君が魔王なら、わし神様   作:フリードg

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2話

 

 要求してみて今更何だが、失敗した。シルヴィが固まってるのが判るからだ。

 いきなり耳を所望する神など何処にいようか、と少し反省する。でも仕方がないのである。

 

「(でも、あれは反則。ビバ二次! ビバ○○耳! ロリ体系も良い! 特に良い! つまりシルヴィ満点っ!)」

 

 耳と言われたからなのか、今もひょこひょこと耳が動いてるのも愛らしい。

 そんなもん触ってみたいと思うのが男道だ。……彼の。

 

「………うさみみ、って この耳のことかい?」

 

 シルヴィは呆気にとられてたけれど、神様の御前、と言う事で頑張ってた。話も神様言語でもあるのかな、と何度か頭の中で自問自答を繰り返してたけど、結論は1つしか出てこなかった。

 

 つまり、耳。

 

 亜人の耳は様々な形があるから興味がある人もいる……とは聞くけれど、まさか、と。

 

 そしてシルヴィが色々考えてるのは彼にもわかる。一発目を外すのはやっぱりだめかな、と本能を抑えてもう一度やり直そう! と思った。

 

「神様でも、そーいうのを気にしたりするんだね。ちょっとビックリしたよ」

「………ふっふっふ。実はですね。神には崇高な目的があるのだがね」

「無理してキャラ作らなくても良ーよ? ボクと同じく自然体で。それが ボクからのお願いねー。それに今更変えても手遅れだよ」

 

 

 ばれてーら。

 

 口調変えて言い繕っても多分無理。自分の性格上、それなりに知り合った相手を騙し続けるのも無理なのでさっさと手を挙げた。

 

「んっんー ほら、判らないと思うけど、上でも見てたけどお触り出来ないんだー。画面上を眺めてるのも最高だったんだけど、いざ目の前に来たら、こうさ、ムズムズ~と」

「ふむふむ。正直で宜しい! (画面越し?)まぁ、その……ボクの耳で良かったら……。う、うん。良いよ。神様からだもんね。光栄極まれり、ってね」

「ふぉっふぉっふぉ~ 神は追加を所望するかもじゃぞ?」

「うわっ、口調がまた変わった!? って、追加ってなに!?」

「そりゃー、うさ耳とくれば、さらにその先の先の~♪」

「う、ぅぅ………さ、先って……」

 

 シルヴィは顔を真っ赤にさせてる。

 神様である事は殆ど確信してて、その恩恵に預かれるというのなら安い。

 でも、要求の中身が本当想定外。供物とか 信仰心、とかそういう真面目系を考えていたんだけれど。

 

「(容姿も人族と殆ど変わらないし……、こんな状況じゃなかったら、あの不思議な光を見せられなかったら、ボクも信じられないし。……う、俗世に染まっちゃった神様なのかな? ついか、ついか…… やっぱり、さいごには…………ぅぅ)」

 

 この身をささげて~ と言った伝承も大小ある。自分をささげる事で良いのなら……、とシルヴィは覚悟を決めたその時だ。

 

「あっはっはー、可愛いなぁ~、もうっ」

「ふあっ!?」

 

 いつの間にか背後に回られてた。頭、撫でられてた。こう見えて結構な歳なのに。

 ついでに耳も何度か撫でられてくすぐったい。

 

「よし、オッケー」

「ふぅ、ふぅ、って、え?」

「観光の続きしたいし、シルヴィに世話になっちゃって良いかな? その方が楽そーだ。『わしゃ神じゃー』なんて披露してたら、色々と騒がれちゃうだろうし」

「……今ので良いの? 続きとか追加は?」

「うん? ヤっちゃった方が良い? 神様プレイOK?」

「いやいやいやいやいや! 今のでOKなら大歓迎だよ! 街を拠点にしてくれるなら、住むとことか提供するから!」

「うむ。くるしゅーない」

 

 話をしてて、何だか面白い。時折 ウインクしたりしてて お茶目な一面のあるこの人は神様。……でも、神様っぽくない。楽しそうに話す彼に、先ほどまでとは違った意味で、夢中になってしまうかもしれない。

 

「そうだそうだ。確かシルヴィってギルマスって言ってたよな?」

「ん? そうだよ。街の冒険者協会のギルドマスター」

「よっしゃ。と言う事は冒険者登録っていうのも出来るんだろう?」

「そりゃ、うちに来てくれたらね……って、神様が来てくれるなんて、ファルトラのギルドからすれば夢みたいな話だけど、冒険者になっちゃったら、形式上ではボクが命令する事になっちゃうんだよ? ……前例を作るのも周りに示しが付かないから」

 

 シルヴィはやや表情を険しくさせる。

 確かに、神! に命令するなど中々にハードルが高いのだろう。ただ口で言ってるヤツだったら、痛い奴で済むのだけれど。

 彼は、ただ神と言うチート性能、装備を身にまとっただけの人間だから、気持ちがある意味よく判る。

 

「ボクも気が引けるし、……んん、ボクに代わってギルマスを継いでくれる、っていうのなら」

「それヤダ。人の上に立つ~って職業向いてない。だから、上から来たんだし?」

「あ、あはは。確かにそんな感じだね。……でも、本当に良いのかい?」

「良いよー。働かざる者食うべからず、って感じ?」

「……確か下界に観光って聞いたんだけど」

「それも有る! ほら、下の事は色々経験したいじゃん?」

「好奇心旺盛な神様もいるんだね。うん。神様が良いのなら、大歓迎! とっても嬉しいよ。そこでなんだけど、一応登録の際にレベルをはからなきゃなんだけど、神様ってレベルは如何ほどなのかな?」

 

 神様レベル、と聞かれて彼は『確かに……』と思った。GMキャラだからレベル設定は無い。この世界ではレベルは確かにギルド以外ででも確認できる場所は多々ある……と設定はあるが、GMキャラでそんなことしてないので、判断が付かなかった。

 

「うぅむ~。下界でのレベル、かぁ……。魔王クラス?」

「いや、ボクに聞かれても……。魔王のレベルなんて計った事ないし、復活しちゃえば第大惨事だし」

「それもそうか。とりあえず、やってみようか。オレも気になるし。っとと、その前に」

 

 一応 光のカーテン。《レイ・シャワー》は発動出来たのは確認済み。……が、ただの演出系の魔術。宴会芸も良い所だ。ギルドに所属して、冒険者になったら 当然討伐系の依頼もあるだろう。実戦経験皆無状態で あたふたするのは頂けない。

 

「降りてきて間もないし、こっちと向こうじゃ力の勝手も違うかもだしさ。ちょっと確認してくる」

 

 シルヴィに手を挙げて、天黄の塔を降りようとした。勿論、シルヴィも付いてくる。

 

「ボクも気になるかな。神様パワー♪」

「OKOK。披露してしんぜよー」

 

 あはは、と笑いながら塔を降りていった。

 

 その道中でシルヴィは笑いながら聞いてきた。

 

「君、凄く優しいね。ボク相手にこんなに気さくに話してくれるし、話すのも許してくれるし。最初は力になれないかも~って言ってたのに、早速色々としてくれてるし。ボクのギルドにまで入ってくれるなんて、思ってもなかったよ」

「ん? そりゃ、うさ耳の口実。条件付けするための」

「うーわ。感動したのに損した気分。神様はそんなに耳フェチなのかい?」

「はっはっはー、可愛らしいもの(二次元)は全般大体好きだー。画面越しじゃ触れないし、モふれないし……」

「あははは。……って、さっきも気になってたけど、その『画面越し』ってなに?」

 

 画面について、向こうの世界の事なので いくら説明しても、いや、どう説明すれば理解できるのか判らないから、その辺りははぐらかした。

 

「(んー、結構馴染んできた気もするけど、マジここってクロスレヴェリの世界なのかなぁ。……帰れるのか?)」

 

 ふと、思い返すのは現実の事。

 きっと、遅くなればなるほど仕事は溜まってるだろう。解雇されるかもしれない。と言うより、どういった具合にいなくなっているのかもわからない。

 

 更に深刻なのが………。

 

「(オレのランス10がっっ!! まだ、バズワルド見てないのに~……)」

 

 今ハマってるゲームの事だったりする。

 ここにパソコンやゲームがあるとは思えないから、諦めるしかないのだろうか。いや、

 

「何で百面相してるのかな? なんか面白いよ」

「そりゃどーもね。……ま、いっか。こっちの方が良いかも♪」

「へ? ひゃあっ!!」

 

 耳を触ってみた。やっぱり柔らかくて暖かくて心地よい。

 

「い、いきなりはダメだよ。ビックリするじゃんっ!」

「ほっほっほ。よきにはからえ~」

「むむー」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで外に出た。

 草原が広がっていて大小さまざまな岩がゴロゴロと転がっている。凄まじい程のクオリティ。これを現実で仕上げようものなら、どれほどの金と時間がかかるのか、判らない。

 

「やっぱり下界(ここ)は珍しいかい?」

 

 興味津々な所を見られて、シルヴィはそう思ったのだろう。口実、とはいいつつも観光だというのが全部ウソだとは思えないから。

 

「ん? ま、そんなとこ。後は物色~かな。この辺はモンスターとか魔獣みたいなのいないんだね」

「天黄の塔の傍は、ね。神聖な塔で、神代の時代からあるらしいから、魔族もここには手を出せないんだよー。って、ボクより詳しいかな。ご本人がいるんだし」

「はははっ、そりゃそうか〈細かな設定は判らんよ……〉」

 

 軽く笑った所で、少々大き目の岩に注目した。

 

「そういえば、神様の戦闘はどんなのなんだい? イメージで言えば魔術だけど。ほら、神魔術、みたいな?」

「ん? 肉弾戦もやる気になればこの通りだ」

 

 しゅっしゅ! とシャドーをしてみた。

 因みに、学生の頃、IT系にハマる前にボクシング部だったー、と言う経歴がある(どうでも良いが)。ここで通じる様な気はしないが、装備に合わせての攻撃なら、設定上はかなりの強攻撃になるだろうが。

 

「あはは……、なにか殴る神様っていうのもまたイメージが崩れるね……」

「そりゃ、殴る魔術師とかもいるし、神様にだっていても不思議じゃないだろ?」

「う、う~ん。複数神様がいるっていうのもねー。最初のイメージが程遠かったからねー。唯一無二って感じだったから」

「神って言っても神()だからなー。人族たちと比べたらやっぱ上位になると思うけど、住む世界が違うだけ。色々いるんだって。はい、ここ覚えといてね。テスト出るよ」

「ぷっ、テストって何だい? 合格したらどうなるの?」

「神様と一夜。一晩中!」

「ははは。言うと思った」

 

 暫く談笑した後、とりあえず 魔術を確かめてみる事にした。

 格闘術も良かったが、流石にゲームの世界でモンスターと接近戦はヤバい。いくらなんでも、平和な日本にいたのに、でっかい牙やら角やら、刃やらを持つ連中に飛び込んでいくのはハードルが高過ぎる。死ぬような事は恐らくないと思うが……、でも接近戦はなれてから。

 

 

「ん、シルヴィ、ちょっと離れてて」

「判った」

 

 シルヴィもさっきまで陽気な様子が消えたから、色々と悟ったんだろう。普通に下がってくれた。

 

 杖を構えて岩に向けてる姿を見れば、何か出す! と思うだろうけれど。

 

 とりあえず、先ほどの光の魔術の時の様にイメージ。GMキャラのみが使える差別化させた魔術。性能は最高レベルの魔法と大体変わらないが演出とエフェクトが異なる。

 でも、GMキャラの性能でもし全力発動! とかになったら、ヤバいかもだ。と言う訳で、威力だけは抑えめで抑えめで~と念じながら発動。

 

「エクスプロージョン・ノヴァ」

 

 杖から紋章が浮き上がると、眼前の岩に向かってサッカーボール程の大きさの火の玉が飛び出して、炎と共に大きな岩を爆砕、粉々にした。

 火系の魔術。

 レベル50で使用可能の『エクスプロージョン』と、使用者の力量が同じなのであれば与えるダメージは大体同じ。ただし、見え方がやや違うのは神様仕様。

 

「……んん(使えたのは良かったけど、夜やるのは不味かったかな? でもこの塔の周囲は大丈夫そうだしいけるかな?)」

 

 ちらっとシルヴィを見たら、やっぱり驚いてたのだろう。ぽかん、と口を開けてた。

 

「元素魔術。凄い威力。ここまでのは見た事ないよ……。でも、エクスプロージョンは、知ってる。でも 最後のノヴァ? は聞いたことのない……」

「そりゃ、神様の魔術だし? 聞いたことないの当然」

「うひゃい!!」

 

 考え込んでるシルヴィの目の前にひょこっと顔を出す。それなりに高威力だったようで、のけ反っていた。

 

「ビックリするじゃないか! もう」

「はは。ぼーっとしてるのがわるーい(とりあえず、威力は高い、って事は間違いないな、ギルマスが言ってるんだし。少し安心……。神名乗っといて 威力雑魚って言われたら マジへこむ)」

「あんな魔術見せられちゃったから びっくりしてたんだよ」

 

 ぐるり、と首を回した後、もう一度別の魔術を試す事にした。

 

「次のは結構うるさいかもだから、耳塞いでた方が良いよー。ほらほら、こんな感じで、ぎゅっ、っと!」

「ひゃんっ! さ、触らなくて良いから、自分でやるから! っていうかさ、手がふさがっちゃったら出来ないでしょ!?」

 

 お約束を1つした所で、魔術披露タイム。

 

 最初の岩は 文字通り粉々になってしまったので、もう1つ大き目の岩を選んで念じる。神様の魔法と言えば、やっぱり雷だ。

 

「ヴォルライトニング・メテオ」

 

GMキャラ仕様にはなっているが、一般的の魔術で言えば レベル99で使用可能の『ライトニング・メテオ』と同質のもの。

 

 7本の雷撃が降り注ぎ、最後の極太の8本目でとどめを刺す 風と光属性の魔術。7本の雷撃でも十分なのに、最後の1本は更にやかましい。ちょっと難しく説明すると、光熱で空気が音速で膨張する為、耳が痛いのだ。

 

「良し、こんなものかな。大体判った。んでも 加減は必要か……。結構抑え気味だったのに、これだから」

 

 視線の先にいるシルヴィは頑張って耳を抑えてたが、それでも キーンっ! と頭に響いてる様子だ。今はちょっと聞こえにくくなってる様なので暫く待った。

 

「大丈夫か?」

「うーん、まだ頭に響いてる……」

「だから耳塞いで~って言ったのになー」

「想定を超えちゃったからだよ。耳塞いでも防ぎきれなくて……。最初の爆発の魔術よりも凄かったし」

 

 レベルで言えば40以上も離れてるから当然の仕様と言えばそうだけど、この世界の魔術はゲームのそれとはくらべものにならないくらい強そうだと感じた。

 

 画面越しのCGより実際に目の前で起こる災害みたいな現象の方がヤバいと思うのは当たり前かもしれないが。

 

「んじゃ、確かめる事は終わったし行こうか。シルヴィこっちこっち」

「んんー。何だい? 街はあっちだよ?」

「歩いて帰るのもなんだし、送ってあげる。多分、移動系の魔術も出来る、と思う。こっちでも」

 

 次の実験は移動系統の魔術。帰還魔術とも言う。

 

 パーティメンバー全員で最後に訪れた所に戻る基礎魔術ではなく、一度でも訪れた場所であれば指定して飛ぶ事が出来る便利な魔術。因みに一般プレイヤーは《転移》。ポータルポイントがある場所にしか飛ぶ事が出来ない。これもGMの特権だ。ずるいかもだが。神様なのでそれ位はありだろう。

 

「行った事のある場所に飛ぶ魔術。オレは行った事ないから、シルヴィ。しっかり街をイメージして」

「ん。オッケーだよ。って、そんなのまで使えるんだ……。それって儀式系の魔術で王都の魔術師協会でくらいしか聞かないんだけど……」

「いやいや、オレ カミサマよ? 最初から言ってるけど、知ってる常識の枠に当てはめてちゃ疲れるから。失敗したときに思いっきり笑う用意だけしてりゃOKだ」

「………。ぷっ、あーっはっはっは! 失敗なんてしそうにないから今のうちに笑っとくよ! んじゃあ 街までよろしくね。あ、そーだ。ちょっとまって」

 

 シルヴィは彼の手を握ろうとしたが、何かを思い出したようで、パっと手を挙げた。

 

「名前、あるならさ、教えて欲しいかな。神様~でも良いと思うけど、必要以上に騒がれるかもだし」

「ん。それもそっか。最初にオレも言ったよなーそれ(名前、名前……このキャラに名つけてたっけ?)」

 

 GMキャラで通称 神様キャラ。

 固有名などは確か無かった筈。そんなに交流する様な事は無いから別に不都合は無かったのだが、こうなってしまったら、やっぱり名が無いと不便極まりない。

 神様~と名乗って、痛い風にみられるのも堪える。(精神的に)

 

「ん。じゃあ、アレかな。《ラグナ》で」

「判ったよ。じゃーラグナ君で! ……でも、名前答えるのに、アレかな、ってのは変じゃない?」

「(鋭い)だって、向こうじゃ使わないし。飾りみたいなもんなんだ」

「そうですか。じゃあ宜しくお願いね。ラグナ君」

「おっけ! んじゃ 帰る場所、イメージしてー」

 

 彼事ラグナはこの世界で行った事がある場所などある訳が無い。故に普通は使えないと思えるが、その街で暮らしていて、イメージを強く持てる者が一緒にいれば、密着でもしていれば、可能であると考えていた。

 一応保険で、失敗したら笑って~と言ってるので 普通に失敗しても歩いて帰ろう、とプレッシャーも特にない。

 

 シルヴィとはもう打ち解けているから、かもしれない。

 

 

 そして、魔術使用開始。

 

 

 

 

「変なトコ触らないの」

「なーんのコトですかな? はい、始めるぞー、『ワープ』」

 

 

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