我がギルドの非日常物語 side:ジェイフット 作:陽炎 圭一
「クソ先輩……ッ!」
先輩が遂に逮捕された。何種類もの生物を食らいつくし、絶滅させてしまったので仕方が無いことではあるが。
噂に拠れば、同僚は薬売りに転職したようだ。
「そろそろ俺も、腹括る必要があるかもな……」
一定のリズムでひた走る。くそっ、誰か俺を拾ってくれる所はあるのか。俺は心の中で愚痴っていた。
俺の名は『ジェイフット』。ウォーリアーという近接戦闘の得意な職業に就いている。
ふと、俺は空を見上げた。小規模だが、空が割れ始めた。
「……来るか、侵略生物」
その怪物は、首から腹部、そして四肢にかけてのシルエットが、まるで芋虫かのように蛇腹状になっており、鉱物や結晶の様な鋭角的な頭部や背部、そして尻尾が特徴的だった。棘の沢山付いた右手は侵略生物の攻撃性を示している。青とオレンジ、補色関係にあるどぎつい体色に、俺は思わず息を呑んだ。
その怪物の正体は、別世界から侵略のために送られてきた侵略生物、『ヴァギー厶』と後で知った。
「おいおい、蟲なんて食う気が起きねぇぞ……」
サイズとしてはだいたい176センチくらいか。俺もの身長は188センチ。身長差は12センチである。
「コォォォォォッ……呼ッッ」
俺は、まず先に
息吹とは、丹田呼吸……つまりは逆腹式呼吸の事を指す。これをする事により、集中力が高まる上、呼吸も整うのである。
脱線しかけたので話を戻す。
その瞬間、俺は驚異的なスピードでヴァギームの土手っ腹に回し蹴りを浴びせた。続けて、下段回し蹴りも炸裂。回し蹴りの勢いを利用し、後ろ回し蹴りを放つ。ヴァギームも馬鹿ではない。軽く体を反り、攻撃から難を逃れた。そして、俺に向けて右手の棘をぶつけようとする。
俺は、その腕に向けて貫手を行い、そして手刀をあびせた。
これは、『アイスピック』と『万能包丁』という技である。
アイスピックは、鋭い貫手で相手を刺し貫く技だ。万能包丁は、斬れ味鋭い手刀を浴びせ、切り裂くという技だ。
俺は、武器をひとつ失ったヴァギームの腹部に、
「18連……」
衝撃がヴァギームを襲う。
「釘パンチ!」
釘パンチ。
釘を打ちつけるように、数回のパンチを同時に打ちつけて放つことで、威力が奥まで浸透し内部から標的を破壊する技だ。
俺は、『飽食細胞』という細胞を保持している。それはどうやらトリコのグルメ細胞に酷似した物らしいが、グルメ細胞よりも多くの悪魔を宿せるのが飽食細胞の特徴のようだ。
情報源は『カゲロウ』と名乗る青年である。
18発の正拳突きが一度にみぞおちに入る。
ヴァギームは、鳴くこともなく、爆散した。
「はー……この一匹だけか……しんど」
俺は再度走り出した。
◇◆◇
街を走る。その時、俺の嗅覚が、ギルドの雰囲気を捉えた。
「……ここだ、入っちまえ」
俺は、ルシェラードというギルドの中に入った。
「お邪魔します……」
俺の目に、掃除をしている女性らしき人の姿が見えた。
「……一人だけ……?」
スンスン、と鼻を動かして匂いを嗅ぐ。
「危険な雰囲気を醸し出すような匂いはない……いや、ある……!?まさかあの女から……?」
俺は、周りを見渡していた。ちょうど、その少女(?)に背を向けていた時である。
「……で、」
俺の背後から、透き通った声が聞こえた。
「さっきからぶつぶつ言いながらボクを見てるのは誰ー?」
高めではあるが、少年らしい声である。
「お、押忍ッッ」
悲しきかな、空手家というものは声をかけられると押忍と叫ぶものである。
「迷惑だし掃除の邪魔なんだけど?」
俺は、その姿を見て心の底から仰天した。
美しく伸びた銀髪、やや尖り気味の耳、軽く吊り上がった鋭い目付き、左目の下にはホクロがあり、緑色をメインとした服装に身を包んでいる。
そして、俺の
視床下部にガンガン響く、恐怖を携えた魔力の香り。
恐怖が俺を包む瞬間に、俺の飽食細胞はそれを超える感情に支配された。
今殺さなければ皆が不幸になってしまう。
「女神……ッ、貴様ァァァぁあぁああぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!」
野獣の如き慟哭を上げたらしい俺は、迷わず女神の首に手をかけた。
「あっ……がぁッ……」
「殺す……ッ!貴様だけは……ッッ!」
女神が白目を剥き始める。呼吸さえ止めてやれば、脳髄まで酸素は行き渡ることは無い。今まで数多くの生命の死に直面してきたからこその直感だ。
今だ、と思った瞬間。
「何してるんだ!お前!」
「な、何を邪魔しやがるアンタ!?」
凛とした声が聞こえた瞬間、第三者が、俺を弾き飛ばした。
後頭部を強かにぶつけた。まずい、意識が……。
「が……ッ」
俺が意識を失う寸前、弾き飛ばした青年とは別の黒ずくめの青年が口角を上げたように見えた。