東方妹打刀   作:五式改

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 何とか一週間以内に完成。
 ただ本格的な決闘は次々回辺りに持ち越しになりました。
 第十四話です。


第十四話 実験

「それじゃあ、スペルカードに意識を集中して『スペルカード・オン』って言って頂戴」

 スペルカード量産秘話から少しして、紅魔館の広間にてパチュリーが刃とフランにそう指示する。

「スペルカード・オン」

「スペルカード・オン」

 フランが先に言い、刃が続くように指示された言葉を言った。するとスペルカード全体が断続的に光だし。

『スペルカード起動しました。このスペルカードは持ち主が未登録です。登録しますか?』

 フランのカードからはフランの声で、刃のカードから刃の声で音声が流れ、それからカードの上に某RPGのようなはい、いいえの画面が空中投影される。

「凄い」

「これ、私たちの声ですよね?」

 フランは一言、刃は確かめるようにパチュリーに聞く。

「ええそうよ。自覚は無いでしょうが、その投影画面は貴方たちが無意識に術を行使して出しているの。だから流れる音声は自分のものになるの。じゃあ、画面のはいを押して先に進んで」

(まるでATMやスマートフォンを操作しているみたいだな)

 刃は生前のことを思い出しつつ、パチュリーの指示通りに右手の人差指でフランと一緒に画面のはいを押した。

『はいが押されました。それでは名前を入力してください』

 画面が変わり平仮名(ひらがな)が表示される。

「フランだったら下にあるボタンを押して片仮名(カタカナ)入力、刃だったら同じボタンを二回押して漢字検索で入力後、読み仮名を入力して登録してね」

(てかまんまだ)

 パチュリーの説明に刃はそう断定して名前を入力。

 生前とは違う名前、と言うか勝手に名乗ったもので大丈夫かと思ったが。

『名前が入力されました。持ち主として登録しますか?』

 問題なかったようで、再び画面がはい、いいえのものに切り替わる。

「それではいを押せば持ち主登録がされて、その後に魔力、霊力、妖力のどれかを選べば融合が始まるわ」

 パチュリーに言われた通りにはいを押すと。

『はいが押されました。貴方を持ち主として登録します。融合する力を選んでください』

 画面が切り替わり、魔力、霊力、妖力の選択画面が出てくる。

(うぅん。とりあえず魔力にしておくかな)

 少し考えた末。スペルカードルールではあまり使いそうにない魔力を選択。

ちなみに刃の魔力は妖力、霊力より少ないがパチュリー曰く、平均的な魔法使いよりは多いとのこと。

フランは妖力を選択する。

『魔力(妖力)が選択されました。これより融合を開始します』

 すると画面が消え、スペルカードが発光、光の粒子となって刃とフラン、それぞれの体の中に消えたのだった。

「「おお」」

 この現象に二人は驚き、それをパチュリーが微笑みながら眺めつつ、説明を続ける。

「これでスペルカードの登録は終わり。現在スペルカードが貴方たちの魔力と妖力の中にあるのが分かるでしょ? それは待機状態で、起動させるときはスペルカードに意識を集中してまた『スペルカード・オン』、待機状態に戻すときは『スペルカード・オフ』と言えばいいわ」

 パチュリーの言う通り刃は自身の中にスペルカードの存在を感じ、それはフランも同様だった。

「スペルカード・オン!」

 さっそくそう言ったのはフラン。その言葉に反応するようにフランの目の前に名前の書かれた、半透明状態のスペルカードが空中投影される。

「それをクリック……触れば設定画面が開いて各種設定が出来るの。それと投影場所は『スペルカード・オン』と言うときに場所を意識すれば変更出来るし、設定画面であらかじめ変えておくことも可能よ」

「スペルカード・オン」

 パチュリーの説明を聞き、刃が右斜め前に意識を向けながらそう言うと、言われた通りにその場所にスペルカードが現れた。

 そしてそれに触ると設定画面と名が打たれた画面に切り替わる。

「スペルカード・オフ」

 次に刃がそう言うと画面は消えた。

(本当に凄いなぁ。しかも作ったのは八雲紫とその配下、一体どうやって作ったんだろう?)

 刃が持つ原作知識では少なくとも八雲家が魔法でこんなものを作れるとは思えない。

(となるとやっぱりユリドリミドリか、それ以前で原作とは違った人生と人物になったんだろうなぁ)

 などと軽く考えていると。

「登録は終わったわね。それじゃあ早速始めましょうか」

 レミリアがそう刃に語り掛けてきた。

 

 

「ねぇ、レミィ。本当にやるの?」

 面倒くさそうにパチュリーがレミリアに聞いた。

「ええ、もちろんよ。それに言い出したのは私じゃなくて刃よ」

 そう言いながらレミリアは嬉しそうに視線を刃に向けた。

「ねぇ、刃。本当にやるの?」

 その刃は不安な表情でフランに心配されていた。

「大丈夫です。もしもがあっても私が壊れないのはよく知っているでしょう?」

 少し表情が硬くなっているが安心させるように刃はそう返す。

 さて、一体これから何が起こるかと言うと、それはスペルカードの実験。本当に攻撃が非殺傷化されるのかどうか。

 きっかけはスペルカード量産秘話の後に刃が言った二つ目の質問。これもまた一つ目と同じく疑問と言うより、スペルカードによる非殺傷化は本当に安全かどうかと言う再確認。

 質問をした理由は、当然壊れない程度の能力を持つ自身のためでなく、相棒兼主人のフランの身を案じてのため。

 確かにスペルカードは八雲紫が指揮を執り、パチュリーが手伝い、何よりあのユリドリミドリの作者が認めて量産しているので問題はないのだろう。

 しかし、やはり実際に見てみないことには不安だった。

 そこでレミリアが提案したのだ。

「じゃあ実験してみましょう。的は刃、攻撃するのは私。見るより体験したほうが良いでしょう? もしもそれで疲れたのなら今日は休みにしてあげるし、何か起これば責任はちゃんと取るわ」

 瞳に期待を込めて。

 これに一抹の不安を感じつつ、レミリアの言う通り見るより体験したほうが良いのは確かなので、刃はお願いする形で提案に乗ったのだ。

 そして実験に必要なスペルカード登録と広間の整理が終わり、開けた場所で刃とレミリアは対峙。他のメンバーは離れたところから見守っていた。

「それじゃあ、刃。実験で使うスペルの数は一、時間は十分、戦闘方式は陸戦で良いわね?」

「はい!」

 レミリアの質問に刃は力強く返答。

「ふふっ。そんなに緊張しなくても大丈夫よ。すぐに終わるから。それじゃあ、やり方は私のを見ながらやってね。分からなかったら聞いていいから」

 楽しそうに言いながらレミリアは一呼吸。

「スペルカード・オン。決闘準備!」

「スペルカード・オン。決闘……準備!」

 レミリアに習う形で刃もそう宣言し、目の前に半透明のスペルカードが投影され、すぐに画面に変わる。

『決闘準備に入りました。他者のスペルカード受信、決闘相手を選んで下さい』

 選択画面に切り替わり、そこにはレミリア・スカーレットの名前があった。

「言うまでもないでしょうけど、そこにある私の名前を押せば良いのよ」

「分かりました」

 レミリアに言われた通り刃は名前を押す。

『決闘相手が選択されました。決闘設定を行ってください』

 次の画面は設定画面。項目はスペルの数、決闘時間、戦闘方式の三つ。

「それじゃあ、さっき決めた通りにしましょう」

「はい」

 レミリアの言葉に頷きつつ、画面を操作。項目をスペル一、決闘時間十分、戦闘方式を陸戦に変えて、決定ボタンを押す。

『決闘設定が終了しました。使用スペルを選択して下さい』

(あっ、しまった!)

 ここに来て刃は自分がスペルをまだ作っていないことに気付いた。

 スペルカードルールは名前の通りスペルを使う決闘、無ければ言うまでも無く出来ない。

(どっ、どうしよう)

 もちろんスペルを作るためにやり直すしかないのだが、それを言うのは少し恥ずかしい。

 そこにレミリアが声を掛ける。

「刃はまだスペルを作ってないから初心者用のサンプルスペル三つから選択して。大丈夫、ちゃんと分かっててやってるから」

 安心させるようにレミリアはウィンクした。

「あっ、そうなんですか。いやぁ、すみません」

 これに刃は後ろ頭をかきながら設定画面の下にあるサンプルのボタンを見つける。

(いやはや、機能だけでなくサービスも充実してるなぁ。さて、一体どんなのがあるんだろ?)

 そう思いながら刃はサンプルのボタンを押す。そして目が点になった。

 

 

 砲符『キャノン』。指定した一方向に魔力、妖力、霊力どれかを放射する。なお、放射の規模は意思である程度設定可能。

 爆符『ヘッジホッグ』。指定した多方向に魔力、妖力、霊力どれかの大型爆裂弾を無数に発射、相手が近づくと、全てが無数の小型弾に破裂する。なお、発射する弾の数は意思である程度設定可能。

 追符『ミサイル』。魔力、妖力、霊力のどれかの大型追尾弾を相手に向けて複数発射する。なお、発射する弾の数は意思である程度設定可能。

(駆逐艦!?)

 スペルに使われている名前はどれも駆逐艦、日本で言うなら護衛艦の装備名であり、ヘッジホッグ以外は今も使われている物で、少なくとも幻想郷では聞きそうにないものだった。

(いや、確か魔理沙(まりさ)の技にもあったし、問題ない……のか?)

 思い出すのは常に自機である片割れの白黒の魔法使いのショット。

 それでも納得がいかず、混乱している刃にレミリアが声を掛ける。

「あら、刃。どうしたのかしら? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

「あの、お嬢様。このスペルの名前って何なんですか?」

「ああそれ。ゲームに出てくる兵器の名前だけど、それがどうかしたの?」

 刃は混乱していたため、特に考えも無しにレミリアにスペルの名前の由来を聞いたら、さらに幻想郷ではあり得ない言葉の組み合わせが出てきた。

 しかも言いそうにない人物から、割と普通で当たり前のように。

(えっ、ゲーム? 何の? えっ、えっ?)

 少なくとも今まで刃は紅魔館で該当しそうなテレビゲームや携帯ゲームを見たことはない。

 一応幻想郷は忘れ去られたものが行き着く場所でもあるため無いとは言えないが、それでもこんな風にレミリアの口から出てくるとは思えなかった。

「もう、一体どうしたって言うの?」

 そのレミリアはなおも混乱する刃に訳が分からないと首を傾げる。するとパチュリーが呆れた顔で口を開いた。

「レミィ、刃はあそこに行ったことがないんだから、それじゃあ分からないわよ」

 この親友の言葉にレミリアははっ、となり、開いた口を開いた手で隠す。

「あっ、ごめんなさい、刃。貴方は知らなかったわね。とりあえずそのスペル名はある遊びの技と思ってちょうだい」

(あそこ?)

 慌てて言うレミリアの言葉を聞きながら刃はパチュリーのあそこについて考える。

 一番に考えられるのは外の世界の品物を扱う香霖堂、次は外の世界並に科学技術を持っていると考えられる河童が居る妖怪の山。

 しかし、香霖堂の店主は物の名前と用途は分かっても使い方が分からず、また、そこにある物は壊れていることが多い。妖怪の山はこの世界でも余所者に厳しいのでレミリアたちが行くとは考えにくい。

「スペル名は分かりました。それであの、あそこって何処ですか?」

 適当な場所が思いつかなかったので刃は了承しつつ、あそこについて二人に聞いたが。

「それはまだ秘密よ。多分、今月中か来月には連れていけると思うから、今はこの実験に集中しなさい」

「私としてはこんな無駄なことは止めてほしいんだけど」

 どうやらまだ教えてもらえないらしい。

 気になるが、実験にやる気を見せるレミリアとそれを呆れ顔でみるパチュリー見て。

(まあ、連れて行って貰えるようだし、確かに今は必要ないな)

 刃はそう思い、深呼吸して混乱した頭を落ち着ける。

「はい、それじゃあスペルを選択します」

 

 

 刃が選択したのは使うことはないので爆符『ヘッジホッグ』。

『両者の準備が整いました。決闘結界を展開します』

 すると刃とレミリアの間から軽い衝撃波が発生し、続いて長方形の透明な結界が二人を包み込むように展開。

『決闘結界展開終了。レミリア・スカーレット、ライフ百、古刀・刃、ライフ百。画面移動します』

 画面の上にレミリア、下に刃のライフゲージがタイマーと一緒に表示された後、それが縮小、二人の左手の甲の上に移動した。

 同時に結界の上下前後左右にもライフゲージとタイマーが表示される。

(分かりやすいのは良いが、これ気が散らないか?)

 などと刃が思っているとレミリアとの間にデカデカと漢数字が表示される。

『決闘開始のカウントダウンを開始します。参、弐』

 これに刃は軽く緊張、レミリアは高揚して合図を待つ。

『壱、決闘開始!』

 法螺貝の音と共に開始が宣言された。

「さあ、刃。分かっているわね?」

「はい。お願いします!」

 構えるレミリアに刃は何もせずにそう言った。

「よく言ったわ。それじゃあ見せてあげましょう。私のスペル」

 レミリアのスペルと言うワードにスペルカードがスペル攻撃の発動態勢に入る。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 結界の壁のライフゲージとタイマーの下にスペル名が表示され、レミリアのゲージの下に移動。

 同じくレミリアの体から魔力が溢れ、右手の方に収束、赤い槍を形作る。

 グングニル。それは北欧神話に登場する槍で、相手に向かって投げれば必ず命中し、どんな防御も貫き、終われば持ち主の手に戻ると言う。その威力は絶大で、同じく北欧神話の剣であるバルムンクを砕いたこともある。

 レミリアが使おうとしているのはこれを元にした魔術による攻撃。

 しかしレプリカとは言え、それから伝わってくる力は離れていても刃に伝わった。

(あれを喰らったら痛いじゃ済まないだろうなぁ)

 もちろんスペルカードの非殺傷化がちゃんと機能していれば痛い思いをして吹き飛ばされるだけなのだが、目の前の槍にはそんな考えを吹き飛ばすほどの迫力と圧力があった。

 あの赤い槍に貫かれれば五体は砕かれると思うほどに。

(と言うか気のせいか槍の周りの空間歪んでない? それにお嬢様、いつまで槍に魔力ため込んでいるの?)

 槍の魔力密度が高いのか周囲の光景が歪んで見え、レミリアは戦闘に用いるにしては

長い時間を掛けて魔力を収束させていた。

 その姿はまるで、まだよ、まだ、こんなものじゃ足りない。と言っているようだった。

 槍はさらに魔力が収束してその力を増していく。

 そしてその時は来た。

「さあ、試してみなさい。自身が無事でいられるかどうかを!」

「はい!」

 レミリアの叫びに負けじと刃も叫ぶ。

「やあぁぁぁっ!」

 雄叫びと共に理想的な体勢でレミリアが槍を放つ。放たれた槍は真っ直ぐに刃に向かう。

 直撃する数瞬、永遠とも思える時の中で、刃は意思に反して避けようとする体を必死に抑え、目を逸らすまいと槍を睨みつけた。

 槍が当たったのは刃の胸、心臓がある位置。

「がっ!」

 刃の身を襲う衝撃と遅れてやって来た激痛に思わず呻き声を上げる。が、刃にそれを確認する暇はなく、槍の推進力によってその体は地面から離され、すぐに後ろの結界の壁に貼り付けにされる。

「ぁぁぁぁぁぁ!」

 だが、槍は消滅せず、なおも刃を貫こうと壁にその体を押し付ける。

 それはつまり衝撃と激痛の継続に他ならない。

 刃の顔は苦痛に歪み。

(ああ俺、ここで死ぬのかな? それと何かうるさいな)

 早くも朦朧としてきた意識の中でそんなことを思い、自身の叫びを認識することが出来なかった。

 そんな刃の状況を指し示すかのようにライフゲージが減っていく。

 

 

 時間にすれば数分か、もしくはそれ以上だったかもしれない。

 ようやく槍は満足したかのように消滅し、刃の体は重力に引かれてうつ伏せに床に倒れた。

(静かになった? それに生きてる?)

 朦朧としているが刃に意識はまだあった。

(そう言えば何してたんだっけ?)

 そんな中、自分が何をしていたのかを思い出そうとするが上手く思い出せない。

(おかしいな。記憶は能力のお蔭で消えないはずなのに)

 そんなことを考える刃に声、正確には音声が聞こえる。

『古刀・刃、ライフゲージ零。勝者レミリア・スカーレット。決闘を終了します。お疲れ様でした』

 耳が遠くなっていて聞き取りにくいが、それは決闘終了を告げるスペルカードの音声だった。

(ああそうか。そう言えばスペルカードの実験をしていたんだっけ)

 ならちゃんと非殺傷化されていたか確認しなくては。

 そこで自分の体が鉛のように重くなり、熱した鉄を入れたように胸の辺りが熱く、滝のように汗を掻いたせいで服が染み付き、総じて気持ち悪くなっていることが分かった。

「はぁ、はぁ」

 息も荒く、気を抜けば意識が無くなりそうだった。

(ちゃんと確認しなきゃ)

 精神力と体力を根こそぎ持っていかれた中、重たい体を動かし、そうすれば胸の熱が増したが刃は両手を床に付け、起き上がろうとする。が、失敗してうつ伏せから仰向けになる。

(まぁ、良いか)

 とりあえず確認は出来ると、霞む視界で自分の胸を見る。

 そこには床に倒れた時に付いた汚れとシワ以外見られなかった。と言っても視界が霞んでいるので試しに触ってみる。

(穴、は開いてないか。それにこの熱、痛みか)

 今更ながらに胸の熱が痛みであること気付く。

(だが、怪我も無い)

 少なくとも胸に赤い物は見えないし、何かが流れている感じも無い。

(ふふっ、凄いなぁ、スペルカードは)

 あれ程の攻撃を本当に非殺傷化している。

「刃!」

 そこに聞きなれた声と足音が耳に入ったような気がした。

(……フラン?)

 刃が意識を向けると同時に上半身が抱き上げられる。

 視界がさらに霞んでよく見えないが、フランが抱きかかえてこちらを見ているのは分かった。

「刃、大丈夫! 痛くない、何処か壊れてない!?」

 近くで喋っているため、遠くなった耳でもよく聞こえる。

 どうやらかなり心配しているようだ。

(でも、大丈夫。かなり痛いし、疲れたが俺は無傷だ)

「……だ……、……き……」

 しかし上手く声が出なかった。

 どうしたものかと思った時、別の声が聞こえた。

「じっとしてなさい。今から魔術を掛けるから」

 それはパチュリーの声だった。

 すると声の方向から淡い光が刃に当てられる。

(あったかい)

 その光はパチュリーの回復系の魔術のようで、胸の痛みと体の疲労が和らいでいき、視覚、聴覚も回復していく。

(結構心配させたみたいだな)

 綺麗になった視界に映るフランは今にも泣きだしそうに張りつめていた。

「フラン」

 一言刃はフランの名を呼んだ。

「何、刃!? 何処か痛いの?」

 心配するフランに刃は色々と答えてあげたかったが、流石に限界が近かった。

「俺は大丈夫だ。この体に傷一つ付いてない。このスペルカードは凄いぞぉ」

 本当なら敬語を使わなければならないが、今の刃にその余裕はない。

「うん、うん。分かっただから……」

「でも、疲れた。少し休ませて」

 何かを言おうとしたフランの声を遮って刃はそう言って目を閉じる。同時に気が抜け、刃は霊力で作られた自分の体が崩れていくのが分かった。

 どうやら体を維持することも出来ないらしい。

 そして意識が沈んでゆく。

 恐らく沈み切ればしばらくは起きないだろう。

 ただ、意識が完全に沈む前に声が聞こえる。

「お姉様。お願いがあるんだけど」

 その声はよく聞いたものでありながら、肝が冷えるほど冷たかった。

 




 ボコボコにされるのは不死身属性の宿命。苦労するのは主人公属性の宿命。

 新たな謎が出てきましたが、そんなことよりまたスカーレット姉妹の仲が。

 頑張れ刃! そんなところで寝てる場合じゃないぞ!

 次話投稿の予定でしたが今年中は無理でした。それではよいお年を。
 
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