかし今回はそれが仇になっている、目星が付きすぎるのだ。つまりは複数の候補があると言う事だ。流石に全て回っていては運が良くない限り見付からない可能性が高いだろう。

 さて、どうしたものか。手分けをして探すとしても少々キツいな。

 

 

 

 

 

 

 

* side change : 指揮官

 

 

 

 

 

 

 

「俺は自由だああああああああああああああああ!!!!!!!!Fooooooooo!!!!!!!!!やっとだッッッッッ!!!!やっとッッッッ!!!!!」

 

 木々の生い茂った山の斜面を全力で下りながら指揮官を辞めた喜びを叫ぶ。苦節1年とちょっと、漸く指揮官を辞められた。もうあの大量の書類を処理する事も!人形達の機嫌を窺うことも!!戦場に送り出す事も!!!!しなくて良いのだ!!!!!!

 

 ふぅ……取り敢えずは近くの街にでも向かおう、そして久しぶりに酒でも飲むのだ。金ならあまり使わないから腐る程あるし、お高い物でも飲もうかな。今から楽しみだぜ…!!!

 

「おっ、そろそろかな」

 

 山を下り続けて3時間程、辺りがすっかり暗くなった頃に建物郡が見えてきた。漸く街に着いたのだ。

 さて、酒場にでも向かおうかな。確か中心地から路地に入った場所にあった筈だが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

* side change : UMP45

 

 

 

 

 

 

 

 

 指揮官を探し始めて約4時間弱が経ち、未だ指揮官は見付からない。山を2、3週し、街までの直線道の監視カメラを解析し、街で聴き込みをして、それでも見付からない。

 もう駄目だ、他の2人には悪いが自棄酒でもしたい気分だ。確か外れに古い酒場があった筈だ、そこで少し飲んでからまた探そう。

 

 なにやら賑わっている酒場に入り、適当な安酒を頼む。一気に煽って、盛り上がりの中心に目を向ける、どうやら賭けをしているらしい。

 

「あっ」

 

 指揮官がいた、しかも結構な大金を賭けている。私達がこんなに苦労して探したと言うのにこんなにあっさり見付かるとは。なんだか怒りが沸々と沸いてきた。1発位ぶちかましても良いだろうか。

 

 昂る感情で出そうになる笑いを抑えながら歩を進める。背後に回って私の獲物を突き付ける。辺りが鎮まった所で一言。

 

「指揮官、探しましたよ」

 

「えっ」

 

「さ、帰りましょう」

 

「う、うわあああああああああああ!!!!!!!!やだ!!!帰りたくない!!!!!!!!!」

 

 ドンッと壁に弾を撃ち込んでやる。

 

「帰 え り ま し ょ う」

 

「はい、本当に申し訳ございませんでした」

 

 静かになった指揮官を引き連れ店を出る。

 早く帰ろう、416も待っているだろう。

 

 

 

 

 

 

* side change : HK416

 

 

 

 

 

 

 何故指揮官は出ていってしまったのだろうか、私が悪かったのだろうか。

 

 もっと私がしっかりしていれば、指揮官は出ていかなかったのだろうか。

 

 私が指揮官をもっと気にかけていれば……………。

 

 ………………………。

 

 …………………。

 

 ……………。

 

 体が揺さぶられる感覚。

 

 「416」と私を呼ぶ声がする。

 

 肌に感じる人肌の温もり。

 

 …………………。

 

 ………。

 

 目を覚ます。

 

「お、漸く起きたか。おはよう、416。私が誰かわかるか?」

 

 あぁ……彼は………。

 

 涙が溢れて止まらない、目の前が掠れて、声が震えだす。

 

「ちょ、416?だ、大丈夫か?」

 

 心配をする彼に少し、笑いが込みだす。

 

「え、何?今度はどうした」

 

 笑いを堪えて指揮官の問いに答えてやる。

 

「大丈夫よ、指揮官。帰ってきたのね」

 

「ああ、帰ってきたよ。すまなかったな、416。冗談でも出ていくんじゃなかった」

 

「少しお酒臭いわ」

 

「き、気のせいだろ……あはは…」

 

「笑えてないわよ、随分と飲んできたのね」

 

「す、すまん!久しぶりに飲みたくなって…」

 

「別に良いわ、帰ってきてくれたんだもの」

 

 そうだ、指揮官に伝え忘れた事があった。

 

「指揮官」

 

「なんだ?」

 

「好きよ、指揮官」

 

 少し気恥ずかしくなってきた。指揮官はどう思っているだろうか。

 

「私……いや、俺もだ、416」

 

 指揮官は、私をぎゅっと抱き締めた。

 




遅くなってすみません!何でもしますから!許してクレメンス!

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