出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第17話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第17話:対決! (ヴィラン)連合!ーその4(終)ー

飯田side

 

「ほ、報告します! USJ内部に(ヴィラン)の集団が侵入! イレイザーヘッド(相澤先生)と13号先生が応戦しましたが、13号先生が(ヴィラン)の攻撃で重傷! イレイザーヘッド(相澤先生)も苦戦を強いられています!!」

 

 職員室に駆けこむと同時に、あらん限りの声を振り絞って状況を報告する。ただそれだけで、その場にいた先生方は、USJに向かう為の準備を開始してくれた。そして―

 

「私が先行する! 皆は準備が整い次第、追ってきてくれ!」

 

 校長室から飛び出してきたオールマイトが、そう言い残してUSJへ向かって全速力で走り出した。

 これでもう大丈夫だ。皆、もう少しだけ持ち堪えてくれ!

 

 

雷鳥side

 

「2人ともいくぜ!」

「うん!」

「あぁ」

 

 俺と出久と轟。即席のトリオだが、それぞれの実力は把握しているし、出久を中継する事で繋がりが出来ているから、連携に問題はないだろう。

 

「まずは牽制! マグネ・マグナム!」

 

 両手でベアリングボールを次々と弾き、“脳無”へ撃ち込む。『ショック吸収』の“個性”がある以上、ダメージは期待できないが、それでも“脳無(やつ)”の動きを止める事は出来る!

 

「出久!」

「任せて! MACHETE(マチェット)スラッシュ!」

 

 そこへ出久が跳び回し蹴りで追撃! 狙い澄ました足刀が両目を容赦なく切り裂き、“脳無(やつ)”から光を奪い取る。

 

「轟! 合わせろ!」

「あぁ、全力でいく」

「サンダー! ブレーク!」

 

 両目を潰され、奇声を上げる“脳無”への駄目押しは、俺の電撃と轟の火炎だ。全身を焼かれ、ブスブスと煙を上げる“脳無”。普通の(ヴィラン)なら、これで勝負ありなのだが…。

 

「*>)${|!」

 

 残念。普通ではなかった。“脳無(やつ)”が立ち上がると同時に全身の炭化した皮膚が剥がれ落ち、内側から綺麗な皮膚が出現した。出久が潰した両目もすっかり再生を終えている。

 

「ハハハッ! 残念だったな! お前らのチンケな攻撃で“脳無”がどうにか出来ると思ったのか? 身の程を知れよ。卵ども!」

 

 “脳無”の『超再生』に気を良くしたのか。すっかり饒舌の信楽焼。ハッキリ言って…ウザいな。

 

「黙れよ、信楽焼」

「………は?」 

「聞こえなかったのか? 黙れと言ったんだよ」

「違うよ…今、俺の事を何て呼んだ?」

「あぁ、それか。信楽焼って言ったんだよ。お前、死柄木弔って名前なんだろ? だから信楽焼。わかりやすくて良いネーミングだろう?」

 

 満面の笑みを浮かべながら、信楽焼を煽ってみれば、奴は全身をわなわなと震わせ始めた。これは…もう少し煽ってみるか。

 

(ヴィラン)連合だかなんだか知らないが、組織のトップならトップらしく、()()()()みたいに飾られていれば良いものを、こんな所までノコノコ出てきてさぁ…お前、馬鹿だろ?」

「狸の…置物……黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…黙れよぉ!」

「いけません! 死柄木弔!」

「どけぇ!」

 

 怒りで我を忘れた信楽焼が、静止しようとした黒い靄(黒霧)を押しのけて、俺に向かって来た。

 どんな“個性”を持っているか知らないが、そこまで興奮した状態で“個性”を使えるなら使ってみろ! 

 

「マグネ・マグナム!」

 

 ポーチの中に残っていた7個のベアリングボールを全て弾き、信楽焼へ撃ち込んでいく。

 

「げぼぁっ!」

 

 初めの4発で両肩と両膝を砕かれ、残り3発を腹に撃ち込まれた信楽焼は、血反吐を撒き散らしながら地面をのたうちまわる。

 

「死柄木弔!」

 

 当然、黒い靄(黒霧)は信楽焼に駆け寄るが―

 

「させねぇよ」

 

 轟がその下半身を凍らせて、動きを封じる。

 

「さっき、爆豪と切島がお前を攻撃した時に、言っていたな『危ない危ない』って…全身が靄で物理攻撃完全無効なら、そんな台詞は出ねぇ筈だ…」

「くっ…」

「即ち、お前は靄で全身を覆っているだけで、その中には実体があるって事だ。だから凍らせる事も出来た。言っておくが下手な真似はするなよ…少しでも怪しいと判断した時は、全身を氷漬けにする」

詰み(チェックメイト)だな。潔く投降しろ」

 

 轟が黒い靄(黒霧)を抑えた事を確認し、信楽焼に投降を求める。正直、これで終わってくれれば楽なんだが…。

 

「まだ、終わってない…“脳無”! そいつらを殺せ! ぶっ殺せ!!」

 

 信楽焼の叫びと共に、再起動する“脳無”。やっぱりこいつは倒さないといけない訳か。『ショック吸収』と『超再生』。2つの“個性”は厄介だが…俺の考えが正しければ、決して倒せない相手じゃない筈!

 

「轟! “脳無(やつ)”を凍らせてくれ!」

「任せろ」

 

 まず轟の氷で氷漬けにして動きを封じ―

 

「マグネ・マグナム!」

 

 ありったけの釘を射出し、“脳無(やつ)”の全身に撃ち込んでいく。

 

「出久!」

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 更に出久のパンチをぶち込めば、凍りついた“脳無(やつ)”の体は衝撃を吸収出来ず、地面に氷で縫いつけられた両足を残して吹っ飛んでいく。

 

「サンダー! ブレーク!」

 

 おまけで電撃をぶつけてやれば、“脳無(やつ)”の全身に撃ち込んだ釘から体内に電流が流れ込み、体内を容赦なく焼いていく。

 

「やったのか?」

 

 ブスブスと全身から煙を上げる“脳無”の姿に、勝利を期待した様子の轟の声。だが、その期待は裏切られた。

 あれだけのダメージを受けながらも、“脳無(やつ)”は再生を始めたのだ。

 

「くそっ、なんて奴だ…」 

「いいや、()()()()さ。見てみろよ。再生を始めたと言っても、その速度は明らかに遅くなってる」 

「ま、まさか! “脳無”の『超再生』に限界が!?」

 

 下半身が凍りついた状態ながら、驚きを隠さない黒い靄(黒霧)。うん、いい驚き役になれそうだな。

 

「“脳無(やつ)”の体内にどれだけのエネルギーが蓄えられてるか知らねぇが…あの巨体を維持するだけで相当なエネルギーを消費する筈だ」

「それに加えて、出久との1対1(タイマン)に俺達との戦い。一体どれだけ『超再生』を行った? エネルギー消費もなしに、受けた傷や欠損した部位の再生なんて、出来る訳ないよな?」

「ぬ、ぐぐ…」

「もう奴はガス欠。『超再生』を行うだけのエネルギーはもう残っていない!」

「それがどうした! 『超再生』が行えなくても、まだ『ショック吸収』がある! お前らじゃ“脳無”を倒しきる事が出来ない以上、お前らが勝つ事は―」

「出来ないとでも言いたいのか? 甘いな」

 

 駄々っ子の様に喚き散らす信楽焼の声を遮り、俺は“個性”を全開にすると―

 

「『ショック吸収』と『超再生』、2つが揃っているから厄介だったんだ。どちらか片方しかないなら、倒す方法なんて幾らでもあるんだよ!」

 

 右手に電気、左手に磁気を纏わせ、両手を組む事で2つを融合させる!

 

「超電磁! タ! ツ! マ! キィッ!!」

 

 直後放たれた電磁竜巻が“脳無”を飲み込み、空中で磔状態にしてその動きを封じる。そこへ―

 

「轟! 氷と炎を同時に放ってくれ!」

「任せろ。全力でいく!」

 

 轟の両手から氷と炎が同時に放たれ、電磁竜巻と合体。“脳無”に加熱と冷却を繰り返し行っていく。

 

「加熱と冷却…いけない! 死柄木弔! 脳無をあれから脱出させなければ!」 

 

 黒い靄(黒霧)が気がついたようだが、もう遅い!

 

「な、何だよ…なんで、“脳無”の全身がボロボロになっていくんだよ!」

「簡単な物理の問題だ。高温に熱した物体は膨張し、逆に冷却すれば収縮する。これを短時間のうちに繰り返していけば、どんな物体であろうとも劣化は免れない!」

 

 俺の叫びに応えるように、“脳無”の全身は劣化したゴムのようにひび割れ、ボトボトと地面に剥がれ落ちていく。さぁ、そんな状態で『ショック吸収』が使えるなら、使ってみろ!

 

「決めろ! 出久!」

「うん!」

 

 

出久side

 

「決めろ! 出久!」

「うん!」

 

 雷鳥兄ちゃんの声に応え、僕は『フルカウル』の出力を限界ギリギリまで引き上げ、ゆっくりと構えを取る。このチャンス、絶対に無駄にはしない!

 

「全力全開!」

 

 空中で磔状態の“脳無”へ跳びかかり―

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマッシュ! シックスオンワン!!」

 

 無防備なその鳩尾に44MAGNUMスマッシュを一点集中の6連発で打ち込んだ!

 強烈な衝撃に電磁竜巻の戒めをも振り切って吹き飛んでいく“脳無”。USJの天井に激突し、上半身が飛び出したところでようやく止まり…。

 

「………」

 

 少しの間を置いて地面へ落下した。手足がおかしな方向に曲がっているし、鳩尾の部分に拳の痕が深々と残っているが、どうやら生きてはいるみたいだ。だけど、もはや戦闘不能なのは間違いない。

 

「“脳無”が…この、チート野郎ども…」

 

 芋虫のようにもがきながら、僕達を睨みつける死柄木弔。あとはこの2人を捕らえれば、全てが終わる。そう思った次の瞬間!

 

「撤退しますよ! 死柄木弔!」

 

 黒い靄(黒霧)が死柄木弔の元に現れ、自分諸共靄に包み始めた。そんな馬鹿な! あいつは轟君が氷漬けにしていた筈だ!

 そう思ってさっきまで奴のいた場所に視線を走らせれば、そこにあったのは、奇妙な窪み。あいつ、自分を固めている氷や地面ごとワープを!?

 その仮説を証明する間もないまま、2人はその姿を消していった。

 

「今回は失敗だったけど…次は殺すぞ。オールマイトだけじゃない…チート野郎ども…計画を滅茶苦茶にした報いは、必ず受けさせるからな」

 

 死柄木弔の捨て台詞を残して…。そこへ―

 

「私が来た! …って、もう終わっている?」

 

 オールマイトが颯爽と駆けつけた。………うん、3分遅かったです。

 それから数分遅れで、飯田君と他の先生方も救援に到着し、僕達はようやく安堵の溜め息を漏らす事が出来たのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回から短編を少々挟み、雄英体育祭編に突入いたします。

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