王なる少女と見る世界   作:星の空

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第5話 鍛錬と実戦と罠

 

鍛錬や文学?をすることになってから早2週間が経過した。

だが、鍛錬場があまりにも小さ過ぎたので近隣の森ですることにしたのだ。メルド団長には付き添い有りなら構わないと言われたのでその時にいたアランという騎士を連れてから行っている。

相手は何時ものメンバーである。

その中の瓸と行っている。

魔術で東京ドームくらいの範囲に氷柱を四方に立ててその範囲内で行い、アランには外側に投影してあるホログラムで俺と瓸を見て貰っている。

 

 

「いやぁ、あれから2週間経ったと言うのに未だに信じられませんよ。これは流石に見られたくはないですねぇ。」

アランが見ているホログラムには森の木々を足場に多角機動しながら槍でヒット&アウェイをする瓸と初めてから一切その場から足を動かさず手に持つ剣だけで応酬している嶺亜の姿が写っている。

「生きてきた中でここまでの戦闘は見たことがないし、これを知った上層部がなんと言うか………」

「元の世界では槍の名手と剣の名手でしたので、両者が軽く(・・)相対したらこの程度ですよ。全力を出されたら地形が変わりますからセーブはしているのですが………………そろそろ時間ですね。」

時間となったらアルトリアが魔力放出をして、2人に時間が来たことを教える。

ちなみに鈴はその間、結界魔術などの詠唱を必死に覚えていた。

「さて、鈴。稽古の時間ですよ。」

「りょ〜か〜い…………うし、お願いします!」

鈴とアルトリアが範囲内に入ると同時に瓸と嶺亜が出てきた。

「オジさん防衛は得意なんだが、攻撃が苦手なんだよねぇ〜。それに、ランサーと同等の速さとか、色々とショックなんだがなぁ。」

「フッ、まだまだ成長出来るんだよねこれが。さて、鈴には結界だけだと魔力切れの時が大変だからと剣を習うよう言ったが、何処まで出来るのか?」

鈴に剣の扱いを徹底的に教えるアルトリアをアランと共に見る。アランはこれを見る事で個人的な新たな戦術を考えていたりする。

そして、地稽古が始まった。鈴はアルトリア相手に奮戦する。最近出来かけていた結界魔術の無詠唱をなんとか出来るようにして、多々ある崖っぷちなところで結界を展開して危機を脱したり、足元に妨害用として用意したりと、奇策を用いる事でなんとか追いつけてる感じだ。最低級の英霊とはカチ合える程だろう。

1時間後に辞めて出てきたので伴って城に戻る。

戻った時に知ったのだが、ハジメが檜山らに虐められて負傷し、白崎に治療されたとか。

それと、メルド団長から明日にオルクス大迷宮にて実戦することを言われた。

 

 

 

俺達は、メルド団長率いる騎士団員複数名と共に【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達の為の宿場町【ホルアド】に到着した。

新兵訓練によく利用するようで王都直営の宿屋があり、そこに泊まることになった。

2人1部屋となり、俺は余りで1人となった。

「はぁ………………何事もなけりゃいいがなぁ。」

 

ピップー!!

 

『あーテステス。嶺亜くん聞こえる?』

「あぁ、聞こえてるぞ。どうした?ギルから俺が飛ばされたのは知ってるだろ?」

『あぁ。それで、言いたいんだけど…………………………そこ、特異点だからね。しかも、異聞帯と来た。でもクリプターがいない。どんなイレギュラーがあるか分からないから覚悟しててね。それと、藤丸くん達をなんとかレイシフトしてみるから。あ、支給品としてエミヤにマシュの大楯を造ってもらったのを送っといたからサーヴァント召喚に使って。』

「なぁ、クラスメイト…………どうしたらいい?」

『へ?ちちちちょっと待ってくれ。今のもう1回言って』

「だからクラスメイトらはどうしたらいい?と聞いたんだ。」

『んな!?君だけじゃなくて君のクラスメイト達も行ってるのかい!?!?』

「あぁ。あ、宝具の開帳するけど気にしないでね?」

『あぁ分かっ………………はい?今な──────』

 

ピッ!!

 

「ふぅ、コンディションを整えに行くか。」

Dr.ロマンからの連絡を受けたあと、暇だったので外に出てコンディションを整える名目で鍛錬をする。

夕食を食べたあとも続け、部屋に戻る時に部屋前に檜山がいた。

「そこで何をしている?」

声をかけたら飛び跳ねて此方を見て、

「………………んだよ」

一言だけ。その瞳は憎悪に濁り、声音は殺意に満ちていた。

「貴様がどのような感情を抱いていようと構わん。だが、過ちだけは犯すなよ。……………………貴様にちっぽけな英雄譚を語ろう。」

 

ある日、少年はお婆ちゃんにたこ焼きを買って貰った。それを何処か座れる場所で食べようと歩いて移動した。しかし、前方から歩いてきていた不良達の1人にぶつかり、たこ焼きはダメになり少年はショックで泣き、お婆ちゃんは不良達の恐喝にオロオロとする。お金を取られ、更に恐喝をされる。そこに、1人の高校生が割って入り、公衆の面前で土下座。それは不良達を逆に増長させ、高校生は殴る蹴るの暴行を受けたり、飲み物をぶちまけられたりした。それでも高校生は耐え、痺れを切らした不良達は未だ泣く少年に標的を変えた。が、高校生は少年を庇い守った。

最後はたこ焼き屋の反対側の蕎麦屋から出てきた極道達に不良達は絞められ、高校生は病院に搬送。全治1年の重症を負った。しかし、極道達はこう言っていた。「あれは彼奴だからこそ耐えた。もし、他のものなら泣き叫び助けを乞うていただろう。」と。そして、その騒動を見ていた野次馬の中にいた1人の女子高生は一目惚れをした。

 

「これは、高校生が勇者である証。勇者は天之河のようなキラキラネームで爽やかイケメンな奴ではなく、こんなちっぽけなことでも挫けず守り抜く者の事を言う。」

「……………………それがなんだってんだ。俺には関係ないだろ。」

俺の話を最後まで聞いていた檜山は関係ないからと憎悪を持ったまま去ろうとした。

「……この高校生の名は南雲ハジメ。女子高生の名は白崎香織だ。」

「………………なんだと?巫山戯るなよ。南雲に白崎は相応しくねぇ。それがいいなら俺の方が相応しいだろがッ!?!?!?」

怒りを込めて此方を向き直る。が、硬直した。気になり俺も振り返ったら白崎本人がいた。

「………………檜山くんはいつも人を虐めて楽しんでたよね?私ね、そういうの大っ嫌い!言葉に出来ないけど、言うとしたら…………惨め。前を向いて精進しようとしない。後ろばかり見て調子に乗る。南雲くんは精進してない?してるよ?でも、檜山くん達に虐められてばかりだから埋もれる。相応しい相応しくないが関係なく南雲くんが好き。だからね、これ以上南雲にちょっかいをかけないで。」

「ッ!!!!!!!!!!!!」

檜山の言葉をバッチリと聞いていた白崎に振られ、その場から駆け出していく檜山。

憎悪が膨れ上がるのを確認した。

「………………ちっ。おい白崎、お前に渡す物がある。」

「???」

俺は檜山の憎悪に対抗するためにある物を2つ白崎に渡した。そして、1つはハジメに渡す様に言ってから部屋に入って寝た。

この時渡した物が幸を成したらいいが。

 

次日

 

現在、俺達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

俺はアステリオスの宝具の迷宮みたいな入口を想像していたんだけど、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりとした入口があり、受付窓口まで設置されていた。

どうやらダンまちのダンジョンみたいにしっかりと管理されているらしく、制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

何でも、此処でステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのが目的らしい。

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び立っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。

 馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。

確かに戦争を始める前に内側の揉め事で国が衰退してしまったら、いざ戦争という時にほんの少しの抵抗も出来ずに負けてしまうから当然の処置だと思う。

クラスメイトらがおのぼりさんになっているが、俺やアルトリア、瓸はレイシフト先や元いた所もこんな感じだったので普通について歩いている。

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

縦横五メートル以上ある通路は灯りもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や灯りの魔法具が無くてもある程度は視認する事が出来る。

なんでも緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

俺達は隊列を組みながらゾロゾロと進む。隊列を組みながら、と言えば聞こえが良いかもしれないけど、実際は教師の後ろを付いて行く幼稚園児みたいな感じだ。こんなので戦争に加担出来んのか?

暫く何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。如何にも魔物とエンカウントしそうな場所だと思う。

と、その時、物珍しげに辺りを見渡している僕達の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。どうやら本当にエンカウントしてしまったらしい。

現れた魔物は「ハハッ!」とは笑いそうにない二足歩行のネズミだ。灰色の体毛に赤黒い瞳が不気味に光っており、上半身が筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。まるで見せびらかすように、八つに割れた腹筋と膨れ上がった胸部の部分だけ毛がない。

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

ラットマンは結構な速度で此方に飛びかかってくる。

正面に立っている天之河達―――特に前衛である八重樫の頬が引き攣っている。

まあ、筋肉モリモリマッチョマンの変態が飛び込んできたらそうなる。しかも、それにネズミが混ざってるんだから尚更だと思う。

間合いに入ったラットマンを天之河、八重樫、坂上の三人が迎撃する。

その間に、白崎と女子二人、ちみっ子鈴と表お淑やか裏ヤンデレ中村恵理が詠唱を開始して魔法を発動する準備に入る。

天之河は白く輝くバスタードソードを蟻が歩く程の速度で振るい、数体のラットマンを纏めて葬る。

天之河が持っている剣はハイリヒ王国の管理するアーティファクトの一つで名称は“聖剣(笑)”である。

ただ単に光属性の性質が付与され、光源に入る敵を弱体化させつつ自身の身体能力を自動で強化してくれるという“聖なる(笑)”な性能である。それなら、儀式剣の燐然と輝く王剣(クラレント)無毀なる湖光(アロンダイト)の方が圧倒的に性能がいい。

坂上は空手部だそうで天職が “拳士”であることから籠手と脛当てを付けている。

これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないらしい。俺としては「決して壊れない」というのは大げさだと思う。だって、いずれ朽ちることもあるし、限界耐久も物である限り壊れる筈だ。不毀の極槍(ドゥリンダナ・ピルム)は別だけど。

しかし、アーティファクトとしての力はかなりの物で、坂上君は衝撃波を伴った拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。彼らのパーティーのメイン盾は坂上になるだろう。

八重樫は県道小町らしく“剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち敵を切り裂いていく。その動きは現代において洗練されており、騎士団の人達が感嘆の声を漏らすほどだ。

俺達が天之河君達の戦いを見学していると、詠唱が広場へと響き渡る。

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ、“螺炎”」」」

三人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎が残ったラットマンの全てを飲み込み、巻き込み、燃やし尽くしていく。炎の飲み込まれたラットマン達は「キッーーー!」という断末魔の悲鳴と上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

ただそれだけの作業で、オルクス大迷宮での初の実戦はあっさりと終わりを告げた。どうやら、天之河達の戦力だと一階層の敵は弱すぎるらしい。

目算だが俺や瓸が本気を出すとしたら70層より先でないと出せない気がする。

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

天之河達の優秀さ(笑)に苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。

だけど、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められないみたいだ。

頬が緩む天之河達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

先手過剰火力で相手に何もさせずにHPを削りきるのはゲームボス戦のセオリーだけど、迷宮の最初にエンカウントする魔物にやるような攻撃じゃないだろう。

それから特に問題もなく後退しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層に辿り着いた。

現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだがそれは百年以上前の冒険者が為した偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いらしい。

クラスメイト達は戦闘経験こそ少ないものの、ハジメ以外の全員がチート(いろんな意味で笑)持ちなので割りかしあっさりと降りることが出来た。

最も、迷宮で一番怖いのはトラップらしい。場合によっては致死性のトラップも数多くあるらしい。ハジメが読んだ本にも落とし穴とか毒矢の罠とか様々な罠が記されていたそうだ。

このトラップ対策にはフェアスコープというものがあり、これは魔力の流れを感知してトラップを発見する事が出来るという優れものだそうだ。迷宮のトラップは殆どが魔法を用いたものであるため、八割以上はフェアスコープで発見出来るらしい。

正し、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば、使用者の経験による索敵範囲の選別が必要らしい。道具だけあっても技術が伴わなければ駄目だということだ。

なので、クラスメイト達が素早く階層を下げられたのは、皆がチート(いろんな意味で笑)持ちである以上に、騎士団の人達の誘導があったからだ。

メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われている。

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十層で訓練して終了だ!気合入れろ!」

此処まで俺や瓸、ハジメは特に何もしていない。

一応、騎士団の人が相手をして弱った魔物を相手にハジメが訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけハウンドドッグという魔物をハジメは倒した。おい、鋼の錬金術師か?

しばらくして小休止を挟む。

俺は空気を錬成(・・・・・)して、エミヤの夫婦剣を概念込みで精製しジャグリングを始める。

ちなみにこれは投影魔術でやった時、最初中身無しで5秒後に崩壊していたが今では5年は持つ。しかし、錬成のおかげで投影魔術で中身のみを投影するだけで済んでいる。ちなみにこれ、50組目の精製だったりする。

「香織、何、南雲君と見つめ合っているのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

そこに、八重樫のが白崎をからかい、白崎は顔を赤らめて反論する。

その時にハジメに憎悪を向ける視線が1つ。檜山である。どうやらハジメを消せば白崎が此方を向くと思い込んでいるらしい。

今回は不干渉といこう。アレを白崎と白崎経由にハジメが持っているので大丈夫だろう。

アレとは夫婦剣のストラップバージョンだ。どちらかが死んだら生きている方に夫婦剣が揃うようにしている。ハジメが死ねば黒が白崎に、白崎が死ねば白がハジメのもとに行くよう設定している。しかも通信機能付きだ。ストラップサイズなので俺の任意出ないと壊れない。

あれから二十階層の探索を再開。

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

現在、四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはないし、トラップに引っかかる心配も無い…………………………はずだった。

二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のように氷柱状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先に進むと二十一階層への階段があるらしい。

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に歩いて帰らなければならない。

すると、先頭を行く天之河達やメルド団長が立ち止まった。魔物がいたのだ。

現れたのはカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物、ロックマウントだとハジメは言う。

地形が悪く、戦いづらい中、ロックマウントがロックマウントを投げ、ロックマウントがルパンダイブで後衛の鈴達に迫る。白崎と中村は気持ち悪さに悲鳴を上げて、鈴はダイブ中のロックマウントの正面に結界を貼って塞き止めて護身用で持つ剣で喉を1突きして殺る。

白崎らが悲鳴を上げたのが死への恐怖と思い込み(決めつけて)狭い中大技をメルド団長の静止を振り切って扱い、1部崩壊させる天之河。

天之河が説教を受けている時に白崎は発見した。

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

その言葉に、クラスメイト達全員が白崎の指差す方向へと視線を向けた。そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。

まるでインディコライトが内包された水晶のようである。白崎を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

「でもさ、こういうのって大体がトラップだよね?珍しいものが簡単に崩壊(・・・・・)した中にあったんだから。」

影が薄すぎて誰も反応してないが、遠藤が言っていた。それを聞いていた騎士の1人が例のスコープで確認を取ろうとする。

「…………素敵……」

白崎が無意識に零しそれを聞いた檜山が

「だったら俺らで回収しようぜ!」

そう言って唐突に動き出した。

きっと、グランツ鉱石を手に入れて白崎に良い所を見せようとしたのだろう。檜山君はグランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登って行き、メルド団長はそんな檜山の単独行動に慌てて声を荒らげる。

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

しかし、昨日の1件で焦りが生じ大人しく言う事を聞く檜山じゃない。

メルド団長は、グランツ鉱石の場所へと辿り着いた檜山を止めようと追いかける。先程調べ出して例のスコープで鉱石の辺りを確認し終わった騎士の1人の顔が一気に青褪めた。

「団長!トラップです!」

「ッ!?」

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がった。

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

まるで、召喚されたあの日の再現だ。

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

メルド団長の言葉にクラスメイト達が急いで部屋の外に向かうが……間に合う訳ないわな。

部屋の中に光が満ち、俺達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

俺達は空気が変わったのを感じていた。次いで、地面に着地。

俺達が転移させられた場所は、巨大な石作りの橋の上だった。

ざっと百メートルはありそうで、天井も高く少なくとも二十メートルはある。

橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。落ちれば正に奈落の底、俺や瓸、アルトリアはまだしもその他のデッドエンドは避けられないだろう。

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせればつかむものもなく真っ逆さまだ。俺達はその巨大な橋の中間にいた。

橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

メルド団長が撤退するよう大声で叫び、クラスメイト達は我先に登り階段を目指す。

だが、ここは迷宮。トラップがこの程度で終わるはずもなかった。

階段側の橋の入口からは大量の魔物が魔法陣から出現し、通路側からは一体の巨大な魔物が出現する。

───まさかの挟み撃ちだ。

「まさか、ベヒモス……なのか……」

現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻くような呟きがやけに明瞭に響いた。

橋の両サイドに現れた赤黒い光を放つ魔法陣。それは召喚魔法陣だった。

奥に進むための通路側の魔法陣は十メートル近くあり、此処から脱出するための階段側の魔法陣は一メートル位の大きさだが、その数が夥しい。

小さな無数の魔法陣からはスケルトンや竜牙兵のように骨格だけの体に剣を携えた魔物が溢れるように出現した。いや、正確には出現し続けているというべきだろう。その数は既に百体近くに上っているというのに、尚、増え続けているのだというから。

だけど、数百体の竜牙兵モドキよりも通路側のバケモノの方が遥かにヤバイ。アレは現代の人間が戦って良いような相手じゃないし、戦って勝てるような相手でもない。

十メートル級の魔法陣から出現したのは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物、最も近い地球の生物に例えるならトリケラトプスだ。

瞳は魔法陣と似た赤黒い光を放っており、鋭い爪と牙を打ち鳴らし、頭部の兜から角を放つその魔物の名は、メルド団長の言葉が正しければベヒモス。

旧約聖書に登場する陸の怪物、レヴィアタンと二頭一対を成す者。

亜種特異点で出くわしたことがあるベヒモスの方が圧倒的に威圧的でたまたまいたディルムッド・オディナが何故か狙われまくり、トラウマを抱えさせてたのを思い出す。

「グルァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

迷宮を揺るがすような咆哮に正気に戻ったのか、メルド団長は矢継ぎ早に指示を出す。

「アラン!生徒達を率いて“トラウムソルジャー”を突破しろ!カイルとイヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ!ヤツを食い止めるぞ!光輝達は早く階段へ向かえ!」

「待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……」

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ!ヤツは六十五層の魔物。嘗て“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ!さっさと行け!私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」

メルド団長の鬼気迫る表情に一瞬怯むものの「見捨ててなど行けない!」と踏みとどまる天之河。此処でも、天之河の正義感の強さがマイナスの方向に働いていた。

何とか撤退させようと再度、メルド団長が天之河に話しかけようとした瞬間、ベヒモスは咆哮を上げながら突進してくる。

「…………はぁ、ちったぁ後ろ見ろや天之河。てめぇが巻き込んだあいつら見捨てて自分は好きなことをするとか巫山戯んな。」

複数の氷柱を生やして ベヒモスの足止めをする。だが、弱くしすぎたのか破壊して進んできた。

このままでは全滅だ。それを阻むためにハイリヒ王国最高戦力が全力の多重障壁を張る。

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず、“聖絶”!!」」」

二メートル四方の最高級の紙に描かれた魔法陣と四節からなる詠唱、更に三人同時発動。

現れたそれは、下手をすれば防御系の宝具に匹敵するかもしれない純白の護り。

半球状の衝撃がベヒモスの突進を防ぎ、その瞬間、凄まじい衝撃波と共にベヒモスの足元が粉砕され、橋全体が石造りも関わらず大きく揺れる。その揺れはついこの間まで戦いを知らなかったクラスメイトの皆にとっては恐怖そのものであり、撤退中のクラスメイト達から悲鳴が上がり、点灯する者が相次ぐ。

トラウムソルジャーという名前らしき竜牙兵モドキの不気味さと、後ろから迫ってくるベヒモスの気配にクラスメート達はパニック状態に陥っている。

隊列など無視して我先にと階段を目指して我武者羅に進んでいる。騎士団員の一人、アランさんが必死にパニックを抑えようとしているものの、まるで意味を成していない。

瓸がクラスメイトらの防衛に尽力し、アルトリアも危機的状況の者を助けている。

俺は今出来る本気で氷柱を奈落に落ちない様床として展開して足場を増やす。

そうすると竜牙兵モドキ共が広がって氷の足場を踏んで来たので、氷針を生やして串刺しにする。ただひたすらそれを続ける。

その間に何かしらの策が出来たのかハジメ以外が撤退し出す。

数秒後に階段に着き、天之河らが階段入口を死守し出した。なんと、ハジメがベヒモスを抑えているのだ。

そして、ハジメは走り出し、皆が魔術をベヒモスに向けて放ちまくる。が、檜山が狙いをベヒモスからハジメに変えたのだ。それも憎悪と嫉妬、邪魔者がいなくなるという悦びの感情を露わにして。ハジメは間一髪で躱し走り続け、檜山はずっとハジメを狙い続ける。ハジメがクラスメイト達の中から故意的に狙われていることにまともな奴が気付き、白崎にいたっては檜山がハジメを狙っていることを確認するが、既に遅し。

檜山の放った火炎弾がハジメに当たり、押し返され、跳んでいたベヒモスの着地と同時に岩橋は崩壊。ハジメは奈落の底へと落ちていった。

白崎は必死にハジメのあとを追おうとするも、メルド団長に気絶させられて皆が撤退する事となった。

 

……………………俺は1部のクラスメイトを除いて、見限ることにした。

 


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