出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
なお、掲載に伴い過去掲載分の一部修正。具体的には出久の技名の表記変更を行っています。
内容に変化はありません。
また、キャラクター設定集の改訂を行っております。
雷鳥side
「よし、それじゃあ確認するぞ。今回、お前達を率いて
「は、はい…」
「そして、俺達をUSJのあちこちに転移させた
「は、はい! 間違いありません!」
切島、耳郎、八百万と協力して
この
「最後の質問だ。お前らがオールマイトを倒せると思った根拠は何だ? 秘密兵器の類でも用意しているのか?」
「お、俺達も、く、詳しくは教えられて…た、ただ! 死柄木さんは言ってた! 『“脳無”があればオールマイトに勝てる。あれはその為に作られた』って…」
「“脳無”ねぇ…」
多分、広間に出てきた
「よし、質問は以上だ」
「お、お役に立てて何よりです…それじゃあ、私は帰らせて…」
「おいおい、帰るなんて言うなよ……キッチリ刑務所でお勤めしてこい」
「そ、そんな! 話が違っ!」
抗議の声をあげる
まったく、俺は話を聞かせてもらう。と言っただけで、白状すれば助けるなんて一言も言ってないんだがな…。
まぁ、
「吸阪、容赦ねぇな…」
「こういう連中は、甘さを見せたら付け上るだけだからな。容赦なくやるだけだ。八百万、双眼鏡を作って欲しいんだが…頼めるか?」
「はい! 少しお待ちを!」
俺の頼みに嫌な顔一つせず、双眼鏡を作り出して渡してくれる八百万。このピンチを乗り切ったら、何かお礼をしないとな。
「吸阪、それで何を見る気なの?」
「ちょっと広場の方をな…
耳郎の問いにそこまで答えた所で俺は言葉を失った。双眼鏡越しに見えたものは、“脳無”に倒された
「悪い! 先行させてもらう! ターボユニット!」
切島に双眼鏡を投げ渡し、全速力で山岳ゾーンを駆け下りていく。頼む、間に合ってくれ!!
出久side
「
「まぁ、いいや…“脳無”、やれ」
全身に『手』をくっつけた怪人の指示を受け、僕に向かって来る“脳無”。そのスピードは2m後半はある巨体からは想像も出来ないほど素早いもので-
「ッ!」
出力上限の30%で『フルカウル』を発動している僕でも、一歩間違えば捕まりかねない。
このスピードといい、
「だけど、戦いようはある!」
“脳無”の身体能力をオールマイト級と仮定した場合、真っ正面からの殴り合いはこちらが不利。だけど、僕にも勝っている点がある。小回りと回転の速さだ。
“脳無”の攻撃を避けると同時に死角へと回りこみ、丸太のような左足にローキック3連発! 更に―
「
膝裏に狙いを定め、拳を叩きつける! だけど…。
「効いて…ない?」
“脳無”は全くダメージを負った気配がなく、反撃の拳を振り下ろしてきた。ギリギリのところでそれを避け、距離を取るとあの怪人が楽しそうに手を叩いているのが視界の隅に見えた。
「なかなかのコンビネーションだけど…残念。“脳無”には『ショック吸収』の“個性”があるから、打撃は一切通用しない」
まるで自慢の玩具を周囲に見せびらかす様に“脳無”の“個性”を説明する怪人。そこへ―
「死柄木弔…」
あの黒い
「黒霧、13号はやったのか?」
「…行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして……1名逃げられました」
「………は?」
「はー…はぁー…黒霧、お前…お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…」
「流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ…
僕を無視したまま、そんな会話を繰り広げる2人の怪人。“脳無”も指示待ちで動かない今、体勢を整えつつ奴らを観察していたけど…正直言って薄気味悪い。
オールマイトを殺したいんじゃないのか!? ここで帰ったら雄英の危機感が上がるだけだぞ!! ゲームオーバー? 何だ…何考えているんだ、こいつら!!
「けどもその前に…平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう。フォロワーも減らせるしな…“脳無”やれ」
指示を受けて再び動き出す“脳無”。『ショック吸収』の“個性”がある以上、打撃は通用しない。でも、打撃
「
僕は“脳無”の攻撃を避け、死角に回り込みながら、エネルギーを纏わせた手刀を振るった! すると“脳無”の左腕に決して浅くない傷が刻まれる。
予想通り、『ショック吸収』の“個性”が無効化出来るのは打撃のみ。斬撃には適用されない。恐らく、関節技も有効だろう。
「これなら!」
僕は高速で動きながら、何度も手刀を振るい“脳無”に幾つもの傷を付けていく。
1発で仕留めきれる程の威力はないけど、このままダメージを蓄積させていけば…そんな僕の目論みは呆気なく頓挫した。
“脳無”の全身に付けた傷が、瞬く間に癒えていく。まさか、『再生』の“個性”!?
「気がついたか? “脳無”は『ショック吸収』だけじゃない。『超再生』の“個性”も持っている。オールマイトの100%にも耐えられるように
怪人の楽しそうな声に、僕は驚きを隠せなかった。
電気と磁気を操る雷鳥兄ちゃんの『雷神』や、氷と炎を操る轟君の『半冷半燃』のように、関連性のある能力を複数操る事が出来る複合型ならまだしも、全く関連のない2つの“個性”を併せ持つなんて事はありえないからだ。
そういえば、あの怪人は“脳無”の事を『改造された超高性能サンドバッグ人間』と言っていた。改造…誰かが、“個性”を付与した? “個性”を付与する“個性”なんて物が存在するのか!?
自分の脳裏に浮かぶあまりに突飛な発想。それが“脳無”の攻撃への反応を僅かに遅らせた。時間にしてコンマ2秒程の遅れ、実戦ではそれが命取りになる事は解っていた筈なのに!
咄嗟に防御を固め、可能な限り回避を試みる。次の瞬間、“脳無”の拳が僕のガードを僅かに掠った。
「ガハァッ!」
まるでダンプカーに撥ねられた子猫のように軽く30mは吹き飛ばされる。何とか受身は取れたけど、攻撃の掠った左腕は酷く痺れて暫くは使えそうにない。『フルカウル』でエネルギーを纏わせてなかったら、文字通り
「ハハッ、よく飛んだな。次は夜空の星にでもなってもらおうか」
怪人の指示に従い、僕めがけて突撃してくる“脳無”。いけない…このままじゃやられる!
爆豪side
「これで全部か…弱ぇな」
あのモヤモブに包まれて倒壊ゾーンに飛ばされた俺を待っていたのは、雑魚の群れだった。
こんな所に1人飛ばされた事でイラついていたから応戦したんだが…こんな三下共じゃ100人倒してもスッキリしねぇ!
さっさと広場に向かって、リーダー格の奴をぶちのめすとするか。その前に-
「俺に不意打ちなんざ、100年早ぇ!」
不意打ちしてきた雑魚の顔面を掴み、至近で爆破をお見舞いする。直前まで透明化…『カメレオン』の“個性”か。俺以外なら通用しただろうが、運が悪かったな。
気絶した雑魚を投げ捨て、倒壊ゾーンから脱出しようとしたその時―
「イヤァ、素晴ラシイ」
「ッ!」
倒した筈の雑魚がいきなり起き上がった。まだ意識があった? いや、キッチリ気絶させた筈だ!
「死柄木弔ヤ黒霧ニハ内緒デ、端末モドキヲ送リ込ンダ訳ダケド…マサカ、ココマデノ大当タリヲ引クトハ思ワナカッタヨ」
端末モドキ? 何らかの“個性”でこの雑魚を遠隔操作しているって事か? 糞、判断するのはまだ情報が足りねぇ…会話を引き伸ばすか。
「大当たりだと? 俺の事か?」
「ソウ、君ダヨ。近年稀ニ見ル強イ“個性”ヲ持ツダケジャナイ。身体能力、戦闘ノセンス、敵ヘノ容赦ノナサ、全テガ素晴ラシク高イ水準ダ。ソレニ…一番魅力的ナノハ、君ノ目ダ」
「目だと?」
「ソウ、自分以外ノ者ハ認メナイ。自分ダケガ強者。ソレ以外ノ連中ハ雑魚同然。ソウ言イタゲナ素晴ラシイ目ダヨ」
「なっ…何言ってやがる!」
「否定スル事ハナイ。コレガ君ノ本心ナノダロウ? ツイデニ言ッテオコウ。
「…黙れ」
「クダラナイ常識、倫理観、法律、ソノ他諸々…全テガ君ヲ抑圧スルダロウ。イヤ、今現在既ニ抑圧サレテイル筈ダ」
「…黙れ」
「断言シヨウ。君ガソチラニイル以上、君ガ真ニ開放サレル事ハナイ」
「黙りやがれぇぇぇっ!!」
一刻も早くこいつの口を塞ごうと、俺は全力の爆破をぶっ放した。建物の外へと吹き飛ばされていく雑魚。だが…。
「マタ、会ウ事モアルダロウ」
俺に話しかけてきたアイツはそう言い残して、気配を消した。糞が…遠隔操作だから、目の前の奴を吹っ飛ばしたって痛くも痒くも無いって事かよ…。
「糞が…」
そう吐き捨て、倒壊ゾーンから脱出しようと歩き出す俺だったが…その歩みはやけに重く感じた。
出久side
「あ…」
僕に向かって突撃してきた“脳無”の動きが突然止まった。その両足は分厚い氷で固められている。“脳無”の動きを止める程の氷…そんな事が出来るのは!
「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」
「轟君!」
無事だったんだね! その言葉は口から発する事は出来なかった。何故って…。
「サンダー! ブレーク!!」
言葉を発する前にもう1人の助っ人が、落雷と見間違う程の強烈な電撃を“脳無”に叩き込んだから。
全身から白煙を燻らせる“脳無”を視界の隅に入れながら、僕はもう1人の助っ人の登場にこれ以上無いほどの安堵感を感じていた。
「無事か! 出久!」
「雷鳥兄ちゃん!」
僕にとってオールマイトに匹敵する最高のヒーローが来てくれたんだ。これ以上の援軍は無い。
「緑谷…1人で無茶したみたいだな」
「ヒーローってのは他人を助けるだけじゃなく、自分の安全も確保しなくちゃいけないって、教えた筈だがな…」
「…ごめんなさい」
「まぁ、状況が状況だ。あまり口煩くは言わねぇよ」
「まずは、こいつらを何とかするのが先決だしな」
そんな事を言いながら僕と合流する轟君と雷鳥兄ちゃん。間に“脳無”を挟み、2人の怪人達と対峙する。
「おいおい、黒霧…どうなってんだよ。ガキどもは邪魔されないよう、全員あちこちに散らしたんだったよなぁ?」
「……配置しておいたチンピラ達程度では止められなかった。と言う事でしょう。彼らは金の卵の中でも特に優秀だったという事です」
「……はぁ、攻略された上に全員ほぼ無傷…凄いなぁ…最近の子どもは…恥ずかしくなってくるぜ
『“脳無”にやらせる』それを聞いた途端、“脳無”は凍りついた両足を自らの手で打ち砕き、欠損した両足をまるでトカゲの尻尾のように再生させる。
「すっげぇ再生力…プラナリアかよ」
「2人とも気をつけて! あの黒いのは対オールマイト用戦力“脳無”! 『ショック吸収』と『超再生』、2つの個性を持っている上に、パワーもスピードもとんでもないレベルだから!」
「対オールマイト…あんな奴に平和の象徴は殺らせねぇ」
「同感だな。俺達3人でぶっ倒すぞ!」
「うん、きっと3人でなら…勝てる!」
そう言って僕は『フルカウル』を発動。雷鳥兄ちゃんは両手から電撃を迸らせ、轟君は右手に氷、左手に炎を纏う。
“脳無”との第2ラウンドの始まりだ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。