さて、昨日
既に準備していた(出ていく気で)俺とアルトリア、瓸は鈴の準備を昨日のうちに手伝って整ったので出発することにした。
アランもアランで急いで準備したそうだ。
「そう言えば、君たちは何処に行く気なんだ?俺は騎士寮だから聞いてなかったんだが………」
「なんかねー、グリューエン大火山に行くらしいよ?帰還方法を手に入れるためってさ。」
「帰還?…………あぁ、創世神エヒトに召喚されたにも関わらず送還出来ないからか?確かに七大迷宮になら何かしらの情報があるかもしれないな。」
朝食を食べたら直ぐに出発し、今は王都のギルド本部に向かっている。心配事があるとすれば、美少女なアルトリアや鈴に言い寄る変質者が現れないかどうかだ。登録したら馬車の護衛なりして王都から出るという流れだ。
歩いていれば普通に着いたのでローブを羽織ってから中に入る。
中に入るとむさ苦しいオッサンやDQN共、ケバいオバさんや美少女がゴロゴロとおり、侮蔑や物色、観察などといった視線を向けられる。
ローブを被っていたからか、言い寄って来る者はいない。
とりあえずは受付のカウンターに並ぶ。しばらくしたら、俺達の番になった。
「ギルド本部へようこそ!本日はどのようなご要件でしょうか?」
受付人はテンプレよろしくな美少女だ。名はセリス・ラスト二ーという様だ。
「あぁ、冒険者登録をしに来た。5人分頼む。」
そう言って5人分のステータスプレートを提示する。
「わっかりましたぁ!!登録料は計5000ルタとなります!」
「おっけー、5000ルタね。ほい、銀で合ってたっけ?」
「はい!ちょうど5000ルタを受け取りました!少々お待ちください!」
ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。
「はい!お待たせしました!燚氷嶺亜様、燚氷・P・アルトリア様、燈燐瓸様、谷口鈴様、騎士団のアラン・ソミス様ですね!ステータスプレートの職業欄に冒険者と入ってますので御確認ください!それでは冒険者という職について御説明は必要でしょうか?」
戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに“冒険者”と表記され、更にその横に青色の点が付いている。
青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。……お気づきだろうか。そう、冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなのである。つまり、青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ、ぺっ」と言われているのと一緒ということだ。切ない。きっと、この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているに違いない。
「いや、いい。懇意にしていた人から予め聞いているからな。王都外に出るなら登録しておいた方が後々楽だとか…まぁ、これから王都外に出るのだがちょうどいいクエ…………依頼はあるか?」
「それでしたら…………うん、アンカジ公国行きの商隊があるのですが…………正直、始めたばかりの冒険者は除け者にされるのでやめといた方がいいですよ?」
「別に構わん。俺らの目的地がアンカジ公国の方にあるからな。」
「…………そうっスか」
「ん?」
「あ、はい!分かりました!!ええと、東門に他の参加者が集まっていますのでお急ぎくださいね!!」
「あぁ、セリス嬢も仕事頑張りな。」
そう言い残してギルド本部から出て、東門に向かう。五分で着き、商隊のリーダーであるホーリー・ペレンティクスさんに挨拶をする。
この人もメルド団長に似て気さくな人で、青ランクな俺達でも歓迎してくれた。
ただ、現金ランクらしい『閃刃』のアベルからグチグチ言われている。このアベルとやらは4人の美女を侍らせながら言ってくるので、劣化天之河と称したい所存である。
他にも黒ランク冒険者や紫ランク冒険者がおり、逆に赤ランク冒険者や緑ランク冒険者はおらず、先の黒や紫ランク冒険者らは邪魔くせぇ的な視線を向けてくる。
セリス嬢が言いたかったのはこのことだろう。所がどっこい、此処にはそれを気にする様な小心者はおらず、堂々と指示された中間の護衛をすることとなった。
此処からアンカジ公国までは1週間と少しするらしくちょっとした旅となるっぽい。
✲✲✲
あれから1週間が経ち、アンカジ公国まであと少しなところまで来た。
あれからも青ランクである俺達にイチャモンを付けて来るが俄然せずで突き通した。
ある時、鈴のローブのフードがとれて顔が明かされたその日の夜、鈴が他の冒険者に襲われ、ドコとは言わないが挿入間際に間に合い、殺しはしなかったがぶちのめした。そいつは冒険者職を辞めなければならないだろう深手を負ったが。
抵抗するも英霊予備軍である俺には適わず一方的に急所を殴り、ナニをとは言わないが引きちぎったのは今でも忘れない。
鈴はそれ以来Fチームの誰かと必ず居るようになった。鈴を襲った奴をクリスタベルのもとに引き連れていくのは確定だが。
閑話休題
「…………それにしても…………この砂嵐はきついねぇ!!」
瓸が言う通り、この砂嵐がウザイ。
前は見えんし、ぶつかる砂は勢いついて痛いし。金ランク冒険者のアベルとやらは金だからっていう理由で商隊の馬車の中にいる。アベルが鈴を馬車内に誘っていたが拒否しており、アベルに媚つらう女共が批難していた。その事に黒ランク冒険者らや紫ランク冒険者らは何も言わない。鈴の素顔が割れて以来、鈴への求婚ないしは性接待的なことでイラついていたが………この砂嵐がウザく、俺は軽く切れた。
だから俺はやや本気で剣を凪いで砂嵐を一時的に止ませる。
そのお陰か移動速度が3倍に上がり、無事にアンカジ公国に辿り着いた。
砂嵐を止ませるという天変地異を引き起こしたからか、それ以降鈴に言い寄ったり、グチグチと文句を言われなくなった。アベルは言ってくるが。
依頼を達成して既に分配された金を一人一人に渡していくホーリー。どうやら馬車内にいる間、依頼達成金を一人一人に分けていたようだ。なんでも、金を纏めて渡すとパーティ同士やパーティ内で揉め事が起き、1度殺し合いにまで発展したことがあるとか。それ以降はこうやって渡しているとのこと。
依頼書の最後の欄に「この依頼の達成金は依頼主が直接渡します。」と書いてあったので誰も文句を言わずにギルドアンカジ支部で達成の意を伝えてからこの国で1泊、次の日には必要な食べ物などを補給してからここを出発した。
進んだ先に砂嵐で出来た壁があったので氷のトンネルを精製してから通り抜ける。後を付けてきていたアベル一派や黒や紫ランク冒険者らが通る前に氷のトンネルを消したので、立ち往生しているっぽい。
氷のトンネルを抜けた先にはエアーズロックの3倍はある岩山を発見した。
噂だと山頂に入口があるらしいので、山頂まで移動する。ただ、普通に歩くとかなり時間を食うので、アルトリアが鈴を抱え、俺はアランを背負い、瓸が寄ってくる魔物を狩りながら人が通れない断崖絶壁を駆け上がり、いつの間にか山頂まで来ていた。
たどり着いた頂上は、無造作に乱立した大小様々な岩石で埋め尽くされた煩雑な場所だった。尖った岩肌や逆につるりとした光沢のある表面の岩もあり、奇怪なオブジェの展示場のような有様だ。砂嵐の頂上がとても近くに感じる。
その中でアーチを象っているものがあったので近づいたら中に続く階段があったので中に入る。
内部は正直に言って暑い。なんせ溶岩が空中を浮いていたり、至る所に溶岩が流れてたり溜まったりしていた。
「「「「「…………暑い」」」」」
暑い中を渋々進む俺達。進む中でやっとこさ第1魔物を発見した。のだが…………………溶岩の中で溶岩を身に纏い、口から火を吹いている雄牛であった。
「「「「……………………暑い!!!!」」」」
「………………
ただでさえ暑い中に暑い奴がいたのでプチッと切れて思わず活火山を停止させてしまった。その影響で溶岩は深成岩となり、溶岩を纏う雄牛はその場で起きた水蒸気爆発に寄って爆死した。
完全に火山が停止したので
「「「「……………………寒っ!」」」」
「やりすぎちった。まぁ、先に行こうぜ?」
とりあえず進むことにした。トラップも襲い来る魔物もいないため、暇を持て余し、歩く。
途中、階段を探すよりも、流れていた元溶岩が下に向かう穴を見つけてそこから下に向かうという荒業を使い続けた。
何度か休憩を挟んで進み続け、最後、不自然に反り上がった元溶岩の先には広大な空間が広がっていた。下に飛び降りて深成岩の上を歩む。最後に広大な空間の中央にあった小さな島に辿り着いた。この島、降り立った深成岩から十メートル程の高さにせり出ている岩石の上にあり、その岩石の上に元溶岩のドームが覆っているのである。とりあえず錬成でそのドームに人1人が通れる穴を開けて中に入る。
ドームの中には扉が一切無い唯の長方体に見えるのだが、壁の一部にラウス・バーンの手記に描かれていた七大迷宮を示す文様が刻まれている場所があった。俺達がその前に立つと、スっと音もなく壁がスライドして中に入ることが出来た。
「へぇ、七大迷宮の最深部ってこんな感じなんだな。」
「さぁな。実質的な攻略ってこれが初めてなんだよな。」
アランの呟きに答えつつ中で見つけた複雑にして精緻な魔法陣………神代魔術の魔法陣の中へ踏み込んだ。
【バーンの神山】の時と同じように、記憶が勝手に溢れ出し迷宮攻略の軌跡が脳内を駆け巡る。まぁ、ただ歩いた事だが。最後に、ガーディアンとやらが凍死する様を見て、その凍死が攻略の証と示され、脳内に直接神代魔術が刻み込まれていった。
バーンの手記通り手に入ったのは空間魔術であった。皆がこれに反芻していたら、
カコンッ
と音がなり、目の前の壁に輝く文字が浮かび上がった。
“人の未来が自由な意思のもとにあらんことを 切に願う”
“ナイズ・グリューエン”
これは言外に神神言わずに暮らして欲しい的なことを言っている気がする。
その事は置いといて1箇所だけ窪んだ所があったので、そこに手を突っ込んだら、今まで見たことの無い意匠のサークル状のペンダントがあったのでとりあえず鈴の首に掛けてからこの部屋から出て、深成岩のもとに降りる。
「さて、とりあえず時間が出来たからここで休息をとるか。それに、そろそろ召喚した方がいいかもしれないしな。あ、別になにかしててもいいよ?」
「「召喚???」」
召喚を知らない鈴とアランは疑問符を浮かべていたが、カルデアにいたアルトリアや英霊である瓸は分かっているからか、あぁ、と納得していた。
当分前にエミヤが投影し、Dr.ロマンが送ってくれた大盾を床に置く。
一応7騎召喚する予定である。
まず触媒に
「────素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。」
「────祖には我が半身ペンドラゴン。」
「────降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
「────
「────繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」
「────告げる。」
「────汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」
「────聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
「────誓いを此処に。」
「────我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」
「────汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
大盾の円盤の端が輝き、光の玉が現れ、回転する。さらに強烈な光がとてつもない魔力と共に吹き荒れ、収まった。
アルトリアと瓸は見ているが、鈴とアランはあまりの輝きと風、魔力に冷や汗をかき、しばらくしたらこちらを向いた。
そこには青紫色の帽子を被った金の長髪に蒼眼、白いヤツを模したマントを羽織り、鮮やかな色合いの服(下はスカート)に身を包んだ少女がいた。
「サーヴァント・セイバー、シュヴァリエ・デオン。どうやらまともなセイバーが必要だったようだね、マスター。」
シュヴァリエ・デオン
服装によって男にも女にもなれる(肉体が)不思議な少女。
「あぁ、他のセイバー…………ガウェインはロリコンだし、フェルグスは変態。モードレッドは……関係故に殺り合うかもしれん。ジークフリートはなんか召喚したらヤバそう。シグルドは惚け話しかしないし、沖田に関しては間に合わなさそう。主にスキルのせいで。」
続いて触媒に
再び吹き荒れ、収まったら、白の短髪にヴェールを被った褐色肌で際どい服に身を包んだ少女がいた。
「………………どうした?悪い文明でもあったか?ならば破壊しよう。」
アルテラ
セファールの分身体で尚且つ、フン族の王アッティラ。手には模造品を宝具化した機械的な軍神の剣を持つ。
続いて触媒に
現れたのは黒髪褐色肌で手には真紅の弓を携えていた。
「事情はドクターから聞いた。確かに俺が適任だと思われるだろうな。」
アーラシュ
またの名をアーラシュ・カマンガー。他の英霊と違い、人を守るために戦を終わらせた本当に神代最後の大英雄。
さらに触媒として
「オレはアーチャー、ナポレオン! 可能性の男、虹を放つ男。勝利をもたらすためにやって来た、人理の英雄だ!」
ナポレオン・ボナパルト
「世の辞書に不可能の文字はない」でお馴染みのナポレオン。ただ、異聞帯でスルトの宝具を弾き、オフェリアを立ち治した可能性の皇帝。
次に出した触媒は
「サーヴァント・ランサー、フィン・マックール。この被り物に関しては気にするな。」
フィン・マックール
ディルムッド・オディナに第3の妻を寝盗られ、腹いせに見捨てたフィオナ騎士団の団長………………なのだが、頭に2つ穴が空いた茶色い紙袋を被っている。
さらに
「…………ンを?召喚されたのか。んで、地球と気配が違うが………どうした?」
アキレウス
神にまつわる
ついで用意した触媒は
「む、何処だ此処は?ぬ、貴様がマスターか。此処が何処なのか説明してくれ。」
ヒッポリュテ
アマゾネスの女王であり、神代においては人格者と言われる小柄な少女。何故かヘラクレスに殺された。
次は
「おう、呼んだか?って、キャスターじゃねぇかよ!」
クー・フーリン
ケルト神話で1番有名な英雄。しかし、今回は槍兵ではなくドルイドの賢者として召喚された。
次に
『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
ハサン・サッバーハ
暗殺教団サッバーハの教主第19代目。個性的な奴が多く楽しいが、仕事に関しては役に立つ。のだが、今は多重人格で分離した皆でキレッキレなダンスを踊り、召喚されたことに気づいてない。
最後に
ヘラクレス
曰く、十二の難業を乗り越え、神の座に至りし大英雄。武に関する術全てを体得してるとか。
結局10騎の英霊を召喚して、全員の維持が
「時間を食ってすまんな。紹介する、ヒッポリュテのポルテ嬢とアーラシュだ。そこの仮面たちは個人で聞いてくれ。」
「彼らが高次元体なのは魔力量で分かるけど…………召喚した訳ってなんだ?」
「アラン、気になるのは分かった。それならこれから面倒くさくなる前に要因を説明しておこう。」
メルド団長にしたこの世界の真実をアランにも教えた。アランは教会が胡散臭く感じていたらしく、この世界の真実を知って俺の真の目的を悟ったっぽい。
「それじゃあ、脱出しますか!ゲート!!」
先程の岩山に登り、空間魔術を早速使ってみることにした。
考えたのは最初グリューエン大火山に入った方とは真反対のメルジーネ海底遺跡があると思われるエリセン側の砂嵐の外側に繋げたのだ。
「「「おぉぉ!」」」
皆が通り抜け、最後に俺が出る。その時に絶対零度を解除しておくのも忘れない。いや、時間逆行で過去に戻して溶岩を復活させておくのも忘れない。
「脱出したのはいいけど………次は何処に行くの?次は今回みたいには行かなそうだけど………」
「あぁ、エリセン辺りの海域にあるだろうメルジーネ海底遺跡に行く。鈴の首にかけたペンダントは満月に照らすとメルジーネ海底遺跡の場所を照らしてくれるっぽいからな。」
何も面倒事が起こることなく次の七大迷宮を目指し歩んでゆく。
現攻略済み
バーンの神山
グリューエン大火山