出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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3週間近くお待たせして申し訳ありません。
第92話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第92話:林間合宿ーその16ー

雷鳥side

 

 さて、マスキュラーとトリケラトプス(ヴィラン)を撃破し、無事に洸汰君を保護出来た俺と出久は、全速力で宿泊施設へと向かっていた訳だが―

 

「な、なぁ…」

 

 その途中、出久に背負われた洸汰君が、躊躇いがちに口を開いた。

 

「どうしたの? 洸汰君」

「お、俺…じゃない、僕、お兄ちゃんの事殴ったよね」

「うん、まぁ…未遂だけど」

 

 ショートカットの為に茂みを突っ切りながら、洸汰君の声に答える出久。

 

「それなのに……助けに来てくれて、ありがとう…それと、ごめんなさい」

「うん、君を助けられて…よかった」

 

 泣きながら感謝と謝罪を口にする洸汰君に、優しく微笑む出久。だが―

 

「ッ!?」

「爆発!?」

 

 宿泊施設の方向から突然響いた轟音に、その笑顔は消え去った。

 

「雷鳥兄ちゃん!」

「あぁ、嫌な予感がする…急ぐぞ、出久!」

 

 短く言葉を交わしながら、俺と出久は、宿泊施設に急ぐ。何が起きたか解らんが…皆、無事でいてくれよ!

 

 

飯田side

 

「皆! 何とかこの場を乗り切るしかない! 陣形を組んで対抗するんだ!」

 

殺気を撒き散らしながら、突撃してくる絶無。それに立ち向かう為、僕は咄嗟の指示を下す。

 

「物間君、切島君や障子君達を頼む!」

 

 重傷の切島君や障子君、B組の皆を物間君に託し、僕達は陣形を組んでいく。それを見た絶無は―

 

「ハッ! 群れなきゃ何も出来ねぇのか! 雑魚ども!」

 

 そう言って僕達を嘲笑うが、笑いたければ笑うがいい!

 

「貴様から見れば、俺達は小賢しい雑魚の群れに見えるだろう。だが、雑魚の何が悪い!」

「雑魚の群れより1匹の大魚が偉いなんて、一体誰が決めた!」

 

 そう言って先陣を切ったのは、深淵闇躯(ブラックアンク)を発動した常闇君と尾白君だ。

 2人は、絶無の副腕から次々と放たれるレーザーを紙一重で掻い潜りながら、間合いを詰めると―

 

影の短剣(シャドースティレット)!」

「はぁぁぁっ!」

 

 常闇君は貫手、尾白君は正拳突きの連打(ラッシュ)を放ち、攻撃を仕掛ける!

 

「その程度の攻撃が効くかよ!」

 

 それらは絶無の手から生えた合計4つの刃で防がれるが―

 

「2人とも離れろ!」

 

 そこへ、砂糖細工の悪魔(シュガークラフトデーモン)を発動した砂藤君が突撃。

 

「どぉりゃぁっ!」

 

 2人の攻撃を防いだ事で、手薄となった絶無の顔面に、渾身の右ストレートを叩き込む!

 

「ぐはっ!」 

 

 緑谷君の必殺技(スマッシュ)に匹敵する砂藤君の一撃を受け、派手に吹き飛ぶ絶無。地面を数回バウンドしたところで体勢を立て直し、立ち上がるが―

 

「こんにゃろぉ!」

「これでどうだっ!」

 

 間髪入れずに放たれた峰田君のもぎもぎと、瀬呂君のテープが、絶無の全身をガチガチに拘束する。

 

「その状態では、もはやどうする事も出来まい! 潔く投降し、罪を償うんだ!」

 

 動きを完全に封じられた絶無に対し、僕は十分に警戒しながら投降を呼びかける。堕ちてしまったとはいえ、元クラスメート。更生出来るものなら…。

 

「ハハッ、この程度(・・・・)で勝ったつもりか? どこまでもおめでたい奴らだぜ!」

 

 だが、絶無は僕の提案を一蹴すると―

 

「こんな(もん)はなぁ…こうすりゃ良いんだよ(・・・・・・・・・・)!」

 

 口から放つ火炎を、躊躇無く自らに浴びせた(・・・・・・・)! 絶無の全身は瞬く間に炎に包まれ、それによりテープは燃え尽き、もぎもぎも焼け焦げて粘着力を失ってしまう。

 

「所詮、“没個性”は“没個性”。圧倒的な力の前には、無力でしかねぇ」

 

 全身に大火傷を負いながらも自由を取り戻した絶無は、無造作に焼け焦げたもぎもぎを掴むと、力任せに皮膚ごと(・・・・)体から引き剥がしていく。もぎもぎを1つ引き剥がす度、かなりの出血が見られるが、お構い無しだ。

 

「な、なんて奴だよ…」

「い、痛みを、感じないのか?」

 

 凄惨な光景に皆が衝撃を受ける中、絶無の全身から瞬く間に傷が消えていく。あれは…『再生』の“個性”!? 一体、幾つ“個性”を持っているんだ!

 

「てめぇらの攻撃なんざ、避ける必要性すら感じねえ…力の差は、それほど圧倒的だ!」

 

 僕達の驚きをよそに、肉食獣のような笑みを浮かべながら再生を終えた絶無は―

 

「見せてやるよ。圧倒的な暴力による蹂躙って奴をな!」

 

 背中からバッタの翅を生やし、耳障りな音を立てながら宙に浮くと、僕達への攻撃を再開した!

 

「皆! 1ヶ所に固まっているのは拙い! 散るんだ!」

 

 火炎、レーザー、そして爆破。空中から爆撃のように降り注ぐ攻撃に、この場にいたメンバーの殆どは、回避に専念する事を余儀なくされる。

 

「このっ! アシッドブラストォ!」

 

 そんな中、数少ない遠距離攻撃の使い手である芦戸君が、対空砲火(アシッドブラスト)を仕掛け―

 

「我に従いなさい。鎧に身を固め、雄々しき角を持つ者達。災いの元凶たるその男、討ち取る為に力を尽くすのです」

 

 同時に口田君も、兜虫や鍬形虫を操って、絶無を攻撃する。

 

「これっぽっちの酸や虫けらで、俺を倒せるとでも思ったか?」

 

 だが、連射に特化させたが故に、1発1発は水滴程度の量しかない酸では、命中してもすぐに再生されてしまい、虫達も火炎放射で焼き払われてしまう。

 

「おらぁっ!」

「きゃぁぁぁっ!」

 

 直後、芦戸君は咄嗟に展開した溶解液の壁(アシッドベール)ごと、爆破で吹き飛ばされ―

 

「くたばれっ!」

「………」

 

 口田君も副腕から生えた刃で袈裟懸けに斬られ、倒されてしまう。

 

「芦戸! 口田!」

「爆豪、お前って奴は!」

 

 それを見た常闇君と尾白君は、怒りの形相で絶無へ突撃。

 

「必殺! 堕天使の戦斧(ルシファーズバルディッシュ)!」

「尾白流格闘術! 旋尾斬!」

 

 空中回転からの踵落としと尻尾の一撃で、同時攻撃を仕掛けるが―  

 

「無駄なんだよ!」

 

 正面からの攻撃だった事が災いし、絶無の放つ爆破、レーザー、火炎放射によって撃墜されてしまう。 

 

「グハッ…」

「む、無念…」

「尾白君! 常闇君! しっかりするんだ!」

 

 戦闘不能となった2人を回収し、安全圏へ運びながら、僕は必死に考えを巡らせる。

 今、戦闘可能なA組メンバーは9人*1

 だが、あの絶無と戦うには…悔しいが決定力に欠ける(・・・・・・・)

 吸阪君や緑谷君、轟君が来てくれるのを待つか? いや、それは論外…なんとか、なんとか、僕達だけで、この危機を―

 

「色々と考えているようだが…お前らじゃ、何をやっても無駄なんだよ!」 

 

 考えを纏める時間もないまま、僕達は絶無の攻撃に再度晒される。このままでは……。

 

 

ナックルコングside

 

「それでは、後の事をよろしくお願いします」

「はいっ! 事態解決へのご尽力、感謝します!」

 

 拘束したチンピラ。総勢54人を駆けつけた警察に引き渡し、敬礼を交わすと、俺はすぐにダブルトリガーの運転するRVへ飛び乗った。

 

「準備は?」

「バッチリ完了! いつでも行けるよ!」

「現着までの時間は?」

「何の妨害も受けない事を前提に考えて…30分弱ってところだな」

 

 ルージュ、そしてダブルトリガーの声を聞きながら、脳内で状況を整理していく。到着まで30分…この30分が吉と出るか凶と出るか…。

 

 

お茶子side

 

「ちくしょう…いくら何でも反則だぜ……」

 

 体のあちこちに傷を作った峰田君が、思わず漏らした呟き。だけど、誰もそれを咎める事はない。

 絶無と名を変え、(ヴィラン)に鞍替えした爆豪君。その容赦ない攻撃に晒された私達は皆、大なり小なり傷を負っている上に、数少ない反撃で与える事が出来たダメージは、瞬く間に回復された為実質0。

 峰田君の呟きは、私達全員の偽らざる気持ちでもあるのだ。

 

「さぁ、そろそろ遊びは終わりだ。残り9人…順番にぶち殺してやる。まずは…てめぇからだ!」

  

 両腕から小さな爆発を何度も起こしながら、私達へ突撃する絶無。その目標は―

 

「死ねや、チビィ!」

 

 峰田君!

 

「く、来るんじゃねぇ! もぎもぎクレイモアッ!」

 

 絶無の突撃を止めようと、もぎもぎを次々と投げつける峰田君。だけど、絶無は爆破、レーザー、火炎放射で全てのもぎもぎを撃ち落とし、峰田君との距離を詰めていく。

 

「それ以上は!」

「行かせるか!」

 

 私達も絶無を止めようと動くけど、ダメージの影響で素早く動けない。駄目っ! これじゃ間に合わない!

 

「吹っ飛べやぁぁぁっ!」

 

 その声と同時に放たれた爆破に、峰田君が飲み込まれようとしたその時。誰か(・・)が庇うように割り込んだ。あれは…。

 

「間に合った…かな?」

 

 物間…君? 切島君の“個性”をコピーしたのか、全身が硬化していて、爆破を浴びても目立ったダメージは見られない。

 

「………何のつもりだ? 猿真似野郎」

弱い者虐め(・・・・・)が、あまりに見苦しいからね…つい、体が動いてしまったよ」

「猿真似しか出来ねえ奴が、ヒーロー気取りか? 分際ってものを弁えろ」

「あぁ…たしかに僕は、コピー…猿真似しか出来ないさ。だけど……君よりはマシな人間だと思っているけど?」

「………チビの前に、てめぇから殺してやるよ!」 

 

 物間君の言葉に苛立ったのか、額に青筋を浮かべて攻撃を再開する絶無。爆破、レーザー、火炎放射、容赦の無い攻撃が、物間君1人に浴びせられる。

 

「くっ…ぐぅぅ……」

 

 切島君の“個性”をコピーしたとはいえ、あれだけの攻撃を正面から受けて平気な訳がない。攻撃を受ける度に、硬化した皮膚が砕け、剥がれ落ちていく。

 

「やめろ!」

 

 当然、私達だって黙って見ている訳じゃない。何とか物間君を助けようと、絶無の元へ走るけど―

 

「てめぇらは引っ込んでろ!」

 

 絶無の副腕から放たれるレーザーが周囲を薙ぎ払い、私達を足止めする。

 

「ぬぁぁぁぁぁっ!」

 

 その直後、攻撃に耐えきれなくなった物間君が吹き飛ばされ、地面を転がった。硬化も解除され、もう立ち上がる事も出来そうにない。

 

「猿真似野郎。これで最後だ」

 

 勝利を確信し、物間君へ一歩、また一歩と近づく絶無。

 

「言い残した事があるなら、聞いてやろうか?」

「あぁ……そうだね」

 

 絶無の声に、覚悟を決めたような顔の物間君。誰もが数秒先に訪れる最悪の結末を予想した。だけど―

 

「………僕1人に、時間をかけすぎだ(・・・・・・・・)

 

 物間君の口から出たのは、私達の誰もが予想していなかった言葉。そして、その言葉が意味する事はつまり!

 

「サンダーブレーク!」

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 次の瞬間、飛来する電撃と衝撃波の弾幕。それによって、絶無は物間君から距離を取る事を余儀なくされる。そう…来てくれた!

 

「物間、根性見せたな。正直、見直したよ」

「皆、遅くなってごめん!」

 

 吸阪君と緑谷君が!

 

「“没個性”野郎! それに…デクゥゥゥッ!」

 

 2人の顔を見た途端、激情に顔を歪ませる絶無。それを見た2人も―

 

「あれって…爆豪?」

「おいおい、随分と様変わりしたな。イメチェンだったら、派手すぎるぞ…」

 

 異形の姿に変わった爆豪君(元クラスメイト)に、驚きを隠せない。

 

「2人とも! 彼はもう、僕達の知っている…爆豪君じゃない! その名は絶無! (ヴィラン)連合の一員だ!!」

「そうだ! 俺の名は絶無! (ヴィラン)連合の剣、(ヴィラン)連合に仇なす者達を絶やし、無に帰す者だ!」

 

 飯田君の悲痛な声を掻き消すように響く絶無の声。だけど2人は― 

 

「………(ヴィラン)堕ちの挙句、人間辞めた(・・・・・)奴が何言ってやがる」

「その捻くれた精神…僕達で叩き直す!」

 

 絶無の言葉をそう切り捨て、同時に走り出した!

 

「力を得る為、何かを捨てる覚悟もねぇ奴らに、俺が倒せる訳ねぇだろ!」 

 

 絶無も叫びながら走り出す。戦いが…始まる!

*1
飯田、砂藤、心操、瀬呂、峰田、蛙吹、麗日、耳郎、葉隠




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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