出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第85話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
鉄哲side
夕食の片付けも終わり、いよいよクラス対抗肝試しの時間!
A組の奴らを思いっきり驚かせて、B組の意地を見せてやるぜ!
………そう思っていたんだが―
「あー、大変心苦しいが、補習組はこれから補習授業だ」
「嘘だろ!?」
誰かの声が響いた直後、相澤先生の捕縛武器が補習組を次々と捕らえ、強制的に引き摺っていく。
「すまんな。やはり寝不足では、日中の訓練が疎かになるので、
「うわぁぁぁっ! 堪忍してくれぇ!」
「肝を試させてくれぇ!」
…くっ、すまねぇ。お前達の犠牲、無駄にはしないぜ!
出久side
「はい、くじ引きの結果、脅かす側先攻はB組に決定!」
ピクシーボブの司会で、進められていくクラス対抗肝試し。
B組の皆と、人数不足を補う為にピクシーボブが作り出した土の魔獣が、ルート上に散らばり、あとはスタートを待つだけなんだけど…。
「………」
「雷鳥兄ちゃん、どうかしたの?」
雷鳥兄ちゃんの様子が、どうもおかしい。気を張り詰めて…まるで何かを警戒しているみたいだ。
「あぁ、どうも
「嫌な…予感?」
僕の呟きに雷鳥兄ちゃんは頷き、
「たしかに、その可能性は無い…とは言えないね。くそっ、どうしてその可能性を思いつかなかったんだ」
「学校が対策を講じているんだ。俺みたいに
そう言って静かに笑う雷鳥兄ちゃん。だけど、常に万が一を考える事は大切なんだと思う。
「まぁ、起きた時は起きた時。起きるまでは肝試しを楽しもう」
気づけば、肝試しはもう始まっていて、3組目の耳郎さんと葉隠さんがスタートするところだった。
起きた時は起きた時…か。そうだね、今は肝試しを楽しまないと!
拳藤side
「なかなか…上手くいかねえな…」
茂みから頭だけを出して、ポツリと呟く骨抜。
「そうだね…」
「ん…」
その呟きに、思わず同意してしまう私と唯。もう4組通過しているけど、私達はまだ1人も脅かす事が出来ていない。
どんなに巧妙に隠れていても、事前に気付かれてしまうのだ。
「悔しいけど、こういう所でもA組との差を感じちまうよな…」
「そうかも知れないね。でも、弱気になっちゃ駄目だよ…私達にだって意地がある。何としてでもA組に追いついて…」
弱気な発言をした骨抜を叱咤している内に―
「ちょっとさ…さっきから微妙に焦げ臭くない?」
「あ…? そういえば…急に煙っぽいのが…」
周囲の状況が変化していた。こんな山の中で煙って…まさか山火事!?
一瞬脳裏を過った嫌な考え…それを否定しようとしたその時―
「まさか、轟か青山あたりがビビッて“個性”ぶっ放しちまったんじゃ……」
「骨抜!?」
突然、骨抜が意識を失ってその場に崩れ落ちた。同時に感じる煙の臭いとは違う異臭…。
「唯! 吸っちゃダメ! この煙―」
「ん!?」
咄嗟に“個性”を発動し、巨大化した掌で唯を庇いながら叫ぶ。
「有毒!!」
雷鳥side
「何この焦げ臭いの…」
「あれ、黒煙?」
肝試しのルート上から漂う異臭と黒煙。それにマンダレイ達が気を取られたその瞬間、念の為に展開していた
咄嗟にマンダレイ達を庇う形で飛び出し―
「出力全開ッ!!」
最大出力で電磁バリアを展開。間髪入れず、2人の男が放った攻撃が、電磁バリアに接触!
「あらん!?」
「貴様ッ!」
「お生憎様ッ!」
不意打ちを防がれるとは思っていなかったのだろう。驚きの声を上げる男達に、俺は意地の悪い笑みを返し―
「ダブル
同時に、出久が一撃を叩き込む!
「いやぁぁぁぁぁん!」
「ぬぉぉぉぉぉっ!」
声を上げながら吹き飛ぶ2人。今のでどちらかでも倒せていれば良いが…。
「駄目だ、雷鳥兄ちゃん。ギリギリで防がれた!」
そうは問屋が卸さないらしい。2人は数m程飛んだ所で体勢を立て直し、着地。俺と出久は構えを崩す事なく男達を観察する。
「邪魔な飼い猫ちゃん達を潰すつもりだったのに…流石はオールマイトの弟子ってところかしら?」
「学生とはいえ、侮れぬ腕前という事…敵ながら見事なり」
片や身の丈程もある巨大な…電磁バリアの反応から見て恐らく棒磁石…を構える赤髪の大男。
片や出久の一撃で破壊された大型武器を捨て、大振りのサバイバルナイフを構えるトカゲ顔の男…か。
「あんた達、何者!」
そこへ戦闘態勢に入ったマンダレイ達が、俺達を庇う様に立ち塞がる。すると―
「ご機嫌よろしゅう! 雄英高校! 我ら
トカゲ顔の方が、やけに芝居がかった口調で堂々と名乗りを上げ始めた。
「
「我々を見縊ってもらっては困るな! 貴様らの
そして、トカゲ顔は尾白の声にそう答えると―
「本日参上したのは他でもない…ヒーローの卵である君達に…舞台から退場して貰う為だ」
これまた芝居がかった仕草で、舌舐めずりをしてみせた。
「ひぃぃぃっ! 万全を期したんじゃなかったのかよぉ!!」
オイオイ、峰田…あんなベタベタのお芝居で怯えるなよ…。
だが、トカゲ顔はそんな峰田の反応が気に入ったようで―
「だが、我々にも矜持という物がある。生殺与奪は全て…敬愛するヒーロー殺し、ステインの仰る主張に沿うか否かで決めさせてもらう。そう! ここで死ぬのは、偽物のヒーローのみ!」
「おっと、申し遅れた。俺はスピナー…
トカゲ男…いや、スピナーの声が響く。それって要するに―
「一言で言えば、ミーハーか」
「何…」
俺の一言でピシリ! と擬音が入りそうな程、見事に凍りつくスピナー。チャンス…だな。
「お前の言っている事さぁ。全部が全部、ステインの言動をなぞってるだけだよな。ステインの極論に感化されて、自分って物を持たずに流されてる…それをミーハーと言わずに何と言う?」
俺はあらん限りの悪意を込めて、スピナーを煽る。すると―
「き、き、貴様ぁっ!」
案の定、スピナーは激高するが―
「お待ちなさい、スピナー。落ち着くのよ。敵の策に嵌っては駄目」
大男の方が、スピナーを宥めに入った。
「貴方のステインへの信奉は本物よ。だからこそ、あんな見え透いた挑発に乗ってはいけないわ」
「………すまない、マグ姉。助かった」
チッ、落ち着きを取り戻したか。まぁ、煽りに乗るかどうかは、正直どうでも良かったが…。
「何でもいいがなぁ…貴様ら!」
そこへ割り込んで来たのは虎だ。
「先程の攻撃。ライコウが防いだから事無きを得たが…あれは、ピクシーボブの
「………それがどうした!」
「ピクシーボブは最近、婚期を気にし始めていてな…」
「ちょっと虎!」
虎の突然すぎるカミングアウトに、顔を真っ赤にして慌てるピクシーボブ。だが、虎は、そんなピクシーボブを敢えて無視し―
「女の幸せ掴もうって…いい歳して頑張ってたんだよ…」
「そんな女の顔を狙っておいて、ヘラヘラ御託並べてんじゃあないよ!!」
見事な啖呵を切った。
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るなど…笑止千万! やはり、貴様らは偽物だ!」
ナイフを振り上げ、こちらへ向かって来るスピナー。大男もすぐ後ろに続く。
「来やがれっ!」
俺と出久も迎え撃とうとするが―
「ライコウ! グリュンフリート! ここは私達に任せなさい!」
マンダレイの声が俺達を止め、同時にピクシーボブと虎が飛び出した。
「あの2人は私達で押さえる! 2人は他の子達を宿泊施設へ退避させて! 万が一の時は…仮免持ちの2人で対応して!」
「B組の子と、肝試しに出発した子達はラグドールに任せるから! 頼んだわよ!」
俺達へ矢継ぎ早に指示を下し、自らも戦闘に同流するマンダレイ。3人に後を任せ、宿泊施設へ走ろうとしたその時―
「マンダレイ!」
出久が叫んだ。
「僕、
[
[動ける者は直ちに宿泊施設へ!! 会敵しても決して交戦せず撤退を!!]
補習開始直後に飛び込んで来たマンダレイからの『テレパス』。その内容は最悪の一言だ。
「は…!? 何で
「ブラド、ここ頼んだ。俺は生徒の保護に出る」
驚きから、半ば硬直した生徒達をブラドに託し、教室から飛び出す。
「バレないんじゃなかった!?」
そんな叫び声を背中に浴びながら、一直線に出口へ急ぐ。考えたくはない。考えたくはないが…!
「……マズいな」
施設から飛び出して、真っ先に視界に飛び込んだのは、黒煙と炎。
「心配が先に立ったか、イレイザーヘッド」
「ッ!?」
突然現れた気配に視線を動かせば、そこには見慣れない男の姿。迂闊! 俺とした事が!
「ブラ―」
ブラドへ危険を知らせる間もなく、男の手から放たれた青い炎が俺を―
「邪魔はよしてくれよ、プロヒーロー。用があるのは、お前らじゃない」
拳藤side
「ゴホッ、ゴホッ…」
骨抜と唯を巨大化した掌で庇いながら、極力ガスの薄い場所を選んで走る。急がないと……殆どガスを吸っていない唯はともかく、骨抜がもたない!
「拳藤!」
そこへ飛び込んできたのは―
「鉄哲! 茨! 何そのマスク!?」
何故かガスマスクを装備した鉄哲と茨。
「A組の八百万が近くにいて、創ってもらった! 今、泡瀬が皆の待機位置を案内して、救助に当たってもらってる」
「使え、沢山貰った!」
鉄哲からガスマスクを受け取り、急いで装着する。これで、これ以上ガスにやられる心配は無くなった。
でも、茨は骨抜と同じように、ガスを吸って意識を失っているみたい…急いで何とかしないと…。
「鉄哲、早く施設に戻ろう。
私は委員長として、最良と思える判断を下す。
「いや! 俺は戦う。塩崎や小大の保護頼む」
「は!? 交戦はダメだって…」
だけど、鉄哲の判断は違っていた。私はそんな鉄哲を窘めるけど…。
「拳藤…お前はいつも物間を窘めていたが…心のどこかで感じていなかったか!? A組との差…」
「それは…」
「俺ァ感じてたよ…!」
「同じ試験で雄英入って、同じカリキュラム。何が違う? 緑谷の分析ノート? 吸阪の指導を受けて、皆で高めあった? そんな事で、ここまで差が付くか?」
「決定的な違いは、他にあったんだよ。明白だ! あいつらにあって、俺達に無かったもの…ピンチだ!!」
「あいつらは、そいつをチャンスに変えていったんだ! 当然だ! 人に仇なす連中に、ヒーローがどうして背を向けられる!?」
「止めるな拳藤! 1年B組ヒーロー科! ここで立たねばいつ立てる!? 見つけ出して、俺が必ずぶっ叩く!!」
既に決意を固めていた鉄哲は止まる筈もなく、
「唯…茨と骨抜、頼める?」
「ん……」
「ごめん、あと…頼むね!」
私も2人を唯に任せ、鉄哲を追いかけた。鉄哲が止まらない以上、1人で行かせる訳にはいかない。これは最良の判断の筈だ…。
だけど…1時間も経たない内に…私と鉄哲は、自分達の下した判断を死ぬほど後悔する事になる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。