異世界に転生したら、食べるのと料理するのが好きな魔法使いになってたって話 作:小鳥遊やよい
「なあ、ゆず」
悪魔だとカミングアウトしてから、しゃべり方が変わった葵。
「もしよかったらなんだけどさ」
ちょっともじもじしている。ほっぺも赤い。
「契約式、やらね?」
「契約式ッ?!」
「二人だけでさ。せっかくなんだし...どう?」
契約式って結婚式とほとんどいっしょだよね?!
二人きりなんてロマンチックだね、葵。
「いいよ」
「......!じゃあ今から用意して!6時にここ出るからな!」
今は5時半。急がないと!
◆◇◆◇
「...終わったよ」
精一杯のおしゃれをして葵を呼ぶ。
「ほうき、持ったか」
葵は顔を合わせずに言う。
ほうきを取ってくると、葵はいなかった。
「葵?」
「行くぞ」
声は外から聞こえてきた。
急いで外に出てみると、スーツに身を包んだ葵が宙に浮いていた。
背中には大きな悪魔の羽がついている。
月の光がいい感じに葵を照らしていて、私は目を奪われた。
「ついてこい」
私はほうきにまたがって、空飛ぶ葵を追いかけた。
整った横顔はじっと前を向いている。
◆◇◆◇
着いたのは崖の近くだった。
大きくて丸い月が私たちを見ていた。
「八坂ゆずさん、あなたは如月葵さんを夫とし、
神の導きによって夫婦になろうとしています。汝 健やかなるときも、
病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、
貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、
その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います。
えー、如月葵さん、あなたは八坂ゆずさんを妻とし、
神の導きによって夫婦になろうとしています。汝 健やかなるときも、
病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、
貧しいときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、
その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います。
では、誓いのキスを」
「...っ!」
ゆっくりと時間が流れていく。
葵の匂いで頭がくらくらする。
悪魔の体質なのかな、なんて思ってみたりする。
「...はっ、」
心臓がばくばくする。そういえば前世でもイケメンに対する
免疫力なかったな。
「帰ろっか」
葵はこっちを見た。
蒼い瞳が不思議に光った。
◆◇◆◇
後ろからしがみつかれている。
帰りは一緒にほうきに乗ろう、ということでこうなったのだ。
「ゆず...あったかい」
「そういえば、悪魔って何してたの?」
「魂 奪ったり、生気...人間の血を吸ったり?」
「そうなんだ」
「血、吸うときにさ、暴れないように抱き締めてたんだけどさ
なんかどんどん体温が下がっていってるのが分かって怖かった。
それを今でも思い出すから、人肌が恋しくなったりする」
つらいことってやっぱりみんなあるんだな。
そう考えながら私は家に向かった。