出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第103話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
「それでも、敗北よりははるかにマシだ! 3人のヒーローよ。死体も残らない最期を迎えるだろうが…許してくれたまえよ?」
ゾッとするような声を発しながら、ゆっくりと動き出す巨大阿修羅。50mを優に超える巨体が地響きを立てながらこちらに向かってくる姿は、迫力満点だが…そんな物で委縮する俺達じゃない。
「『大男総身に知恵が回りかね』ってな!」
巨大化した分、パワーは格段に上昇したんだろうが…そんな愚鈍な動きで、俺達を捉えられるか! 俺は巨大阿修羅にケラウノスの切っ先を向け―
「サンダー! ブレーク!!」
ケラウノスを
流石に相手が巨大過ぎて、命中した左胸部分の一部を破壊する事しか出来なかったが、それでも巨大阿修羅を
そして、それは
「
「
オールマイトと
Iアイランドの時のように、これで勝負が決まる。A組の皆がこの場にいれば、誰もがそう思っただろう。事実、俺もそう思っていた。
だが、その思いは―
「何だとっ!?」
アッサリと裏切られた。コンマ数秒前まで、油の切れかかった機械のようなぎこちない動きだった巨大阿修羅が突然、滑らかな動きに変わったかと思うと、6本の腕を総動員して、2人の攻撃を防御したのだ。
強烈な打撃音と共に、6本の腕全てが木っ端微塵に吹っ飛び、巨大阿修羅は大きく
「『火炎放射』
地上へ落下中且つ必殺技の発動直後で無防備だったオールマイトは、灼熱の火炎を浴びせられ、火達磨にされた。
「『マイクロミサイル』
『浮遊』で空を飛ぶ
「『破壊光線』」
そして俺には、強烈な破壊光線が浴びせられ―
「ぬぁぁぁぁぁっ!」
咄嗟に展開した電磁バリアごと吹っ飛ばされた。
AFOside
「あぁ、すまない。動きが鈍い等と
地面に倒れるオールマイト達を見下ろしながら、心にも無い謝罪をしてみる。これだけの巨体だ、動きが鈍いと思うのは当然の事だし、実際半端な方法でこれほど素早い動きを実現する事は出来ない。
「だが、私には『高速演算』という“個性”があってね。それの
芝居がかった動作と共に種明かしをしていると、大きなダメージを負いながら、なおも立ち上がろうとするオールマイト達の姿が視界に入ってくる。
「まったく…人の話は静かに聞いていたまえ。『
私は6つの手全てで銃の形を作り、地上に向けてレーザーをマシンガンの様に発射した。先程バラージのミサイルを撃墜した時とは違い、1発1発が下手な戦車砲を上回る大口径。命中すれば人間サイズの目標など、一瞬で
「ハハハ! これは楽しいね。いつまで避け続けていられるかな?」
無様に逃げ惑うオールマイト達を見下ろしていると、楽しくて堪らなくなる。
心の高揚に浸りつつ、彼らが避けられるギリギリのレベルを割り出し、ジワジワと苦しめていると―
「
全く意識していない方向から攻撃が放たれた。熱線と見紛う程に圧縮された炎。やれやれ…
出久side
「今のは…」
思わぬ援護によって止まった巨大阿修羅の攻撃。僕達は攻撃の主に視線を走らせ、大いに驚いた。だってそこには―
「轟君!」
オール・フォー・ワンの放った竜巻で、エンデヴァーやエッジショット共々吹き飛ばされた轟君が立っていたのだから!
「……増援に来るなら、もう少し早く来るべきだったね。今更君程度が来たところで、何も変わりは―」
「
巨大阿修羅の言葉を遮るように、周囲の地面を一気に氷結させる轟君。流石の巨大阿修羅も全身を氷漬けにされ、その動きを止めてしまう。
その間に僕達は大急ぎで駆け寄り、合流する事が出来た。
「無事だったんだね!」
「あぁ、竜巻の中で親父が…庇ってくれた」
轟君…全身傷だらけで、頭から血を流しているけど、竜巻に飲みこまれた割に軽傷なのはそういう事だったんだ…。
「ゆっくり無事を喜びたいところだが、そうもいかない。あの氷結もそう長くはもたない筈だからな」
「えぇ、ですが
雷鳥兄ちゃんの
「薄皮1枚凍らせた程度で、何とかなると思ったのかな?」
氷を砕いて動き出す巨大阿修羅。あれ程の氷結でも、30秒程度動きを止めるのが精一杯。本当に規格外の相手だ…だけど!
「
「「「はい!!」」」
僕達もこの作戦に全てを賭ける!
雷鳥side
「
高速で移動しながら左右の
「はぁぁぁぁぁっ!!」
『浮遊』で巨大阿修羅の周りを飛びながら、フィンガスナップの衝撃波を撃ちまくる
猛攻を仕掛ける2人によって、その場に釘付けとなる巨大阿修羅。
「今がチャンスだ、いくぜ!
「あぁ! 全力でいく!」
その隙に、俺と
俺と
不安要素を挙げるなら、俺と
「待て!」
不安を押し殺して、攻撃を放とうとしたその時響く静止の声。声の主は―
「その攻撃、暫し待て」
エンデヴァーだ。竜巻から
「お前達がやろうとしている事、その方向性は正しい。だが…お前達だけでは
「そんな事、百も承知だ。だが、やるしか―」
「
AFOside
「……なるほど、
私の周囲を動き回り、大して効果の無い攻撃を続けるオールマイトとグリュンフリート。その目的が解らず、少しだけ動きが止まってしまったが…視界の端に映った光景に、全てを察する事が出来た。
「まったく、往生際が悪い…」
まるで蠅を追い払うように手足を振って突風を起こし、オールマイトとグリュンフリートを吹き飛ばす。そして―
「『
6本の腕全てをエンデヴァー達へと向け、攻撃態勢に入る。残念だが、君達のチャージが終わるよりも早く、こちらが君達を吹き飛ばす。跡形もなく…ね。
「覚悟したまえ」
数秒後には蒸発する3人のヒーローに哀悼の意を捧げながら、攻撃を開始しようとしたその時―
「ミサイル・パーティー! Fire!!」
そんな声と共に、2発の大型ミサイルが直撃。私の体勢を大きく崩した。予想だにしていなかった攻撃に、私は思わず攻撃の主を確認する。そこにいたのは…。
「やられたらやり返す…仲間の分も含めて…」
「10倍返しだぁっ!!」
バラージ…だと!? あの衝撃波を受けてなお立ち上がるとは…ヒーローとは、どこまでも…しつこい存在だ。
雷鳥side
バラージさんのおかげで、間一髪チャージが間に合った!
「プロミネンス!」
「トールハンマー!」
「
これが最後! 全力全開の一撃だ!!
「バァァァァァン!!」
「ブレイカァァァァァッ!!」
「
エンデヴァー、
流石の巨大阿修羅も、バラージのミサイルで体勢を崩された状態では、回避や相殺は出来ず、6本の腕を総動員して防御の体勢を取るのが精一杯。だが!
「そんな
俺の叫び通り、巨大阿修羅が防御出来たのはホンの一瞬。6本の腕は跡形もなく吹っ飛び、土手っ腹には巨大な風穴を開いた! そして―
「
「
「「
完璧なタイミングで飛び出していたオールマイトと
まるで爆弾が爆発したような破砕音と共に全身が崩壊し、瓦礫に戻っていく巨大阿修羅。
そこから1つの影が飛び出すのが見えたが…俺達は
「後は任せます。オールマイト…出久」
AFOside
「些か予想外だったね…」
崩壊していく巨大阿修羅から脱出し、空中に舞い上がりながら、誰に言うでもなく静かに呟く。
十分な勝算はあった筈…まさか、ここまで追い込まれるとは……私の中にも慢心があったのだろう。
「だが、まだ
地上を見下ろせば、限界を超えたエンデヴァー達は戦闘不能。オールマイトも無理が祟って膝を突いている。グリュンフリートは幾らかマシな状態のようだが…。
「彼1人ならば、絶対的な脅威とはなりえない」
私は勝利を確信し、彼らを纏めて吹き飛ばす為、“個性”の組み合わせを開始する。異変が起きたのは、その時だ。
「…予想外だね」
思わず呟いてしまったが、それは誰にも責められないだろう。まさか、グリュンフリートがこちらへ向けて、オールマイトを投げ飛ばすなんて、誰が予想出来る?
出久side
崩壊する巨大阿修羅から脱出し、空中に浮かぶオール・フォー・ワン。対する僕達は、エンデヴァーと雷鳥兄ちゃん、轟君は戦闘不能。オールマイトもダメージの蓄積で膝を突き、それなりに動けるのは僕だけだ。
あと一押しで勝負が決まるのに、このままじゃ…先に攻撃を受けて、全滅だ…!
「
その時、聞こえてきたオールマイトの声。思わずオールマイトに視線を送った直後、僕はオールマイトの狙いを察した。
「わかりました…オールマイト、飛ばします!!」
一瞬の迷いもなく、僕は『黒鞭』を発動。オールマイトに巻き付けると―
「うぉぉぉぉぉっ!!」
ハンマー投げの要領で力一杯振り回し、オールマイトを空へ向けて投げ飛ばした!
砲弾のような勢いで、オール・フォー・ワンへと飛んでいくオールマイト。残る力の全ては右腕に集められ…文字通り、最後の一撃を仕掛ける気だ。
「オールマイト…勝ってください!!」
AFOside
「予想外だが、対応出来ない訳じゃない」
人間砲弾となってこちらへ飛んでくるオールマイト。その姿には驚かされたが…真正面からの一撃など、幾らでも対処できる。
「自分自身の一撃で滅びたまえ」
いつでも『衝撃反転』の“個性”を発動出来る状態で、オールマイトを待ち構える。長きに渡る因縁もこれで最―
「ッ!?」
その瞬間、何かが右足に絡みつき…私は強く地上に向けて引っ張られた。突然の事に体勢を崩しながら、視線を送るとそこには…。
「私の命を奪わなかった事を、刑務所で後悔するがいい…
サイドキックに肩を借りながら、私へ炭素繊維を放つベストジーニストの姿。まさか、彼まで戻って来るとは…本当に、ヒーローという人種は…。
オールマイトside
オール・フォー・ワン目がけ、砲弾のようなスピードで飛びながら、私は『
この一撃は、私の力だけではない。
-何人もの人が、その力を次へと託してきたんだよ。皆の為になりますようにと…一つの希望となりますようにと-
-次はおまえの番だ。頑張ろうな、俊典-
「うぉぉぉぉぉっ!!」
さらばだ、オール・フォー・ワン。
「
さらばだ、ワン・フォー・オール。
「
これで、決着だ。
「
私の一撃を受け、隕石のような勢いで地上に落下するオール・フォー・ワンと、僅かに遅れて着地する私。
膨大な土煙が晴れ、露になった巨大なクレーター。その真ん中で私は最後の力を振り絞って立ち続け、静かに右腕を上げる。これが…
グラントリノside
「な…! 今は無理せずに―」
「させて、やってくれ……」
オールマイトの体を案じるエッジショットに、儂は敢えてそんな言葉をかける。
-この国には今、“柱”がないんだって-
-だから自分が、その“柱”になるんだって-
「……仕事中だ」
今は亡き盟友の言葉を思い出しながら…。
オールマイトside
「この下! 2人います!! あっちにも!」
「了解! 急げ!」
数多くのヒーローや警察官が救助活動を行い―
「オールマイトを始めとするヒーロー達の交戦中も、救助活動は続けられておりましたが、死傷者はかなりの数になると、予想されます…!」
多くの報道陣が、被害の甚大さを伝える中、私はオール・フォー・ワンが
「元凶となった
「
何重にも拘束されたオール・フォー・ワンが、
「エンデヴァー…少し、いいかな?」
「……何だ?」
私からの問いかけに怪訝な顔を見せるエンデヴァーに、私は右腕を差し出し―
「私は…ここまでだ。ナンバー1を……
静かに、だがハッキリとした声でそう告げた。
「なっ…」
私が言った事が信じられないと言わんばかりの顔を見せるエンデヴァー。だから、私は敢えておどけた表情を見せ―
「まぁ、託すと言っても、私の弟子達がすぐ
軽く煽ってみた。すると…。
「…フン、上等だ。だが、そう簡単に渡す気はないぞ。どこまでも高く、険しく、厳しい壁であり続けてやる」
全身から炎を吹き出しながら、ニヤリと笑みを浮かべ…私の手を取るエンデヴァー。
私とエンデヴァーが握手をする光景を、報道陣が次々とカメラに収めていく。
こうして、長きに渡るオール・フォー・ワンとの戦いに…は一応の決着が付くのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、第1部最終回。