出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
また、展開の都合上第8話、第9話のタイトルを一部変更しました。
雷鳥side
「さぁ、AチームvsDチームの講評の時間だ! 皆の忌憚の無い意見を聞かせてくれ!」
モニタールームに移動した俺と麗日、飯田を迎えたオールマイトが、俺達の戦いを見ていたクラスメート達に意見を求める。
なお、爆豪は搬送ロボに保健室まで運ばれていて不在だ。
「はい!」
「うむ! 八百万少女!」
真っ先に手を挙げた八百万が立ち上がり、咳払いをしてから自分の意見を述べ始めた。
「では、僭越ながら…まず吸阪さん。潜入と同時に探査を行い、飯田さんと爆豪さん、核兵器の場所を探知していた点。爆豪さんの不意打ちを防ぎ、麗日さんを先行させただけでなく、その後の戦闘で爆豪さんを容易く無力化した点。飯田さんに対しては、いきなり戦闘に入るのではなく、投降するよう説得を試みた点。その後の戦闘でも可能な限り、飯田さんを核兵器から引き離し、更に核兵器確保に向かった麗日さんを的確に援護した点。以上4点がプラス要因と考えられます。あと、これは推測ですが…説得の内容に矛盾があったのも、それに飯田さんが気づく事を前提にしていた為だと思います」
「ッ! そうか、矛盾のある内容だとは思ったが…俺を怒らせ、冷静な判断を出来なくする作戦だったのか…そこに気が付けなかったとは、俺はまだまだ未熟だ…」
…いや、あの時はただ口から出まかせを言っていただけなんだが…まぁ、向こうがそう思っているなら、そういう事にしておこう。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。
「続いて麗日さん。先行して飯田さんと対峙した後、無理に核兵器確保を行わず、説得を続けた点。その後、吸阪さんの作り出したチャンスを見逃さず、核兵器確保を行った点がプラス要因です。しかしながら、作戦立案を吸阪さん1人で行ってしまったのは、あまりよろしくないかと…もう少し、自分の考えを述べるべきですね」
「その点に関しては、俺も反省するべきだな。1人で何でも決めてしまった…麗日、すまない」
「いやいやいや、私が吸阪君に頼りすぎだったから…ごめんね」
「飯田さんですが…
「そして、爆豪さんですが…独断専行、私怨丸出しの戦闘、核兵器があるにも関わらず、室内での大規模攻撃を発動する。正直申し上げて、褒めるべき点が欠片も見当たりません! 特に最後の大規模攻撃は一歩間違えば、重傷者が出ていたかもしれません」
「以上の点を総合しますと…MVPは吸阪さん、2位は同点で麗日さんと飯田さん、最下位は断トツで爆豪さんだと、私は考えます」
「……う、うむ! 非の打ち所が無い完璧な講評だ!」
「常に下学上達! 一意専心に励まねば、トップヒーローになど、なれませんので!」
…オールマイト、言いたい事全部言われた! って顔してますよ。
それにしても、八百万百。流石に推薦入学者だけの事はある。その“個性”だけでなく分析力もかなりのものだ。
「そ、それでは! 第2試合の組み合わせを発表しよう!」
そんな事を考えている間に、オールマイトがくじを引き、第2試合の組み合わせが発表された。
「ヒーローがCチーム!
第2試合以降も、それぞれが己の持てる“個性”と知恵をフルに使い、一進一退の激闘が繰り広げられた。
どちらかが圧勝ではなく、まさに紙一重での決着での戦いが続き、遂に今日の最終戦となった。
「最終戦! ヒーローがBチーム!
そう、出久と耳郎のGチーム対轟と障子のBチームの対決だ。
我が甥ともう1人の推薦入学者との戦い、平静を装ってはいるが、内心かなりワクワクしている。そこへ
「吸阪ちゃん、緑谷ちゃんの試合が楽しみみたいね」
梅雨ちゃんが俺に声をかけてきた。
ちなみに梅雨ちゃんは常闇とチームを組み、第3試合で尾白、葉隠のIチームと激突。激戦の末に勝利している。
「……わかるか?」
「えぇ、真面目な顔しているけど、目元が少し緩んでるわ」
「そ、そうか」
いかんいかん。気が緩んでいると受け止められてしまうな。集中しゅうちゅ-
「大丈夫よ、今のはハッタリだから」
なん、だと…。
「私って、実は悪女な部分もあるのよ。ケロケロ」
「ハハハ、怖いなぁ。と、そろそろ始まるみたいだ」
「そうね。ちなみに、勝敗の予測は?」
「…
「100%じゃないの?」
「あぁ、轟の奴はまだ“個性”の全てを明らかにしてないからな」
正直な話。轟が“個性”を
まぁ、出久の方も全力を
轟side
「…4階北側の広間に2人確認。どうやら防衛戦の態勢を整えているようだ」
俺とコンビを組んでいる障子が、索敵内容を告げてきた。『複製腕』だったか、こいつの“個性”は…常時生えている2対、計4本の触手。その先端に自身の身体を複製できる。
ゴツイ外見に似合わず、索敵や諜報が得意なこいつと組めたのはラッキーだった。
「外出てろ、危ねぇから…」
巻き込まないように退避を促して、俺は“個性”の出力を上げる。
「向こうは防衛戦のつもりだろうが…俺には関係ない」
次の瞬間、ビル全体が丸ごと氷で包まれる。緑谷の身体能力は桁違いだが…凍らせてしまえば、問題ない。
雷鳥side
「仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化!」
「最強じゃねぇか!」
モニタールームまで極寒の環境になるほどの冷気。流石に推薦入学者だけの事はあるが…。
「うぅ…寒い…」
「梅雨ちゃん! 駄目だ! 目を瞑るな!」
喫緊の問題は、この寒さをどうにかすることだ。梅雨ちゃんが冬眠しかねんぞ!
「八百万! 悪いがニクロム線でコイルを作ってくれ! なるべく長くてデカい奴を!」
「かしこまりました!」
すぐさま八百万が、ニクロム線のコイルを作り、渡してくれた。そのせいで
エロい目で君を見つめている峰田は、こっちでぶん殴っておく。
「あとはこれに電流を流せば…」
ニクロムとは、ニッケルとクロムを中心とした合金。これに電流を流せば、電気抵抗により熱が発生する。要するに電気ストーブの原理だ。
「あぁ、暖かいわ…」
「蛙吹さん。さぁ、これを羽織って」
「ありがとう、八百万ちゃん」
更に八百万が作ってくれた毛布を羽織り、ようやく元気を取り戻してきたようだ。
「吸阪、悪い…俺達も当たらせてくれ」
「あぁ、構わんぞ」
即席の電気ストーブとなった俺の周りに集まるクラスメート達。さぁ、観戦を続けよう。
轟side
「あとは核兵器を確保すれば終了だ」
敵は全て凍り、あとは核兵器を確保するだけ。そう確信した俺は障子を残し、ビルの奥へと歩みを進める。そして、上への階段に差しかかったその時。
『まだ何か動いている!? 轟! 敵は凍っていない!ぐわぁぁぁっ!』
耳に付けた小型無線機から聞こえてきたのは、俄かには信じ難い障子の報告と悲鳴。慌てて入り口に戻ってみると…。
「す、すまん。轟…上から狙撃された」
戦闘不能に追い込まれた障子の姿。周囲の地面には、何かを撃ち込んだと思われる穴が大量に空いている。
警戒しながら近づき、周囲を確認するが、穴には何も無い。
「…どういう事だ? ッ!」
背中を走る悪寒。咄嗟にその場を飛びのくと同時に、何かが地面に撃ち込まれる。
「緑谷か!」
狙撃ポイントと思われる4階の窓を見てみれば、そこにはこちらを見つめる緑谷の姿。耳郎も一緒か…。
「どういうカラクリかは知らないが、凍結を免れた。それに撃ち込んできたのは…指を弾いた時の衝撃波か」
次々と撃ち込まれる何かを咄嗟に作り出した氷の盾で防ぎ、その正体を察する。フィンガースナップで銃弾並の衝撃波を出すとは…化け物じみた身体能力だ。
「この場にいてもジリ貧か…」
時間は残り12分。このままここで足止めを食らい続けるのは拙い。だったら!
俺は覚悟を決め、ビルへと走り出した。すると、向こうもそれを望んでいたのだろう。狙撃がストップした。
どうやら直接対決がお望みのようだ。俺は一直線に4階へと進んでいく。
出久side
「それじゃあ、耳郎さん。核兵器の防衛、お願いします」
「悔しいけど今のウチじゃ、轟には太刀打ちできないから…頼んだよ、緑谷」
「はい!」
耳郎さんに核兵器を任せ、僕は轟君の迎撃に向かう。こっちが直接対決を望んでいる事は向こうも気づいている筈。だから、下へと降りていけば…。
「お前の方からも来てくれるとはな」
こうやって、轟君と鉢合わせするわけだ。
「轟君、勝負だ!」
緑色のオーラを全身に迸らせながら構えた僕を見て、轟君も右半身に氷を纏った独特のスタイルで構える。
でも、これは轟君の
だから、まずは轟君の全力を引き出す!
「いくぞぉ!」
「来い…!」
僕は一直線に轟君へ突撃した!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、出久vs轟戦が決着!
出久と耳郎が何故凍らなかったのかも明らかになります。
そして、詳細が明らかにならなかった第2戦から第4戦を含む戦闘訓練の結果は、以下の通りです。
組み合わせで先に名前の出たチームがヒーロー、後がヴィランになります。
第1試合(終了) 〇Aチーム:吸阪雷鳥&麗日お茶子vsDチーム:爆豪勝己&飯田天哉✖
第2試合(終了) 〇Cチーム:八百万百&峰田実vsJチーム:切島鋭児郎&瀬呂範太✖
第3試合(終了) 〇Hチーム:常闇踏陰&蛙吹梅雨vsIチーム:尾白猿夫&葉隠透✖
第4試合(終了) ✖Eチーム:芦戸三奈&青山優雅vsFチーム:口田甲司&砂藤力道〇
第5試合(試合中) Bチーム:轟焦凍&障子目蔵vsGチーム:緑谷出久&耳郎響香