塩パンに恋をして   作:アインシュタイン

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更新遅くなりました。
申し訳ございません。

頑張って更新しようと思います。

感想お待ちしております。


塩パンに恋をして#1

 

Δ塩パンに恋をして#1∫☆

 

 

 

僕が入学してから最も嫌うもの。

 

それは“自己紹介”だ。

 

「それじゃあ、順番に自己紹介しましょう。もう

高校生ですから自己PRであることを意識して下さ

いね♪」

 

先生の発言に皆が騒ぎ始めた。

 

高校生だから自己PRを意識って、高校生未満の人

は自己紹介を自己PRだと思ってないのか?

 

----------------------

5分後…

 

 

何人かの自己紹介が終わった。個人的に興味深い

と感じたのは青山君かな。

 

「では、次は牛込さん。」

 

「は、はい!牛込りみです。えと……うぅ……

よろしくお願いします。」

 

「はい。次は遠藤さん…」

 

うん。牛込さんは恥ずかしがり屋なのだろうか。

これも関わりたくないタイプだな。

 

そんなことを考えているともっと関わりたくない

女、戸山香澄が

 

「PRってアピールだよね…アピール…」

 

と、真剣な顔をして悩んでいた。

 

あっという間に自己紹介が進み、次は戸山の番

になった。アイツは大丈夫なのだろうか。

 

「では、戸山さん。」

 

「ハイ!」

 

返事が大きいという点で失格かな。

 

「皆さん、こんにちは!戸山香澄、15歳です!」

 

ここはアイドルのオーディションか?

年齢は大体皆一緒だろ。どうでも良い宣言するな

 

「私がこの学校に来たのは、楽しそうだったから

です!」

 

あー。ダルい。

楽しそうで入るねー。気楽なもんだ。

 

「中学は地元の学校だったんですけど、妹がここ

に通ってて文化祭に来てみたら、皆楽しそうでキ

ラキラしてて、ここしかないって決めました!」

 

僕はこういう人間が本当に苦手だ。

説明くらい上手に出来ないのか?

 

「だから今、すっごくドキドキしてます!」

 

キラキラとかドキドキとか副詞を使いすぎだ。

もっと良いスピーチをしてくれ。

 

あのオレンジとかいうスマホ会社の人見習えよ。

ステューブジョンズさんとか言ったっけ。

 

「私、小さい頃『星の鼓動』を聞いたことが

あって。キラキラ、ドキドキって。そういうのを

見つけたいです!」

 

星の鼓動?何を言っているんだ。

 

そんなもの存在しないと思うが?それは彼女の

鼓動であって星の鼓動ではないと思う。

 

どうかそこら辺に物理オタクでもいたら説明して

欲しいくらいだ。

 

「とにかく、キラキラドキドキしたいです!」

 

やっぱりこの女には近づかないでおこう。

 

僕はそう、今までよりも強く決意した。

 

こうして彼女の自己紹介が終わる。

はずだったが…

 

僕と同じで星の鼓動を気になった奴がいたのだ。

 

「星の鼓動って?」

 

全く。気になっても口を出すなよ。

 

「え~っと、星がキラキラ~って。」

 

だからそれを説明してくれって言ってるのに。

 

「ふふ。可愛い。戸山さんって面白いね♪」

 

おい!何でアイツの世界に導かれてるんだよ。

折角僕と似てる人がいたと思ったのに…

 

最近の高校生は趣味が悪いな。

 

そんな親父みたいなことをしみじみ感じていると

僕の番の一個手前まで自己紹介が進んでいた。

 

「次は山吹さん♪どうぞ。」

 

「はい。山吹沙綾です。両親はパン屋です。

何か食べたいパンがあったら言ってください♪」

 

あー。掲示板の前の出来事を覚えてる僕には

新しい情報はゼロだな。時間の無駄だ。

 

「次は、吉澤君。」

 

よし。待ちに待った僕の番だ。

 

「吉澤です。」

 

僕はそうとだけ言って席についた。

 

シーン……

 

どうして皆静かなんだ?

 

10秒程沈黙が続いている。先生が早く進めてくれ

れば良いのにな。

 

こういう状態に陥った方は分かると思うが、大抵

沈黙が起こると人は声を出しづらいものだ。

 

このまま沈黙が続くと思われたそのとき!

 

「え?吉澤君。今ので終わり?」

 

隣の山吹って女が声を出した。

 

僕は声を出さずに首で頷く。

 

「あ、えーっと。次は…」

 

先生はまるで見てはいけないものを見たかのよう

な顔で進め始めた。

 

何かまずいことを言ったか?

 

「ねえ、吉澤君。自己紹介あれで良いの?」

 

隣の山吹はパッチリとした青い目でこっちを

覗き込むように聞いてくる。

 

「ああ。」

 

「何で?」

 

山吹はもっと目をパッチリさせて聞いてきた。

座高の問題でまあまあ下から目線だ。

悪いが僕はそういうのには惚れないからな。

 

「興味ない。」

 

僕は山吹の顔も見ず、そっぽを向いて答えた。

 

「プッ!何それ?吉澤君って面白いね。」

 

「嬉しくないから。」

 

「吉澤君、照れてるの~?」

 

山吹って女は偽善の塊だと思ってたがSっ気もある

みたいだ。

 

僕は人には興味がない。

 

関わっても良いことなんて無いからな。

 

「はーい。自己紹介は終わりです。どうやらこの

クラスは個性が強いみたいだね。」

 

お、終わったのか。

 

先生は個性が強いっていってるけど、正直に言う

なら、イカれた奴らの集まりってことだろ。

 

「はーい。それじゃあ10分休憩でーす。」

 

僕はやっと地獄から救出された。

 

と思ったが…

 

「沙綾~」

 

10分休みも地獄と化したのだった。

 

「変なこと言ったかな~自己紹介。」

 

「あー…」

 

戸山って女は変なこと言った自覚無いのか?

山吹って女は苦笑いしてるし…

 

「あーってやっぱり変だった?」

 

うんうん。僕は心の中で5回ほど頷いた。

 

「いや。私は良いと思ったよ♪」

 

Sっ気があると思ったら偽善の塊だったり、この

山吹って女、わからない奴だな。

 

「君はどう思う?」

 

「えっ?」

 

僕は戸山からの突然の質問に正直驚いた。

 

なるべく関わりたくなかったのに。

ここはなるべく印象に残らないような返事を

しなくてはいけない。

 

つまり、こういうこと。

 

「別に」

 

決まったー!

 

この『別に』という回答、内容の薄さNo.1だ。

印象に残らないにちがいない。

 

「何それ~キラキラドキドキしてないじゃん!」

 

「まあまあ」

 

今回は山吹が戸山を大人しくしてくれたから良か

ったが、本当にコイツは面倒くさそうだ。

 

「キラキラドキドキしたいな~」

 

まだ言ってるよこの女。

 

「高校に入って新しい環境になったんだし、新し

いこと始めてみるのも良いんじゃない?」

 

新しい環境になったから新しいことを始める?

そんな必要はない。

 

あくまで環境が変わっただけで、することは変え

なくていいのだ。

 

小学校から中学校、中学校から高校になっただけ

で、やることは勉強だろ?

 

「ほんと!?じゃあ明日から部活見学一緒に

行ってくれる?」

 

新しい事と聞いて部活になることがまずおかしい

だろ。他に新しい事は無いのか?

 

それに、山吹にだってやりたい部活はあるだろう

 

「あー…ごめん。部活は…放課後はうちの手伝い

があるから…」

 

なるほど。パン屋の娘も大変だな。

 

「そっかぁ…」

 

ところで僕は何部かというと、勿論帰宅部だ。

 

なぜなら学生のすべきことは学習であり、決して

部活動ではない。その為、この学校では部活動の

参加は自由だ。

 

そんな強制でないものを、無理にする必要はない

のだ。人生は楽しんだ者勝ちだからな。

 

----------------------

 

キーンコーンカーン…

 

チャイムが学校中に響き渡った。

そう、学校の終わりを告げたのだ。

 

これこそ、本当に地獄から解放される時だ。

 

帰りのHRも終わり、いよいよ学校から出る。

 

後は下駄箱に上履きを入れ、土足に履き替える

だけ。

 

僕は今日一日のストレスを解消する為、少し力を

入れて下駄箱の扉を開けた。

 

すると…

 

「痛っ!」

 

聞き覚えのある声がした。

 

そう。山吹の頭に扉が当たったのだった。

 

よし。早く帰ろう。

僕はその場を去ろうと土足を履き始めた。

 

「ちょっと!吉澤君。無視?」

 

捕まったな。

 

「何が?」

 

僕は気づいているが、まるで知らなかったように

とぼけた顔をした。

 

「頭に扉が当たったんだけど…」

 

座っているときより身長差がある為、かなり下

から目線だ。

 

「知らない。」

 

僕は早く帰ろうとした。

家に帰ったら何をしようか。

 

「知らないじゃなくて…」

山吹が折れる気配はない。

ここは…

 

「君の頭がそこにあったのが悪い。」

 

「え?」

 

「それでは。」

 

僕はすごい速さで逃げ出した。

 

山吹の『えー!ちょっと!』という声も決して

聞こえなかった。うん。

 

 

それから20分ほど経っただろうか。

 

少し寄り道をしてしまい、商店街を通って家に

変えることにした。

 

「今日もコンビニのカレーパンでいっか。」

 

僕はそんな独り言を呟き、商店街を歩く。

 

何だろう。良い匂いがしてきた。

この匂い、どこかで嗅いだような気がする。

 

いつもなら思い出せる僕も、今回は思い出せ

なかった。

 

匂いの元は…

 

どうやらパン屋のようだ。

 

僕は匂いにつられ、パン屋の名前も見ずに店に

入った。

 

「いらっしゃいませ~」

 

エプロンをつけていた綺麗な茶髪の女の人が

振り向いた。

 

「あ…」

「あ…」

 

これが僕と山吹の恋愛小説になりそうもない

出会いだった。

 

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

前も言いましたが、これはとある方のリクエスト
で作りました。

是非リクエストがあったら、一人につき何作でも
良いので、ガンガン募集しています。

抹茶さんに期待…

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