異世界に転生したら、食べるのと料理するのが好きな魔法使いになってたって話 作:小鳥遊やよい
2018年 某所
「───でさでさ!べったべたになっちゃったんだよ...!それがめっちゃ
面白くて...」
「それは普通に面白いよねー。あ、着いちゃったよ」
「送ってくれてありがとね、ゆず。またこんどね」
「今日はありがとう。また遊ぼうね。LINEするから」
太陽は仕事を終え、月が顔を出している。
八坂ゆず は、幼稚園からの友達の蘭を家まで送り終えたところ。
今日はたくさん遊んだ。会ったのは久しぶりだったから。
高校が離れてしまい、しかも予定が合わず、なかなか会えなかった。
それにしても、綺麗で大きな月だ。
「みぃー、みぃー」
近くから声が聞こえてきて、辺りを見渡してみる。
少し行ったところに、小さなかわいい子猫が、か細い声で鳴いていた。
(久しぶりに追いかけてみようかな、)
母が猫アレルギーなので、猫を飼いたくても飼えなかったゆずにとっては
野良猫はいい友達だった。しかし、ここ最近、野良猫は見ていない。
野良猫はカラスと一緒に邪魔者扱いされた。
子猫は「着いてきて」とでも言うように、ゆっくりとゆずの前を歩いていた。
自宅からは遠くなっていったが、ゆずは構わず子猫のあとをつけた。
辺りは住宅街から一面の畑へと景色を変えていた。
小さいころに戻ったみたいで、ゆずは嬉しくなった。
冒険ごっこ。蘭とよくしていた。
今歩いているところだって、蘭と冒険ごっこの時に歩いた畦道だ。
「────っ?!」
ゆずは急に浮遊感に襲われた。
穴に落ちた、と分かったのは全身を強く打ち付けた時だった。
「......痛っ!!」
穴は結構深そうだ。
激痛に襲われ、ゆずの意識は少しずつ薄れていく。
「血、でてんじゃん......」
地上から覗きこむ子猫は、ただのかわいい子猫には見えなかった。
ヒトの魂を奪い取る死神にも見えた。
息が荒くなっていく。
切り傷から血がたくさん出た。
関節も変な方向に曲がっている。
「穴に落ちて...死ぬとか...ダサ過ぎない...?」
「楽しかったな、今まで」
「お父さん、お母さん...それから蘭と...先生、先輩.........今までありがとう、」
意識が消える寸前、ゆずは確かにその声を聞いた。
「おめでとうございます!!あなたは異世界に転生する権利をゲットしました!」
◆◇◆◇
「おめでとうございます!!あなたは幸せな方です!あ、お目覚めですか?
おはようございまーす!」
やかましい声で、ゆずは目を覚ました。
「...あれ、私、死んだんじゃないの?」
「そうですよー!でもあなたは異世界に転生する権利をゲットしたので
生き返ることができまーす!」
スーツを着た、頭の上に輪っかが浮いてる天使みたいなヤツが、クラッカーを鳴らす。
「...ちょっと意味分かんないんだけど」
「こっちも仕事あるんで話進めちゃいますね。あなたは今から異世界...
魔法とかモンスターとかが実在する世界ですね、
そこに転生してもらいます!
八坂ゆずさん...あなたは魔法使いとして生きることが
神様から言い渡されています。
というわけで!またそっち行くんで!では!」
「え、ちょ、ねぇ!意味分かんないんだって...!わああっ!!!!!!」
天使はゆずの頭に手をかざし、呪文を唱えた。
体が溶けていくような感覚の中、ゆずの意識は遠のいていった。