君が魔王なら、わし神様   作:フリードg

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3話

 とりあえず、ワープは無事に成功した。

 

 ぶっつけ本番だったから 失敗しないか、とそれなりに緊張したが、それは杞憂に終わった。畑違いの攻撃系の魔術のとは言え2種の魔術が完璧に成功したし、難易度で言えばワープの方が簡単な設定だった(多分?)から、当然と言えば当然かもしれないが。

 

 

 でも、ウルグ橋砦を飛び越えて、ファルトラの街に直接入ったのがちょっと危なかったかもしれない。イメージしたのがシルヴィだったから仕方ないにしても。

 

 

 ウルグ橋砦は魔族の侵攻を阻止する重要な防衛拠点。

 

 勿論、そこには警備兵も配置してて、そのNPCはゲーム上で犯罪を犯した者を問答無用で成敗する様な仕様になっていた。つまり、魔術でいわば不法侵入した様なモノだから、それが犯罪コードの様なものに引っかかり、断罪対象に認知されれば大変。

 

 ゲーム上であり、ここでどれだけ反映されているかは判らないが、NPCは、魔術侵攻イベントの様な展開以外では破壊不能オブジェクト。つまり、無敵設定になっていたから、此処でも相応な厄介さがあってもおかしくない、と思ってたから。

 

 だから、安心感もそれなりに大きい。。

 

「おー、さっすが、ギルマス」

「ボクはこの街じゃ顔が広いからねー。ま、神様が検問で引っかかって~なんて展開も笑えたかもだけどさ」

「そりゃ勘弁して欲しいな。オレ捕まえようとして 神様(オレ)怒って『不敬な輩には天罰じゃー』ってしなきゃならないかもだし」

「あ、ははは……。それは冗談に聞こえないねぇ」

 

 と言う訳で、心配事も無くなって一安心。色々と談笑しながら 夜の街中へ。

 

 夜でもメイン通りにはかなり人通りがあった。

 夜型の依頼とかも沢山あるから、別に不思議じゃないんだが、やはり感動する。

 

「(おー、人間(ヒューマン)以外にも沢山いる! エルフに豹人族、ドワーフ、混魔族(ディ―マン)。これ絶対容量オーバーだって。絶対ラグるって この数。どんだけインしてんの皆)」

 

 やっぱりゲームの事が頭に浮かぶから、どうしても そっち方面に考えてしまう。あまり容量を食う様な数を設置してしまえば、フリーズしたり、処理速度が遅くなったりするから、その辺のバランスも調整した事があるから。

 

「多いなぁ、夜でもここ」

「ん。見た範囲だけど、大体ボクの協会(ギルド)の冒険者たちだけだね。こんなもんじゃないよ。お昼になったら、もっと賑わうし」

「ま、挨拶してたし そんなとこだろーって思ってたけど。……うへぇ。人込みに酔いそうだ」

「なーに引きこもりみたいな事言ってんのさ」

「(言いえて妙、ってねぇ~。そんな仕事してたし?)」

 

 とりあえず、そのまま人込みを縫ってシルヴィの案内の元、先に進んだ。

 数分後

 

「さー、着いたよ。ここがボクがギルドマスターを勤めてる冒険者協会(ギルド)

「ほー、それにしても細部までマジでよーく出来てるなぁ……」

「そりゃ、一応、一流の建設技術者に頑張ってもらったんだもん。当然、かな。沢山の冒険者を抱える協会(ギルド)が、ボロかったら格好付かないでしょ? 外見ででも、入りたい~って思ってもらった方が断然良いし」

「あ、あー、うん。そりゃそうだ」

 

 さらっと出たのが素の感想だった。

 画面上で言わば平面しか見てなかった建物を立体で見たから、やや感動してしまったんだと思える。更に言えば制作者の内の1人としては良い仕事してるなぁ、と初めて自画自賛してしまいそうな勢いだった。楽観視しすぎてるとも思うが。

 

「(まぁ、まんま、クロスレヴェリの世界って訳じゃないと思うけど、ここまでは 大体合ってるな。気味が悪いくらいに。異世界、って言うよりゲーム内に閉じ込められたって気分になってきた)」

 

 この世界は 小説ネタでも結構扱われている異世界モノに似た様な感じだと歩いている最中にも考えていたが、此処まで自社のゲームの内容に似すぎているから、そう思えてきた。

 

「ん……、でも、な……」

 

 

 

 それと同時に この世界は自分たちが作った作り物などではなく、生きている(・・・・・)と言う事も強く思った。

 

 

 

 談笑しながら話すシルヴィ。笑顔を見せたり、膨れてみたり、少し寂しそうな顔をしてみたりと様々な感情がその表情から読み取れる。

 街行く冒険者たちも、これから始まる仕事に気を引き締めている者、仕事が終わったのだろう安心しきり、今日は騒ぐ! と叫んでいる者、恐らくは仕事を失敗してしまったのだと思えるような生気が抜けたような顔。

 

 どれもこれも作り物とは程遠い。間違いなく この世界で生きている者の表情、心だった。

 

「どうかしたかい?」

「んー、何でもない。ちょっとワクワクしてきたかなー、って思って」

「ふふ。まぁ ラグナ君にしてみれば、全てが新鮮なんだから、気持ちは判るかなぁ。随分昔になっちゃうけど、ボクもここに来て、ギルマスになって、新しい事が始まる度にそんな感じだったよ」

「ふーん。……んっ、んー? ってかシルヴィって何歳?」

「うわっ、いつか聞かれるかと思ってたけど、マジでストレートに聞いてきたよ、この人(?)。デリカシーってものを学んで貰いたいもんだね。そーれーに! 君よりはずっと若いと思うし!」

 

 

 シルヴィをちょっぴり怒らせてしまった。

 

 恐らく、気さくな対応でOKを出したとはいえ自分は神様だと認定してるから、笑っていると思うんだが、これが極普通の人間。地球のゲーム制作会社の一社員だと判った時には、雷を盛大に落とされそうだ。

 それも、ヴォルライトニング・メテオより遥かに強そうなのを。

 

 そんな時だった。後ろから話しかけられたのは。

 

 

「……こんな夜遅く、ギルドの入り口の前で何を騒いでいるんです? シルヴィ」

 

 

 それは、ある意味シルヴィ以上の衝撃だったかもしれない。

 その種族を象徴させる部位を、これでもか! と主張している姿。

 

 ふりふり、と一定間隔で左右に小刻みに揺れる長い尻尾。 

 同じく、一定間隔でぴくっ、ぴくくっ、と動くシルヴィのうさ耳より柔らかそうな耳。

 

「レムさん。お疲れ様ー」

「はい。依頼が完了しましたので、ギルドの中へ入らせてもらうとありがたいんですが」

 

 軽い挨拶をしあう2人。どうも訝しそうな表情を向けられてる気がするが、それ以上に可愛らしい容姿、非常に愛らしい容姿だった。

 

 その子は、クロスレヴェリに存在する種族のひとつ――豹人族の女の子。

 

 

「……こりゃ、可愛いっ!!」

「え……? っ!」

 

 

 まさに条件反射だった。考えるよりも早くに身体が動いてた。そのふさふさの耳――猫耳を持った少女の頭を撫でていた。

 

 

 うん――手を伸ばして触れるまでの記憶が無いかもしれない。気が付いたら、物凄く気持ちよい感触が手にあった。モフモフモフ~! と本当に心地よい感触。

 

 

「な、な……ななな……ッ!」

 

 豹人族の少女は、何が起きているのかわかってなかった顔をしていたのだが、直ぐに理解した様子。顔をかっ、と赤らめたのと同時に、頭にのせたオレの手を 手で払い落したのだから。

 

「いきなり何するんですか!?」

 

 キッ、とにらみつけるのと同時に、懐から小石……クリスタルの様なモノを取り出した。

 

「わーー、ちょーーっとストップストップ! ごめん、レムさん! この人はボクのお客さんでさー! ちょーーーっと田舎の方に引っ込んでたせいか、世間の事に疎くて接し方の加減がわかんないみたいなんだよね!!」

 

 シルヴィが慌てて割って入ってきた。 

 

 田舎者だとひどい言われようだったが、今回ばかりは反省だ。あまりの光景に、至近距離でこの容姿を見てしまった故に、引き起こしてしまった事故。自我を封じる間もなく欲望に苛まれてしまった自分が情けない。

 

「む……。田舎者?」

「そーそー。ここはさ、ボクの顔に免じて許してあげてくれないかな? レムさん。どうか、この通りだよ」

「……シルヴィがそれ程言うのであれば」

 

 レムと言う名の豹人族の少女は 懐にクリスタルを仕舞った。恐らくは何かしらの術が発動するための物だとは思うが、詳細に関しては判らない。色々と便利なスキルを持ち合わせている神様キャラだが、それらを解析するための時間や条件が整ってないから判りようがない。気になるけれど、ゆっくりと調べる事も今は無理そうだ。それにそれ以上にやっておかないといけない事がある。

 

「わ、悪かった。今のはほんと。不躾だったよ。可愛らしい容姿だったからつい……」

「か、かわ……っ。こほんっ、つい、で気軽に女の頭を撫でまわすなど、変質者がする事です。……いくら田舎者とは言え、そのくらいは覚えておいてください」

「(わ、わーー、ラグナ君が悪い、めっちゃ悪いとはいえ、レムさん あまり悪口言わないであげてっ、か、仮にも神様なんだし!)ね? ね? ラグナ君反省してるよね!?」

「うむぅ……。してます……」

 

 しょぼんっ、と怒られて落ち込んだ子供みたいに表情を落としてるラグナを見たシルヴィは思わず笑いそうになった。また、神様とは思えない一面を垣間見たから。

 

 そして、それ以上にイラっとした。

 

「(……ていうかさー、ボクの耳も弄繰りまわしたくせに早速浮気してるし、誰でも良いっていうのかなぁ~?)」

 

 シルヴィの冷たい視線がラグナに突き刺さる。レムとシルヴィの2人の痛い視線はなかなかのダメージだ。

 

「(うぅ~ん。絶対オレが悪いんだろうなぁ。幾ら『お前は空気読めないよなー』って社長(ボス)に言われ続けて早2年だ、って言ってもそれなりにはわかるんだし……、何か詫びを入れれたら……、ん?)えーっと、レムで良いのかな?」

「……なんですか? 変質者で田舎者さん」

「わ、悪かったって。その、額の所。血が出てる。……それに、よくよく見てみるとあちこち怪我してるじゃないか」

 

 夜だったから直ぐには判らなかった。傷口付近じゃなかったとはいえ、傍で見て、更に頭を撫でた時に気付くべきだったかもしれない。

 

「ええ。……クエストに行っている最中に少々ありまして。それが何か?」

 

 絶対零度の視線なのは変わらない。思いっきり軽蔑されてる。

 神様に向かってその視線は何事かー! って言える立場じゃないので、それは置いとくと腰に差していた杖を前に出した。

 

「こんなので許して~っていうつもりないケド、とりあえずお詫びって事で」

「は? ………っっな、なんですか!?」

 

 杖の先端に付いている琥珀石が光を発した。それを見て思わずレムは距離を取ろうとしたが、魔術を発動させる方が早かった様だ。

 

 

「フェアリーサークル。痛いの痛いの飛んでけーってな」

 

 淡い光がレムの周囲に漂い、その光がレムの傷口を優しく包む。

 数秒後、包み込んでいた光が霧散すると、そこにはもう何も無かった。怪我をしていたのかも怪しい程のもの。

 

 レベル80で覚える光系統の回復魔術《フェアリーサークル》。

 本来はパーティメンバー全員を対象にする広範囲の回復魔術だが、レム1人~を意識すると集中的に癒すみたいで 簡単に治ってしまう様だ。どの程度まで通じるかは判りにくいが。成功したので良しとしよう。

 

 レムの顔は先ほどの侮蔑したものから驚愕したものへと姿を変えていた。

 

 

「回復魔術……? いや、これほどのものは見た事が……」

 

 

 呆気に取られてるレム。そして、此処が好機! と思ったのはシルヴィだった。

 肘でラグナをつきつつ、小さな声で言い聞かせた。

 

「――――ほら、今だよラグナ君」

 

 シルヴィの意図を察したラグナは直ぐに行動。

 

 

 

 

 

「いや、ほんと。マジでごめんね。いきなり 耳モフモフしちゃって……」

 

 

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