出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
出久side
水難ゾーンでの危機を脱し、無事に陸地へと辿り着いた僕達は、今後取るべき行動について意見を交わしていた。
「そうね…私達が次に取るべき行動としては、助けを呼ぶ事じゃないかしら?」
「オイラもそう思うぜ! このまま水辺に沿って、広場を避けて移動していくのが一番安全だって!」
「うん、僕もそう思うよ。出口付近にあの黒い
蛙吹さんと峰田君の意見に同意しながらも、僕はどうしても広場で1人奮闘しているであろう相澤先生の事が頭から離れなかった。そして、その思いは2人にも伝わったようで…。
「え、おい、緑谷…まさか…バカバカバカ…」
「緑谷ちゃん…」
「いや、無茶な事をしようとは考えてないよ。でも、広場にいた
「だから、隙を見て…少しでも先生の負担を減らせればって……多分、雷鳥兄ちゃんと轟君は同じ事を考えている筈だよ」
「…飛ばされた先で待ち構えていた
「僕1人なら厳しいかもしれないけど、雷鳥兄ちゃんと轟君が一緒なら、何とか出来る気がするんだ。勿論、蛙す…梅雨ちゃんと峰田君に無茶を強いる事は出来ない。だから、2人はこのまま-」
「ストップ。私達だって雄英の生徒。まだ卵でもヒーローよ。自分達だけ安全な道を行く事は出来ないわ。そうよね? 峰田ちゃん」
「え、あ…お、おう! いざとなれば、オイラの『もぎもぎ』で皆動けなくしてやるぜ!」
微かに震えながらも強がってくれる峰田君。エッチな部分が目立つけど、彼の
そして、蛙吹さん。内心恐怖を感じている筈なのに、それを欠片ほども表情に出さない
「それに…ここで二手に分かれるより、固まって行動した方が助かる確率は高い筈よ。吸阪ちゃんと轟ちゃんが来てくれるなら尚更ね」
「…2人ともありがとう。それじゃあ、もう少し広場に近づこう。もしも僕達じゃ対処出来ないような状況だったら、広場を迂回して出口へ向かおう」
こうして、僕達は広場へと進み始めた。
轟side
「『散らして…嬲り殺す』…か。言っちゃ悪いが、あんたらはどう見ても“個性”を持て余したチンピラ以上には見受けられねぇよ」
USJの土砂ゾーンへ送られた俺を待ち構えていたのは、20人ほどの
だが、送られてきたのが俺1人だったので、油断したのだろう。チンピラオーラを漂わせながら、脅しをかけてきたので…。
「こいつ…! いきなり…」
「本当にガキかよ…」
右の氷と左の炎。両方を使って一気に殲滅させてもらった。だが、凍ったのが7割で燃えたのが3割か…。まだまだ左の制御が甘いな。
それにしても…オールマイトを殺す…初見じゃ、精鋭を揃え数で圧倒するのかと思ったが、蓋を開けてみりゃ
見た限りじゃ本当に危なそうな人間は4~5人だった。とすると…。
「なぁ…このままじゃあんたら凍りついたり火傷を負った身体がじわじわ壊死してくわけだが…俺もヒーロー志望。そんな酷え事は
俺が取るべき行動は…
「あのオールマイトを
雷鳥side
「っ!?」
黒い
どうやら、ワープ系の“個性”でここに送られたようだな。
「吸阪さん!」
「吸阪!」
ここに送られたのは、俺の他に八百万と耳郎。そして…
「悪い…これ、どうやって外すんだ?」
あの時、アンカーで引っ張りこんだ切島。合計4人か。
「吸阪、耳郎、八百万…すまねぇ! あの時、俺と爆豪が前に出たせいで、13号先生や吸阪達が攻撃出来なくて…こんな事に!」
左腰に引っかけていたアンカーを外してやると同時に、深々と頭を下げて俺達に謝罪する切島。
自分と爆豪が先走って黒い
「気にすんな。
「…けど……」
「自分の非を素直に認めて、受け入れる事が出来るのはお前の長所だ。今回の事を本気で反省してるなら、次に活かせ。その為にも、無事にこのピンチを切り抜ける事に集中しろ」
「……すまねぇ、弱気な所見せちまった」
「解れば結構。それじゃあ思考を切り替えろ。
『そろそろ来る』。俺の言葉に緊張の度合いを増す切島達。その直後-
「ヘヘッ、いたぜいたぜ!」
「流石に『
某世紀末救世主伝説の漫画に出てきそうな風貌の
しっかし、どいつもこいつも酷い
「4人か、可哀想に…25対4じゃ勝ち目ねぇな!」
「降伏するか? そしたら、半殺しくらいで済ませてやってもいいぜ!」
「ギャハハハッ! ソイツは良いなぁ! 男2人をそうしたら、女どもで楽しむのを見せつけるのはどうだ? あの髪の長い方、良い体をしてやがる」
「髪の短い方も楽しめそうだぜ。ヒヒヒッ」
…前言撤回。こいつらは『下品』じゃない。ただの『屑』だ。
耳郎も八百万も、コイツらの下卑た視線と物言いに怯えてるじゃないか。顔は平静を装っているが、微かに震えているのがわかる。
こんな奴らに
「さぁて、それじゃあ楽しませてもらおうか…良い声で―」
「やかましい! マグネ・マグナム!」
次の瞬間、俺は目前の
俺達を舐めきっていたのか“個性”の発動すらしていなかったそいつは、最初の4発で両肩と両膝を砕かれ、最後の1発は股間に喰らい、口から泡を吹きながらその場に崩れ落ちた。
「金で雇われた
「誰がチンピラだ! 1人倒した位で調子に乗るんじゃねぇ!」
「じゃあ、かかってこいよ。遊んでやる」
わざと嘲るような口調で挑発すれば、
「そうそう、どんな方法でぶちのめされたい? 5秒以内に答えれば、リクエストに応えてやる」
「何だとぉ! ふざけんな!」
「てめぇみたいなガキにやられる訳がねぇだろ!」
あぁ、やっぱりこいつらは
「時間切れだ」
簡単に懐に飛び込まれる。がら空きの鳩尾に肘を、顎に掌打を叩き込んで地面に沈め、顔面を思いっきり踏みつけてきっちり意識を刈り取る。
今後総入れ歯確定。2度とステーキが食えなくなっただろうが、知った事か。自業自得だ。
「ひぃっ!」
顔面を踏み潰され、文字通り
「サンダー! ブレークッ!!」
右手の指先からの放電で一気に薙ぎ払い、5人を無力化。これで残り18人。
「は、話が違うぞ! ガキを数人甚振るだけで50万の簡単な仕事じゃねぇのかよ!」
「こんな化け物がいるなんて、聞いてねぇぞ!」
思い描いていた物とまるで違う展開に慌て始める
「おらおらおらぁっ!!」
“個性”で全身を硬化させた切島が突撃。一気に2人を戦闘不能にする。
「吸阪さん、申し訳ありません。貴方1人に負担をかけてしまいました」
「こんな奴らに一瞬でも怯えた自分が情けないよ…でも、ここから取り返す!」
耳郎と八百万も武器を手に参戦し、戦いの準備は整った。さぁて、
飯田side
「13号。災害救助で活躍するヒーロー。やはり……戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る」
「自分自身をチリにしてしまった」
黒い
「飯田ァ! 走れって!!」
砂藤君の絶叫が僕の背中を押してくれた。弾かれるように『エンジン』を全開にして、ゲートへと走る。
「くそう!!」
何が『皆を置いていくなど委員長の風上にも…』だ! ちっぽけな責任感を満たす為に、1人助けを呼びに行く事を躊躇った結果がこれだ! もう、これ以上の失敗は許されない!
「散らし漏らした子ども…待つべきはあくまでもオールマイト。他の教師を呼ばれては、こちらも大変ですので」
そんな声と共に目前に広がる黒い
ここで終わるわけにはいかない! 皆を…僕が! 任された! クラスを!! 僕が!!
「行け!!」
その時、障子君が自らの身を挺して黒い
「早く!」
「すまない!」
振り返る事無く一直線にゲートへ走る。あと50m!
「ちょこざいな…! 外に出させない!」
黒い
「生意気だぞメガネ! 消えろ!!」
「うぉぉぉぉぉっ!!」
その時、僕を捕まえようとする黒い
「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら実体あるって事じゃないかな?」
麗日君が自らの“個性”で奴を宙に浮かせてくれたのか! そこへ瀬呂君が“個性”を使って奴を拘束する!
「行けええ!! 飯田くーん!!」
「飯田! 行けぇ!!」
僕を援護してくれた麗日君と瀬呂君の声を背後に聞きながら、僕は僅かに開いた自動ドアを潜り抜け、学校までの3kmを全速力で駆け抜けた。
「応援を呼ばれる…ゲームオーバーだ」
出久side
「う、嘘だろ、そんな…」
「相澤先生…」
広場に辿り着いた僕達が見たもの。それは真っ黒い巨人に倒され、右腕がおかしな方向に曲げられた相澤先生の姿。
あれがオールマイトを倒す為の策なのか?
「対平和の象徴改人“脳無”」
全身に『手』をくっつけた怪人の楽しそうな声が聞こえてくる。“脳無”、それがあの巨人の名前。
「“個性”を消せる。素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまり、ただの“無個性”だもの…やれ」
“脳無”は、怪人のその一言で相澤先生の左腕をまるで枯れ枝を折るように粉砕した。先生の苦悶の声が響く。
「緑谷ダメだ…流石にあれは無理だ…」
悲鳴をあげないように口を両手で押さえながら、ガタガタと震えている峰田君。蛙吹さんも表情こそ変わらないが恐怖心を必死で堪えているみたいだ。
本当は逃げるべきなんだと思う。僕達みたいなひよっ子が首を突っ込んじゃいけないレベル…だけど…。
その時、“脳無”が先生の頭を掴んだ。それが意味する事はつまり…腕のように先生の『頭』を破壊する。
「やめろぉ!!」
その瞬間、僕は『フルカウル』を全開にして突撃を仕掛けていた。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
フィンガースナップを高速で繰り返して、衝撃波の弾幕を放つ。これで“脳無”を倒せるとは思ってない。それでも、奴の意識をこっちに向ける事は出来る!
「
更に奴の目を狙って衝撃波を放つ。どんなにタフな相手でも目を攻撃されて平気な訳がない!
「‘~)%~=#”!」
狙い通り! 奴は声にならない声を上げ、己の目を押さえながら数歩後退した。その隙に僕は相澤先生を回収して、一気に距離をとる。
「緑谷ちゃん!」
「緑谷ぁ!」
「梅雨ちゃん! 峰田君! 相澤先生を連れて先に逃げて! 僕があいつを食い止めるから!」
「で、でもよぉ、緑谷1人で…」
「早く!」
「…峰田ちゃん、先生を連れて行きましょう…今の私達じゃ足手まといになるだけだわ」
「…わかった…緑谷、死ぬなよ…」
気絶した相澤先生を抱え、離れていく2人を背後に感じながら、僕は構える。オールマイトを倒す為に用意された相手だ。今の僕にどこまで出来るかわからない。それでも、僕は逃げない!
「ここからは僕が相手だ! かかって来い!」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。