二人の関係が少しうごくかも!?
Δ塩パンに恋をして#2∫☆
「「あ…」」
僕が匂いにつられて向かった先、それはパン屋
だった。しかし…
“普通のパン屋”ではなかったのだ。
「い、いらっしゃいませ~」
「……」
そう。ここは今日から同級生で、隣の席の山吹の
家のパン屋だ。
沈黙がどのくらい続いただろうか。
体感的には3分だが、実際は15秒ほどだろう。
僕らはお互いを見たままずっと黙りこんでいた。
その沈黙を遮ってくれたのは
「沙綾~ 紗南が呼んで…」
山吹の母親らしき人だった。
顔はとても似ていて、髪の色もそっくりだ。
まあ世間的に見たら美人に属するのだろう。
ということは山吹は将来的に…
なんて考えてしまった自分を消し、いつも通りの
僕に戻る。
「あら。沙綾と同じ花咲川の制服じゃない。
こんにちは。沙綾、彼はお友達?」
「あー。うん。隣の席の吉澤君。」
この二人が並んで話しているとDNAのすごさを
実感する。
「そうなのね。でも、外部生の子よね。彼はどう
してここに?」
「う~ん。分かんない。」
「あの…」
「「何?」」
うわ。ハモった。親子は恐るべし
「一言言わせてもらうと友達じゃないです。」
「「え?」」
もうこの親子はどうなってるんだ。
そんなにハモられても困るのだが。
「他人以上友達未満です」
「……」
「そ、そうよね。さすがに入学初日だもの。まだ
新しい友達がいなくても当然よ。」
「う、うん。」
「初日から友達作ったバカもいますよ」
「「……」」
山吹親子の気分を悪くしたのだろうか。
とても苦笑いをしているように見える。
僕はそれを気にせず、何となくパンを2個取り、
レジへ渡す。
山吹の母が受け取ってくれた。
「あ、カレーパンとフランスパンで210円です」
金と引き換えにパンをもらう。
山吹は固まっていて動いていない。
僕はそのままパン屋を出ようとした。
しかし、
「ちょっと待って!」
さっきまで固まっていた山吹に腕を捕まれた。
普通ならすぐに振りほどくのだが、今回はそうは
いかなかった。
理由?聞くな。
「これ、あげる。これからよろしくってことで
サービスね♪」
山吹はそう言って僕にビニールに入ったパンを
差し出した。
「……」
「また、来てね?」
「……」
僕は無言で袋を受け取った。
ここで無口になってしまったのは決して照れた
とか、そういうことではない。
もう一度いっておく。照れてない!
チロリン♪
可愛げなベルの音が鳴り、僕は山吹親子を背に、
パン屋を後にした。
「やまぶきベーカリーか。」
早く家に帰ってパンを食べようとしてたのはここ
だけの話。
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~沙綾side~
彼がここに来たのは正直言ってかなりびっくり
した。
今日は驚いてばかりだ。
掲示板で戸山さんと彼に話しかけられた時。
まあ、彼は話しかけられたとは言えないか…
そして彼が隣だったことが分かったとき。
何より彼がものすごく冷たい人だったことが
分かった時だ。
掲示板の時の一言から確かに冷たそうな人だな。
と思ってたけど、想像を上回る冷たさだった。
「姉ちゃん、なにボーッとしてんだよ。」
そんなことを考えていると、弟の純が話しかけて
きた。
「風呂、沸いたってよ」
あ、もうそんな時間か。良く見ればお母さんと
お父さんが閉店の準備をしてる。
「そっか。ありがと。」
「うん。で、なに考えてたんだよ。男か?」
「教えな~い♪純は私が高校に入って変な男に
取られないか心配なのかな?」
「は?何言ってんだよ。安心しな。誰も姉ちゃん
なんて狙わねーから。」
「ふーん。それより純、お風呂一緒に入る?」
「ッ!いい加減そういうのやめろよ!///」
うーん。吉澤君も純くらい分かりやすい人だった
ら良かったのになー
彼、顔も無表情だから何考えてるかさっぱり
わからない。
でも何でだろう。何故か彼は憎めないんだよね。
「吉澤君だっけ?彼に何渡したの?」
今度はお母さんに思考を遮られた。
「え?それはひ・み・つ♪」
「へ~。なるほどね~頑張れ~」
お母さんがニヤリと微笑んだ。
「ち、違うからね!お母さん!」
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お風呂は落ち着く。
ここなら考え事も遮られないもんね。
そういえば彼、あれにどんな反応したのかな?
私が渡したあれ、中身は何かというと…
“塩パンと紙”
なんで塩パンかというと、お父さんが沢山焼いて
余りそうだったから。
でも、余り物あげた訳じゃないからね。きちんと
焼きたての余り物をあげたから。
紙は、ラブレター
ではなく、ただ単に私の連絡先を書いてあるだけ
追加してくれたかな?
早くお風呂出て確認しないと!
そんな思いを胸に、私は珍しく風呂を早く出た。
すぐに自分の部屋に向かい、スマホを開く。
三件の連絡が来ていた。
2件は香澄から。1件は吉澤君からだ。
メッセージアプリRINEには多くの機能がある。
その中でも、友達を追加したときに真っ先に見る
のはプロフィールだ。
私はニックネームはSayaでトプ画は私の手作り
メロンパン。背景は家族の集合写真だ。
ステータスメッセージは“高校生活も頑張ろ!”
大抵の人がこんな感じだろう。
吉澤君はというと…
吉澤とあまりにシンプルな名前に、トプ画は
未設定。背景も同じだ。
うん。彼らしいな。私はそれを見て思わず
にやけてしまった。
香澄はトプ画は流れ星、背景は入学式の写真で
ニックネームは ♪香澄☆ミ だ。これも彼女
らしいな。
そうだ。そんなことより早くメッセージを
見ないと。
私は香澄に急いで返信をし、恐る恐る吉澤君の
メッセージを開いた。
すると…
「君は何がしたいの?」
彼からはとてもシンプルな言葉が送られていた。
これもスタンプと絵文字つきの香澄とは真逆だ。
でも、何がしたいの?とか聞いといて、きちんと
追加してくれてるところが彼らしい。
何か憎めないのはこういうところだろう。
私は急いで返事を返した。
「折角隣になったんだし。」
「よろしく!」
よろしくはきちんとスタンプだ。
彼はどう返してくるのだろうか。
すると既読がすぐについた。
「よろしく」
嬉しかった。いつも冷たくて人に興味
無さそうな彼が、まさかこんなことを送って
くれるなんて。
もしかして、生で話さなければ素直なのかな?
しかし、こんなことを考えて浮かれていた自分が
バカだったと思うのはそのメッセージが来てすぐ
のことだった。
「はしたくないな。」
私は思わず笑ってしまった。
期待を裏切らないな。ちょっと寂しいけど…
複雑な気持ち。
どんな返事をしようか。
結局迷った末に
「素直じゃないなー。」
と送った。
既読はついたがこのメッセージはスルーされた
気づけばもう10時だ。
明日は朝に店の手伝いもある。
もう寝なくてはいけない時間だ。
最後に
「もう寝るね。おやすみ♪」
と送り、スマホを閉じようとした。
しかし、圧倒的な早さで彼からの返事が来た。
「ん」
うんの略なのだろうか。
そこはせめておやすみって返してほしい所だ。
明日学校であったら彼はどんな反応をするの
だろうか。
そんな事を考えながら私は眠りについた。
ピロン♪
彼からのメッセージに気づくより早く…
いかがでしたか?
ここで距離が縮まったように感じますが、
次回も彼は通常運転です。
恋の予感がしない…