王なる少女と見る世界   作:星の空

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第8話 エリセンとメルジーネ海底遺跡と一時帰還

 

グリューエン大火山を難なく攻略してから歩いて半月、海を発見した。

それからカルデアに半月以内に200海里よりさらに奥まで潜れ、ヘラクレスの射殺す百頭(ナインライブズ)を全て受けてもある程度大丈夫な魔力稼働式潜水可能水陸両用車を頼み、届くまで鍛錬をしたりエリセンに寄って水産物の料理を食べ回ったりして過ごした。が、ある時、子供が攫われたそうで、髑髏仮面集団に捜索を頼んだ。

頼んだ次の日に、水陸両用車が届いた。なんでも1週間程で出来たはずなのだが、ライオン顔と電撃男があぁのどぉのでさらにかかり、何処ぞの探偵とヴィランが少しズレてるのそれだと何処がダメになるのと理論し合って更にかかり、子供達(ジャックやナーサリー)が弄って1からやり直しで更に時間がかかり、やっと残さできたとの事。ドクターが凄い窶れてんですが………どんまい。

「さて、次の満月の日は何時だったか………」

「えぇと、前に見たのが1ヶ月前くらいだったから、今日か明日くらいじゃない?」

俺の呟きに鈴が答えてくれた。

「オーケー、それなら1人だけ外で待機な。満月なら運転席に直行してくれ。」

ちなみに、この水陸両用車、異聞帯でお世話になったあの大型車のバージョンアップである。そのため中に部屋があるのだ。しかも嬉しいことにこの車、カルデアのマスターの魔力を補助する機械と繋がっているため全員が全力戦闘をしても問題がない。これで、一時的に止めていた静寂の終剣(イルシオン)に魔力を貯めることに集中出来る。

その日の夜、鈴の予想通りに満月だった。

外で待機していたのはクー・フーリンで、満月だと分かったらいつの間にか来ていた。なので出発し、約1時間後に沖にまで辿り着いた。着いたら鈴からペンダントを借りて1度外に出てペンダントを月に照らす。すると、真ん中のランタン状の空洞に少しずつ月の光を吸収するように底の方から光を溜め始めていた。それに伴って、穴あき部分が光で塞がっていく。

ランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると、その直後ランタンから一直線に光を放ち、海面のとある場所を指し示した。

「予想通り」

水陸両用車の中に入り、潜水モードにして入水。ランタンの指す光に従って進む。

ちなみに運転は騎乗Aランクのヒッポリュテが担当している。アキレウスは少々荒っぽく、危なっかしいから遠慮してもらった。

進み続けると海底の岩壁地帯に着いた。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。その指す場所に潜水車が近寄りペンダントの光が海底の岩石の一点に当たると

 

ゴゴゴゴッ!

 

と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。

その音と震動は、岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。

「………………ゴクッ」

この世界出身のアランはこの世界にこんな場所があったのか……と内心で思っているのか唾を飲んでいた。

潜水車を操作して海底の割れ目へと侵入していく。ペンダントのランタンはまだ半分ほど光を溜めた状態だが既に光の放出を止めており、暗い海底を照らすのは潜水車のライトだけだ。

「行くぞッ!!!!!!!!」

『おうッ!!!!!!!!!!!!!!!!』

中に入り込んだ。その途端、

 

ゴウゥンッ!!!!!!!!

 

と横殴りの衝撃が船体を襲い、一気に一定方向へ流され始めた。だが、騎乗Aランク持ちにとっては些細な事で、立て直した。

しばらく流れに任せるが一向に着かず、皆が困惑しだした時にデオンが気づいた。

「…………うん……やっぱり…………聞いてくれ、此処ドーナツ状になっててずっと回ってる。壁のどこかに入口があるかもしれないから探した方がいいかもしれない。」

『!?!?!?!?!?』

意気揚々と乗り込んだ癖にズッコケてしまう事態にあった。確かに、流れた先がゴールではなく延々と回ることもあるだろう。誰も気づかなかったので落ち込む者が多数。

「あ、あそこに紋章を見つけた!ポルテ嬢!もっと寄れ!」

「無茶言うな!結構胆力いるんだぞ!?」

グルグルと周回していたらナポレオンが壁に五十センチくらいの大きさのメルジーネの紋章が刻まれている場所を発見した。

何とかその場を維持しながら壁に近づく潜水車。機転を効かせた鈴がその紋章にペンダントに残る光を紋章に照らす。

すると、ペンダントが反応しランタンから光が一直線に伸びる。そして、その光が紋章に当たると、紋章が一気に輝きだした。

しかしそれだけ。

「ッ!!!!この紋章五芒星刻んでません!?どーなつ?状になってるなら5箇所これがあるんじゃないんすか!?」

どうやらアランからしてみたらあと4箇所に同じのがあるのではないかとの事。

皆で血眼になって探し、3つ済ませた。最後の1つをアルテラが適当にそこじゃない?と今まで探してた所とは論外な所を指して、とりあえず行くとあった。

残り少ない月光を最後の紋章に注ぐ。

遂に円環の洞窟から先に進む道が開かれた。

 

ゴゴゴゴッ!

 

と轟音を響かせて洞窟の壁が縦真っ二つに別れる。

特に何事もなく奥へ進むと真下へと通じる水路があり、潜水車を進めるポルテ嬢。すると突然、車体が浮遊感に包まれ一気に落下した。

「総員衝撃注意!!!!!!!!」

ポルテ嬢の叫びと同時に鈴とアランはヘラクレスに保護してもらい、それ以外は衝撃に注意する。

直後、

 

ズシンッ!

 

と轟音を響かせながら潜水車が硬い地面に叩きつけられた。

どうやら陸地に出たようだ。フロントガラスで見る限り外は海中ではなく空洞になっているようだった。

潜水車の外は大きな半球状の空間で、頭上を見れば大きな穴があり、どういう原理なのか水面がたゆたっている。水滴一つ落ちることなくユラユラと波打っており、彼処からこの空間に出て落下したっぽい。

そんなことを思っていると、レーザーの如き水流が流星さながらに襲いかかる。

が、この車はヘラクレスの秘技を耐える防御力を誇るため、意味が無い。

ポルテ嬢はとりあえず奥に向かうために運転を再開させる。洞窟のサイズと潜水車の大きさがかなりギリギリで少し慎重になっている。

通路の先に進むと、いきなり通路に半透明なゼリー状の壁が出来た。

が誰もその事に気づかずに進む。

上からもその事はゼリー状の何かが落ちるが無意味。しかしウザかったので、アキレウスに宝具の使用許可を出して一掃してもらう。

その影響で空間そのものが弾け飛んだ。クリオネじみた何かが逃げていけのが見えたが気にせず進む。が、行き止まり。

「どうやらここで降りねば先に進めんらしいぞ、マスター。」

「あぁ。全員降りてくれ。」

全員降りたら潜水車を異空間に仕舞い、亀裂の中で渦巻くものを見つけたので、俺と鈴、アラン以外全員霊体化して貰った。アルトリアは俺の中に戻っていく感じだ。

鈴を中心に離れないように手を繋いで氷で固定。そして、エリセンで買っておいたただの鉄剣で亀裂を叩いてぶち壊した。

その途端、床がぶち抜けて落下する。ついでに潜水車に乗ってたため気づかなかったが俺達の落下と同時に溜まってた海水も流れ、その激流に飲まれて流される。

しばらくしたら足をつけれる場所まで流れてきたので陸に上がる。そこで氷を解除して手を離す。

鈴とアランは海水を含んでしまったからかむせていた。とりあえず真水を渡しておく。

周りを見渡すと、真っ白な砂浜と奥にジャングルがあることしか分からない。

頭上一面には水面がたゆたっていた。結界のようなもので海水の侵入を防いでいるようだ。広大な空間である。

「全員出てきても大丈夫だ。」

分断されずに済んだのでサーヴァントらを実体化させ、鈴とアランが立ち治ったので奥に進む。

進んだ奥は岩石地帯となっており、そこにはおびただしい数の帆船が半ば朽ちた状態で横たわっていた。そのどれもが、最低でも百メートルはありそうな帆船ばかりで、遠目に見える一際大きな船は三百メートルくらいありそうだ。

岩場の隙間を通り抜け、あるいは乗り越えて、時折、船の上も歩いて先へと進む。どの船も朽ちてはいるが、触っただけで崩壊するほどではなく、一体いつからあるのか判断が難しかった。

「こりゃあ10世紀は優に超えるぞ。」

クー・フーリンの見立てでは1000年以上昔のものらしい。

「…………此処に人間族と魔人族が争う原因となった何かがあるかもしれない。」

アランはアランで、今まで崇めていた存在がどれだけ醜悪なのかを分かりかねていた。そんな時に1000年以上昔のものがあったとしたら誰かの手記なり過去の情報が分かるかもしれない。そう思っていたようだ。

皆がキョロキョロしながら船の墓地を歩んで、この広大な空間の中央に来たら景色が変わった。

 

――うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

――ワァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「ッ!?全員背を会わせろ!」

全員で背中合わせになり、警戒する。だが、この光景は………………天之河に見せたら戦争を嫌でも理解するとだけ言っておこう。

変わった景色は墓地から大海原の上に浮かぶ船の甲板に立っていた。

そして周囲に視線を巡らせば、そこには船の墓場などなく、何百隻という帆船が二組に分かれて相対し、その上で武器を手に雄叫びを上げる人々の姿があった。

そうこうしている内に大きな火花が上空に上がり、花火のように大きな音と共に弾けると何百隻という船が一斉に進み出した。俺達が乗る船と相対している側の船団も花火を打ち上げると一斉に進み出す。

そして、一定の距離まで近づくと、そのまま体当たりでもする勢いで突貫しながら、両者とも魔法を撃ち合いだした。

 

ゴォオオオオオオオオ!!

 

ドォガァアアン!!

 

ドバァアアアア!!!

 

轟音と共に火炎弾が飛び交い船体に穴を穿ち、巨大な竜巻がマストを狙って突き進み、海面が凍りついて航行を止め、着弾した灰色の球が即座に帆を石化させていく。

俺達の乗る船の甲板にも炎弾が着弾し盛大に燃え上がり始めた。船員が直ちに魔法を使って海水を汲み上げ消火にかかる。

戦場――文字通り、このおびただしい船団と人々は戦争をしているのだ。放たれる魔法に込められた殺意の風が、ぬるりと肌を撫でていく。

戦場を初めて見る鈴はこの時点で顔を青ざめさせており、アランもギリギリ耐えているようだ。

見ていたら不意に不穏な気配がした。

周囲を見渡せば、雄叫びを上げながら、かなり近くまで迫ってきた相手の船団に攻撃する兵士達に紛れて、いつの間にか、かなりの数の男達が暗く澱んだ目で俺達の方を見ていた。

全員が警戒すると一斉に襲いかかってきた。

「全ては神の御為にぃ!」

「エヒト様ぁ!万歳ぃ!」

「異教徒めぇ!我が神の為に死ねぇ!」

そこにあったのは狂気だ。血走った眼に、唾液を撒き散らしながら絶叫を上げる口元。まともに見れたものではない。

相対する船団は、明らかに何処かの国同士の戦争なのだろうと察することが出来るが、その理由もわかってしまった。これは宗教戦争なのだ。よく耳を澄ませば、相対する船団の兵士達からも同じような怒号と雄叫びが聞こえてくる。ただ、呼ぶ神の名が異なるだけだ。

「ちっ!全員マストの上に退避!!」

鈴は近くにいたポルテ嬢に、アランはアキレウスに引っ張られてマストの上に全員が飛び移る。

下を見れば狂気的な目で俺たちをガン見してくる。

「…………ふぅん、こいつら全員仕留めねぇ限り延々と追いかけられるぞ?」

「そうか。聞いたな?アランと鈴は此処から遠距離で狙え、ヘラクレスは2人の護衛。それ以外は………………特攻だ!魔力で武器コーティングした方が殺りやすいかもな!」

一斉に攻める。俺は次元屈折現象(ゼルレッチ)や魔力放出で蹂躙。アルトリアは風王結界(インビジブル・エア)を星剣約束された勝利の剣に纏っているため一人一人的確に処理、瓸やその他の英霊は魔力体なので殴る蹴るで殺ったり、と蹂躙して行く。

そこかしこで相手の船に乗り込み敵味方混じり合って殺し合いが行われていた。ハジメ達が攻撃した場合と異なり、幻想同士の殺し合いでは、きっちり流血するらしい。甲板の上には、誰の物とも知れない臓物や欠損した手足、あるいは頭部が撒き散らされ、かなりスプラッタな状態になっていた。どいつもこいつも“神のため”“異教徒”“神罰”を連呼し、眼に狂気を宿して殺意を撒き散らしている。

次々と切り殺すも、狂気の兵士達は怯むどころか気にする様子もなく、特攻を繰り返して来た。

「アルテラ!第1宝具で一掃しろ!!!!」

「了解した。命は壊さない。その文明を粉砕する。軍神の剣(フォトン・レイ)!」

虹の極光と共に軍勢に突貫。その一撃で殲滅した。

それと同時に元の空間に戻った。

「…………………………おいそれと教会は信用出来ない。創世神エヒトがこれ(・・)を望んでいるなんて。」

アランは戻って早々、言った一言がこれだった。これと称したが、エヒトは最終的に自分でこれ以上の悲劇を産もうとしてるのだ。もし仮にエヒトがそれを成し遂げたらこれはまだ甘かったと言わなくてはならないのではないだろうか。そんな不安を醸し出す一言だが、

「不安がるのも分かるが、その対応策は既に出来てる。絶対に成功させねぇよ。」

一応、クー・フーリンがフォローしている。

全員が落ち着いたら奥に進む。

だが、誰も言葉を発さない。こっそりと通信機をONにして見ていたドクターですらトイレにリバースしに駆け込んでいた程酷く醜いものだったのだから。

墓地の奥に着き、顔を上げるとそこには先程の全長三百メートル以上、地上に見える部分だけでも十階建て構造になっている。そこかしこに荘厳な装飾が施してある船を見る。

全員が甲板に飛び移ると案の定、景色が変わった。だが、先程の醜さは無く、代わりにキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしている楽しそうなパーティであった。

『・・・・・・・』

皆は思わず口をあんぐりと開けて呆然とした。先のものと差が凄いからだ。

暫く固まっていたら、俺達の背後の扉が開いて船員が数名現れ、少し離れたところで一服しながら談笑を始めた。休憩にでも来たのだろう。

その彼等の話に聞き耳を立ててみたところ、どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。長年続いていた戦争が、敵国の殲滅や侵略という形ではなく、和平条約を結ぶという形で終わらせることが出来たのだという。船員達も嬉しそうだ。よく見れば、甲板にいるのは人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた。

暫く固まっていると甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。それに気がついた人々が即座におしゃべりを止めて男に注目する。彼等の目には一様に敬意のようなものが含まれていた。

初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている。時と場合を考えれば失礼に当たると思うのだが……しかし、誰もフードについては注意しないようだ。

「ッ!?!?!?!?!?!?!?……………………おい、全員さっきの状態で警戒しておけ。恐らく惨劇が起こる。アラン、よく見ておけ。あのフードを被っているのが神の使い(ノイント)だ。」

「……………………分かった。」

やがて、全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった。

「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」

そう言って始まった演説を誰もが身じろぎ一つせず聞き入る。演説は進み、和平への足がかりとなった事件や、すれ違い、疑心暗鬼、それを覆すためにした無茶の数々、そして、道半ばで散っていった友……演説が進むに連れて、皆が遠い目をしたり、懐かしんだり、目頭を抑えて涙するのを堪えたりしている。

どうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしい。人間族の中でも、相当初期から和平のために裏で動いていたようだ。人々が敬意を示すのも頷ける。

演説も遂に終盤のようだ。どこか熱に浮かされたように盛り上がる国王。場の雰囲気も盛り上がる。

しかし、召喚初日にランゴバルドがしていた恍惚な表情を見て精神耐性の魔術を掛けておく。

「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………実に、愚かだったと・・・・・・」

国王の言葉に一瞬、その場にいた人々が頭上に“?”を浮かべる。聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。その間も国王の熱に浮かされた演説は続く。

「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」

「い、一体、何を言っているのだ!アレイストよ!一体、どうしたと言うッがはっ!?」

国王アレイストの豹変に一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出た。そして、アレイスト王に問い詰めようとして……結果、胸から剣を生やすことになった。

刺された魔人族の男は肩越しに振り返り、そこにいた人間族を見て驚愕に表情を歪めた。その表情を見れば、彼等が浅はかならぬ関係であることが分かる。本当に信じられないと言った表情で魔人族の男は崩れ落ちた。

場が騒然とする。「陛下ぁ!」と悲鳴が上がり、倒れた魔人族の男に数人の男女が駆け寄った。

「さて、諸君、最初に言った通り、私は諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神から見放された悪しき種族ごときが国を作り我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして唯一神たる“エヒト様”に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も今日この日に終わる!全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ!それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ!さぁ、神の忠実な下僕達よ!獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ!ああ、エヒト様!見ておられますかぁ!!!」

膝を付き天を仰いで哄笑を上げるアレイスト王。彼が合図すると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れた。

甲板は、前後を十階建ての建物と巨大なマストに挟まれる形で船の中央に備え付けられている。なので、テラスやマストの足場に陣取る兵士達から見れば、眼下に標的を見据えることなる。海の上で逃げ場もない以上、地の利は完全に兵士達側にあるのだ。それに気がついたのだろう。各国の重鎮達の表情は絶望一色に染まった。

次の瞬間、遂に甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの……一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった。

何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだがほとんどの者達が息絶え、甲板は一瞬で血の海に様変わりした。ほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだ。海に飛び込んだ者もいるようだがそこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。

アレイスト王は部下を伴って船内へと戻っていった。幾人かは咄嗟に船内へ逃げ込んだようなので、あるいは狩りでも行う気なのかもしれない。

彼に追従する男とフードの人物も船内に消える。

とその時、ふと、フードの人物が甲板を振り返った。その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪が一房見えたので記憶しておく。

これで終わりなのか朽ちた元の空間に戻り、先程は閉じられていた船内への入口が開いていたので皆の顔を見てから進むことにした。

暫く進んだら白服の少女がいたが氷の標本にして放置して奥に進む。

その後も、廊下の先の扉をバンバン叩かれたかと思うと、その扉に無数の血塗れた手形がついていたり、首筋に水滴が当たって天井を見上げれば水を滴らせる髪の長い女が張り付いて俺達を見下ろしていたりゴリゴリと廊下の先から何かを引きずる音が下かと思ったら、生首と斧を持った男が現れ迫ってきたり……

その悉くを俺達は順番に打ち砕いて船倉までたどり着いた。

重苦しい扉を開き中に踏み込む。船倉内にはまばらに積荷が残っており、俺達はその積荷の間を奥に向かって進む。すると、少し進んだところでいきなり入ってきた扉が

 

バタンッ!

 

と大きな音を立てて勝手に閉まってしまった。

その後は物理トラップがバンバン攻めてくる。そのうち4分の3は幸運E-筆頭であるクー・フーリンが襲われ、何処からか「ランサーが死んだッ!!!!!?」「この人でなし!!!!!!!!!!!!」と聞こえたが無視しておく。

最後に竜巻が起きてジャックの宝具暗黒霧都(ザ・ミスト)のようなものが発生する。が、ヘラクレスの咆哮により霧散し、俺は除霊をして鈴を乗っ取ろうとした女霊を追い払う。

それから少し経つと、倉庫の一番奥で輝き始めた魔法陣が現れたのでそれに皆が乗って移動する。

淡い光が海面を照らし、それが天井にゆらゆらと波を作る。

その空間には中央に神殿のような建造物があり、四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また周囲を海水で満たされたその神殿からは海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そしてその円形の足場にも魔法陣が描かれていた。

その四つある魔法陣の内の一つが、にわかに輝き出す。そして、一瞬の爆発するような光のあと、そこには人影が複数現れた。

無論、俺達である。

「ふわぁぁぁっ!!」

神殿を見た鈴は神秘的過ぎて思わず歓喜していた。

どうやら、メイル・メルジーネの住処に到着したようだ。

キョロキョロしながら神殿内部を進み、中で一際目立つ祭壇の元に来た。

全員で魔法陣へと足を踏み入れる。いつもの通り、脳内を精査され、記憶が読み取られた。しかし、今回はそれだけでなく、他の者が経験したことも一緒に見させられるようだった。

が同じものだったので少々味気ないが。

しかし、他の場所についても情報が入ってきた。

何でも、魔人族が人間族の村を滅ぼした事がきっかけで、この都を首都とする人間族の国が魔人族側と戦争を始めたのだが、実は、それは和平を望まず魔人族の根絶やしを願った人間側の陰謀だったようなのだ。気がついた時には、既に収まりがつかないほど戦火は拡大し、遂に、返り討ちに合った人間側が王都まで攻め入られるという事態になってしまった……という状況だったらしい。

そして、その陰謀を図った人間とは、国と繋がりの深い光教教会の高位司祭だったらしく、この光教教会は、聖教教会の前身だったようだ。更に、彼等は進退窮まり暴挙に出た。困った時の神頼みと言わんばかりに、生贄を捧げて神の助力を得ようとしたのだ。その結果、都内から集められた数百人の女子供が、教会の大聖堂で虐殺されるという凄惨な事態となった。

無事に全員攻略者と認められたようである。

「再生…………魔法…………?」

「成程な。鈴、結界魔術を使った時に罅が入った時に使ってみろ。結構応用が効くかもしれないな。」

アランが再生というものに疑問を持ち、クー・フーリンが魔術師として鈴にアドバイスをする。言い終えると同時に床から直方体がせり出てきた。小さめの祭壇のようだ。その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり人型となった。

人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は、白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。どうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。

彼女は、ラウスの手記に書かれていた解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、ラウスの手記と同じことを言い終えると、最後に言葉を紡いだ。

「……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています」

そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。

これで、証が3つ目である。

七大迷宮がかなり過酷だったので攻略は真剣に取り組もうと再認識し用途した時に神殿が鳴動を始めた。そして、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。

「ッ!?全員乗れ!!!!早く!!!!」

咄嗟に潜水車を出して全員が素早く乗りギリギリで閉めた。

『ふぅ、危なかった。』

「休みたい奴は休め、俺と…………ポルテ嬢は運転席に行く。」

休もうとしていたポルテ嬢の後ろ首を掴んで運転席に向かう。皆がポルテ嬢に対して合掌していたのは見ずとも分かった。

運転席に着いた頃にフロントガラスを見たら物凄い勢いで上昇していた。最後の天井部が開いて広大な海の中に放り出された。

直ぐにエンジンを掛けて此処を離れる。

クリオネじみた何かが若干寂しそうだったのは忘れよう。

何とか、海上まで浮上し、俺とポルテ嬢以外は日光浴を始める。まぁ、濡れてばっかしだったからな。

出発した時に駐屯していた場所まで戻り、ここで数日ほど休むことにした。

そこに久しぶりに感じる声が聞こえた。

『おーい、嶺亜。返事してくれぇー』

「どうした?メルド団長。今は休息中なのだが………」

『あぁ、あと2週間で3ヶ月経つから1度戻って来い。行ける奴だけでベヒモスに再挑戦するつもりなんだ。有志だがな。俺は伝えたからな?畑山先生が待ってるから帰ってこいよ?』

「了解した。そんじゃおやすみ。」

メルド団長から戻ってくるように言われたので1泊した後、アンカジ公国を素通りして森に入り、数日後にハイリヒ王国の東門の少し離れた場所で降りて潜水車を異空間に仕舞い、俺、アルトリア、瓸、鈴、アラン以外は霊体化して貰い、ステータスプレートを門番に提示してから中に入る。

王宮に着くまでに食べ歩きをしながら歩き、王宮に帰還した。さて、クラスメイト達は一皮向けた奴がいるのだろうか?

 


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