出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第100話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
オールマイトside
「少しばかり遅かったね。ヒーロー達。ここにいるのはもう
「そして…生き残るのも私だけだ」
私達を前に、ハッキリと断言するオール・フォー・ワン。
これが並の
十分な勝算があって、あんな事を言っているのだろう。だが―
「それがどうした!」
私は周囲に立つ皆を鼓舞させる様に声を上げる。そう、勝算など所詮は数字。そんなものは力ずくでひっくり返すだけだ!
「生き残るのは貴様じゃない! 私達だ!」
「オールマイトと儂、ベストジーニスト、ギャングオルカが第一線! 『シンフォニック』とMt.レディが第二線! ライコウ、グリュンフリート、アブソリュートは第三線で援護に専念しろ!」
私の咆哮と同時に、グラントリノが素早く指示を下し、陣形が整っていく。
「いくぞ、オール・フォー・ワン!」
足に力を込め、一足飛びで奴との間合いを詰める。そのまま左の一撃!
「『転送』
だが、狡猾な奴は『転送』の“個性”でグラントリノを自身の目前に動かし、自らの盾として利用した!
「ッ! すみません!」
咄嗟に寸止めを試みたものの間に合わず、相当な威力の一撃がグラントリノの左頬に炸裂。
しかも『衝撃反転』の“個性”によって、グラントリノを通じて奴に向かっていく筈の衝撃まで跳ね返されてしまった。衝撃で私の体勢は崩れ、左腕に決して小さくはないダメージが刻まれる。
「オールマイト、下がって!」
「ここは俺達が!」
直後、体勢の崩れた私を庇う様に前に出る、ベストジーニストとギャングオルカ。
「はぁぁぁっ!」
「超音波アタック!」
ベストジーニストは炭素繊維の棒を振り回しながら、ギャングオルカは必殺の超音波を浴びせながら、それぞれ突撃する。
「『超音波』
だが、ギャングオルカの超音波は、オール・フォー・ワンの放つ超音波で相殺されたばかりか―
「そして残念だがギャングオルカ。君のそれより、僕の方が強い。『超音波』
オール・フォー・ワンが更に出力を上げた事で、逆に超音波をまともに浴びてしまった。
「……ぐはっ!」
大量の吐血と共に崩れ落ちるギャングオルカ。目や耳、鼻からも血を流し、危険な状態だ。
「ギャングオルカ! おのれ、
「『槍骨』
一方ベストジーニストは、炭素繊維の棒で、オール・フォー・ワンが右腕から生やした骨の槍と数合打ち合い―
「もらった!」
一瞬の隙を突いて、棒を元々の炭素繊維に戻し、オール・フォー・ワンを縛り上げた!
「これは…やられたね」
「このまま一気に絞め落とさせてもらう!」
“個性”を操作し、オール・フォー・ワンの全身を締め上げるベストジーニスト。その光景を見た誰もが、勝負ありと思っただろう。
「流石はナンバー
だが、オール・フォー・ワンは余裕の態度を一切崩さない。その姿に、私は言いようのない悪寒を感じ―
「離れるんだ! ベストジーニスト!!」
ベストジーニストに離脱を促す。だが、それはあまりに
「『電気鰻』
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
直後、オール・フォー・ワンの全身から放たれた電流をまともに浴び、崩れ落ちるベストジーニスト。
「炭素繊維は導電性*1に優れている。それは利点にも欠点にもなるが…今回は欠点に働いたね」
ベストジーニストが意識を失った事で“個性”が解除され、拘束具からただの糸に戻った炭素繊維を払い落としながら、淡々と呟くオール・フォー・ワン。その隙だらけな姿を見て―
「キャニオンカノン!!」
1人飛び出したMt.レディが必殺技を繰り出すが―
「『ベクトル操作』
「ッ!?」
命中すれば間違いなく
「嘘っ!? と、止まらな―」
更に『重力操作』によって、自身にかかる重力が通常の1000分の1まで軽減されたMt.レディは、ロケットの様に上昇していき―
「『重力操作』解除」
「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
数百mの高さから自由落下。隕石のような勢いで地面へ叩きつけられてしまった。
「げほっ…」
吐血と共に“個性”が解除され、意識を失うMt.レディ。数ヶ所の骨折は見られるが…幸運な事に命に別条は無いようだ。
「ふむ…正直な話、地面に叩きつけられた時点で絶命すると思っていたが……予想以上に頑強な肉体だったようだ。“個性”の影響かな?」
「…貴様!」
まるで
「『シンフォニック』! フォーメーション・V6!」
「「「「「Roger!」」」」」
『シンフォニック』の6人も同様だ。
「マシンガン・パーティー! Fire!!」
バラージが二挺拳銃ならぬ二挺
「インパクトナックル!」
「奥義…蒼刃一閃!」
「
「十文字斬り!」
「
完璧なタイミングで同時多重攻撃を仕掛けた!
「『水晶生成』
だが、その攻撃はオール・フォー・ワンが周囲に張り巡らせた水晶の壁によって尽く防がれ―
「「「「「………」」」」」
直後、攻撃を仕掛けた5人が一斉に意識を失い、崩れ落ちた。同時にバラージも衝撃波を浴びせられ、吹き飛ばされる。
「カデンツァ達の周囲にある空気。その酸素濃度を21%から16%まで下げた。これだけで人間は簡単に意識を失う。やはり―」
「私の相手を出来るのは、君だけのようだ。オールマイト」
「おのれ! オール・フォー・ワン!」
5分にも満たない時間で、9人のヒーローが倒された。その事に強い怒りを感じながら、私はオール・フォー・ワンと拳を交える。
「ハッキリ言って、僕はお前が憎い」
「かつて、その拳で僕の仲間を次々と潰し回り、お前は『平和の象徴』と謳われた」
「僕らの犠牲の上に立つその景色。さぞや良い眺めだろう?」
奴の言葉を聞き流しつつも、その動きは一切見逃さず―
「
奴が放とうとした攻撃を力ずくで打ち消す。余波で周辺に被害を出してしまったか…もっと早く、奴が攻撃を放つ前、その
「ヒーローは
「黙れ!」
「ッ!」
奴の軽口を切って捨てると同時に、奴の左腕を掴み取る事が出来た。まさに好機!
「貴様はそうやって人を玩ぶ!」
「壊し! 奪い! つけ入り支配する!」
「日々暮らす方々を! 理不尽が嘲り笑う!」
「私はそれが! 許せない!!」
爆発寸前の怒りを込め、左拳を奴の顔面に叩きこむ! 奴の装着しているマスクが破損し、露になるのは…かつての戦いで砕かれ、大半が瘢痕で覆われた奴の素顔。
私は奴を睨みつけながら、悟られないよう乱れた呼吸を整えていく。現在、マッスルフォームの制限時間は2時間20分。まだまだ余裕はある…ある筈だ。
「いやに感情的じゃないか…オールマイト」
その時、オール・フォー・ワンが再び喋りだした。今度は何を―
「同じような台詞を前にも聞いたな。『ワン・フォー・オール』先代継承者…
その名前を聞いた途端…どうしようもない激情が、私の中で荒れ狂う。
「貴様の、貴様の穢れた口で…お師匠の名を出すな…!!」
-誇れ俊典!-
-
冷静であろう。冷静であろうと意識するほど、お師匠の言葉が頭の中で響き渡る…。
「理想ばかりが先行し、まるで実力の伴わない女だった…!」
「『ワン・フォー・オール』生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死に様だった」
「…どこから話そうか?」
「
一刻も早く、奴の口を黙らせようと拳を振り上げた瞬間、わずかに自由になった奴の右手が動き、私は上空へと撃ち出された。
「ぬぅぅぅぅぅっ!」
何とか体勢を立て直そうとした瞬間、背後に感じる気配。振り向いた先にいたのは…報道のヘリ!
「俊典!」
間一髪! グラントリノが間に入り、私を受け止めてくださった。
「6年前と同じだ! 落ち着け!」
「そうやって挑発に乗った挙句、奴を捕り損ねた! 腹に穴を開けられた!」
「途中までは出来ていただろう! 奴と言葉を交わすな!」
「………はい…」
そうだ。冷静にならねば…怒りに身を任せては、勝つ事は…出来ない。
「前とは戦法も使う“個性”もまるで違うぞ。正面からはまず有効打にならん! 虚を突くしかねぇ…まだまだいけるな?」
「……もちろんです!」
「儂とライコウ達で可能な限り援護する! 正念場だぞ!」
「はい!」
グラントリノの声に答えながら、私は再び構えを取る。何としても、ここで決着をつけなければ!
雷鳥side
オールマイトとオール・フォー・ワンが拳を交えている最中。俺と出久、轟はその余波を掻い潜り、倒されたベストジーニスト達の回収を行っていた。
「雷鳥兄ちゃん! サンライトとムーンライトを連れて来た! これで『シンフォニック』は全員だよ!」
「Mt.レディも回収して来た。左腕と右足の骨折は、応急だが氷で固めてある」
「ギャングオルカは外傷よりも、内臓関係のダメージがデカい。一刻も早く、病院に運ばないと…」
轟が氷で作った応急のシェルターに、次々と運び込まれるヒーロー達。これだけの錚々たるメンバーが5分足らずで…オール・フォー・ワン、まさに
「ここは、俺達に任せてほしい」
そこへ駆けつけて来たのは、ベストジーニスト、ギャングオルカのサイドキック達。ベストジーニストが
退避させたおかげで、全員健在だ。
「悔しいけど、俺達じゃ援護すら出来そうにない…学生の君達にこんな事を頼むのは、本当は間違っているのは、わかっている…だけど、
そう言って頭を下げるサイドキック達。
「わかりました。
ベストジーニスト達をサイドキック達に託し、俺達は戦場へと走り出す。どこまでやれるか解らないが…全力を尽くすだけだ!
オールマイトside
「でもね、オールマイト。君が僕を恨むように、僕も君が憎いんだぜ?」
両手から衝撃波やレーザーを連射しながら、芝居がかった口調で喋り続けるオール・フォー・ワン。
何とか奴を黙らせたいが、威力より手数重視の攻撃のせいで、接近もままならない。何とか、間合いを詰められれば…。
「僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたモノを奪っただろう?」
「だから、君には可能な限り醜く酷たらしい死を迎えてほしいんだ!」
次の瞬間、奴の左手が肥大化した。さっきの
「でけえの来るぞ! 避けて反撃を―」
グラントリノの声に続き、回避行動を取ろうとした刹那―
「避けて良いのか?」
嘲笑するようなオール・フォー・ワンの声が聞こえ、全身に悪寒が走った。同時に背後に感じるのは
「君が守ってきたもの。守ろうとするものを奪う」
その言葉の直後放たれる空気砲。相殺するしか―
「トールハンマー!」
「
そこへ割って入って来たのは、
「ブレイカァァァァァッ!!」
「
同時に放たれた2人の必殺技は、Iアイランドで放った時の様に、途中で1つに融合。互いの威力を高めながら、空気砲と真正面から激突。見事に相殺した。
「ほう、これは些か予想外だ」
余裕を保っていたオール・フォー・ワンの声に、ホンの僅か驚きが混じる。次の瞬間!
「ワン・フォー・オール、フルカウル! 100%!」
全力のジャンプで
「
最強必殺技を繰り出した! 砲弾並みの強烈な衝撃波が、一直線にオール・フォー・ワンへと飛んでいく。
「同じ攻撃は芸が無いね。『ベクトル操作』」
しかし敵も然る者。衝撃波の着弾直前、オール・フォー・ワンはその進行方向を操作、垂直方向へ受け流した。
「悪くない攻撃だ。学生レベルとしては―」
申し分ない。
「
少年達の攻撃によって生まれたコンマ数秒の隙。そこを私が突いたからさ!
「
必殺の右拳を奴の土手っ腹にぶち込み、吹っ飛ばす! これで勝負を決めたい所だったが…
「Shit! 僅かに甘かった!」
奴は咄嗟に水晶の防壁を張る事で、攻撃を防御していた。相応のダメージを与えた事は確かだが、決定打には至らない。
「いやはや…大したものだ。オールマイトの愛弟子とエンデヴァーの息子。実に素晴らしい」
「次代の平和を担う若者達。その力、侮れないね。
「あの子は、私に代わり新たな悪の帝王となる。これは確定事項。変えようのない運命だ」
「何が運命だ! 如何に強大であろうと、悪の末路は破滅! 陳腐な言い方かもしれないが、正義は必ず勝つ!」
「なるほど! 君は私を倒し、その次はあの子を倒す。そういう事だね?」
「何が言いたい…」
なんだ、この口ぶりは…オール・フォー・ワンは何を考えている?
オール・フォー・ワンの不気味な様子に、グラントリノや
暫しの沈黙。それは不意に放たれたオール・フォー・ワンの一言で破られた。
「死柄木弔は、志村菜奈の孫だよ」
何…だと…
「君が嫌がる事をずぅっと考えてた」
「以前、あの子が雄英高校を襲った時、君の弟子達やエンデヴァーの息子が、あの子を下したね」
「君は自分の師の孫を、弟子達に叩きのめさせ、それを褒め称えた。
「う、嘘を……」
「事実さ。わかっているだろう? 僕のやりそうな事だ」
オール・フォー・ワンの言葉が容赦なく突き刺さる。私は…私は…
「あれ…おかしいな。オールマイト」
「笑顔はどうした?」
-人を助けるってつまり、その人は怖い思いをしたってことだ-
-命だけじゃなく、心も助けてこそ、真のヒーローだと…私は思う-
-どんだけ怖くても、『自分は大丈夫だ』っつって笑うんだ。世の中、笑ってる奴が一番強いからな-
「き…さ、ま……」
お師匠の言葉が何度も、何度も心の中で繰り返される。
「やはり、楽しいな! 君の心を傷つけるのは!」
オール・フォー・ワンの嘲笑が頭の中で響き渡る。お師匠のご家族…彼が!!
「くぅ……ぉおおおー…!!」
私は何という事を…
「駄目じゃないか! 隙だらけだよ。オールマイト」
「ッ!」
迂闊だった! 私とした事が―
「『重力操作』増幅率1000%
次の瞬間、全身が麻痺するのと同時に強烈な重力が私達全員に襲いかかり、その場に縫い付けられた様に動けなくなってしまう。そして―
「『炭素操作』
オール・フォー・ワンが突き出した右掌から
「ぬぅぅぅぅぅっ…!」
「ふむ、この『
全身に
「さて、次は……先程相殺されたアレにしよう」
「『空気を押し出す』
「最初に君を吹っ飛ばした空気砲の強化版だ」
いかん! この状況で
「威力は受けて確かめたまえ」
そして放たれる強烈無比な衝撃波。致命傷になり兼ねない被弾を覚悟したその時!
「ワン・フォー・オール、フルカウル! 100%!」
麻痺と重力の枷を振り切って、
「オールマイトォォォッ!」
私を突き飛ばして被弾から救い…その代償として、自らが衝撃波に吹き飛ばされ、トラックに撥ねられた子猫の様に、地面へと落下した……
「グ、グリュンフリート…緑谷少年!」
「出久ぅぅぅっ!」
「あぁ、これは大変だ…オールマイトより先に」
「弟子が死んでしまったよ」
私や
「てめぇ…よくも出久を!」
激高した
「『巨腕』
その一撃は、オール・フォー・ワンの展開した巨大な
「ぐはっ…」
吐血しながら宙を舞い、地面に落下する
「残念だったね、オールマイト。弟子が2人とも死んでしまったよ」
心底楽しそうなオール・フォー・ワンの声。私は戦いの最中でありながら、全身の力が抜けていくのを感じていた………。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回をもちまして、拙作『出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようで
す。』の本編投稿数が、100話の大台に乗りました。
また、UAが50万、お気に入りが2200件を突破しました。
全ては読者の皆様のおかげでございます。
今後も執筆に精進致しますので、よろしくお願いいたします。