出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第91話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
絶無side
-俺には…俺には………もうこの道しかねぇんだッ!!-
あの日…叫びと共に乱射した爆破で、家中を火の海に変えた俺は、音も無く現れた黒い
「先生、爆豪勝己君をお連れしました」
先生と初めての対面を果たした。
「やぁ、よく来てくれたね。爆豪勝己君」
「ッ!」
暗がりから放たれた穏やかなその声を聞いた途端、俺はまるで心臓を鷲掴みにされているような感覚に陥り…次の瞬間には、先生に平伏していた。
「そんなに脅える事はないよ。爆豪君…私は、君の実力を高く評価している。これからは、その優れた力を是非とも
「は、はいっ!」
床に額を擦り付けながら、先生の声にそう答えると同時に…俺は確信した。この御方、先生に付いて行けば、何の心配もいらないと…。
先生との対面を終えた俺は、そのまま先生の長年の同志であるドクターの研究室に案内された訳だが―
「爆豪君、お主の事は先生から聞いておるよ。強くなりたいそうじゃの…それなら、これを飲むと良い」
顔を合わせた途端、ドクターから差し出されたのは、1000mlサイズのビーカーになみなみと注がれた黒い液体と、それより一回り小さいビーカーへ山盛りに入れられた錠剤。
「………」
「まぁ、無理に飲まなくても構わんよ。これを飲まなくても強くはなれる。
「飲まないなんて言ってない……。強くなれるなら、何だってやってやる!」
ドクターからビーカーをひったくると、中身を一息に飲み干し、錠剤を貪っていく。
「ほほっ! 良い飲みっぷりじゃの!」
ドクターの声を聞きながら、残り一掴みほどになった錠剤を一気に噛み砕き、飲み込む。錠剤はラムネ味だし、液体は溝みたいな色しておいて、苺ミルク味かよ。
「……ッ!」
錠剤と液体の味に驚いた直後、体に変化が起き始めた。心臓の鼓動が、今まで経験した事無いほど激しくなり、全身から脂汗が大量に噴き出していく。
「始まったか。今飲んだ液体は、細胞を活性化させて、肉体を短時間で作り変える効果があり、錠剤の方はわし特製の高カロリー補給剤じゃ」
「そこのベッドで横になるといい。24時間もすれば、君の肉体は最低でも今の4倍、強靭になっているだろう」
遠のいていく意識の中、言われるままにベッドへ潜り込む間も、ドクターの言葉が脳裏に焼き付いていく。最低でも4倍…最高だ。そして―
「素晴らしい! まさかこれほどとは、予想以上! 4倍どころか、8倍は強化されておる!!」
24時間後。変貌を遂げた俺の肉体を見て、手を叩いて喜ぶドクター………当然だ。腕も足も、薬を飲む前よりふた回りは太くなり、身長も20cmは伸びた。
全身から溢れてくるパワーは、半端な増強型の比じゃねぇ…あぁ、早く、早くこのパワーを試してみてぇ!
「試してみたくてたまらない…という顔じゃのう。早速テストといこうかの」
「爆豪君、テストの結果見せてもらったよ。実に素晴らしいね。これだけでも、君をスカウトした甲斐があった…というものだよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
テストの結果は、ドクターの予想をも上回るもので、俺は先生からお褒めの言葉をいただけた。そして…。
「予定よりも少し早いが、君にプレゼントしたい物がある」
俺は先生から、ご自身の“個性”『オール・フォー・ワン』の説明を受け、新たな“個性”を授けられる事となった。
「爆豪君。新たに“個性”を付与する。言葉にすれば簡単だが、これは想像以上にリスクを伴うものだ。一歩間違えば、廃人と化す恐れもある」
「………廃人…」
「もちろん、私は君の大いなる素質を信じている。そこらに掃いて捨てるほどいる馬の骨のような事にはならないと思うが…選択は君に任せよう」
「
「先生! 俺…私は、そこらの馬の骨とは違います! 必ず、必ず先生のご期待に応えてみせます! だから…だから、俺に力を!」
「素晴らしい! 君の覚悟、見せてもらったよ。爆豪君…では、始めるとしよう」
直後…先生の右手が俺の頭に触れ、新たな“個性”を付与していく。
「あ、が…ぐぁぁぁぁぁっ!!」
体中が燃えるように熱くなり、生々しい音を立てながら、俺の体が変化していく。
「気分はどうかね? 爆豪君」
「問題…ありません。むしろ…力が、湧き上がってきます」
変化を終えた俺は、先生の声にそう答えながら、用意された鏡に目をやる。与えられた“個性”。それは、新たに一対の腕を得る『副腕』。
「ふむ、とりあえずは第一関門クリア…だね。また明日、“個性”を付与しよう。今夜は体を休め、“個性”を体に馴染ませるといい」
こうして俺は、1日に1つ、新たな“個性”を付与されていった。
掌からレーザー光線を放つ『パームレーザー』。
手の甲からエナメル質の刃を生やす『ジャマダハル』。
口から火を噴く『火炎放射』。
50mを超えるジャンプを可能にする強靭な脚力を得る『バッタ』。
1つ新たな“個性”を与えられる毎に、俺は力を大幅に増していったが…7つ目の“個性”を付与されたところで、俺自身はもちろん、先生も予想だにしていなかった事実が判明した。
「素晴らしい! お前さんは文字通り5千万…いや、1億人に1人の逸材じゃ!」
ドクターの興奮した声が部屋の中に響き渡る。どうやら、俺は複数の“個性”を付与されても、知性や精神に異常を来さない特異体質の持ち主らしい。
「それはそれは…実に素晴らしい。爆豪君、今後の活躍を大いに期待しているよ」
「は、はいっ!」
1億人に1人の逸材であるという事実。そして、先生から大きな期待を掛けて頂いた事が、
そして3日後。10個目の“個性”を付与されたところで、俺は先生から『絶無』のコードネームを頂き…爆豪勝己という名前を完全に捨て去るのだった。
飯田side
「俺は本当の強さを手に入れたぞ!
僕はその事実に大きな衝撃を受けながらも、どう行動するのが最善か、必死に考えを巡らせる。その時―
「なぁ、爆豪…お前、何…やってんだよ………答えろよ! 爆豪ぉっ!!」
悲痛な声と共に、切島君が全身を硬化させ、一直線に爆豪君へ走り出した!
「馬鹿が…蜂の巣にしてやるよ!」
副腕の掌からレーザーを乱射して、弾幕を張る爆豪君。何発かのレーザーが切島君に命中するが―
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
レーザーに焼かれ、所々硬化した皮膚が剥げ落ちながらも、切島君は止まらない。
「
それどころか、更に硬度を上げる事でレーザーの直撃を物ともせずに、間合いを詰めていき―
「この、馬鹿野郎が!!」
渾身の右ストレートを、爆豪君の顔面に叩き込んだ!
「ぐはっ!」
派手な音を立ててダウンする爆豪君。切島君はその胸倉を掴み、無理やり立たせると、激情をぶつけていく。
「爆豪! 俺は…お前の事を、心の中で尊敬してたんだぞ! 向上心の強さも! 天才的なセンスも! 俺にない物を皆持ってるお前が眩しかった! それなのに…なんでお前が
「目を覚まして、戻って来いよ…爆豪………」
切島君による涙混じりの説得。ホンの2ヶ月程とはいえ、同じ学び舎で学んだ者同士。心ある人間なら、きっと通じる筈だ!
「………悪かったな、切島」
「爆豪!」
「とでも、言うと思ったのか?
だが、その思いは無残に踏み躙られた。爆豪君から名前を呼ばれ、僅かに硬化を緩めた切島君の両脇腹を2発のレーザーが貫き―
「ごふっ…」
「いつまでくっついていやがる!」
続けて放たれた爆破で、切島君は吹き飛ばされた。
「切島!」
「切島君!」
慌てて駆け寄り、状態を確認するが…かなりの重傷だ。早く病院に運ばなければ…命の危険も!
「
「爆豪…貴様、そこまで堕ちたか!」
「切島の心が、何故わからない!」
「何故? 選ばれた者が、そうでない奴らの心を理解する必要なんかあるか? 手前らと俺は、虫と人程の違いがあるんだよ!」
常闇君や尾白君の声も、彼には届かない…人は、ここまで変わってしまうものなのか?
「安心しろ…手前ら全員地獄へ送ってやる。あの世で友達ごっこでもやってな!」
殺気を撒き散らしながら、僕達へと迫る爆豪く…いや、絶無。こうなったら!
「皆! 何とかこの場を乗り切るしかない! 陣形を組んで対抗するんだ!」
AFOside
「フフッ、絶無は期待以上の働きをしてくれているようだね」
絶無に内緒で付与しておいた『端末』の“個性”で送られる情報を脳内で再生しながら、静かに呟く。
「それはそうじゃろう。先生とわしであれだけ手を加えたんじゃ。この位派手に暴れてもらわんと、寿命を削ってまで戦闘力を上げた甲斐が無いわい」
おや、ドクターには聞こえていたようだね。それにしても―
「寿命を削ったというのは初耳だね。ドクター」
「言っておらんかったかの? まぁ、絶無に施した強化を考えれば、言わずもがな…じゃろ?」
「たしかに」
ドクターと共にニヤリと笑みを交わす。ドクターが絶無に摂取させた黒い液体。あれは、細胞を活性化させて、肉体を短時間で作り変える効果があるが…これには
もっとも…本来なら、緻密な栄養計算と計画的なトレーニングを行い、年単位のスパンで行うべき肉体改造をたった1日で完了させるのだ。裏が無い方がおかしい。
そして、その裏とは…
「ちなみにドクター。絶無の寿命はどのくらいかな?」
「正確に測定した訳ではないが…絶無、爆豪勝己が本来の人生を送って平均寿命程度…85歳まで生きると仮定した場合、残りの寿命は約70年」
「強化の度合いから考えて、寿命は本来の10分の1程度まで縮まったと考えるべきじゃろう」
「そうなると…彼の寿命は7年程度か」
「肉体の老化が始まる事を考えれば…戦力として使い物になるのは、6年といったところじゃな」
「ふむ…彼のような体質の持ち主はなかなか得難い。あまりに寿命が短いなら、手を打とうかとも思ったが…6年戦えるなら、
僕の後に王となる死柄木弔。彼を守る戦士として、絶無には最後の1秒まで頑張ってもらわなければ…。
「期待しているよ。絶無」
1年A組の生徒達相手に大立ち回りを繰り広げる絶無の映像を見ながら、僕は静かに呟く。本当に楽しい見世物だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。