出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第96話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
「以上が、本作戦の概要になります」
会議室に塚内さんの声が響き…その場にいるヒーロー、そして警察官の全員が、紙製の資料に目を通し、その内容を再確認する。
作戦は大きく分けて2つ。1つは
この2つを同時進行で行い、
「質問です。
挙手の後、立ち上がって質問を口にしたのは、今回の作戦に参加するヒーローの1人“カデンツァ”。
プッシーキャッツの皆さん同様、6人組のヒーローチーム『シンフォニック』を結成して活動中の剣舞ヒーロー。最新のランキングでは、連名で28位に入っていた筈だ。
「その件に関してですが、先日雄英高校1年生が襲撃を受けた際、女子生徒の1人が重傷を負いながらも、脳無の1体に発信機を取り付ける事に成功しています。そして、発信機の受信機はここに」
塚内さんが取り出した
「この場所には、ある貿易会社が所有する倉庫がありましたが…調査の結果、営業実態の無い、ダミー会社である事が判明しています。即ち―」
「貿易会社の倉庫を隠れ蓑にした、何らかの拠点…という事だな」
「そういう事です」
エンデヴァーの声に、塚内さんは頷き―
「その事と受信機の反応。この2点から、ここが脳無に関する何らかの拠点である事は9割がた間違いないと言えるでしょう」
「そして幸運な事に、発信機の存在はまだ敵に気づかれていません。攻めるなら今が好機という事です」
「なるほど、よくわかりました」
塚内さんの言葉に一礼し、着席するカデンツァ。塚内さんは他に質問がないか問いかけるが……特に無いようだ。
「では、作戦会議を終―」
「質問ではないが、疑問がある」
終了の声を遮るように離れた声。その主は不敵な面構えの若手ヒーローだ。たしか―
「バウンスヒーロー“インペラー”。昨年春にデビューした新人だよ。個性は“ガゼル”。強靭な脚力を活かした立体的な戦いを得意としているね」
……出久、詳細な説明をありがとう。さて、そのインペラーさんは何が言いたいのかな?
「今回の一件、重大な事態だと理解しているが…だからこそ、
「相応しくない者とは?」
「決まっているだろう! そこにいる
ほう、そう来たか。
「その2人は、ただの学生ではない。ライコウとグリュンフリート、オールマイトの愛弟子だ。雄英高校の発行する簡易版仮免を取得しており…その実力は、俺とオールマイトが保証する…何か、問題があるか?」
「そして、そちらのご老人はグラントリノ…私の、師匠だ」
「え、あ…」
エンデヴァーとオールマイトの発言に、一瞬怯むインペラー。だが、すぐに立ち直り―
「オールマイトの師匠…それなら文句はないさ。だが、その2人は駄目だ! 実力はあっても、正式な資格を持っていない…仮免止まりの
もっともらしい理屈を掲げ、周囲に同意を求め始めた。その声に周囲も騒めき始めるが…どうも妙だ。
俺や出久、グラントリノが今回参加する事は、作戦会議が始まる前から解っていた事。それなのに、今になって文句を言いだすのは…
「まさかな…」
脳裏に浮かんだ嫌な予感。俺は半ば反射的に『サーチ』を発動。インペラーを探査すると……こいつは―
「今回の事件は、ヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得るんだ! だからこそ、選ばれた精鋭で事に当た―」
「いやはや、インペラーさんのご高説。たしかに承りました。それで、こちらから1つお尋ねしたいんですが…」
「……なんだよ」
インペラーの主張を遮るように質問し、発言権を得る。さて、攻撃ならぬ口撃開始だ。
「俺達の事が不満だったなら、何故もっと早く声をあげなかったんです? 作戦会議の終盤になって、そんな事言いだしたら、皆混乱するでしょう」
「それは……お前らが、自分から辞退すると思っていたんだよ。このメンツを見れば、
「そう仰られましてもねぇ…師匠であるオールマイトや、大恩あるエンデヴァーからの要請でしたし、こちらから辞退するなんて、そんな無礼は出来ませんよ」
「ん、ぐ…そ、そもそも、どうしてオールマイトやエンデヴァーはこんな
「貴様、俺の話を聞いていなかったのか? ライコウもグリュンフリートも高校生ながら、下手なプロ以上の実力者。正直言って、目の前にいる相手の力量も碌に測れん貴様より、10倍は役に立つ」
怒気を込めたエンデヴァーの言葉に沈黙するインペラー。そろそろ仕掛けるか―
「ついでにもう1つ。貴方の
「なっ!?」
慌てた様子で襟元に手をやった直後、しまった! と言いたげな顔をするインペラー。言い訳を口にする前に俺は二の矢を放つ。
「それから…なんで
「え、あ……」
続けて放たれた俺の言葉に、言い訳も忘れて狼狽するインペラー。周囲に座っていたヒーロー達も立ち上がり、インペラーへ警戒の視線を送る。
「くそっ!」
進退窮まったインペラーは、長机を足場にして一気に入口へと跳躍しようとするが―
「逃がさないっ!」
これ以上無いほどのタイミングで、出久がベアリングボールを発射。インペラーの利き足である右足に当てる事でバランスを崩し―
「そぉらよっ!」
そこへ、ロケットのようなスピードで跳び出したグラントリノが、インペラーの土手っ腹に一撃を叩き込み、戦闘不能へと追い込んだ。
「若造、
警察官の手で拘束されるインペラーへ、意地の悪い笑みを浮かべるグラントリノ。さて、時間も無い事だし…手早く拷も、もとい、尋問といこうか。
根津side
「ありがとう、塚内君。何よりの情報だよ」
記者会見の準備を行っている最中、塚内君から齎された連絡は、ここまで圧倒的不利に追い込まれた我々にとって、起死回生の一手となるに相応しいものだった。
「それにしても…ヒーローの中に
我々の思っていた以上に、
「ライコウ…吸阪君には感謝だね」
塚内君曰く、とても
「反撃開始へのカウントダウン、スタートだね」
僕は静かに呟き、
死柄木side
「スカウト…だと?」
俺からの突然すぎるスカウトに対し、
「言っておくが、冗談でこんな事を言っている訳じゃない。こちらとしても、君の能力は高く買っているんだ。味方になってくれるなら、頼もしい事この上ない」
友好的な営業スマイルを浮かべ、
『―えー、雄英高校の謝罪会見が始まるようです』
点けっ放しにしていたテレビから、そんな声が聞こえてきた。実に良いタイミングだ。拘束した状態で椅子に座る轟焦凍を含む全員の視線が、テレビへと向かう。
『この度…我々の不備から、ヒーロー科1年生37名に被害が及んでしまった事。ヒーロー育成の場でありながら、敵意への防衛を怠り、社会に不安を与えた事。謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ありませんでした』
その言葉に続き、深々と頭を下げる雄英高校の校長。スーツ姿のイレイザーヘッド、ブラドキングも後に続くと、マスコミは弾幕のようにカメラのフラッシュを浴びせていく。
『NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒が
雄英体育祭を開催する事を発表した時点で、雄英高校の姿勢は把握している筈。それなのに、敢えて言わせる…これは即ち―
「悪者扱い…かよ…」
呟きと共に、悔しげな表情を浮かべる轟焦凍。そう…
悪意に曝された時、自分達を守ってくれる存在を自分達で辱めていく。まさにお笑いだ。
『周辺地域の警備強化、校内の防犯システムの再検討。“強い姿勢”で生徒の安全を保障する……と、説明して―』
『守れてないじゃないですか!』
『雄英高校側の怠慢ですよ! これは!』
そして、そんなマスコミの中には、鼻薬をたっぷり嗅がせる事で、
今、校長に罵声を浴びせた奴らを含め、記者会見の場には
奴らが雄英高校の社会的地位をどん底まで落としてくれるのを、ゆっくり見守りながら―
「不思議なもんだよなぁ…」
俺も仕事を進めるとしよう。
「何故、
轟焦凍、そしてその場にいる
「
「だが、俺達ですら解るような事に、世間の奴ら…その大部分は解らない。解ろうとしない。何故か? 社会の大部分にとって、これが対岸の火事だからさ」
「ヒーローが世間に溢れているから、いつでもどこでも自分達を守ってくれる。そんなぬるま湯のような現状に、慣れきってる。だから、些細なミスを針小棒大に騒ぎ立てる」
「うわ、凄いですよ。SNSやネットの掲示板、何処も彼処も、雄英高校への非難一色です」
スマホを見ながら、俺の言葉へ合いの手を入れるトガ。あぁ、良い感じだ。
「轟焦凍君。君もまた、この社会の犠牲者…そうだろう?」
「……何が言いたい」
「隠したい気持ちも解るが、俺達は既に知っている。君と…エンデヴァーの関係を」
「ッ!?」
どうして知っている。必死に無表情であろうとする轟焦凍から、ホンの僅か漏れ出したそんな感情に、俺は内心ほくそ笑む。
「オールマイトに勝つ為、
「………」
無表情を貫きながら、俺の言葉を必死に聞き流す轟焦凍。そこへ―
「そして奴の犯した最大の罪…それは―」
荼毘の一言が突き刺さる。
「……………」
「エンデヴァーが罪を犯したのも、君が苦しんでいるのも、全ての発端はこの社会が歪んでいるからだ。だから俺達は、戦いの中で社会に『問う』。ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか、一人一人に考えてもらう!」
「轟焦凍君。君を強引な手段でここに連れてきた事は、謝罪するよ。だが、我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむ、ただの暴徒じゃない。それはわかってくれ。君が我々の同志となってくれる事を、心から祈っている」
項垂れたまま黙り込む轟焦凍に、こちらの考えを告げ、静かに返答を待つ。まぁ、返答が承諾だろうと拒絶だろうと―
『お尋ねしたいのですが…貴方が何故、その事を知っているのです?』
テレビから雄英高校校長の声が響いたのは、その時だ。画面に目をやれば、協力者であるジャーナリストの1人、蛭河が校長から反撃を受けていた。
奴が雄英高校を断罪する為発した内容に、一般には知られていない…
調子に乗って攻めている者ほど、守勢に回れば脆い。奴が咄嗟に行った回答は、即座に矛盾点を指摘され、傷口を拡げていく…。そして―
『ここに…貴方が、雄英高校に侵入した動かぬ証拠があります』
奴が自らの“個性”『コピー・アンド・ペースト』を使って用務員に化け、雄英高校へ侵入。情報を盗み出した事の証拠が提示され、形勢は完全に逆転した。
『如何に優れた“個性”でも、人間の用いる能力である以上、完全無欠はあり得ない。外見をどれだけ上手く似せようとも、本人でない以上僅かな違和感は残る。我々と警察の執念を甘く見ましたね』
警備員の手で拘束される蛭河にそう告げる校長のアップで、中継は急遽終了し、スタジオのアナウンサーの慌てた声が響き渡る。
「やってくれたな…」
状況から見て、雄英高校も会見に向けて、相応の準備をしていたのだろう。雄英高校の社会的地位をどん底まで落とすという目論見は、失敗したと考えた方がいい。
「うわ、SNSやネットの掲示板、マスコミ非難に傾いてます。雄英高校に対しては、マスゴミの被害者だという同情的な意見が大勢を占めてますね」
トガの声を聞きながら、轟焦凍へ視線を送った次の瞬間―
「俺の答えは…これだ!」
「ッ!?」
轟焦凍は右腕から氷、左腕から炎を吹き出す事で拘束具を椅子ごと破壊し、自由を取り戻した。
「拒絶、という事か。悲しいな…君が同志となってくれれば、この上なく心強かったんだが…」
「半年前の俺なら、あんたの誘いに跳びついていただろう。だが、今はその半年後だ。俺も、親父も、変わったんだよ」
「親父は過去の罪と向き合い、贖おうと必死に足掻いてる。だから、俺は親父が贖罪の為に、正しく在る為に努力を続ける限り……俺も親父を信じ続ける。だから、お前達の手を取る事は、100%あり得ない」
真っ直ぐな…曇りの無い目で俺達に宣言する轟焦凍。そうか…残念だ。
「出来れば、俺の手を取ってほしかった。君とは解り合えると思ってたんだ…だが、こうなった以上、仕方がない。君の『力』だけ、
俺の叫びと共に、待機していた隣室から飛び出してくる絶無。
「お前…爆豪か?」
「久しぶりだな。半分野郎」
絶無の顔を見て、一瞬驚きの表情を浮かべる轟焦凍だが、すぐに警戒レベルを引き上げるように構えを取る。
「絶無…奴の手足全て斬り落とせ。その後は…先生、頼む」
『良い判断だよ。死柄木弔』
よし、先生の承諾は得た。あとはスピード勝負だ。
「絶無…10秒で終わらせ―」
「どーもォ、ピザーラ神野店です―」
なんだ、ピザだと?
「一体誰が―」
頼んだ。その言葉が口から出るよりも早く、派手に壁が吹っ飛び…飛び込んできたのはオールマイト!?
「何だぁ!?」
「黒霧! ゲートを開け!」
反射的にその言葉を発した直後、また別のヒーローが店の中へ飛び込み―
「先制必縛! ウルシ鎖牢!!」
手から生やした木の枝で俺達を縛り上げていく。
「木ィ!? んなもん…」
すぐさま荼毘が炎を放とうとするが―
「逸んなよ。おとなしくしといた方が…身の為だぜ」
新たに飛び込んできた爺が一撃を叩き込み、荼毘を戦闘不能に追い込む。これは…どういう事だ…
「流石若手実力派だ、シンリンカムイ!!」
「そして、目にも止まらぬ古豪グラントリノ!!」
「もう逃げられんぞ、
「我々が来た!!」
何故、
「オールマイト…!! あの会見と、まさかタイミングを示し合わせて……!!」
「木の人! 引っ張んなってば! 押せよ!」
「や~!!」
「糞がぁっ!!」
全員がシンリンカムイの木でガチガチに固められ…絶無に至っては、数々の“個性”を警戒してか、四肢と頭がそれぞれ別の方向…下手に“個性”を使えば同士討ちになるように拘束されている。
「攻勢時ほど、守りが疎かになるものだ…ピザーラ神野店は、俺達だけじゃない」
その声と共に姿を現したのは、エッジショット。奴の手でドアのロックは解除され、銃火器やプロテクターで武装した警察官が雪崩れ込んできた。更に―
「焦凍ォッ!! 無事かぁっ!!」
「塚内ィ!! 何故俺が包囲なんだぁっ!!」
外から聞こえてくるのは、エンデヴァーの叫び声…どれだけ、どれだけヒーローを搔き集めた?
「助けに来るのが遅くなった。恐怖によく耐えてくれた! もう大丈夫だ、轟少年!」
「ありがとうございます。オールマイト」
轟焦凍も奪還されたか…。
「こっちの立てた作戦。全部ひっくり返してくるとはな…ムカつくが流石だよ、ヒーローども」
全員拘束されている以上、簡単には逃げられない…だったら!
「俺達だけじゃない…そりゃあ、こっちの台詞だ。黒霧!」
緊急時のプランを実行するまでだ!
「持って来れるだけ、持って来い!!」
黒霧に命じて、ありったけの脳無を解き放とうとしたが………
「………どうした?」
「すみません、死柄木弔…所定の位置にある筈の脳無が…ない…!!」
黒霧から聞かされたのは、予想外の言葉。
「ピザーラ神野店は俺達だけじゃない。エッジショットがそう言っていただろう。そのままの意味さ」
「なん、だと…」
「
「我々の! 怒りを!!」
「おいたが過ぎたな。ここで終わりだ! 死柄木弔!!」
高らかに響くオールマイトの声。だが、まだだ…まだ、終わりじゃない!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。