出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第17話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
飯田side
「ほ、報告します! USJ内部に
職員室に駆けこむと同時に、あらん限りの声を振り絞って状況を報告する。ただそれだけで、その場にいた先生方は、USJに向かう為の準備を開始してくれた。そして―
「私が先行する! 皆は準備が整い次第、追ってきてくれ!」
校長室から飛び出してきたオールマイトが、そう言い残してUSJへ向かって全速力で走り出した。
これでもう大丈夫だ。皆、もう少しだけ持ち堪えてくれ!
雷鳥side
「2人ともいくぜ!」
「うん!」
「あぁ」
俺と出久と轟。即席のトリオだが、それぞれの実力は把握しているし、出久を中継する事で繋がりが出来ているから、連携に問題はないだろう。
「まずは牽制! マグネ・マグナム!」
両手でベアリングボールを次々と弾き、“脳無”へ撃ち込む。『ショック吸収』の“個性”がある以上、ダメージは期待できないが、それでも“
「出久!」
「任せて!
そこへ出久が跳び回し蹴りで追撃! 狙い澄ました足刀が両目を容赦なく切り裂き、“
「轟! 合わせろ!」
「あぁ、全力でいく」
「サンダー! ブレーク!」
両目を潰され、奇声を上げる“脳無”への駄目押しは、俺の電撃と轟の火炎だ。全身を焼かれ、ブスブスと煙を上げる“脳無”。普通の
「*>)${|!」
残念。普通ではなかった。“
「ハハハッ! 残念だったな! お前らのチンケな攻撃で“脳無”がどうにか出来ると思ったのか? 身の程を知れよ。卵ども!」
“脳無”の『超再生』に気を良くしたのか。すっかり饒舌の信楽焼。ハッキリ言って…ウザいな。
「黙れよ、信楽焼」
「………は?」
「聞こえなかったのか? 黙れと言ったんだよ」
「違うよ…今、俺の事を何て呼んだ?」
「あぁ、それか。信楽焼って言ったんだよ。お前、死柄木弔って名前なんだろ? だから信楽焼。わかりやすくて良いネーミングだろう?」
満面の笑みを浮かべながら、信楽焼を煽ってみれば、奴は全身をわなわなと震わせ始めた。これは…もう少し煽ってみるか。
「
「狸の…置物……黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…黙れよぉ!」
「いけません! 死柄木弔!」
「どけぇ!」
怒りで我を忘れた信楽焼が、静止しようとした
どんな“個性”を持っているか知らないが、そこまで興奮した状態で“個性”を使えるなら使ってみろ!
「マグネ・マグナム!」
ポーチの中に残っていた7個のベアリングボールを全て弾き、信楽焼へ撃ち込んでいく。
「げぼぁっ!」
初めの4発で両肩と両膝を砕かれ、残り3発を腹に撃ち込まれた信楽焼は、血反吐を撒き散らしながら地面をのたうちまわる。
「死柄木弔!」
当然、
「させねぇよ」
轟がその下半身を凍らせて、動きを封じる。
「さっき、爆豪と切島がお前を攻撃した時に、言っていたな『危ない危ない』って…全身が靄で物理攻撃完全無効なら、そんな台詞は出ねぇ筈だ…」
「くっ…」
「即ち、お前は靄で全身を覆っているだけで、その中には実体があるって事だ。だから凍らせる事も出来た。言っておくが下手な真似はするなよ…少しでも怪しいと判断した時は、全身を氷漬けにする」
「
轟が
「まだ、終わってない…“脳無”! そいつらを殺せ! ぶっ殺せ!!」
信楽焼の叫びと共に、再起動する“脳無”。やっぱりこいつは倒さないといけない訳か。『ショック吸収』と『超再生』。2つの“個性”は厄介だが…俺の考えが正しければ、決して倒せない相手じゃない筈!
「轟! “
「任せろ」
まず轟の氷で氷漬けにして動きを封じ―
「マグネ・マグナム!」
ありったけの釘を射出し、“
「出久!」
「
更に出久のパンチをぶち込めば、凍りついた“
「サンダー! ブレーク!」
おまけで電撃をぶつけてやれば、“
「やったのか?」
ブスブスと全身から煙を上げる“脳無”の姿に、勝利を期待した様子の轟の声。だが、その期待は裏切られた。
あれだけのダメージを受けながらも、“
「くそっ、なんて奴だ…」
「いいや、
「ま、まさか! “脳無”の『超再生』に限界が!?」
下半身が凍りついた状態ながら、驚きを隠さない
「“
「それに加えて、出久との
「ぬ、ぐぐ…」
「もう奴はガス欠。『超再生』を行うだけのエネルギーはもう残っていない!」
「それがどうした! 『超再生』が行えなくても、まだ『ショック吸収』がある! お前らじゃ“脳無”を倒しきる事が出来ない以上、お前らが勝つ事は―」
「出来ないとでも言いたいのか? 甘いな」
駄々っ子の様に喚き散らす信楽焼の声を遮り、俺は“個性”を全開にすると―
「『ショック吸収』と『超再生』、2つが揃っているから厄介だったんだ。どちらか片方しかないなら、倒す方法なんて幾らでもあるんだよ!」
右手に電気、左手に磁気を纏わせ、両手を組む事で2つを融合させる!
「超電磁! タ! ツ! マ! キィッ!!」
直後放たれた電磁竜巻が“脳無”を飲み込み、空中で磔状態にしてその動きを封じる。そこへ―
「轟! 氷と炎を同時に放ってくれ!」
「任せろ。全力でいく!」
轟の両手から氷と炎が同時に放たれ、電磁竜巻と合体。“脳無”に加熱と冷却を繰り返し行っていく。
「加熱と冷却…いけない! 死柄木弔! 脳無をあれから脱出させなければ!」
「な、何だよ…なんで、“脳無”の全身がボロボロになっていくんだよ!」
「簡単な物理の問題だ。高温に熱した物体は膨張し、逆に冷却すれば収縮する。これを短時間のうちに繰り返していけば、どんな物体であろうとも劣化は免れない!」
俺の叫びに応えるように、“脳無”の全身は劣化したゴムのようにひび割れ、ボトボトと地面に剥がれ落ちていく。さぁ、そんな状態で『ショック吸収』が使えるなら、使ってみろ!
「決めろ! 出久!」
「うん!」
出久side
「決めろ! 出久!」
「うん!」
雷鳥兄ちゃんの声に応え、僕は『フルカウル』の出力を限界ギリギリまで引き上げ、ゆっくりと構えを取る。このチャンス、絶対に無駄にはしない!
「全力全開!」
空中で磔状態の“脳無”へ跳びかかり―
「
無防備なその鳩尾に44MAGNUMスマッシュを一点集中の6連発で打ち込んだ!
強烈な衝撃に電磁竜巻の戒めをも振り切って吹き飛んでいく“脳無”。USJの天井に激突し、上半身が飛び出したところでようやく止まり…。
「………」
少しの間を置いて地面へ落下した。手足がおかしな方向に曲がっているし、鳩尾の部分に拳の痕が深々と残っているが、どうやら生きてはいるみたいだ。だけど、もはや戦闘不能なのは間違いない。
「“脳無”が…この、チート野郎ども…」
芋虫のようにもがきながら、僕達を睨みつける死柄木弔。あとはこの2人を捕らえれば、全てが終わる。そう思った次の瞬間!
「撤退しますよ! 死柄木弔!」
そう思ってさっきまで奴のいた場所に視線を走らせれば、そこにあったのは、奇妙な窪み。あいつ、自分を固めている氷や地面ごとワープを!?
その仮説を証明する間もないまま、2人はその姿を消していった。
「今回は失敗だったけど…次は殺すぞ。オールマイトだけじゃない…チート野郎ども…計画を滅茶苦茶にした報いは、必ず受けさせるからな」
死柄木弔の捨て台詞を残して…。そこへ―
「私が来た! …って、もう終わっている?」
オールマイトが颯爽と駆けつけた。………うん、3分遅かったです。
それから数分遅れで、飯田君と他の先生方も救援に到着し、僕達はようやく安堵の溜め息を漏らす事が出来たのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回から短編を少々挟み、雄英体育祭編に突入いたします。