我がギルドの非日常物語 side:ジェイフット 作:陽炎 圭一
「……」
俺は、目を開けた。
先ほどと変わらない部屋に寝ていた。体の傷が開いていた。……治るよな。
それに、何だか……腹が、減った。
ぐるるるぅ、と胃袋が啼いた。落ち着け。
「大丈夫か?メンタル的な調子はどうだ?」
青みがかった黒い長髪を後ろに束ねた青年が入ってきた。
「……あんたは……!」
彼は、俺を突き放したあの男だった。
「てめぇ、よくも……あ゛ぁ゛あ゛あ゛ッッ!?」
身体が悲鳴を上げた。あまりの痛みに、思わず叫んだ。その拍子に、今まで気合いで閉じていた傷口が開き始めた。道着に鮮血が滲み出す。
「無理してんじゃない。お前の手荷物をチェックさせて貰った。応急手当セットがあったろう、使わせてもらうぞ」
「な、何をしやが……あぁっ!」
消毒液をガーゼに染み込ませ、患部へと塗る青年。てか、消毒液がめっちゃ染みる……ッッ!痛てぇぇえぇええぇ!?
「……傷は浅かったようだな。見たところ、深そうだったのにな」
「……それより、名前。俺はジェイフット。アンタの名前はなんだ?」
「俺か?俺はルアン。ルイ・ルアンだ」
ルイ・ルアン……コイツか。覚えたぞ。
「話があるんだ。」
ルアンが、俺に話しかけた。
「話ってなんだ?」
「単刀直入に聞くぞ。お前は、このギルドに入る気はあるのか?」
「……」
俺は、迷っていた。ギルドマスターが女神によく似ていることを知り、身の中で熱いマグマのような憤怒が湧き上がっているのは分かっている。しかし、行く宛がないのもまた事実なわけで。
「俺、は……」
ひと呼吸ついた。
「俺は、このギルドに世話になろうと思う。ただ、個人的な条件があるんだ」
「なんだ?」
俺は、意を決して言った。
「この感情が抑えられるまで、俺は鎧を着込む」
◇◆◇
工業国であるナーデの技術を持って作り上げた『テクターギア』。俺は、修行時代にそれを着込んでいた。
「……着ると、こんな感じになるんだ」
久々に着たが、この重さは未だに慣れん。だいたい20キログラムくらいはあるだろう。
「そうか。それがお前の決意の表れか」
「感情が抑えられるまで、テクターギアを着込みっぱなしで行く。手当、ありがとうな」
俺は、テクターギアを装着して暮らすことにした。このテクターギア、肉体的な力をセーブすることができる。今の俺は、力やスピードが一気に落ち、弱体化している。
少しでも、これを着て他のことにエネルギーを割かないようにしないといけない。
俺は、決意を抱いた。