君が魔王なら、わし神様   作:フリードg

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6話

 

 

 女の子と同棲などリアルでは当然したことない。

 するつもりもない、したいとも思った事ない。

 

 

『それ、ただモテないヤツの僻みだろ~?』

 

 

 と思われるかもしれないが、そんなつもりは毛ほども無い。思いっきり否定したら図星ー! と更に思われるだけだし、どうぞ、そう思っててくださって結構です、と返した後スルーするだけ。

 二次元にしか興味を示さなかったあの世界だから彼にとっては当然と言えば当然なのである。

 

 

 

 

 だが、此処は二次元の進化系な世界と位置付けている為、興味津々、好奇心旺盛、性欲向上、真っ最中! 

 

 

 

 

 なのだが、現在は三大欲求の全部を御していた。

 

 

 

 

 

「……改めて名乗っておきましょう。わたしの名はレム・ガレウです」

「オレはラグナ。よろしく」

 

 

 

 レムと向き合ったその瞬間から欲求を全てシャットダウンしていた。

 

 

 

 レムと相部屋になったラグナ。

 最初は、かなり緊張していたが、今はそうでもない。レムと向き合っているからなのだろうか、今は先ほどの通り全部封印。おちゃらけも封印。ラグナも真剣そのものだった。

 

「それで、レムの方が話があるんだよね? メイちゃんにああは言ってたけど、シルヴィに教えてやって~って言われた訳ないよね? だってオレ達ずっと一緒だったし。そんなこと頼まれてない筈だし」

「……はい。メイを説得する方法が他には浮かばなかったので」

「なるほど」

 

 テキトーに誤魔化すのも有りだと思うが、なるべく怪しまれない様に、と思っての事だったのだろう。シルヴィからの願い、依頼ともなれば後日いくらでも確認が取れるし口裏合わせもしやすい。それにメイちゃんは、しっかりとルールを守りさえすればお仕置きはしたりしないし、個人情報もしっかりと守ってくれる……が、念には念を入れて、だった様だ。あまり、周囲に聞かれたくない事なのだろう事は何となく理解できた。

 

「……改めて確認をさせてください。……ラグナは、貴方は神様、なのですね?」

「ん。そうなるかな。ああ、後ほんと敬語は良いよ。普通の喋り方で」

「判りました。……ですが、すみません。わたしの話し方はこれが普通なので」

「んー、ならそれで良いよ。自然なのならそれで」

 

 

 シルヴィにも神かどうかを問われた。正直そんなの判らん、と言うのが本音だったが今は違う。

 

 天黄の塔で魔術を試した事、レベルの確認の際の現象。

 

 この世界の力の上限を完全に知っている分けではないが、あのGMキャラの力を十分継いでいる。仮に全てを確認し、全て引き継いでいる、と確認できたのであれば、完全なチートキャラだから、神と考えても全然差し支えない筈だと思っていた。 

 

 創造の力だけはどうしても、このGMキャラとは担当が違うから、単純に力だけ、と言えばそれでも十分通用する能力だと思えるから。

 

 

「わたしは、貴方を神様と信じます。……教えてください。なぜ、なぜ……神様は わた……ッ、………豹人族に 魔王の魂を封印したのですか?」

「え………?」

 

 レムの鋭い視線が、ラグナを射貫いた。

 

「……教えてください。魔王を、……その身に、その魂に封じられて……苦しい想いをし続けてきました。魔王を解き放たないために、身体を大切にし、必ず女児を残し………、そして現在。みんな自分たちの人生の多くを犠牲にして、孤独と恐怖に怯える人生を送ってきたのです。どうして、どうして……?」

 

 

 レムの声そのものは、極めて小さい。静かだ、と言える。

 

 

 だが、聞いていたラグナには まるで悲鳴の様に聞こえてきた。

 

 そして、此処まで聞けばどんな鈍感な者でも悟るだろう。

 

 魔王の魂を封じられた豹人族、と言うのは間違いなくレムの一族の事だという事。

 そして、その一族の苦しみを身をもって知り、生きてきたのだという事が。

 

 

「……魔王。魔王、クレブスクルム? その魂か。それが、レムの中にいるのか」

「はい。……私の中には魔王クレブスクルムの魂が封じられています」

 

 

 

 

 

 《魔王クレブスクルム》

 

 

 

 それは、先代魔王エンケバロウスの後継として生まれた魔王だ。

 設定と言うと身も蓋もないが、その誕生秘話は 当然耳に挟んでいた。

 

 

 そう、レムの言う通り。人族に封じられし魔王としての話だ。

 

 

 先代が討伐された後の存在だから、完全な後付け設定ではある。

 

 魔王エンケバロウスが討伐された時、一足早くに登場させた公式最強の魔王。

 一人の少女に世界の命運を背負わせる……と言うRPG設定ではありふれたモノではあるのだが。

 

 

「(………このシナリオ作った連中を殴りたい気分になってきた)」

 

 

 実際にその苦しみを、哀しみを、絶望を前にして、実際に感じて、如何に残酷な話であるかがよく判った。シナリオの最後は知らない。まだ作ってもないだろう。…………が、ありふれたモノであるならば、選択肢は多くない。

 

 

 1つは 少女を犠牲にし、世界を救う手段。美談に聞こえるかもしれないが、犠牲者は帰ってこない。……後味が悪く、胸糞悪いエンディングだ。

 

 

 更に言えば、先代魔王をあっさりと倒してしまったプレイヤーがいたから、恐らくその魔王の実力はより凶悪に設定していると考えられる。

 初見では絶対攻略不能な数値まで引き上げていると言えるだろう。

 

 そして、そこまで難易度を、強さの値を限界まで上げた原因は、前の魔王を倒した()にあるかもしれないが、それでも、その凶悪な存在を生み出したのは運営(じぶんたち)だ。

 

 

 

 レムは、ゆっくりと近づき、ラグナの胸倉をぎゅっ、と握りしめた。

 

 

「神を前に不敬かもしれません。……ですが、わたしはどうしても聞きたい。なぜ、なぜ私達が苦しまなければならないのですか? ……過去に、何があったのですか? ………教えてください。お願いします」

 

 レムにとっての元凶が目の前にいる。

 原因は魔王にあり、魔王が存在するからこそ、苦しむと言えばそうなのだが、その魔王そのものを封じたのは神なのだから。間違いなくラグナがその対象だ。行き場のない怒りを、苦しみをぶつける事が出来る相手だ。

 

 

 ラグナは、それを感じながら、目の前にいる少女を……、震えているレムを抱きしめた。

 

 

 震えているレムを、これ以上見ていられなかった。

 勝手に作ったのは間違いなく自分たち。いくらゲームの設定とは言え、こうやって目の前に現実として存在している以上。目の前の少女が苦しんでいるのが判った以上。

 

 

 例え、本物のこの世界の神ではなかったとしても。その一端の責任が、全く無いとは到底思えなかった。

 

 

 

―――だからこそ、償わなければならないだろう。

 

 

 

 

 自分自身が何処まで出来るかは判らない。

 GMキャラ(ラグナ)は 確かに属性は神をモチーフにしている。 

 だが、その神の対極に位置するのが魔王だ。故に簡単にはいかないだろう。プレイヤー達のクレーム処理とは訳が違う。生身を使っての戦いになる。………現代日本では 決してあり得ない命を賭した作業(戦い)になるだろうコトも想像に難くはない。

 

 

「全部話す。……レムが信じれるかは判らない。それに、言い訳に聞こえるかもしれない。……それでも、許してくれるか?」

「……許すも何も、無いです。わたしは全部知りたい。ただ、それだけです」

 

 

 ラグナは、抱きしめたまま虚実ではあるが説明を始めた。

 

 

 

 この世界の物語。魔王と神。ゲームの設定。運営とプレイヤー。

 

 

 

 それらを説明しきれる自信はないし、それを話すつもりは無かった。

 

 正直に全てを話すとすれば、この世界は作り物。云わば神の娯楽で、楽しむ為に存在している、と言う事になる。だが、それを証明する術は持ち合わせていないし、自分自身もすべてを判っている訳ではない。

 

 ならば、どう話せば良いか。

 

 自分は、確かに元の世界の話に限れば間違いなく神だろう。……だが、この(・・)世界の神であるか? と問われれば、保障は一切出来ない。

 

 故に、ありきたりかもしれないが、自分は《この世界の神》ではなく《違う世界の神》と名乗る事にした。

 

 それが一番だと自分の中で結論をつけた。

 

 

 

「……異世界の神……ですか」

「うん。異世界、と言ってもこの世界と殆ど変わらないから、並行世界(パラレルワールド)って感じかもしれないね。信じられないと思うけど。世界っていうのは1つじゃないみたいなんだ。前にいた所と此処は、確かに似てるんだけど、異なりがあるみたいなんだ。レム。クレムブスクルムの前の魔王ってわかるか?」

「前……先代の魔王は確か《脳の魔王エンケバロウス》だったかと。……今から約30年前、164年に消えた、と公式記録にありますが」

「うん。やっぱ名前まで一緒みたいだ。……その魔王だけど、オレがいた所では討伐したのは、ほんの数日前。30年前、じゃない。ほんの数日前まで健在だった。時間軸が同じかどうかまでは判らないけど」

「……ッ」

 

 レムはゆっくりとラグナの服を離した。

 

「……だから、レムの知りたい答えは、オレは持っていない。クレムブスクルムの事も……」

「そう、ですか」

「自分で言っておいてだけど。……信じれるか?」

「……疑った所で、確認のしようがありませんから。それに……仮にウソだったとしても、神様がウソをつく理由が、わたしには思い浮かびません」

 

 脱力感が出てしまったのが見てわかる。

 

 知りたかった答えに辿り着けそうだったのに、手を伸ばした先には何もなかった。陽炎の様に、蜃気楼の様に、淡く消え果ててしまったのだから。

 その感情もよく理解出来たラグナは決めた。元々自分の中で決まっていた事だったが、改めて決めた。

 勿論、本人の承諾がいるコトだから直ぐに確認を取る。

 

「レムが嫌だ、って言ったらそこまでだと思うけど」

「……え?」

「魔王クレブスクルムの魂がレムを縛ってるのなら、オレがレムを助けよう」

 

 立ち上がって、レムに手を伸ばした。

 

 

「この手を掴むか、掴まないかは、レムに任せるよ。……まぁ、ちょっと償いっていうのもあるかな。この世界の神様っぽく振舞って誤解させたし。……例え世界は違ったとしても、同じ神族みたいなもんだ。……同僚の横暴さ、理不尽さには、オレも滅茶苦茶ムカついた。奴らの尻拭いして、最後にはぶっ飛ばしてやる!」

 

 

 レムは それを聞いて ぽかん、としていた。彼女には珍しい。開いた口が塞がっていない。

 

 

「あっ、勿論 レムが了解してくれなかったら、この話は無しだよ。無理強いしないし。……どこか自己満足っぽいからさ」

 

 

 ラグナは、少し苦笑いをしていた。

 少し苦笑いをした後、改めてレムを見てみると、その開かれた目から大粒の涙がこぼれ落ちていた。

 

 

「っっ!? ど、どうした!? 何か悪い事いった??」

「ち、違いますっ! わ、わたし……、は、はじめて、で……」

「んんん?? はじめて??」

「は、はいっ……、はじめて、ぜんぶ、ぜんぶしって、わたしから、はなれない、ひとが…… わたしを、わたしを……、うあああぁぁぁん……ッ」

 

 

 この小さな少女は、その身に潜む魔王の魂の所為で、……その呪いともいえる存在の所為で、孤独に苛まれていたのだという事が、この涙を見て理解出来た。

『初めて、わたしから離れない人が』と言うセリフが全てを物語っていた。

 

 その身には 魔王がいる。

 

 そんな事実を知らされれば、間違いなく恐怖し 去っていく事だろう。

 それが異常だとは思わない。……当たり前だ。魔王なのだから。

 

 

 そして、初めて手を差し伸べてくれた人がいた事が心の底から嬉しかったのだろう。

 

 暫くして、泣きつかれたのだろう。レムの泣き声は規則正しい吐息、寝息へと変わっていた。起こさない様にその身体をベッドに横たえた。

 

 

 レムの寝顔を少しだけ拝見したのちに、ラグナは 今後の事を考える。

 さっきのは、正直完全な感情論で突っ走ってしまった気があるからこそ、しっかりと地に足を付け、考えなければならない。

 

 

「(ゲーム対戦はディアブロ相手に何度かしてるだけ。魔術を3点程試しただけ。生身での操作は当然なし、実戦経験は当然無し。……こりゃ明日から特訓だな。神様らしくないけど、そんなの言ってられないし。逃げるなんてもってのほか。こんな子をほっといて逃げるなんて、男じゃねぇーってな)」

 

 

 

 確かに怖い。

 ゲームでは死んでも復活できるが、ここではそうはいかないだろう。

 死ぬのも怖い。相手を殺すのも怖い。まだ、本当の意味での覚悟でのと言うのは出来ていない。……実践を終えるその瞬間まで。

 

「はぁ……。もし、ここにディアブロのヤツがいたら、何ていうかなぁ? 『真の魔王はこのディアブロ。魔王クレブスクルムの魂など、オレが粉砕してくれる!』 くらい言うかな? ……オレも安心出来るかもな。あ~情けね。『君が魔王なら、わし神様』って言ってた癖に」

 

 前に対峙した時の事を思い返していた。

 間違いなくディアブロが一番強い。魔王を倒し、超が何個も付くレア装備を身にまとう姿はまさに真の魔王。

 

 ここにきていたら、色々と相談し、対策と傾向を練って~ と思うが、無いもの強請り程情けない事はない。仮にも神様名乗ってるのなら。

 

 ラグナは、軽くと両頬を両手で挟み込んだ後、改めて刻む。レムは猫耳を勝手に触ったセクハラも許してくれたし、その礼もまだ出来てないのだから。

 

 

 

 

「絶対やってやる、ってな」

 

 

 

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