出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第84話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
鉄哲side
合宿3日目。俺達B組は自分達の“個性”を伸ばす為、それぞれに課せられた特訓を行っていた。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
俺の特訓は、火のついた竃の中でひたすら熱に耐えるという…シンプルだが、半端無くキツイものだ。
全身の金属化が少しでも緩めば、大火傷間違いなし。だが、そんなギリギリの状態だからこそ、“個性”も伸びるってもんだ!
「やってやる…やってやるぞ!」
気合の声を上げながら、高熱に耐えていると―
「補習組。何をやっている。動きが止まっているぞ」
ブラド先生やプッシーキャッツの皆さんと一緒に、俺達を指導している相澤先生が、補習組*1に厳しい言葉を浴びせるのが目に入った。
「す、すみません…昨日の『補習』で……」
謝りながら引き摺る様に体を動かす庄田達。ハードな特訓に加えて、深夜の補習授業も受けてるんだ。疲労は相当なもんだろう、
「だから言ったろ。死ぬほどキツイって」
だが、相澤先生は一切容赦する気は無いようだ。
「円場、吹出、凡戸は
「鎌切は容量に加え、刃物の強度と生成速度の強化。黒色は“個性”の連続使用によって、維持限界の上限を伸ばす」
「回原と庄田は、筋力を上げる事で“個性”の威力を高めていく」
「物間はコピーした“個性”を使いこなす技術や対応力を磨く」
「そして、何よりも期末で露呈した立ち回りの脆弱さ!! お前らが何故他より疲れているか、その意味をしっかり考えて動け」
相澤先生の容赦無い物言いで滅多切りにされ、悔しさに歯を食い縛りながら、それぞれの特訓に励む庄田達。そして―
「小森! 角取! お前等も一応は合格だが、決して褒められた点数じゃない。50点にギリギリ届くくらいだ。気を抜くなよ」
「
「予想外ノコ!」
小森と角取にも…いや―
「お前達全員、ダラダラするなよ」
「A組はお前らのはるか先にいる…トラック競技で例えるなら、1周どころか3周も4周も差を付けられているんだ。本気で追いつき、追い越したいと思うなら、死ぬ気で努力しろ」
「自分達は大差をつけられている事を常に意識しろ。何の為に汗かいて、何の為にこうしてグチグチ言われるか、理解した上で訓練に励め」
解ってるさ…相澤先生に言われるまでもねぇ…発破をかけられるまでもねぇ。
「もっとだ! もっと温度を上げてくれ! やってやる…やってやるぜ!」
俺達はこの林間合宿で強くなるんだ!
出久side
「シュガーマン! いつでも良いよ。さぁ、思いっきり打ち込んでくるんだ!」
「お願いします!」
ナックルコングの声に答え、一直線に向かって行く砂藤君。
「うぉりゃぁ!」
そのままの勢いで右ストレート一閃! “個性”を発動していないとはいえ、踏み込み、腕の振り、腰の回転、いずれも文句のつけようが無い。見事な一撃だ。それなのに―
「なっ…」
聞こえてきたのは予想していたような重く響く音ではなく、気の抜けたパスッという音。
「ッ!?」
打った砂藤君自身も訳が分からないのだろう。慌ててナックルコングから距離を取り―
「今度こそっ!」
再度右ストレートを放つ。だけど結果は同じ。パスッという音が響くだけだ。
「な、なんで…」
思わずそう呟く砂藤君。再度距離を取ろうとするけど、その隙を逃すナックルコングじゃない。
「同じ逃げ方は、芸がないよ」
砂藤君はあっさり腕を掴まれ、
「次は烈怒頼雄斗。さぁ、かかってきて」
「ウッス! お願いします!」
次は切島君の番。目の前で起きた光景に驚きを隠せずにいた切島君だけど、すぐに気持ちを切り替え―
「打撃が駄目なら!」
投げ技だ。と言わんばかりに片足タックルを仕掛けるけど―
「ッ!?」
ナックルコングの体は、まるで根が生えているかのようにその場から微動だにしない。
「うぉぉぉぉぉっ!」
叫びと共に、あらん限りの力を振り絞る切島君。それでもナックルコングは1mmも動かず―
「はい、ここまで」
ホンの僅かに力が緩んだ瞬間、
「烈怒頼雄斗もシュガーマンも、力は十分合格レベル。でも、力だけじゃ足りない。大切な物はまだまだたくさんあるよ」
柔らかい口調で、砂藤君と切島君に指導するナックルコング。2人の力を無効化したのは、恐らく技…技術の類。
「でも、ナックルコングに大きな動きは見られなかった。だとすると…もう一度思い出して…」
記憶していたナックルコングの動きを、頭の中で何度も繰り返す。だけど、ナックルコングに動きはない。
精々微かに
「まさか…」
次の瞬間、脳裏に浮かぶ1つの仮説。だけど、そんな事が本当に可能なのか?
「何か気が付いたみたいだね。グリュンフリート」
「…はい。まだ朧気で、確証は無いんですけど…」
問いかけにそう答えた僕に、ナックルコングは柔らかい笑みを見せ―
「じゃあ、仮説の検証といこうか」
ゆっくりと構えを取った。僕も一礼し、構えを取ると―
「いきます!」
僕を迎え撃つ為、ホンの僅かだけ前に出たナックルコングへ突撃。
「はぁっ!」
間合いに入ると同時に右ストレートを放ち―
「ッ!?」
次の瞬間、罠に嵌った事を悟る。僕が攻撃を放った瞬間、ナックルコングは何事も無いかのように、
それによって、タイミングをずらされたパンチは、最大の威力を発揮出来ない
直後、普段のパンチでは絶対にありえない…パスッという音が響き―
「………」
それと同時に、目前で寸止めされるナックルコングの拳。まったく…反応出来なかった…。
「仮説は証明出来たかな?」
互いに頭を下げた後、柔らかい笑みを浮かべ、僕に問いかけてくるナックルコング。
「はい…視覚からの情報で導き出した予想が、
「そのとおり! これほど早く正解に辿り着くとは、流石としか言いようがないね」
どうやら僕の仮説は正しかったようだ。それにしても、あんな方法で攻撃を無力化するなんて…雷鳥兄ちゃんのそれとは異なるナックルコングの技に、ただただ感心するばかりだ。
「な、なあ緑谷…俺達にも解るように説明してくれないか?」
「あぁ、視覚の予想が外されたって言われても、わかんねぇよ…」
そこへ、切島君と砂藤君が説明を求めてきた。どうしよう…ナックルコング独自の技術を勝手に説明する訳には…
「別に構わないよ。原理その物は極々単純だし、
すると、僕の心中を察してくれたのだろう。ナックルコングが許可を出してくれた。それなら大丈夫。
「それじゃあ、僕なりの解釈になるけど…」
僕はそう前置きした上で、2人に説明を始めた。
「人間は五感を用いて様々な情報を得る訳だけど、主に視覚から情報を得ていて、その情報を基に脳が体をどう動かすかを決めている。ここまではいい?」
「あぁ…」
「続けてくれ」
「ナックルコングはまず、ホンの僅かだけ前に出る。それをワザと見せる事で、僕達の攻撃が最大の威力を発揮する距離やタイミングを予測させる」
「その上で、元の位置に戻り…僕達の予測した距離と実際の距離にズレを生じさせる。ホンの僅か、だけど決定的なズレが、攻撃の威力を大幅に減衰させてしまうんだ」
「そして、予測した距離と実際の距離にズレを生じた事で、脳はパニックを起こし、思考にホンの一瞬だけ空白という隙を作ってしまうんだ」
僕なりの解釈を交えて説明をしてみたけど、ナックルコングから特に訂正は無いみたいだ。
「すげぇとしか、言いようがねぇ…」
「で、でもよ。緑谷と砂藤はそれで説明がつくけど、俺の場合はどうなんだ?」
「切島君の時も理屈は同じだよ。微妙に体勢を崩された事で、自分では100%の力を出しているつもりでも、実際には出せていなかったんだ」
「そういう事か…やっぱりプロは凄いぜ!」
心底感心した様子の切島君と砂藤君。そう、これがプロの世界。僕達が目指す場所なんだ。
雷鳥side
「それでは、今日の訓練はここまでにします。お疲れさまでした」
「「おつかれさまでした!」」
時刻は17時半。俺と八百万はブロッサムさんに一礼し、訓練が終わりを告げる。
「2人とも、昨日より動きが良くなっていますね。この調子でいけば、私なんてすぐに超えていけますよ」
ブロッサムさんのこの言葉は…社交辞令とはいえ、嬉しいものだな。
「それから…ライコウ」
「はい!」
「貴方の作ったお昼ご飯*2、とても美味しかったです。明日も期待していますね」
「……了解です」
ブロッサムさんの言葉に苦笑しながら、明日の昼食作りに改めて気合を入れる。
それにしても…A組B組合わせて40人に、相澤先生とブラドキング先生、そしてプッシーキャッツの皆さん、更には特別講師の7人…53人分の昼食作り。
今日は瀬呂に手伝ってもらったが…幾らか報酬貰っても、罰は当たらないよな?
梅雨side
「轟ちゃん。皮を剥いた人参は乱切りにするのよ」
「…乱切り」
「大きさを揃えつつ、不規則な形に切っていく事ね。こうやって、人参を回しながら、食べやすい大きさに切っていくのよ」
「……なるほど。こんな感じか?」
「そうそう、そんな感じね」
轟ちゃんに包丁の使い方をレクチャーしながらの夕食作り。私達の担当は肉じゃがよ。
「ねぇねぇ、耳郎。油揚げって、切ったらそのまま鍋に入れて良いんだっけ?」
「それじゃあ、油臭い味噌汁になるよ。熱湯をかけて油抜きしないと」
「油抜きだね。了かーい!」
お味噌汁の方は、耳郎ちゃんに任せておけば安心ね。
飯田side
「それでは、いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
皆の声が響き、賑やかな夕食が始まる。今日のメニューは―
・油揚げと大根の味噌汁*3
・菜飯*4
・肉じゃが*5
・
以上4品だ。合宿中…しかも、自分達で作っているにも拘らず、これほどキチンとしたメニューが食べられるとは、吸阪君を始めとする料理上手の皆には、感謝するばかりだ!
峰田side
吸阪や蛙吹が中心となって作った今日の夕食。文句無しに美味いんだけどさぁ…。
「この味わい…肉じゃがにバターを入れたね。梅雨ちゃん」
「正解よ。コクのある味わいになって、弟や妹も喜んで食べるの」
「たしかにバターが加わる事で、洋風の味わいになってる。うん、良い勉強になりました」
「お役に立てて何よりだわ」
右を向いても―
「うわっ、このホイル焼き…美味しっ!」
「よかった。最初はバター醤油の予定だったんだけど、閃きに任せて味噌マヨネーズに変えてみたんだ」
「凄いよ、緑谷君。ナイス閃き!」
「ありがとう。喜んでもらえて何よりだよ」
左を向いてもイチャイチャしやがって…畜生! こうなりゃやけ食いだ!!
雷鳥side
「ねこねこねこ…皆! 実はこの後、お楽しみがあるのよ!」
皆が夕食を大体食べ終えた頃、不意にピクシーボブがそんな事を言いながら、俺達の前に現れた。
「お楽しみとはズバリ! クラス対抗肝試し大会!!」
やっぱりな…前世の記憶通りだ。となると、2時間もしないうちに…
「どうしたの? 吸阪ちゃん…凄く怖い顔しているわよ」
「あぁ、ごめん。不意に嫌な事を思い出してね」
そう、今更この流れは変えられない。それに皆も原作とは比べ物にならない位強くなっている。
油断してはいけないが、過剰な心配も必要ない筈だ。
俺は自分にそう言い聞かせながら、最善を尽くす為にどう動くべきか、頭の中でシミュレーションを繰り返すのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回をもちまして、拙作『出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。』の投稿数が、短編込み且つ設定資料分を差し引いて100話の大台に乗せる事が出来ました。
全ては読者の皆様のおかげでございます。
今後も執筆に精進致しますので、よろしくお願いいたします。