出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第87話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
荼毘side
「あーダメだ荼毘!! お前! やられた! 弱! ザコかよ!!」
「もうか…
“個性”で俺を増やしたトゥワイスからの報告を聞き、静かに呟く。情報によれば、施設にいたのはイレイザーヘッドとブラドキングの2人。
どちらと戦ったのかはわからないが…流石は雄英高校の教師といったところか。
「ハァン!? バカ言え!! 結論を急ぐな。お前は強いさ! この場合は、プロがさすがに強かったと考えるべきだ」
そんな俺の考えを察したのか、トゥワイスが声を張り上げる。こいつの喋り方…なかなか面白いもんだ。
「もう1回
「ザコが何度やっても同じだっての!! 任せろ!!」
さて、再チャレンジといくか…。
拳藤side
「聞いたか拳藤!? ブン殴り許可が出た!」
相澤先生とブラド先生、2人からの戦闘許可が下りた事に増々熱くなる鉄哲。良くない兆候だね…。
「待てって鉄哲! お前、わかってんの!? このガス…」
「やべぇ……ってんだろ。俺も馬鹿じゃねえ」
「お馬鹿!」
鉄哲の答えにそう返しながらも、私は自分の考えを言葉にしていく。
「マンダレイ、このガスの事触れてなかった。つまり、広場から目視出来る所には広がってない」
「変なんだよ。このガスは一定方向にゆっくり流れてる。普通、拡散してくだろ? 留まってんだよ」
「で、見なよ。さっきいた場所より、ここの方が少しガスが濃くなってる」
「つまり………何だ?」
「発生源を中心に渦を巻いてると思う。台風的な奴。つまり、その中心にガスを放出してて、尚且つ
「拳藤おめぇ…やべえな!」
鉄哲…アンタ、本当に考え無しに突っ込んでたんだね…いやいや、呆れてる場合じゃない。
「肝心なのはここから。中心に向かう程、ガスの濃度が上がるなら、時間も問題だ。ガスマスクのフィルターにも限度があって、濃度が濃いほど機能する時間は短くなる。つまり…」
「濃い方に全力で走って! 全力でブン殴る!!だな!!」
「んん…まぁ…そうだけど……」
クラスメートながら何という単細胞ぶり…でも―
「塩崎やクラスの皆が、このガスで苦しい目に遭ってんだよ!
「頑張るぞ!! 拳藤!!」
「うん!」
それがアンタの良いところ。嫌いじゃないよ。そういうの! そして万が一の時は、私が鉄哲を引っ張って即撤収。そのタイミングだけは逃さないようにしないと!
八百万side
B組の泡瀬さんの案内を受けながら、私と青山さんはB組の皆さんの捜索を行っていましたが―
「なんだって! 鉄哲が
合流出来た小大さんから得た情報は、あまりに衝撃的なものでした。
「ん…」
「たしかに鉄哲の奴、A組に大差つけられてる事を気にしてたけど…いくら何でも無謀過ぎるだろ…」
「んん…」
「あぁ、わかってる。拳藤もそれを考えて、着いて行ったんだと思う。もしもの時は、即逃げの一手を打つ筈だ」
それにしても、泡瀬さんは小大さんと意思疎通が出来るのですね。私には、ただ呟かれているようにしか…いえ、今はそんな事を考えている場合ではありません。
「失礼を承知で申し上げますが…今の鉄哲さんや拳藤さんの実力で、
心を鬼にして、敢えて厳しい意見を口にします。毒ガスを使用する手口や、Iアイランドで感じた物と同質の気配から見て、今回襲撃してきたのは間違いなく
数ヶ月前、USJを襲撃したような
「たしかに…八百万の言うとおりだ。今の
「ん…」
悲痛な表情を浮かべる泡瀬さんと小大さん。周囲を沈黙が包みますが、それも長くは続きません。
「ッ! 今のは!?」
「銃声…いや、爆発?」
突然響く轟音。私の脳裏に
「青山さん、小大さんと一緒に、骨抜さんと塩崎さんを宿泊施設まで運んでいただけますか? 私は、轟音の発生した場所へ向かいます」
「OK。任せてよ♪」
「泡瀬さん。申し訳ありませんが、ご同行をお願います」
「ああ、わかってる。
念の為にサブマシンガン*1を創造し、私は泡瀬さんと共に走り出します。どうか、この嫌な予感が外れていますように!
出久side
「必ず
洸汰君を背後に庇う僕を笑いながら、ジリジリと間合いを詰めてくるマスキュラ―。宿泊施設へと通じる道は、マスキュラーに加え、その背後に立つもう1人の大男に塞がれている。
「………」
落ち着け…今成すべき事は、洸汰君を無事に宿泊施設へと送り届ける事。何とか隙を見つけて、一気に駆け抜けるしかない。
「緑谷ってやつだろ、お前? お前は率先して殺しとけって、お達しだ」
だけど、マスキュラーは既に戦う気満々。もう1人も―
「兄貴、俺にもやらせてくださいよ。オールマイトの弟子ぶっ殺せるなんて、最高っすよ!」
僕達を逃がすつもりは微塵もないようだ。こうなったら…やるしかない!
「洸汰君、そこの岩陰に隠れて。出来る限り身を屈めるんだ」
僕は洸汰君が身を隠したのを確認し―
「うぉぉぉぉぉっ!」
『フルカウル』の出力を40%まで高め、構えを取る。それを見たマスキュラーは狂気に顔を歪め―
「じっくりいたぶってやっから、血を見せろ!!」
右腕を振り上げながら、一気に間合いを詰めてきた。下手に避けたり、捌いたりしたら、洸汰君に被害が及びかねない。だったら―
「
「うぉらぁっ!」
僕の
「くぅぅぅっ!」
「ぬぉぉぉっ!」
互角! 僕とマスキュラーは、互いに数m吹き飛びながら崩れた体勢を立て直す。
「もらったぁ!」
そこへ、もう1人の
「うぉぉぉぉぉっ!!」
頭上からフィンガースナップの衝撃波を撃ちまくる!
「ぬぉっ!」
「痛ぇっ!」
殆ど無防備な状態で、拳銃弾並の威力がある衝撃波を連続で受けているにも関わらず、
「やるじゃねぇか。流石はオールマイトの弟子なだけの事はある」
「あのタイミングで仕掛けて、避けられたのは初めてだぜ」
楽しげな様子のマスキュラーと感心した様子の
2mを優に超える身長、丸太の様に太い手足、そして頭部から生えた
「トリケラトプスの“個性”…」
「正解だ! まぁ、見りゃ解るか!」
僕の呟きにそう答え、ゲラゲラと笑うトリケラトプス
「遊び半分のつもりだったが、やっぱり
そんな事を言いながら“個性”を発動し、全身を筋肉で肥大化させていく。
「俺の“個性”は『筋肉増強』! 皮下に収まんねえ程の筋繊維で底上げされる速さ!!
「どれほど凄ぇか…手前ぇ自身で味わいな!」
次の瞬間、右拳を振り上げながら、先程以上のスピードで間合いを詰めてくるマスキュラー。僕もは『フルカウル』の出力を
「
「うぉらぁっ!」
僕の
「駄目だな! 力が足りてねぇ!」
「ぐぁっ!」
拮抗していたのはホンの一瞬。僕が押し負け、体勢を崩された。
「今度こそもらったぁ!」
そこへ突っ込んでくるトリケラトプス
「ガハァッ!」
次の瞬間、トリケラトプス
「げほっ…」
強烈な衝撃に一瞬意識が飛びかけながらも、何とか踏み止まり…立ち上がる。崖に叩きつけられたのはある意味幸運だ。反対方向に吹き飛ばされていたら、崖の下まで真っ逆さま。間違いなく天国行きだった。
「ほう、まだ立つか。だが、速さも
「必ず
僕にとどめを刺そうと、右腕を振り上げるマスキュラー。その時―
「あぁ?」
1つの小石がマスキュラーに投げつけられた。投げたのは…洸汰君!?
鉄哲side
「いっ、てぇ……」
全身の痛みを堪えながら、俺は立ち上がり…こうなった原因を思い返す。たしかガスの中心部に向けて、全力で走っていたら、突然
「そうだ! 拳藤!」
俺の後ろを走っていた筈の拳藤は、無事なのか? 慌てて振り返ると―
「今の、何だったの…」
意識を取り戻し、立ち上がろうとする拳藤の姿があった。よかった、無事だった。
「わからん。嫌な予感がして、咄嗟に“個性”を発動したのとほぼ同時に、何か小さい物が、大量に飛んできた…解るのはそんだけだ」
「何だこりゃ?」
周囲に落ちていたのは直径1mm程の小さな鉄球。それも1つや2つじゃない。何十、何百と落ちている。
「こいつが攻撃の正体なのか?」
誰かに聞く訳でもなく、何気なく呟く。すると―
「あれあれ、2人とも生きてたよ。流石は名門雄英高校の生徒だ」
森の奥から、ガスマスクに学ラン姿の男が姿を現した。こいつが攻撃の主か!
「出やがったな!
構える俺と拳藤。
「あー…お前ら資料で見たよ。1年B組の生徒だろ? あーあ、外れも外れ…大外れ」
「折角のクレイモア地雷。お前達なんかで1個無駄にしちゃったよ…あーあ、最悪だ」
だが、
「10秒やるからさ。さっさと消えてくれないかな。お前らなんか仕留めたって、自慢にもなりゃしない」
こんな奴が皆を苦しめてんのか…許せねぇ…許せねぇ!
「だったら、俺がお前を仕留めてやるよ!」
全身を金属化させ、
「馬鹿の相手は嫌なんだけどなぁ」
俺の攻撃を避けるでもなく、学ランの中から拳銃を取り出す
「ぐはぁっ!」
轟音と共に弾丸が撃ち込まれた瞬間、俺はその衝撃に耐えきれず吹っ飛ばされた。今まで感じた事が無いほど強烈な衝撃…あいつのは普通の拳銃じゃないのか!?
「硬くなるから、銃弾なんか平気だと思った? まぁ、9mmパラとかなら耐えられたかもね。でも、これ普通の拳銃じゃないから」
「トーラス・レイジングブル。.44マグナム弾の上を行く.454カスール弾を発射出来る大型拳銃だよ」
「流石は、死柄木さんだよね。こんな凄い銃簡単に用意しちゃうんだから」
「これに比べたら、今まで僕の使ってた38口径なんて、豆鉄砲。玩具も同じさ!」
そんな事を喋りながら、次々と銃弾を撃ち込んでくる
「おっと、弾切れだ。威力がデカい分、5発しか装填出来ないのがこの銃の欠点だよね」
余裕丸出しで、弾切れになった銃に弾丸を込め始める
「はぁっ!」
「甘いんだよね」
だが、
「Bang♪」
手首に巻かれたリストバンドから何かを発射した。それは拳藤の左肩に突き刺さると同時に、高圧電流を流し、拳藤を容赦なく焼いていく。
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる拳藤。気絶しているのかピクリとも動かない。
「アッハハハハ。2対1で1人は身を隠して、不意打ち狙いね!? アハハハ、浅っ、あっさいよ底が」
「このガスはさァ、僕から出て僕から操ってる!! 君らの動きが
「何でそういうの考えらんないかなぁ…まぁ、優秀なA組ならともかく、B組じゃこの程度か。何気に僕も装備は大幅にアップデートしてるし」
心底楽しそうに俺達を嘲笑う
「ヌァァァァァッ!」
「バァカ」
気合を入れて立ち上がろうとした瞬間、銃弾が撃ち込まれ吹っ飛ばされる。駄目だ…これじゃあ、何も変わらねぇ…。
「あれあれ? さっきより柔らかくなってない? 金属の疲労的な奴? 踏ん張りも利いてないね。硬度は踏ん張り次第?」
「硬化やらの単純な奴らって、えてして体力勝負なとこあるもんねぇ。そういうの考えず突っ走るのって、馬鹿の証拠だよね」
嘲笑と共に撃ち込まれる弾丸を必死に堪える。耐えろ…あの拳銃の装弾数は5発。あと2発耐えれば、再装填する…その時が逆転のチャンスだ。
「ねぇ…君らは将来ヒーローになるんだろ…? 僕、おかしいと思うんだよね…」
「君みたいな単細胞がさァ! 学歴だけで! チヤホヤされる世の中って! 正しくないよねぇ!」
怒りに満ちた
「ヌァァァァァッ!」
残った力の全てを振り絞って、
「ほんと馬鹿だよね。その程度の考え、読めないと思った?」
どこまでも俺達を嘲笑う
「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」
次々と撃ち込まれる弾丸に、その疑問は一瞬で消滅する。さっきまでの大型拳銃に比べたら遥かに軽く、それでも今の俺には十分すぎる程重い衝撃に俺は打ちのめされ…。
「ち、くしょ…」
その場に崩れ落ちた。もう“個性”も維持出来ず、全身が生身に戻っている。
「はぁ…最初から最後までこっちの掌の上。ゲームの雑魚の方が、まだマシだよね」
「君達、ネットでどう呼ばれてるか知ってる?
「でも、そんな君達でも死ねば騒ぎになる。死柄木さんの目的は達成されるんだ。だからさ…死んでください」
突きつけられる銃口。ここまでかよ…。
「そこまでですよ、マスタード君」
「邪魔しないでよ。Mr.コンプレス。死柄木さんの命令を実行するんだから」
なんだ…何が起きてる? 駄目だ、もう顔を上げる事も出来ねぇ…。
「貴方の仕事を邪魔する気は微塵もありません。ですが…もっと大物を狙いませんか?」
「大物を?」
「えぇ、昔から言うでしょう。馬鹿と鋏は使いよう。と」
「馬鹿と……あぁ、そういう事だね」
「そういう事です」
大物を狙う…こいつら、まさか…。
八百万side
「音の発生源は、この辺りの筈…」
爆発音の発生から約5分後。私と泡瀬さんは、その発生源と思われる場所に到着し、周辺を捜索しましたが―
「駄目だ。この辺りに人の気配は無いみたいだ」
「そのようですね…」
「この辺りで戦闘があった事は間違いないのですが…」
大量に落ちていた空薬莢や、発射済みのクレイモア地雷といった証拠品を手に、私は一瞬考え―
「
「それはそうだけど…鉄哲と拳藤は……」
「酷な言い方ですが…
最悪の事態。私の発したその言葉に声を失う泡瀬さん。そのお気持ちは痛いほど解ります。ですが―
「泡瀬さん! 気持ちを強く持ってください! こんな所で惚けていては、
この場は私が憎まれ役となってでも、しっかりしてもらわなくては!
「ッ!? すまねぇ…」
「他の方を探しつつ、宿泊施設へ急ぎましょう」
まだ気持ちの整理がつかずにいる泡瀬さんの手を引いて走りながら、私は心の中で祈ります。最悪の事態。それが私の杞憂である事を…。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。