出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第94話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
絶無の撤退で幕を閉じた
駆け付けた消防や警察が現場検証や後始末を行う中、俺達は麓の町にある病院…ではなく、隣の市にある総合病院へと移動した。
後から聞いた話だが、俺達が
ナックルコング達の活躍で、被害は最小限で食い止められたものの…十数人の重傷者が発生し、また病院の施設自体にも被害が発生した為、俺達の受け入れが出来なくなったのが、その理由だ。
とにかく、マスコミの目を避ける為、深夜の闇に紛れて病院に入った俺達は、待機していた医師や駆け付けたリカバリーガールから治療を受け、ガスで意識不明となった8人*1と、重傷の17人*2は、そのまま入院。
軽傷の者は、順に警察の事情聴取を受ける手筈になったのだが…。
「………あぁ、
俺と出久が案内された会議室には、既に
「こ、これが…轟君が攫われた時の、す、全てです」
全身に包帯が巻かれた痛々しい姿の鉄哲と、鉄哲程ではないが何ヶ所かに包帯を巻いた拳藤。
2人は車椅子に座った状態で、轟が拉致されるに至った状況をエンデヴァーに報告していた。というか、エンデヴァー…事務所にいたのか、自宅にいたのかわからないが、1時間半足らずで
「………」
鉄哲の説明が終わっても、仁王立ちのまま無言を貫くエンデヴァー。だが、全身から放たれる
事実、鉄哲も拳藤も体を震わせ、涙ぐんでいる。そして―
「………つまりは、こういう事か?」
鉄哲の説明が終わってから、ゆっくり30数えられるだけの時間が経ったところで、エンデヴァーが口を開いた。
「自分の実力もロクに把握出来ない程未熟な貴様らが、功を焦って
努めて冷静に言葉を紡いではいるが…こいつは
俺は出久に視線を送り、いつでも飛び出せるよう態勢を整える。その直後―
「ふざけるなぁっ!!」
会議室全体を揺らすような咆哮と共に、エンデヴァーは大爆発。
「エンデヴァー! 気持ちはわかりますが、落ち着いてください!」
「病院です! ここは病院ですから!」
すぐさま、俺と出久、ナックルコング、レッドワスプ、ダブルトリガー、クラーケンの6人がかりで、エンデヴァーを抑え、その間にルージュとビートが、鉄哲と拳藤をエンデヴァーから引き離す。
そしてブロッサムが、花瓶に生けられていたカサブランカを“個性”で活性化。
「………すまん、お前達。見苦しい所を見せた」
増幅されたカサブランカの香りを嗅ぐ事で、エンデヴァーはようやく落ち着きを取り戻してくれた*3。そこへ―
「管さん! 処置室へ戻ってください! まだ傷口の縫合が済んだだけで、輸血が必要な状態なんです!」
「5分! いや3分だけ我が儘を許してください!」
ブラドキング先生が、看護師さん達の制止を振り切って、会議室に飛び込んできた。
絶無に腹部を滅多刺しにされ、失血死一歩手前の大量出血だったらしいが…大丈夫なのか?
「エンデヴァー…私、雄英高校1年B組担任、管赤慈郎。ヒーローネーム、ブラドキングと申します」
「………未熟者どもの担任か。貴様、教え子にどんな教育をしていた?」
ブラドキングの登場で、額に青筋を浮かべるエンデヴァー。誰もが、エンデヴァーの再爆発を警戒する中―
「この度の御子息拉致の一件、責任は全て担任である私にあります。どうか、お怒りは全て…私にぶつけていただきたい!」
ブラドキング先生は、床に額を叩きつけんばかりの勢いで土下座し、そう叫んだ。
「ブラド先生…」
「鉄哲、拳藤、すまなかった。お前達…いやB組全体の焦りに、俺がもっと早く気が付いていれば…今回の様な事態は起きなかった筈だ。俺は…教師失格だ。だからこそ、その償いをさせてくれ!」
「先生…すみませんでした!」
「ごめんなさい! ブラド先生!」
ブラドキング先生の言葉に対し、泣きながら謝罪の言葉を口にする鉄哲と拳藤。だが―
「浪花節はそこまでだ!」
エンデヴァーはそんな3人を一喝し、ブラドキング先生を睨みつける。
「貴様…責任は全て自分にある。そう言ったな?」
「はい、如何なる仕打ちであろうとも、お受けします」
「ならば、立て」
エンデヴァーに促され、立ち上がるブラドキング先生。直後、エンデヴァーは拳を握り―
「この一撃を…償いだと思え!」
全力の一撃を繰り出した!
「「ブラド先生!」」
鉄哲と拳藤の悲鳴じみた声が響く。エンデヴァーの一撃で、ブラドキング先生が壁まで吹っ飛んだかに思われたが…。
「………微動だにしないどころか、目すら瞑らないとはな」
エンデヴァーの拳は、ブラドキング先生の顔面ギリギリで寸止めされていた。
「フン…ブラドキング。貴様のその覚悟に免じて、今回は矛を収めるとしよう」
そう言って、握り締めていた拳を緩めるエンデヴァー。恐らく、ブラドキング先生が土下座をした段階で、9割方こうするつもりだったんだろう。
「エンデヴァー……ご厚情に感謝します!」
「だが、忘れるな。焦凍に万が一の事が起きた時は…貴様ら3人とも、ただでは済まさんからな!」
エンデヴァーのその一言に深々と頭を下げ、看護師さんと共に処置室へと戻って行くブラドキング先生。そして、鉄哲達も―
「吸阪、緑谷…本当にすまなかった」
「その言葉、俺達じゃなくて轟に伝えるんだな」
「…あぁ……」
ルージュとビートに車椅子を押され、退室していった。
「2人とも、騒ぎに巻き込んでしまって申し訳ない」
「いえ、さっきも言いましたが、エンデヴァーがお怒りになる気持ちもわかります…」
俺達に頭を下げるエンデヴァーにそう答えたところで―
「いや、お待たせして申し訳ない」
何事も無かったように塚内さん達が入室してきた。おそらく、外で様子を窺っていたんだろうが…まぁ、いいか。気持ちを切り替えて、事情聴取に臨むとしよう。
オールマイトside
だが…
雄英の教師である我々が、知らず知らずの内に平和ボケしていたという不甲斐なさ。雄英への非難一色のマスコミへの対応。今後、我々が取るべき姿勢。そして、雄英の中に潜んでいるであろう内通者…山積する問題に議論は紛糾。堂々巡りを繰り返し、気づけば6時間が経過していた。
「……15分、いや30分休憩を取ろう。今のままでは、一向に前へ進めない」
校長の一言で、会議は一時中断となり、それぞれが立ち上がったその時―
「ッ!?」
前触れなく鳴り響くスマートフォン。
「会議中だったんっスよ! 電源切っときましょーよ!」
プレゼント・マイク先生のツッコミに謝りながら、私は会議室を飛び出し、通話を開始する。
「…すまん。何だい? 塚内君」
『君のお弟子さんやイレイザーヘッドから調書を取っていたんだが…思わぬ進展があったぞ!』
『
「な、なんだって…本当なのかい? 塚内君」
『あぁ、実は2週間程前、部下が聞き込み調査で
『20代くらいだというので、過去の犯罪者を漁ってみるも目ぼしい者はおらず、またビルの所有者に確認したところ、所謂隠れ家的なバーがちゃんと入ってるという話だった為、捜査には無関係だと流していたんだが…』
『今回、襲撃していた
『今回の救出・掃討作戦。君の力も貸してくれ!』
塚内君から齎された情報を聞いた瞬間、全身から力が沸き上がる。
『オールマイト?』
「………私は…素晴らしい友を持った…奴らに会ったら、こう言ってやるぜ」
マッスルフォームに変身した私は、ここで一旦言葉を切り…宣言した。
「私が、反撃に来たってね」
雷鳥side
さて、幸運にも軽傷で済んだ俺達11人*4と、奇跡的に無傷だった3人*5、合わせて14人は、マスコミの取材に対し、黙秘を貫く。など、幾つかの条件を厳守する事を約束した上で、帰宅が許された。
帰った途端、状況をニュースで知った姉さんに大泣きされたが…俺と出久がそれぞれ声をかけ、何とか落ち着きを取り戻してくれた。
そして、翌日。俺達は飯田の音頭で、昼過ぎから入院している皆のお見舞いに行く事になった訳だが―
「俺と出久は急な用事が出来てな。集合時間に15分程遅れそうなんだ。悪いが、先に病院へ向かってくれ」
朝、台所に立つ俺は、飯田にそう連絡していた。
それから2時間後、俺と出久は飯田達から少し遅れてお見舞いへとやって来たのだが…。
「ここから先は、プロに任せるべき案件だ! もはや
「んなもんわかってるよ! でもさァ!
前世の記憶の通り、飯田と切島の口論が聞こえてきた。
「やっぱりな…」
原作に出てこない
切島side
「
「
「このまま
自分の言っている事が正しいのか、それとも間違っているのか、それすら判断出来ず、俺は感情のままに言葉を発していく。
「だからと言って、
「切島落ち着けよ。気持ちは解るけど…今回は…」
「飯田ちゃんが正しいわ」
飯田の声に、瀬呂や梅雨ちゃんが賛同する。他の皆も、声こそ出さないが大部分が同じ意見だろう。たしかにそうだ。だけど…
「飯田や皆の言う事が正しいってのは、頭じゃわかってる…だけど、まだ手を伸ばせば、届くかもしれないんだよ」
「気持ちは解るが……今の状況を考えてくれ! 雄英高校は今、これ以上無い程の窮地に立たされている…僕達が勝手な行動をすれば、それがどのような結果を招くか―」
「2人とも、落ち着け」
互いに冷静さを欠き始めたその時、障子が静かに声を発した。
「切島の
「俺だって悔しい。何しろ、
「だが、これは感情で動いて良いレベルの話じゃない」
「…プロヒーローに任せようよ…何より、戦闘許可は解除されてる…僕達はやれる事はやったんだ……」
「青山の言う通りだ…もっとも、
障子の静かな声に続き、青山、常闇も口を開く。そして―
「皆、轟ちゃんが攫われてショックなのよ。でも…冷静になりましょう。どれほど正当な感情であろうとも、許可無く戦うというのなら、ルールを破るというのなら……その行為は
梅雨ちゃんの言葉に、俺達は何も言えなくなる。
「全員集合で、随分と議論が白熱していたみたいだな。病室の外まで声が響いていたぜ」
その時、ドアの方から聞こえてきた声に、その場にいた誰もが振り返る。そこには―
「悪い。遅くなった」
「ごめんね。急用を済ませてたから」
吸阪と緑谷の姿。これで、轟を除く1-A全員が集合か…。
雷鳥side
「どうした? 揃いも揃って、湿気た煎餅みたいな顔してさ」
ホンの今まで繰り広げられていた議論には、敢えて触れず…俺と出久は皆の輪の中へと入っていく。
「湿気た煎餅…か。たしかに、そうかもしれない……」
軽いジョークのつもりで発した一言に、沈痛な表情を浮かべる飯田。見れば、周りの皆も似たような感じだ。
「やれやれ…皆顔色は良くないし、声に力もない……飯、食ったのか?」
「いや…帰宅してからも色々と考えてしまって……」
俺の問いに予想通りの答えを返す飯田。口には出さないが、帰宅した面子は全員同じだろう。入院組は…言うまでもない。
「…腹が減った状態で意見をぶつけても、碌な答えは出ないぜ」
俺は、こんな事もあろうかと用意してきたクーラーボックスを、切島のベッドに備え付けられたオーバーテーブルに載せ―
「まずは腹を満たせ。全てはそこからだ」
用意してきた『おにぎらず*6』を皆に振舞った。
「美味かったよ…吸阪」
「御粗末様です」
切島の声にそう答えながら、俺は周りを見回す。腹が満たされた為か、全員先程よりは良い顔になっているな。よし…。
「さて、一息ついたところで……俺から皆に謝らなくちゃいけない事がある」
俺は
「ケロ…吸阪ちゃん、どうしたの?」
「…
俺の口から爆豪の話題が出た事で、全員の表情が硬くなるが…俺は敢えてそれを無視し、話を続ける。
「あいつは…“個性”が発現せず、“無個性”扱いだった出久を、子どもの頃から『デク』という蔑称で呼び、事ある毎に馬鹿にしていた。この事は前、飯田と麗日、梅雨ちゃんには話してたよな?」
3人が首を縦に振る中、俺は話を進めていく。
「その事は俺も昔から知っていた。俺と出久は、10年以上一緒に鍛錬してきたからな。だから…
「出久を、そして俺自身を鍛える事を優先したからだ。まぁ、俺が
「そうしている間に、強くなった出久は
「そして1年前…
「最後のチャンス?」
麗日の声に俺は頷き…出久に視線を送った。直後、出久は頷き返し…俺は改めて覚悟を決める。
「学校で…
-そんなにヒーローに就きてんなら、効率良い方法あるぜ。来世は“個性”が宿ると信じて…屋上からのワンチャンダイブ!!-
「なっ…」
「マジ…かよ…」
「そんな…」
「たられば、の話になるが…あの時
「見込みが甘かったんだ。雄英で学ぶ内に、
「そういう訳で切島…何もしなかったのは、お前じゃない。俺だ」
「そして、僕もだよ。切島君」
「だからこそ…
「ケリをつける…吸阪君、緑谷君。君達、一体何を…」
「……ここまで話したから、皆には伝えておく。実はオールマイトから連絡を貰ってな…俺と出久は、オールマイト、エンデヴァー、グラントリノの推薦で、轟の救出及び
「轟君は、必ず助けだす! だから皆、後の事は僕達に任せて!」
「この通りだ!」
深々と頭を下げる俺と出久。皆は戸惑いながらも、最終的には全てを託してくれる事となった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より第1部最終章 神野の悪夢編となります。