異世界に転生したら、食べるのと料理するのが好きな魔法使いになってたって話   作:小鳥遊やよい

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定休日は恋の味

それから更に10年...   

 

 

 

ユズは一人前の魔法使いになっていた。

 

バジルは進化して、ピョチからピリリピルへ。

 

しかも擬人化スキルを手に入れて、人の姿になることもできる。

 

二人は今、ベルガモットの隣国、カモミールで喫茶店をやっている。

 

ユズが調理担当、バジルが接客担当。

 

『人間とモンスターが気持ちよく過ごせるお店』を目標に、

 

日々経営に励んでいる。

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」  

 

 

「ふふ、二人ですっ」

 

 

「こちらの席へどうぞ」

 

 

 

 

擬人化したバジルはビックリするぐらいイケメンで、

 

人間(メス)に大人気だ。

 

一方、ピリリピルの姿もイケメンなので、

 

モンスター(メス)に大人気。

 

 

 

「ユズ、マヤラたまごサンドセット、ドリンクがラナソーダの 

 やつが1つ、ココポとキャラリとラミのパイ1つね」

 

 

「あいよ」

 

 

 

 

マヤラは人間界のカラシとほぼ同じもの。

 

ラナソーダは、カモミール国民のソウルフードならぬソウルドリンク。

 

 

 

 

あの日バジルと始めて作ったココポとキャラリとラミのパイは、

 

今ではお店のNo.1メニュー。

 

あれからたくさん作ってきたので、何回かレシピが改良されている。

 

 

 

 

 

「お待たせしました。マヤラたまごサンドセットとラナソーダと

 ココポとキャラリとラミのパイになります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

 

 

バジルのイケメン爽やかスマイルが炸裂した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

【定休日です 喫茶ヨモギ】

 

 

「よし書けた」

 

 

 

今日はお店の定休日。

 

貼り紙をドアに貼ったユズは、バジルを探した。

 

 

 

「あっれー、いないのかねぇ」

 

 

 

ちょっとガッカリして、お店の片付けを始める。

 

 

 

「ん、」

 

 

 

 

カウンターの上に置いてある手紙に気がついた。

 

 

 

 

『ユズへ

 

 ちょっと出掛けてきます。

 

 お昼には帰るつもりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

 

                    バジル』

 

 

 

 

 

まだまだ余白があるのにも関わらず、名前は一番下に書いてある。

 

そこまで怪しくないけど、怪しい気もする。

 

 

 

 

「透視」

 

 

 

 

10年の間に対象物に指をさし、したい動作を声に出すだけで

 

魔法が使えるようになった。

 

 

 

 

「え、なにこれ」

 

 

 

 

『勘のいいユズなら気づくと思いました。

 

 僕は、ユズが好きです。

 

 いつもいつもそばにいてくれて、支えてくれて。

 

 本当にありがとう。

 

 僕はモンスターだけど、ユズと同じ人間の姿になりたくて、

 

 擬人化スキルを取得するのを頑張りました。

 

 もし、ユズがよければ。

 

 僕はあなたの魔法で人間になりたい。

 

 そして、これからもずっと隣に居たい。

 

 出掛けてる、なんてことは嘘です。ごめんなさい。

 

 こんなワガママな僕を許してくれるなら、

 

 僕の部屋に来てください。

 

 

                       バジル』

 

 

 

 

 

 

 

 

「バジル...」

 

 

 

 

ユズはユズで、バジルが大好きだった。

 

(この想い、応えてあげなきゃ) 

 

階段をかけあがり、バジルの部屋へ急ぐ。

 

 

 

 

 

「バジル......!」

 

 

 

 

朝から姿が見えなかったバジルがそこにいた。

 

 

 

 

「ユズ...ごめんね」

 

 

 

 

バジルは目に涙を溜めて作り笑いをした。

 

それにつられて涙が出そうになる。

 

 

 

 

「ずっとずっとユズが好きだった。ユズは...どうですか」

 

 

 

 

スッと涙が頬を伝うのを感じた。

 

ユズはバジルに近づいて、きゅっと抱きしめた。

 

 

 

 

「だいすき、バジル」

 

 

 

 

バジルはほっとしたのか、ふにゃふにゃ涙をこぼしながら笑った。

 

花の香りがする。なつかしい香りだ。

 

 

 

 

 

「人間、なりますか」

 

 

 

 

 

こくんと頷くバジル。

 

 

 

 

 

「いくよ、バジル... 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────人間化」

 

 

 

 

淡い光がバジルを包みこむ。

 

さっきと変わらない姿だけど、バジルは嬉しそうだ。

 

 

 

 

 

「次は私の番ね。

 

 

 

 

 

 ────契約、してくれますか」

 

 

 

 

 

バジルは一瞬きょとんとした顔をした。

 

しかし意味が分かると、最高の笑顔で言った。

 

 

 

 

 

「もちろん」  

 

 

 

 

 

モンスターと人間が一生を一緒に生きていくという約束を契約という。

 

友達になる、というのとは違う。

 

人間になったバジルだけど、一応モンスターだったので契約は通用する。

 

ユズは息を吸い込み、優しい声で言った。

 

 

 

 

 

「契約」

 

 

 

 

 

そのとたん、辺りは強い光で照らされた。

 

光が止むと、ユズはバジルの首もとに何かがあるのに気づいた。

 

視線を感じたのか、バジルは言った。

 

 

 

 

「契約の印だよ。ユズの首もとにもあるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よろしくね、ユズ」

 

 

 

バジルのイケメン爽やかスマイルがまた炸裂した。

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