異世界に転生したら、食べるのと料理するのが好きな魔法使いになってたって話 作:小鳥遊やよい
「よし、買い物行こっか」
嬉し涙もおさまり、私はバジルを誘う。
「カミツレストリート?」
「もちろん」
近所の大きな商店街、カミツレストリート。
カモミール国民に愛されている場所だ。
「デートだね」
バジルがにこにこ笑う。
ここでその顔は反則だよ...
◆◇◆◇
「手、繋いでいい?」
そう上目遣いでおねだりするバジル。
「────いっ、いいよ...」
これはちょっと恥ずかしい。
でもやっぱり嬉しい。
バジルの白くて綺麗な手が、私の手に触れる。
指と指が当たるたびにドキドキしてしまう。
「───行くよ、ユズ」
◆◇◆◇
買うものを買って、一段落ついた私たち。
バジルはラナソーダを飲んでいる。
「家帰って、なんか作ろっか?」と聞くと、こくんと頷いて
くれたので、家に帰ることにした。
「楽しい?」
「ユズと一緒ならどこだって楽しいよ」
◆◇◆◇
無事に家に着いた私たち。
食材を冷蔵庫にしまい終わったら、私はホットミルクを二つ用意した。
それを私の部屋に持っていく。
「ありがとう」
「いえいえ」
季節は冬に近い。
肌寒いので毛布をシェアすることにした。
「ユズって何だか触りたくなっちゃうんだよね」
「バジルってイケメンすぎて反則だと思うんだよね」
バジルは笑いながら私の頭をなでてくれた。
落ち着くから、バジルに触られるのは好きだ。
「ユズの髪の毛、すごく綺麗」
長くてつやつやの黒髪は、結構気に入っている。
「────っ」
バジルが首を触ってくる。
「ここ、ユズが生きてるって感じがして好きだよ」
そう言って悪魔のようにニヤリと笑う。
「敏感なんだね、────八坂ゆず」
「!?」
優しい声に狂気のようなものが混ざる。
「ごめん、ゆず。ずっと嘘ついてた。
俺、悪魔なんだよ。ゆずが見つけたあの子猫も、
ピョチもピリリピルも、全部俺。
ゆずの魂を奪ったのも俺。
本当にごめんな。
好きだ。大好きだ、ゆず。
俺はもう、魂を奪うのは嫌なんだよ」
抱きしめられながら言われる。
言ってることは大分衝撃的だけど、私はそんなの気にしない。
「いいよ、別に。私、こっちの生活の方が好きだもん。
...バジルがいるから」
「...葵」
「あおい?」
「前世の名前。俺も転生者なんだ」
「そうなんだ、」
「俺はゆずに、葵って呼んでほしい」
「分かった、葵。だからもう泣かないで」
葵はすぐ泣く。それが放っておけなくて、
いつも葵のペースに巻き込まれる。
背中をさすってやる。温かい。
「一生離さねぇ」
愛が重すぎる悪魔は言った。
「一生離れないから」
私はそう言い返した。