指揮官と仕事とHK416 作:が、画面の向こうの人形が僕を見てる!
2/9 02:20タイトル修正
指揮官は激怒した。
何故、指揮官である俺が作戦報告書なんぞを書かねばならぬのか。
指揮官には最初、報告書の書き方などてんでわからぬものであったが、後方幕僚が居なくなってからというもの自らの手で、或いは有能な人形達と二人三脚で少しずつ作成してきた。
だが今となってはどうだ、鉄血の猛攻に毎日のように人形達を出撃させる日々、帰還してから自分一人では書けないからと手伝わせるのも申し訳ない。
次の日に先送りにしようとしたが、毎日毎日作戦情報が溢れそうになる日々、貧乏性なものだから溢れないようにしなければ気がすまない。
そこで今のような長い夜の時間を利用するスタイルになったのだ。
溜まりに溜まったストレスによって正気を失った指揮官はクルーガーをストレスで禿げさせることを決意した。
最近はいつもと違い仕事が少ない、届く書類が少ないのだ。
理由は何故だかわからんが、これを利用しない手はない。
これを利用して仕事をボイコットし、あの邪智暴虐の髭面をハゲという地獄へ叩き落とすのだ。
03:50
少し早めに起床、朝食を摂り、逃走の準備をする。
この基地周辺は高山地帯で基地はちょうど麓に面している。そこで、この地形を利用して軽い家出をすることにした。
前のように街へ繰り出そうとしようものならば、人形の見つかり袋叩きに遭いかねん。
04:25
いつもと違い資材倉庫には向かわず、輸送物資を受け取りに行く。
この時間ならもう色々と届いている筈なので、それらを回収して台車に載せる。
05:15
資材収支の確認へGO、配給から乾パンとレーション、チョコ等と飲料水を回収して台車の荷物に紛れ込ませる。
減った配給分は書類から誤りがあったとして差し引いておく、これで完全犯罪成立や…!(ガバガバ)
05:40
何食わぬ顔で司令室へ向かう。目敏い人形が菓子をねだってくるので少し分けて万が一の為に懐柔する。
この時最悪と言って良い情報をMDRから聞いてしまった。
今日の副官は《M590》らしい。
やばい、何がやばいって今日の副官がM590な事だ、これはやばい、やばすぎる。
M590の事を簡単に説明するとこの基地のオカンだ、断じてお母さんであるとかママではない。
オカンである所以は彼女はなにかと世話を焼く事が好きで、よく部屋を勝手に片付けたりしてくるからだ、たまに「ちゃんとご飯食べてますか?」とか聞いてくるところとかも完全にオカン。
だがそれだけでは自分が今彼女を恐れる理由にはならない、理由は他にある。
少し前に一度だけ、確か半年くらい前だ。
彼女にイタズラを仕掛けたんだ、P7と二人で考えたちょっとしたイタズラだ。彼女に取らせたファイルの中に黒光りする例の虫の玩具を挟んでおいたのだ。
普通は「きゃっ!驚かせないでください!」みたいな反応をするだろうが、彼女は違った。
「は?(怒り)」みたいな声を出したのだ、その後三、四時間余正座でずっっっっと説教された。正直それからはちょっと彼女にビビりつつ生活している。
今日の副官はイワシちゃんが良かったなぁ…、なんて考えながら書類を仕分けていると司令室の扉が開いた。
膝まである絹のような長い白髪とどこか人を安心させる様な琥珀色の瞳、そして魅惑的な褐色の肌、出撃時とは違い私服姿の彼女は微笑んでいて何故か楽しそうだ。
そう、彼女はM590、魔王降臨である。
「おはようございます、指揮官。仕分け、手伝いましょうか?」
「おはよう、今日はM590か。じゃあ手伝ってもらおうかな、この机の上のを頼むよ」
正直心のなかではビビり散らしているし、台車に載っている配給に気付かれなくないから手伝って欲しくないが、これが指揮官の精一杯である。
だが机の上の書類など微々たるものである、仕分け終わるのに10分も掛からないだろう。
指揮官は逃走計画がバレたくない一心で必死に考えた、どうすればM590より速く仕分け終わるのかを、しかし台車に載っている書類は机の上の四倍はある。そこで指揮官は逃走計画に関係のあるものだけを何処かへ隠すことにした。
自室は駄目だ、いつだか手持ち無沙汰になった彼女は「指揮官、最近自分の部屋を掃除してます?指揮官は散らす癖がありますから心配です」みたいなことを言って本当に掃除をしてきた事がある。
この司令室は当然ながらダメだ、逃走に必要なものは他の荷物同様に一応段ボールに入れてはいるが明らかに重いし宛名がないから怪しい、もしかしたら「何ですかこれ」とか言いながら開けかねん。
色々考えたがやはり駄目か、と思ったその時、名案を思い付いた。
トイレだ、トイレに隠そう。この司令部は当然ながらトイレは男女別だ、男子トイレには流石に入ってこないだろう。
「イタタタタタタ、ハラガイタイヨォー、コレハトイレニイクシカナイナァー」
わざとらしく腹を擦りながら片言で言う、明らかに怪しいが彼女は何故かスルーしてくれた、これは勝つる。
荷物を体で隠すように持ち、違和感の無いようにそっっっと部屋を出る。実際は違和感バリバリである。
「指揮官、待ってください。その隠しているものはなんですか?」
バ レ て し ま っ た か ?
いや、まだだ、M590は「何を隠しているのか」と訊いた、何を持っているかはわかっていない筈だ。
そっと死角からポケットに右手を突っ込み飴を取り出し彼女に投げ渡す。バレていないなら多分納得してくれる筈や…!
喰らえ!!鉄砲玉(飴)!!!!
「これだよ」
「……はぁ、何を隠してるかと思えば飴玉ですか、…まぁ良いです、ありがとうございます」
「うむ、良きに計らえ」
よっしゃセーーーーーフ!!!!!!
釈然としない感じだったがバレてないからセーフ!!!
ふゥへへへへへェェェ!!!!馬ァ鹿めェ!!!!!本当の目的はこの荷物じゃああああああああ!!!!!!!
部屋を出たら急いで便所へ向かい掃除器具入れに隠す、多分見付からないだろう。
隠す序でに用を足し、何食わぬ顔で部屋に戻る。
「指揮官、戻られましたか。本日分の書類はこちらに仕分けておきました」
「おお、ありがとう。じゃあいつも通り楽にしてて良いよ」
逃走計画がバレないよう黙々と作業を進めていると、書類に目を通していたM590が声を掛けてきた。
まさか計画がバレたか…!?
「………前から思っていたのですが、指揮官は少々無茶をしているのではないですか。今日もほら、目元に隈が出来ていますよ、しっかり睡眠とってますか?まさか、徹夜とかはしてませんよね?」
お前は俺の母親かよ。
「問題ない、昨日は0100には床についている」
「問題しかないじゃないですか、しかも聞くところによると毎朝陽が昇る前に起きてるようですし、明らかに睡眠不足で疲労が溜まってます」
「416から聞いたな?疲れが溜まっているなんてそんなことはないぞ」
今でもピンピンしてるだろうに、それに徹夜はもう馴れた。
「そんなことあるに決まっているでしょう、はあ」
疲れたように彼女は溜め息をつく、そして一言。
「指揮官、今日は休みましょう」
今、何故か自分はM590に膝枕をされている。
一体これになるまでの間何があったかは何故か思い出せない、しかし何故膝枕をされているのだろう。何故M590は嬉しそうなんだ…。
太ももの柔らかさを認識する、鼻腔をふわりとした甘い香りがくすぐっている。羞恥心で考えが纏まらない、思考があっちへこっちへずれていく。
取り敢えず何故膝枕をされているのか訊いてみる。
「……何故、膝枕をされているんだったっけ?」
「指揮官が眠いとぼやいていたからです」
わけがわからないよ…
何故眠いという一言だけで膝枕をされなければならないのだ、いや、満更でもないのだが。
出来ればここに永住したい位だ。
はっ!!まさか!!逃げようとしている事に気付き拘束しようとしているのでは!?
そうとなればすぐに逃げ出さなければならんぞ!予定変更だ、本来なら今日の書類を処理し終えた後基地からでて明日以降仕事が減るまで山でボイコットするつもりだったが、これは今すぐこの程よく柔らかい太ももから逃げ出さなければ!!
「M590、今すぐに処理せねばならん案件を思い出した」
「さっき終わったって仰ってましたよね」
あれそうだったっけ(記憶喪失)
ヤバいなこれは逃げ出せないかもしれん、眠気も増してきた、どうにかして…どうにかして逃げなくては………
「指揮官、仕事の心配は要りません。安心してお眠りください」
M590の安心する声が頭を支配する。
駄目だ、眠気に抗えない…ZZzzzz…………フトモモ………
こうして指揮官の逃走計画は水の泡となった、尚トイレに隠した荷物はかくれんぼしていた非番の人形に見付かり、食料はおやつに、衣類は襤褸として二束三文で売り払われたのであった。
大陸版もやってるから大陸版キャラが出てくるよ、許してちょんまげ(小声)