スペルカードルール。それはスペルカードを使った新しい決闘方法であり、幻想郷で起こる揉め事の解決手段でもある。
そのルールを大雑把に言うと。
一、お互いが幻想郷の管理者か、委託を受けた者が配布する正規のスペルカードを持っていること。
二、揉め事などを解決する場合、決闘前にお互い報酬を決めておく。ただし、報酬が納得いかないもの、あるいは到底受け入れられないもの(例えば命や自由)は拒否して良い。
三、決闘設定はスペルカードの仕様通り、スペルと決闘時間は少ない方、戦闘方式は空戦を選んだ方が優先される。
四、相手に攻撃を当てる場合、一回の接触時間は十秒まで。
五、攻撃は非殺傷化されたものでなければならない。また、環境などを変化させて相手を間接的に戦闘不能に追い込んではならない。ただし、相手に影響がないのであれば使用しても良い。
六、ライフポイントが零になった者が敗者である。ほぼ同時に零になった場合はスペルカードが勝者として認定しなかった者が敗者で、完全に同時だった場合は再戦となる。
七、勝者は事前に取り決めた報酬以外は受け取ってはならない。また、勝手に変更してはならない。
八、敗者は事前に取り決めた報酬を渡さなくてはいけない。また、勝手に変更してはならない。
と言うことになり、補足として。
二においてお互いが引けない場合はなるべく妥協案を探すようにする。
空戦は弾幕戦、陸戦は格闘戦をなるべくするようにする。
四はなるべく十秒以内を意識し、可能なら第三者に見てもらうようにする。
と言うのがある。
時はレミリアの決闘申し込みの翌日の昼前、場所は地下の図書館に作られた広場。
スペルカードルールをパチュリーから説明されて、刃とレミリアは所定の位置へと進む。
二人の服装はレミリアが変わらないのに対し、刃はすっかり定着したメイド服ではなく、体と同じく霊力で構成された黒と青の和服を着て、本体である打刀を背負っていた。
理由はこちらの方がまだ戦いやすいから。
その二人、特に刃の方をフランは両手を胸の前で握りしめて心配そうに見つめていた。
「刃……」
彼女の名前を呟きながら昨日のことを思い出す。
相談が無いどころか、殆ど悩むこともなくレミリアのお願いを聞き入れた刃。当然ながらフランは理由を聞くため迫った。
これに刃は困った表情でこう答える。
「正直、俺にはお嬢様がどうして今勝負を申し込んできたのかは分からない。……だけど、きっと大事な意味があるからしたんだろう。だから受けることにしたんだ」
これに当然ながらフランは反論する。
「でも、もしかしたらもっと痛めつけたいだけかもしないじゃない!」
「だったら別の時に断れない状況で命令してるよ。少なくともあの時の断りやすい状況でさらにお願いと言う形で頼んだりなんかしない。だからきっと目的はそれじゃないよ。それに……」
刃はフランの右肩に左手を乗せて微笑みながら言う。
「お嬢様はフランのお姉ちゃんだからな。きっと色々あるんだよ」
「それどう言う事!?」
含みのある言葉にフランは軽く怒り、軽いじゃれ合いの末、決闘に支障が出ない程度に刃の血を吸うことで話は終わった。
「大丈夫かな?」
意識を図書館の広場で互いに決闘設定を行う刃とレミリアに戻し、フランは不安を口にするがこれに答える者は居ない。
パチュリーたちも不安を見え隠れさせながら二人をジッと見守っていた。
『両者の決闘準備が整いました。決闘結界を展開します』
この前と同じように刃とレミリアの間に軽い衝撃波が発生。長方形の透明な結界が二人を包み込む。
『決闘結界展開終了。レミリア・スカーレット、ライフ三百、古刀・刃、ライフ三百。画面移動します』
同じく画面が二人の左手の甲に移動。
『決闘開始のカウントダウンを開始します。参、弐、壱、決闘開始!』
カウントダウンの終了と共に法螺貝の音が鳴り決闘が開始された。
「さあ、刃。準備は良いわね」
特に構えをとらないレミリアに対し刃は。
「もちろん、準備OKです」
刀を抜き、剣道でもよく見られる中段に構えて答える。
「そう、それじゃあまず、これはどうかしら?」
ゆっくりとした動作で右手の人差し指で刃を指差すレミリア、その背後から魔力が溢れて形となっていく。
これを見た刃も背後から妖力を溢れさせて形とする。
レミリアの魔力はナイフに、刃の妖力は光球となって数を増やしていき。
「ファイア」
いち早く目標数に達したレミリアのナイフが刃に向けて放たれる。
「ちっ!」
刃は舌打ちして現在出来ているだけの光球を迎撃のために放つ。
両者の間、発射の差もあって刃よりの位置でナイフと光球は激突する。
迎撃のために放たれた光球は当たれば弾け、当たったナイフは目標とは別の方向に飛んで行き、空中の決闘結界か結界の張られた床に当たって落ちた後に魔力となって霧散した。
そんなことをレミリアは確認する余裕があったが、刃にはなかった。
元々数で劣っていたため、少なくない数のナイフが殺到。
刃は本体である刀に妖力を纏ってこれを撃ち落としていくが光球とは違い、手に持った武器による防御なので撃ち落とすたびに最低ダメージの五が入る。
「ぐっ!」
それでも裁ききれずに掠るどころか一本が左太ももに命中。ダメージは通常攻撃最大値の十。これ以外にも掠っていたので刃が負った合計ダメージは五十七、残りライフは二百四十三。
「ショットはこの程度……か」
命中弾が出るとレミリアは弾幕を止め、期待外れと言わんばかりに評価する。
これに同じく弾幕を止めた刃は歯を食いしばるが、撃ち負けている以上何も言わなかった。
「やっぱり剣士には接近戦よね!」
そう言って期待の篭った瞳と声でレミリアは腰を下ろして右足を前に両手を後ろに下げ、この体勢に移行すると同時に両手の爪に魔力が集まり、形状が人間のそれから肉食獣を訪仏させるものへと変化。右足で床を力いっぱい踏み抜き、吸血鬼特有の怪力で弾丸を思わせるスピードで刃に向けて跳躍。一気に間合いを詰める。
この吸血鬼の速度に刃は反応、対応する形で上段から斬りかかる。
「甘い!」
レミリアは体を左に回転させて回避、そのまま流れるように右手の爪で斬り掛かるが、刃はそれを読んでいたので衝撃と音共に刀に弾かれる。しかし、先ほどと同じように五のダメージが入り、ライフが二百三十八になってしまう。
さらに。
(重い!)
回避からの攻撃だと言うのにその一撃は重く、相手が普通の人間ならこれだけで殺せてしまいそうな威力があった。
そしてその一撃で終わるわけもなく瞬時にレミリアは跳躍、頭上から鉄をも切り裂く一撃を見舞うが、刃はこれにも対応して防御。やはりかなりの威力があった。
それからも刃を中心としてドーム状にレミリアは高速移動、四方八方から爪による連撃を繰り出す。
対して刃は防戦一方で決闘が始まってから今も攻撃ができず、防御と回避が間に合わなくて何発も掠っている。
もちろん、刃としてはレミリアの攻撃を避けたいし、出来ることなら自分が攻撃したいが。
(体が付いてこない!)
レミリアの攻撃に反応は出来ているし、予測も出来ている。反撃の機会だって何度も見つけていた。だが、悲しいまでにそれをするための動作が出来ない。
「ほらほら、どうしたの! 私はまだまだ余裕よ。だから」
「!?」
レミリアの左手の爪による攻撃で刃の刀が上に弾かれ、がら空きになった刃の腹部にレミリアの右足の蹴りが。
「こんなことだって出来る!」
思いっきり叩き込まれる。
「がはっ!」
かつてフランに思いっきり殴られたように刃は吹き飛び、決闘結界の壁に激突して、床に倒れこんだ。
「刃!」
刃が壁に叩き付けられたため、思わずフランは声を上げてしまう。が、すぐに刃が起き上がったので安堵する。
そしてフランは両者のライフポイントを見た。
レミリアの残りライフ三百、刃の残りライフ百十七。
数字だけでもどちらが勝っているのかが分かり、様子を見ればレミリアは汗一つ書かず、刃は汗をかいて息が荒くなっていた。
「そんな……」
(どうしてこんなに……)
「差が出るのかって顔をしているわね」
表情を暗くしているフランにパチュリーが話しかけてきた。
その表情はこの結果が当然と言っており、さらに周りを見てみれば咲夜、小悪魔、美鈴も特に疑問に思っている様子はなかった。
「パチュリー、どうしてなの? 刃は新人研修で強くなったんだよね」
「ええ強くなったわ。でも、それに関しては美鈴のほうが詳しいでしょ」
フランの質問をパチュリーは肯定し、遠まわしに新人研修で戦闘を担当した美鈴に説明を要求する。
「はい、刃ちゃんの頭の中には機能のおかげでかつての使い手たちの戦闘技術と知識、それに戦いの記憶が詰まっています。これに加えて打刀の付喪神らしく才能も有って普通よりも早い成長速度で腕を上げています。……が」
美鈴は嬉しそうに説明しだしたが、一転して残念そうに言う。
「今のところの実力は低級妖怪に勝てる、中級妖怪に足を踏み入れたところなんです」
これにフランが慌てて反論する。
「でも、戦闘技術と知識、それに戦いの記憶があるんだよね? だったら……」
「やりようはないわ」
フランの言おうとしたことをパチュリーはあっさり否定した。
「なっ、なんで?」
「簡単よ。刃にはそれをするだけの余裕が無いの」
フランの問いにパチュリーは説明を始める。
「貴女も覚えがあると思うけど、魔術を覚えたばかりの頃は教えられたことをするだけで精一杯だったでしょ? 特に高度な魔術は自由自在に使えるようになるまで時間が掛かったわよね」
「うん」
パチュリーの質問にフランは頷く。
「戦闘も同じ、自由自在に動くにはそれなりの鍛錬と実戦をこなす必要があるの。確かに刃は広義的な戦闘経験ならおそらくこの紅魔館一でしょう。でも、それはただの刀としての戦闘経験。刃自身が戦った戦闘経験は研修中の一回だけ。鍛錬期間は戦闘の研修と自主練を合わせても二ヵ月未満。
対してレミィには数百年に及ぶ戦闘経験と鍛錬期間がある。
多分、今の刃は頭では分かっているけど、何も出来ていないんじゃないかしら」
刃を見て言うパチュリーの予測は大当たりしていた。
「これが空戦の弾幕の撃ち合いならもっとやれたかもしれないわね。いえ、先ほどの弾幕の撃ち合いでもその差は出ていたわね。
フラン。霊力、妖力、魔力を大雑把に比較するとどうだったかしら?」
「霊力は防御系が強くて攻撃系が弱い、妖力はこの逆で攻撃系が強くて防御系が弱い、魔力は攻撃系も防御系も弱いけど、その分霊力と妖力よりも扱いやすいんでしょ」
「ええ、正解よ」
生徒を褒めるようにパチュリーはフランを褒め、説明を続ける。
「先ほどの弾幕の撃ち合い、両者の一発に掛ける妖力と魔力の量はほぼ同じだった。なら妖力を使った刃の光球が魔力を使ったレミィのナイフに勝たなくてはいけない。でも結果は刃の光球は当たっただけで弾け、レミィのナイフは当たっても消えなかった。それはつまり……」
「魔力と妖力の差が意味をなさない程に、お姉様の技量が刃の技量を上回っているってこと?」
答えを促すように言ったパチュリーにフランはそれを答える。
「当たり」
「じゃあ、どの道刃は勝てないじゃない! やっぱりお姉様は刃を痛めつけたいだけなんじゃないの!?」
「違う!」
刃が八方塞がりなことにフランは思わず大声でレミリアを悪く言うが、パチュリーはそれを上回る声で否定した。
「ごほっ、ごほっ。……ごめんなさい、怒鳴って。でも思い出して。レミィが刃に勝負を申し込んだ時に言ったことを」
パチュリーはせき込みながら謝り、フランにレミリアが言ったことを思い出させる。
「……新人研修を終えた刃の実力が知りたい」
フランの言葉にパチュリーは頷く。
「そう。この勝負は勝ち負けが目的じゃない。だから刃がレミィに勝つ必要はないのよ」
そこまで言ってパチュリーは視線をレミリアと刃に向ける。
「さあ、二人が驚いてこっちを見ているわ。私たちは静かに見守りましょ」
「うん。分かった」
パチュリーの言葉に頷いてフランも視線を戻すが、その心には疑念があった。
(勝ち負けが重要じゃあない。刃の実力を見るだけ。……なら)
フランは少しだけ周りを見る。
(なら、どうして皆不安そうなの?)
相変わらず場の空気は不安に満ちていた。
(そうね。その通りよ)
外野から聞こえた親友と妹の大声に思わず振り向いたレミリアは、こちらを見るフラン以外の四人の不安に答えるように頷いた。
刃は強い。手加減しているとは言え、歴戦の吸血鬼の動きに対応して見せた。
これが刃でなければレミリアは相手を認めただろう。
その刃は息が荒くなっているが、既に立ち上がり刀を構え直して呼吸を整えていた。
これならライフが零になるまで戦えるだろう。
(でも、このままだと……)
先ほどと同じ展開になりかねない。
魔術か体術だけでレミリアが優位に立ち、とてもそれらを組み合わせ、さらに知略を駆使した全力の戦いなど出来ない。
分かっている。それを刃がするにはあまりにも時間と経験が足りないことなど。
(やっぱり性急だったかしら?)
いくら病的なまでに刃を嫌っているとは言え、昨日の今日でまた痛めつけるほどレミリアは短気ではない。
少なくとも三ヵ月は我慢できたのだから、あと二ヵ月半は待つことも……。
(駄目ね)
そもそもスペルカード実験での出来事は痛めつけるチャンスが来たから。
待っている間にそのチャンスがまた来た場合何もしない自信はない。
(何か。何かないのかしら?)
単純な実力ではなく、思わずレミリア自身が刃を欲しいと思うよう何か。
「!?」
その願いが通じたのか、レミリアの運命を操る程度の能力が発動し、未来で自分が言う言葉だけが頭に浮かぶ。
(……これって!)
その言葉は間違っても今言って良いことではなく、下手をすれば刃だけでなくフランとの関係にもヒビが入る。いや、既にヒビは入っているので溝が出来てしまう。
(だけど……)
正直これくらいのことは言ってやりたかったし、今まで無意識に自分を助けてきた能力をレミリアは信じることにした。
「刃」
「何でしょうか?」
レミリアの呼びかけに刃は警戒しながら答える。
「貴女はその程度なの?」
「えっ?」
レミリアの突然の言葉に刃は驚く。
(そりゃそうでしょうね)
自分だっていきなりこんなこと言われたら驚く。
(だけどやるしかない)
より良い未来になると信じてレミリアは鬱憤を吐き続ける。
「美鈴から聞いたわよ。貴女、妖怪が集団になってでも奪いたいぐらいの刀なんでしょう?」
「……それは!?」
過去の傷に触れるレミリアの言葉に刃の表情が歪む。
「使い手に戦闘の知識を与えて強くしたけど、その殆どが不幸な最後を迎えた」
「…………」
レミリアの言葉にどんどん刃は顔を歪ませていく。
「私たちで言うところの魔剣。それがこの程度のはずないでしょう。それともフランに語って聞かせたことは嘘だったの?」
「違います! あれは本当にあったことです!」
レミリアのあんまりな言葉に刃は大声を上げて否定する。
「なら、貴女の本当の姿を見せてみなさい。多くの者を魅了し、多くの使い手を不幸にした、無名の『霊力の篭った刀』の力を!」
「!?」
レミリアの言葉に刃は自身の本体である刀に目を移す。
(何かに気付いた?)
それが何であるかレミリアには分からない。しかし、それに掛けるしかなかった。
「お嬢様。少しお待ち頂いてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。是非とも新たな力を見せて頂戴」
刃の要請をレミリアは快諾するが、傍から聞けばそれは挑発だった。
(さあ、どうなるかしら?)
期待の篭った視線を送るレミリアの前で、刃は刀を構え直して目を閉じ、そして変化は起こった。
「何よ、これ?」
刃に起こった変化を見て、レミリアは驚愕する。
恐らく結界の外に居る五人も同じだろう。
「「「おおおおおおおおおおお!」」」
何十人、いや、何百かもしれない人々の慟哭。
紅魔館に何者かの集団が侵入した?
違う、全ては突如として刃から溢れ出した妖力から聞こえる声だった。
紅い、とにかく紅く、黒と言ってもいいその妖力は目を瞑って刀を構える刃から溢れ、何人もの人の顔をして泣いていた。
怒り、悲しみ、憎しみ、妬み。そんな負の感情が篭った声で。
さらに紅い妖力が放つのは声だけではなかった。
(おいしそう)
しばらくの間様子を見ていたレミリアは刃から溢れる妖力にそんな感想を抱き、気付けば涎を口から垂らしていた。
「はっ!」
レミリアは慌てて腕で口を拭き、改めて状況を確認する。
(これは血の匂い?)
無意識にレミリアが刃の妖力をおいしそうと思った原因、それは辺りに漂う濃厚な血の匂いだった。
当然発生源は刃の妖力。
(と言うことは)
レミリアは結界の外に居るフランを見る。
「はぁ、やっぱりね」
そこには恍惚とした表情で涎を垂らす妹の姿があった。
だが、それをレミリアは責められない。
何せ刃の妖力が放つ血の匂いはそれだけ吸血鬼にとって魅力的なのだ。
普通の人間なら思わずむせてしまいそうなほどに凝縮された匂いに、同じく目を逸らし、耳を塞ぎたくなるような圧倒的な負の感情。
恐らく吸血鬼でなくても人間を食べる妖怪でも涎を垂らしただろう。
(そう言えば刃の血は凄く美味しいってフランが言っていたわね)
刃の首筋に牙を立ててその血を吸いたい。
そんな衝動が湧くが、別の部分が今の刃に近づくのは危険だと告げる。
(今は我慢よ)
湧き上がる食欲を抑え、レミリアは改めて刃の妖力を見る。
浮かび上がる顔の中には人間だけでなく、人外と思われる者も居り、例外なく全員が泣いていた。
一見すれば怨霊の集合体が現れたように見えるが、刃の妖力以外に感じるものはない。
(と言うことは……)
レミリアが答えを出そうとした時、再び刃に変化が現れる。
妖力の放出が収まり、霊力で構成された肉体と服装に変化が現れた。
霊力が妖力へと変わり、これに合わせるように黒と青の和服が白と赤に、黒髪が白髪へ、刀も黒い柄が白に、蒼い刀身が紅く染まる。
最後に閉じられていた瞳がゆっくりと開き、その瞳は吸血鬼を思わせるような紅へと変わっていた。
(ああ、良い。凄く良いわ)
思わずレミリアから笑みがこぼれる。
今の刃の配色はレミリアの好みに合致しており、先ほどの妖力の放出と相まって彼女への嫌悪感は殆ど一掃された。
(美鈴、貴女の案は成功したわ)
刃はレミリアにとって本当の意味で絶対に手放せない存在へと昇華した。どちらかと言うと極上の食料にだが、少なくとももう敵ではない。
「お嬢様。お待たせしました」
そんな内心歓喜を上げるレミリアに刃はそう言って刀を脇に構え直す。