出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第92話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、マスキュラーとトリケラトプス
「な、なぁ…」
その途中、出久に背負われた洸汰君が、躊躇いがちに口を開いた。
「どうしたの? 洸汰君」
「お、俺…じゃない、僕、お兄ちゃんの事殴ったよね」
「うん、まぁ…未遂だけど」
ショートカットの為に茂みを突っ切りながら、洸汰君の声に答える出久。
「それなのに……助けに来てくれて、ありがとう…それと、ごめんなさい」
「うん、君を助けられて…よかった」
泣きながら感謝と謝罪を口にする洸汰君に、優しく微笑む出久。だが―
「ッ!?」
「爆発!?」
宿泊施設の方向から突然響いた轟音に、その笑顔は消え去った。
「雷鳥兄ちゃん!」
「あぁ、嫌な予感がする…急ぐぞ、出久!」
短く言葉を交わしながら、俺と出久は、宿泊施設に急ぐ。何が起きたか解らんが…皆、無事でいてくれよ!
飯田side
「皆! 何とかこの場を乗り切るしかない! 陣形を組んで対抗するんだ!」
殺気を撒き散らしながら、突撃してくる絶無。それに立ち向かう為、僕は咄嗟の指示を下す。
「物間君、切島君や障子君達を頼む!」
重傷の切島君や障子君、B組の皆を物間君に託し、僕達は陣形を組んでいく。それを見た絶無は―
「ハッ! 群れなきゃ何も出来ねぇのか! 雑魚ども!」
そう言って僕達を嘲笑うが、笑いたければ笑うがいい!
「貴様から見れば、俺達は小賢しい雑魚の群れに見えるだろう。だが、雑魚の何が悪い!」
「雑魚の群れより1匹の大魚が偉いなんて、一体誰が決めた!」
そう言って先陣を切ったのは、
2人は、絶無の副腕から次々と放たれるレーザーを紙一重で掻い潜りながら、間合いを詰めると―
「
「はぁぁぁっ!」
常闇君は貫手、尾白君は正拳突きの
「その程度の攻撃が効くかよ!」
それらは絶無の手から生えた合計4つの刃で防がれるが―
「2人とも離れろ!」
そこへ、
「どぉりゃぁっ!」
2人の攻撃を防いだ事で、手薄となった絶無の顔面に、渾身の右ストレートを叩き込む!
「ぐはっ!」
緑谷君の
「こんにゃろぉ!」
「これでどうだっ!」
間髪入れずに放たれた峰田君のもぎもぎと、瀬呂君のテープが、絶無の全身をガチガチに拘束する。
「その状態では、もはやどうする事も出来まい! 潔く投降し、罪を償うんだ!」
動きを完全に封じられた絶無に対し、僕は十分に警戒しながら投降を呼びかける。堕ちてしまったとはいえ、元クラスメート。更生出来るものなら…。
「ハハッ、
だが、絶無は僕の提案を一蹴すると―
「こんな
口から放つ火炎を、躊躇無く
「所詮、“没個性”は“没個性”。圧倒的な力の前には、無力でしかねぇ」
全身に大火傷を負いながらも自由を取り戻した絶無は、無造作に焼け焦げたもぎもぎを掴むと、力任せに
「な、なんて奴だよ…」
「い、痛みを、感じないのか?」
凄惨な光景に皆が衝撃を受ける中、絶無の全身から瞬く間に傷が消えていく。あれは…『再生』の“個性”!? 一体、幾つ“個性”を持っているんだ!
「てめぇらの攻撃なんざ、避ける必要性すら感じねえ…力の差は、それほど圧倒的だ!」
僕達の驚きをよそに、肉食獣のような笑みを浮かべながら再生を終えた絶無は―
「見せてやるよ。圧倒的な暴力による蹂躙って奴をな!」
背中からバッタの翅を生やし、耳障りな音を立てながら宙に浮くと、僕達への攻撃を再開した!
「皆! 1ヶ所に固まっているのは拙い! 散るんだ!」
火炎、レーザー、そして爆破。空中から爆撃のように降り注ぐ攻撃に、この場にいたメンバーの殆どは、回避に専念する事を余儀なくされる。
「このっ! アシッドブラストォ!」
そんな中、数少ない遠距離攻撃の使い手である芦戸君が、
「我に従いなさい。鎧に身を固め、雄々しき角を持つ者達。災いの元凶たるその男、討ち取る為に力を尽くすのです」
同時に口田君も、兜虫や鍬形虫を操って、絶無を攻撃する。
「これっぽっちの酸や虫けらで、俺を倒せるとでも思ったか?」
だが、連射に特化させたが故に、1発1発は水滴程度の量しかない酸では、命中してもすぐに再生されてしまい、虫達も火炎放射で焼き払われてしまう。
「おらぁっ!」
「きゃぁぁぁっ!」
直後、芦戸君は咄嗟に展開した
「くたばれっ!」
「………」
口田君も副腕から生えた刃で袈裟懸けに斬られ、倒されてしまう。
「芦戸! 口田!」
「爆豪、お前って奴は!」
それを見た常闇君と尾白君は、怒りの形相で絶無へ突撃。
「必殺!
「尾白流格闘術! 旋尾斬!」
空中回転からの踵落としと尻尾の一撃で、同時攻撃を仕掛けるが―
「無駄なんだよ!」
正面からの攻撃だった事が災いし、絶無の放つ爆破、レーザー、火炎放射によって撃墜されてしまう。
「グハッ…」
「む、無念…」
「尾白君! 常闇君! しっかりするんだ!」
戦闘不能となった2人を回収し、安全圏へ運びながら、僕は必死に考えを巡らせる。
今、戦闘可能なA組メンバーは9人*1。
だが、あの絶無と戦うには…悔しいが
吸阪君や緑谷君、轟君が来てくれるのを待つか? いや、それは論外…なんとか、なんとか、僕達だけで、この危機を―
「色々と考えているようだが…お前らじゃ、何をやっても無駄なんだよ!」
考えを纏める時間もないまま、僕達は絶無の攻撃に再度晒される。このままでは……。
ナックルコングside
「それでは、後の事をよろしくお願いします」
「はいっ! 事態解決へのご尽力、感謝します!」
拘束したチンピラ。総勢54人を駆けつけた警察に引き渡し、敬礼を交わすと、俺はすぐにダブルトリガーの運転するRVへ飛び乗った。
「準備は?」
「バッチリ完了! いつでも行けるよ!」
「現着までの時間は?」
「何の妨害も受けない事を前提に考えて…30分弱ってところだな」
ルージュ、そしてダブルトリガーの声を聞きながら、脳内で状況を整理していく。到着まで30分…この30分が吉と出るか凶と出るか…。
お茶子side
「ちくしょう…いくら何でも反則だぜ……」
体のあちこちに傷を作った峰田君が、思わず漏らした呟き。だけど、誰もそれを咎める事はない。
絶無と名を変え、
峰田君の呟きは、私達全員の偽らざる気持ちでもあるのだ。
「さぁ、そろそろ遊びは終わりだ。残り9人…順番にぶち殺してやる。まずは…てめぇからだ!」
両腕から小さな爆発を何度も起こしながら、私達へ突撃する絶無。その目標は―
「死ねや、チビィ!」
峰田君!
「く、来るんじゃねぇ! もぎもぎクレイモアッ!」
絶無の突撃を止めようと、もぎもぎを次々と投げつける峰田君。だけど、絶無は爆破、レーザー、火炎放射で全てのもぎもぎを撃ち落とし、峰田君との距離を詰めていく。
「それ以上は!」
「行かせるか!」
私達も絶無を止めようと動くけど、ダメージの影響で素早く動けない。駄目っ! これじゃ間に合わない!
「吹っ飛べやぁぁぁっ!」
その声と同時に放たれた爆破に、峰田君が飲み込まれようとしたその時。
「間に合った…かな?」
物間…君? 切島君の“個性”をコピーしたのか、全身が硬化していて、爆破を浴びても目立ったダメージは見られない。
「………何のつもりだ? 猿真似野郎」
「
「猿真似しか出来ねえ奴が、ヒーロー気取りか? 分際ってものを弁えろ」
「あぁ…たしかに僕は、コピー…猿真似しか出来ないさ。だけど……君よりはマシな人間だと思っているけど?」
「………チビの前に、てめぇから殺してやるよ!」
物間君の言葉に苛立ったのか、額に青筋を浮かべて攻撃を再開する絶無。爆破、レーザー、火炎放射、容赦の無い攻撃が、物間君1人に浴びせられる。
「くっ…ぐぅぅ……」
切島君の“個性”をコピーしたとはいえ、あれだけの攻撃を正面から受けて平気な訳がない。攻撃を受ける度に、硬化した皮膚が砕け、剥がれ落ちていく。
「やめろ!」
当然、私達だって黙って見ている訳じゃない。何とか物間君を助けようと、絶無の元へ走るけど―
「てめぇらは引っ込んでろ!」
絶無の副腕から放たれるレーザーが周囲を薙ぎ払い、私達を足止めする。
「ぬぁぁぁぁぁっ!」
その直後、攻撃に耐えきれなくなった物間君が吹き飛ばされ、地面を転がった。硬化も解除され、もう立ち上がる事も出来そうにない。
「猿真似野郎。これで最後だ」
勝利を確信し、物間君へ一歩、また一歩と近づく絶無。
「言い残した事があるなら、聞いてやろうか?」
「あぁ……そうだね」
絶無の声に、覚悟を決めたような顔の物間君。誰もが数秒先に訪れる最悪の結末を予想した。だけど―
「………僕1人に、
物間君の口から出たのは、私達の誰もが予想していなかった言葉。そして、その言葉が意味する事はつまり!
「サンダーブレーク!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
次の瞬間、飛来する電撃と衝撃波の弾幕。それによって、絶無は物間君から距離を取る事を余儀なくされる。そう…来てくれた!
「物間、根性見せたな。正直、見直したよ」
「皆、遅くなってごめん!」
吸阪君と緑谷君が!
「“没個性”野郎! それに…デクゥゥゥッ!」
2人の顔を見た途端、激情に顔を歪ませる絶無。それを見た2人も―
「あれって…爆豪?」
「おいおい、随分と様変わりしたな。イメチェンだったら、派手すぎるぞ…」
異形の姿に変わった
「2人とも! 彼はもう、僕達の知っている…爆豪君じゃない! その名は絶無!
「そうだ! 俺の名は絶無!
飯田君の悲痛な声を掻き消すように響く絶無の声。だけど2人は―
「………
「その捻くれた精神…僕達で叩き直す!」
絶無の言葉をそう切り捨て、同時に走り出した!
「力を得る為、何かを捨てる覚悟もねぇ奴らに、俺が倒せる訳ねぇだろ!」
絶無も叫びながら走り出す。戦いが…始まる!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。