出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第89話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
死柄木弔side
「戻りました」
そんな声と共に黒い靄の中から出てきた黒霧に、俺は片手を軽く上げる事で答える。
「手筈通り、チンピラを50人ほど麓の町へ送り込みました」
「これで、
エンデヴァー事務所から、サイドキック上位7人を特別講師として招集するとは、雄英高校もなかなか味な真似をしてくれる。情報を入手出来たのは、本当に幸運だった。
「
「生徒どもを戦わせるという選択肢もあるが…警戒に値するのは1年A組のみ、B組は一山幾らで話にならない」
「そもそも
俺はグラスの中の水割りを一気に飲み干すと、空になったグラスを
「それがこの狂った超人社会の
粉々に崩壊したグラス
「小森! 取蔭! 気をしっかり持て! 目を瞑るな!」
森の中を漂う毒ガスにやられ、意識を失いかけていた小森と取蔭を発見した俺は、敢えて厳しい言葉をぶつけながら小森を背負い、取蔭を抱きかかえて、宿泊施設へと急ぐ。
「森に火を放ち、毒ガスを撒く…
自分の脳裏に浮かぶ最悪の状況。それを必死に否定しながら走っていると―
「ッ!」
少し先の茂みから感じたのは複数の気配。咄嗟に急停止し、万が一に備える。直後―
「先生!」
「お前達か」
飛び出して来たのは常闇達8人*1。それに内心安堵しながら、状況を確認。
小森と取蔭を常闇達に託し、残った生徒達を保護に向かうかどうか…俺は数秒だけ考え―
「よし、宿泊施設へ急ぐぞ。キツイとは思うが、もう少しだけ踏ん張れ。出来るな?」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
こいつらを施設へ送り届ける事を優先する。それに、非合理的ではあるが…俺も宿泊施設へ一旦戻った方が良いような気がするしな。
轟side
「肉…見せて」
気味の悪い事を言いながら、鋭い歯を何本も伸ばして攻撃を仕掛けてくる
「
俺は矢継ぎ早に迫る攻撃を氷壁を作り出して防御。それと同時に最大出力の氷結を放つが―
「チィッ…」
「地形と“個性”の使い方が上手ぇな…」
さっきからこの繰り返しだ。全身を拘束着に包んだ姿といい、相当場数を踏んだ…ヤバイ
炎が使えるなら話は変わってくるが、
「炎を撃つなら、確実に当てられる状況に持ち込まねぇと…」
そう呟きながら、ふと背後に目をやれば、20mも行かないうちにガス溜まり…わかりやすく
「…待てよ」
ガス溜まりを見て、1つ作戦を思いついた。吸阪や緑谷なら、もっと上手い方法を考えるだろうが…それでも試す価値はある!
俺は氷結で
「はぁぁぁぁぁっ!」
最大出力で炎を放つ。瞬く間に氷壁は溶け、かわりに大量の水蒸気が発生。周囲を霧で包んでいく。
「勝負は…ここからだ」
ムーンフィッシュside
「霧? 隠れる…駄目だぁぁぁ、肉、見せてぇ!」
アイツ、霧に紛れて、逃げる! そんなの許さない!
「うぁぁぁぁぁっ!!」
微か、見えた影、手当たり次第、攻撃! 攻撃!
「肉見せろ! 断面、見せろぉぉぉぉぉっ!!」
人間サイズの影、見つけた!
「肉! 肉肉肉ゥッ!」
次々、歯刃突き立てる! これで、見れる! 断面、見れ…
「これ、肉じゃない…氷」
「俺が作った氷像だ」
「お前!」
いつの間、真下!
「
轟side
真下から
かなりの高さから落下した、そのダメージは相当なものだが…。
「あ、が…に、く……」
どうやら生きてはいるようだ。だが落下の衝撃で、手足は全て有り得ない方向に曲がっているし、歯も根元から砕けている。“個性”はおろか、動く事も出来ないだろう。
「さて、どうするか…」
いくら
「氷漬けにして、施設へ運ぶか…」
自分の出来る最良の方法を実行しようとしたその時―
「その必要はありませんよ。もはや、彼に価値はありませんから」
突然、背後から声が響く。
「ッ!」
反射的に氷結を放ちながら距離を取れば、そこに立っていたのはトレンチコートとシルクハット、そして仮面を身に着けた
さっきまでの相手とはまた違う
どうやら、まだ施設の方には戻れそうにないようだ。
雷鳥side
「兄貴、どっちを
「俺は緑谷を
「だったら、俺が吸阪雷鳥っすね!」
俺と出久を無視して、どちらと戦うかを決めるマスキュラーとトリケラトプス
だったらこっちも、
「そこの3本角、念の為聞いておきたいんだけどさぁ…」
「何だ? 命乞いなら、するだけ無駄だぜ」
「そんなんじゃないさ……お前らの
「……葬式を出してやるのは、こっちの方だ!」
叫びと共に体当たりを仕掛けてくるトリケラトプス
「ヒーロー殺しに比べれば、まだ遅い! ライトニングフルカウル…発動!」
串刺しにしようと迫る3本の角を、俺流フルカウル改めライトニングフルカウルを発動する事で反応速度を高めた俺は、紙一重で回避し―
「そらよっ!」
タイミングを見計らって、足払い!
「ぬぁぁぁぁぁっ!」
派手に転倒し、その勢いのまま崖を転がり落ちていくトリケラトプス
「今ので行動不能になっていればいいんだが…」
淡い期待と共に下を覗き込むが…
「ぬがぁぁぁぁぁっ!」
そうは問屋が卸さない…か。
「出久。
出久にそう言い残し、比較的傾斜が緩やかな所から、崖下へ滑り降りていく。
崖下に降りた俺を待ち構えていたトリケラトプス
「手前…舐めた真似しやがって!」
その表情はこれ以上無いほど怒りで彩られているが…。
「ハッ、子ども庇いながら戦ってる出久を2人がかりで攻撃するような
俺は敢えて、更に煽る。
「チキンじゃないなら、かかって来いよ。殴り合いで勝負つけようぜ」
「なんだと…」
「あぁ、悪い! マスキュラーの
「…やるよ」
「え? なんだって?」
「やるって言ってんだよ! 手前ぶちのめして、ミンチになるまで引き摺り回してやるよ!」
俺の煽りで、完全にキレたのだろう。目を真っ赤に血走らせながら、体当たりを仕掛けてくるトリケラトプス
「吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇっ!!」
「お生憎様!」
先程同様、ライトニングフルカウルを発動する事で反応速度を高めた俺は、紙一重で回避し―
「せいっ!」
お返しの掌打を、トリケラトプス
「……何の真似だ? 鼓膜を破った程度、蚊が刺したほどにも感じねぇぞ!!」
己のタフさを誇示するかのように吠えながら、方向転換するトリケラトプス
「緑谷出久みてぇなパワーも無いお前に! 俺が! 倒せる訳!」
ねぇだろうが! 恐らくそう続けたかったであろう突進は、突然の転倒で終わりを告げる。
「な、なんだ! た、立て、ねぇ…」
転倒した状態からなかなか起き上がれず、起き上がっても悪酔いしたようにふらつくトリケラトプス
「掌打と同時に電磁衝撃波を叩き込んで、三半規管を麻痺させた。鼓膜を破ったのはあくまでもオマケ」
「さ、三半規管!?」
「鼓膜の内側にある平衡感覚を司る器官だ。そこが麻痺した今、お前からは平衡感覚が失われ、動く事はおろかまともに立つ事も出来ない状態だ」
「なん、だと…」
俺の言葉に顔を歪ませ、掴みかかろうとするトリケラトプス
「さて、さっき言ってくれたな。俺には出久みたいなパワーは無いって。残念ながらそれは事実だ。俺には一撃必殺を狙える程のパワーは無い。だからさ…
「さて、何発でKO出来るかな?」
なんとか立ち上がったトリケラトプス
「ライトニングプラズマ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
10発、20発、30発。この程度では、トリケラトプス
「だららららららららららっ!」
60発を超えたが、まだ倒れない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
90発を超え―
「ライトニングボルト!」
ジャスト100発を一区切りに、
「………ゴフッ」
全身を満遍なく殴られ続けたトリケラトプス
「出久を甚振ってくれたお礼だ。
出久side
「思わぬ形で休憩になったが…こっちも再開しようぜ! 緑谷!」
崖下に降りて行った雷鳥兄ちゃんを見送った直後、仕切り直しと言わんばかりに声を張り上げ、向かって来るマスキュラー。僕は洸汰君を背後に庇いながら、素早く考えを巡らせる。
先程までと違い、油断も慢心も無い100%の攻撃。悔しいけど、『フルカウル』の出力を
策も無しに正面からぶつかれば、僕も洸汰君もやられる…どうする?
「死ねやぁぁぁぁぁっ!!」
-改良……緑谷君の戦い方はパンチ主体だよね? 月並みだけど…キックを使う頻度増やすとか…どうやろ?-
麗日さんの言葉が脳裏に浮かんだ。そうか!
「はぁっ!!」
僕はマスキュラーのパンチを、右の上段回し蹴りで迎え撃つ! その結果は―
「ぬぉぉぉっ!」
僕の勝ちだ! 拳を弾かれ、後退するマスキュラー。その顔は驚愕で彩られている。
「足は腕の3倍力があるって言うけど…本当だね」
どうして今まで足技を多用してこなかったのか…僕は微かに自虐的な笑みを浮かべ、一足飛びでマスキュラーとの間合いを詰める。
「ぬがぁぁぁっ!」
僕を近付かせまいと、半ば反射的に放たれたマスキュラーのパンチを掻い潜り、攻撃開始だ!
「梅雨ちゃん、技を借りるよ!」
まず放ったのは、右の跳び回し蹴りから左の後ろ回し蹴り、更に二段爪先蹴りへと繋げるコンビネーション。梅雨ちゃんの必殺技の1つ
梅雨ちゃんほど洗練されてはいないけど、7割程度の再現は出来る!
「ぐぅっ…」
脳天に二段爪先蹴りを受け、よろめくマスキュラー。回復の隙は与えない。このまま一気に勝負を決める!
「今度はこの技!」
僕は全力で真上にジャンプし、空中で一回転。
「必殺!
常闇君が得意とする、落下の勢いを加えた踵落としを、再度脳天に叩き込む!
「げぼっ…」
強烈な衝撃に一瞬白目を剥き、膝から崩れ落ちていくマスキュラー。そのまま倒れこむかと思ったけど―
「や、やるじゃねえか…緑谷…」
地面にキスする寸前、マスキュラーは意識を取り戻した。
「ここまで追い詰められたのは、初めてだ…もっと、もっと、殺しあおうぜ! 緑谷ァ!!」
狂気の笑みを浮かべながらゆっくりと立ち上がり、叫ぶマスキュラー。あれだけの攻撃を受けても立ち上がるなんて、驚異的なタフネスだ。こうなったら!
「雷鳥兄ちゃん、
「うぉぉぉぉぉっ!!」
全力でマスキュラーの懐に跳びこんだ僕は、そのままマスキュラーの両腕をクロスさせた状態で掴むと―
「
クロスした肘の部分に膝蹴りを叩き込み、その勢いを利用して投げ飛ばした!
膝蹴りで両肘が砕けたマスキュラーは、受け身を取れないまま頭を地面に叩きつけられ―
「………グハッ!」
吐血と共に、崩れ落ちた。
「…やった」
ようやくマスキュラーを倒せた事に、心の底から安堵する。パワーやタフネスという点では、ヒーロー殺しをも上回る強敵だった。
「出久も仕留めたか」
そこへ何事も無かったように戻って来る雷鳥兄ちゃん。平気な顔をしているけど―
「雷鳥兄ちゃん、拳から血が出てるよ」
「ん? おぉ、掠り傷だ。
一体何十発殴ったんだろう。少し心配になる。
「後で
「そうだね。行こう洸汰君」
とにかく、今は洸汰君を無事に送り届ける事が先決だ。マンダレイを安心させないと。
ブラドキングside
「こんなところにまで、考え無しのガン攻めか! 随分舐めてくれる!」
まだ戻って来ていないクラスメートを助けに行かせてくれ。そう声を上げる生徒達を落ち着かせている最中、空気も読まずに攻撃を仕掛けてきた
「『操血』…強ぇ!」
「流石は僕らのブラド先生!」
生徒達は…無事だな。距離を取って、こちらの様子を窺っている。
「そりゃあ舐めるだろ。思った通りの言動だ」
「後手に回った時点で、おまえら負けてんだよ」
「………ッ!」
「ヒーロー育成の最高峰雄英と、平和の象徴オールマイト。ヒーロー社会に於いて、最も信頼の高い2つが集まった」
「ここで信頼が揺らぐような案件が重なれば………その揺らぎは社会全体に蔓延すると思わないか?」
「例えば、何度も襲撃を許す杜撰な管理体制。挙句に、大勢の生徒を犯罪集団に傷つけられる弱さ」
「貴様!」
「無駄だブラド」
怒りの声を上げようとしたまさにその直前、戻って来たイレイザーが
「こいつは煽るだけで情報出さねえよ」
拘束された状態で床に倒れた
「それに見ろ。こいつは偽者だ。おそらく分身か複製を作る“個性”の使い手が、敵集団にいるんだろう」
イレイザーの言葉通り、ボロボロに崩れていく
「随分な数が集まったな…生徒を保護したか…」
崩れ落ちながら再び口を開く
「考えなかったか? 俺が来るまで
「全員じゃないが、これだけ集まれば十分…だ…」
そう言い残して、完全に崩れ去る
「全員! ここから退避しろ!」
「
俺とイレイザーが声を上げた次の瞬間、爆音と共に外壁が吹っ飛び―
「プロと雑魚、合わせて28人か……全員、
仮面で顔を隠した4本腕の
最後までお読みいただき、ありがとうございました。