出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第90話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
今回、少々残酷な描写がある為、必須タグを追加しております。
レッドワスプside
「ポイズンスティング!」
一瞬の隙を突いて、右腕から伸びた針を
「ぐ、が、あ…」
数秒もしない内に
現在の高度は約150m。このまま何もしなければ、地上に無防備のまま叩きつけられ、間違い無く即死だ。
「ブロッサム! 頼む!」
「お任せください!」
もっとも、何の備えもしていない訳じゃない。あらかじめ地上に降ろしておいたブロッサムが、“個性”で蔓を強化し、ネットを作り上げている。
無事にネットで受け止められた
「まさか、俺達が救援に向かう事も予測していたとはな…」
全速力で宿泊施設へ向かう俺とブロッサムを待ち構えていたのは、『
螻蛄の七つ芸という言葉があるように、器用貧乏なイメージがある螻蛄だが、逆を言えばあらゆる能力が過不足なく纏まっているという事。
正直な話、ブロッサムの援護が無ければ今以上に苦戦し、下手をすれば救援自体不可能になっていたかもしれない。
「それにしても…ブロッサム」
「はい?」
「お前やルージュ、ビートの母校を悪く言う気は無いが…雄英高校はどんだけ
「わ、私に言われても…」
再びブロッサムを抱えて飛び上がり、宿泊施設へ向かいながら思わず愚痴る。こう言っちゃなんだが…嫌な予感がするぜ。
荼毘side
「流石だぜ、絶無の奴! ド派手に始めやがった!! あの馬鹿、派手なら良いってもんじゃないんだよ!!」
「始めたか…この作戦も最終段階だな」
トゥワイスからの報告を聞きながら、俺は静かにそう呟くと―
「………」
10mほど先にある茂み、
「おい荼毘! そういやどうでもいい事だがよ!」
「脳無って奴、呼ばなくていいのか!? お前の声にのみ反応するとか言ってたろ!? とても大事な事なんだろ!!」
……まぁ、気配から見て大した獲物じゃない。捨てて置くか。
「あぁ、いけねえ。何の為に戦闘加わんなかったって話だな」
「感謝しな! 土下座しろ!」
「死柄木から貰った
「1人くらいは…殺してるかな」
泡瀬side
「八百万! 生きてるか!? おい!! しっかりしてくれ!!」
「すみません…泡瀬さん…大…丈夫です…」
俺の問いかけに、たどたどしい口調で答える八百万。だけど、その頭から大量に血が流れてるし、背中も派手に切られてる…。
「畜生! 畜生!」
背負った八百万を万が一にも落とさない様、自分の“個性”で接合し、必死に走る。
俺は…俺は、何やってんだよ! 鉄哲と拳藤の事があったとはいえ、
「ネホヒャン!」
自己嫌悪と後悔で、頭の中が一杯になりそうなタイミングで聞こえてきた異質な声。思わず背後に視線を送ると―
「マジかよっ!」
俺達に不意打ちを仕掛け、そのまま何処かへ走り去った筈の
6本の腕に直接チェーンソーやドリル、ハンマーがくっついた異形型…いや、あれが異形型かどうかなんて関係無い。今、確実なのは―
「ネホヒャン!」
アイツがチェーンソーやハンマーを振り回しながら、俺達を追いかけているという事! 追いつかれたら、間違いなく…殺される!
「殺されて…たまるかよっ!」
そう叫びながら、必死に走る。せめて、せめて八百万だけでも!
「泡瀬、さん……こ、れを…」
八百万の声が聞こえたのはその時だ。視線を動かすと、そこには―
「使って…ください。この、サイズなら…通用する筈……」
アクション映画に出てくるような大型の銃が…八百万が創造したのか?
「この、ままだと…追いつかれ、ます……戦わ、ないと…」
「だけど、俺…銃なんか撃った事……」
「大、丈夫…
発射されるのはゴム弾。八百万のその言葉に覚悟を決める。ここまで不様な姿見せ続けてきたんだ…ここでやらなきゃ、どうしようもねぇ!
「うぉぉぉぉぉっ!」
叫び声と共に急停止した俺は、素早く
「くらえ! 化け物!!」
引き金を引いた。乾いた音と衝撃と共に、ゴム製の散弾が発射され、
「ヒャン!」
ゴム弾が命中すると声を上げ、動きを止める
俺は八百万に促されるまま、2発発射する度にレバーをスライドさせる。を繰り返し、14発分のゴム弾を撃ち込んだ。
「やった…のか?」
動かなくなった
「ヒョウカイ!」
「ッ!」
だけど俺のそんな願いも空しく
「ネホヒャン!」
回れ右をして、歩き出した。
「何だ……帰る、のか?」
「泡瀬さん!」
訳が分からずにいる俺を再び動かしたのは、八百万の声。
「“個性”でこれを…奴に」
「これを、くっつければ良いのか?」
「いいから早く…行って、しまいます…」
このボタンみたいな物が何なのかわからないまま、俺は
「………ネホヒャン!」
俺に触られても
「いけねぇ! 休んでる場合じゃない!」
早く、八百万を宿泊施設まで運ばねぇと!
「プロと雑魚、合わせて28人か……全員、
外壁を吹っ飛ばして現れた仮面の
「ブラド! 合わせろ!」
「言われるまでもない!」
絶無の無力化だ!
「まずはプロ2人からか! 面白れぇ!」
血に飢えた獣。そう表現出来るような声を発しながら、俺達へ向かってくる絶無。
「蜂の巣になりなぁ!」
本来の腕よりわずかに細い…2本の副腕、その掌から短い間隔でレーザーを乱射し、弾幕を張るが―
「舐めるな!」
このレベルの攻撃なら、許容範囲だ。ブラドは自らの血を固めて作った盾で、俺は捕縛武器を振るう事で、それぞれレーザーを防ぎ、間合いを詰めていく。
「ハッ! そうでないとな!」
ある程度間合いを詰めたところで、絶無は戦い方を変えてきた。レーザー攻撃を止めると同時に4つの手、その甲から白く輝く刃を生やし、斬りかかってきたのだ。
「オラオラオラァッ!」
4つの刃を縦横無尽に振り回し、怒涛の攻めを仕掛ける絶無。色合いや質感から見て、エナメル質で形成された刃…硬度や切れ味は相当なものだろう。だが―
「武器は一流でも、使う技術はそうではないらしい」
ただ振り回すだけの武器に当たるほど、俺達は甘くない。短いが確実に存在する隙を突いて、俺の捕縛武器とブラドの血で、絶無を拘束する。
「俺達を皆殺しにする等と意気込んだ割には、呆気ない幕切れだな。潔く投降しろ」
ガチガチに拘束した絶無に険しい顔を見せながら、投降を促すブラド。一見、俺達の完勝だが…何かがおかしい。
宿泊施設に集まった生徒達を一網打尽にする事が目的だった絶無が、
何とも言えない違和感が頭の中を駆け巡った次の瞬間―
-それに見ろ。こいつは偽者だ。おそらく分身か複製を作る“個性”の使い手が、敵集団にいるんだろう-
ホンの数分前、自らが発した言葉を思い出す。そういう事か!
「ブラド! そいつは分身だ! すぐに―」
離れろ! そう言い終える前に、数十m先の茂みから何かが跳び出した。分身ではない…本物の絶無だ!
「くらいな!」
50m近いジャンプで俺達の頭上を取った絶無。その副腕が煌めき、乱射される幾筋ものレーザー。
「ごふっ…」
拘束され、地面に転がっていた絶無の分身は、瞬く間に蜂の巣となり、ボロボロに崩れていく。そして俺達も、雨の様に降り注ぐレーザーの全てを防ぎ、避ける事は出来ず―
「ぐぅっ…」
「ちぃっ!」
俺は右足に2発、ブラドは左腕と左脛に、それぞれ1発ずつレーザーを受けてしまった。そこへ轟音を立てながら着地する絶無。
「ハッ! こうも簡単にいくとはな。雄英の教師も所詮はこの程度かよ」
傷を負った俺達を嘲笑う絶無。舐められたものだ…。
「この程度の傷で、俺達に勝ったつもりか?」
「生徒達を守る為、この程度傷の内には入らん!」
すぐさま立ち上がり、避難を続ける生徒達を絶無から庇う様に構える。ここから先には一歩たりとも進ません!
「守る? 守るだと? 笑わせるな…手前らには、
「ほざくなぁ!」
次の瞬間、絶無を捕えようと最大級の勢いで放たれるブラドの血。俺もブラドの血をカバーする軌道を描くように捕縛武器を放つ。
ほぼ全方位を覆うこの攻撃。逃げる事はまず不可能。
「無駄なんだよ!」
だが、絶無は両掌で
「早いっ!」
「手前が遅いだけだ!」
最大級の攻撃を放ったが故に無防備となったブラドの懐に飛び込み、その顔面に口から放つ火炎を浴びせる!
「ぐぉぉぉっ!」
炎で焼かれ、思わず両手で顔を覆うブラド。だが、それは絶無に絶好の機会を与えてしまう。
「おらぁっ!」
副腕から生やしたエナメル質の刃を、ブラドの腹部へ何度も突き刺す絶無。何とか俺の捕縛武器で牽制し、距離を取らせる事は出来たが…。
「……ごほっ!」
ブラドは腹を滅多刺しにされ、その場に崩れ落ちた。“個性”も解除され、放たれた血はブラドの体内に戻る事無く地面に撒き散らされる。
いかん! あれだけの傷を負った状態で、大量の血を失っては…ブラドの命が―
「他人の心配してる暇があんのか?
そこへ飛び込んできた絶無の声。今までとは違うこの声…そして『爆破』の“個性”…まさか!
「お前は―」
声の主。その名を口にしようとした瞬間。俺の腹に絶無の右掌が押し当てられ―
「…吹っ飛べ」
強烈な爆発が零距離で炸裂。肋骨が粗方砕かれる感触と共に、俺は吹っ飛ばされ…壁へと叩きつけられた。
「相澤先生!」
「逃げ…ろ…」
微かに聞こえた教え子達の悲痛な叫びに、何とか声を絞りだす…くそ、意識が……。
飯田side
「てめぇ! よくも…よくもブラド先生を!」
「許さねぇ!」
怒りの形相と共に、絶無へ向かって行こうとするB組の男子達を必死に押し留めながら、僕はどう行動すべきかを必死に考える。
だが、このまま逃げたとしても…。
「退けよ!」
その時、物間君と意識を失っている鱗君を除くB組男子*1が、僕達を押し退けて一斉に絶無へと突撃。
「よせ! 無闇に突っ込むだけじゃ!」
「冷静になれ!」
僕達の制止も空しく、怒りに任せて攻撃を仕掛けたが…。
「ぶった切ってやる!」
両腕から三日月状の刃を生やし、真っ先に絶無に斬りかかった鎌切君は、レーザーで刃を根元から溶断され、新たな刃を生やす間も無く、顔面に蹴りを叩き込まれて吹っ飛ばされた。
「鎌切君! このやろぉぉぉっ!!」
「壁で抑えつけて、動けなくしてやるよ!!」
凡戸君は顔から放つ接着剤のような液体で、円場君は空気を固めて作り出した透明な壁で、それぞれ絶無の動きを封じようとしたが―
「ちゃちな小細工が効くかよ! この“没個性”どもが!」
凡戸君の放った液体は、絶無の火炎放射で蒸発し、円場君の壁も爆発で砕かれてしまった。そのまま絶無は副腕から伸びた刃で、2人を袈裟懸けに斬り捨てる、
「ドッカァァァン!!」
吹出君の叫びと共に具現化された擬音は、一直線に絶無へ飛び、その頭部に炸裂するが―
「…それが攻撃のつもりか?」
絶無には大したダメージを与えられず、逆にレーザーを撃ち込まれて倒されてしまう。
「フンッ、弱過ぎて話にならねぇな…一山幾らの雑魚どもが、何をやっても無駄なんだよ!」
瞬く間に4人を倒し、つまらなさそうに鼻を鳴らす絶無。だが―
「そうやって相手を見下すから、足元が疎かになるんだよ」
「何ッ?」
突然、自身の影から飛び出してきた黒色君には虚を突かれたのか、羽交い絞めを許してしまう。
「回原! 庄田! 今だ!」
「黒色、よくやってくれた!」
「好機到来!」
そこへ回原君と庄田君が左右から挟撃を仕掛ける。完璧なタイミングだ!
「舐めんなよ…雑魚どもがぁ!」
しかし、次の瞬間絶無は全力でジャンプする事で、挟撃を回避。頭上からレーザーを乱射して、回原君と庄田君を倒すと―
「いつまでくっついてやがる!」
副腕で黒色君を引き剥がし、至近から爆発を浴びせた!
「グハッ…」
「つまらねぇな」
着地と同時に、黒色君を投げ捨てる絶無。7人がかりでも勝負にならないとは…絶無の強さは……圧倒的だ。
「……所詮、雄英高校なんかで仲良しこよしやってる内は、本当の強さは手に入らねえ」
地面に倒れた7人を見下しながら、絶無はそう吐き捨て…装着していた仮面を外し、素顔を僕達に晒した。ま、まさか…。
「俺は本当の強さを手に入れたぞ!
絶無は…君なのか!? 爆豪君!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。