出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
轟side
吸阪からの特訓の誘いを受け、日時を確認してから学校を後にした俺は、その足で母さんが入院している病院へ向かっていた。
見舞いに行くのはこれで2回目。
…まぁ、入院してからの10年間、1度も見舞いに来た事がない息子がいきなり見舞いに来たんだから、無理もない。
10年ぶりに会った母さんは、昔と同じように綺麗で、どこか儚げで…俺が見舞いに来た事を驚きながらも、すごく喜んでくれた。
そして、10年間1度も面会に来なかった不義理を詫びようとした俺より先に、俺の顔に消えない傷をつけてしまった事を泣いて謝ってきた。
会いに行けば母さんを傷つけてしまう。俺がずっとそう思い込んでいたように、母さんも俺を傷つけた事を気にしていたんだと、今更ながら思い知らされた。
それから俺は10年間の不義理を詫び、改めて自分自身の力でナンバー
母さんも、俺が何にも捉われずに突き進む事が、幸せであり、救いであると、血に囚われる事なんてない。なりたい自分になって良いんだと言ってくれた。
「…あ、土産忘れた」
そんな事を考えながら歩いていたせいか、病院まであと少しという所になって初めて自分が土産の類を何も持っていない事に気がついた。
この前はいきなりだったから、手ぶらでも良かったかも知れないが、流石に今日も手ぶらというのは良くないだろう。
「近くに店…お菓子屋とかないか?」
慌てて周りを見回す俺の視界に飛び込んできたのは―
「あれ? 焦凍」
母さんの病室を訪ねると、そこには母さんだけじゃなく姉さんの姿もあった。
………しまった。今日は姉さんが、母さんの洗濯物を取りに来る日だった。
「焦凍、母さんのお見舞いに行くなら言ってくれれば良いのに…雄英高校まで迎えに行ったよ?」
「いや、急に思い立ったから…それから、母さん。これ…」
迎えに来たと言ってくれる姉さんに照れくささを覚えながら、母さんに買ってきたお土産を手渡す。
「あら…スイーツね」
「そこのコンビニで買ってきたやつ…だけど」
病院のすぐ近くで営業していたロー〇ンで売られていたスイーツを適当に見繕ってきただけのお土産。それも―
「母さんが、どんなお菓子が好きか…わからなかったから、目についたのを色々買ってきたんだ…シュークリームとか、プリンとか、バームクーヘンとか…」
母さんの好物1つ把握出来ていない体たらく…自分が心底情けなくなる。だけど…。
「ありがとう、焦凍。凄く嬉しいわ」
母さんはそう言って俺の頭を撫でてくれた。何故だろう…子ども扱いされているのに、凄く嬉しい。
「そうだ、せっかく焦凍が買ってきてくれたから、皆で食べましょう」
「いいね! コーヒー淹れてくるよ!」
「焦凍は何がいい?」
「あ、いや…母さんが先に選んで…俺は残ったやつでいい」
俺がそう言うと、母さんは柔らかく微笑みながら袋からワッフルを取り、俺に袋を渡してくれた。
俺もシュークリームを取り、ちょうどコーヒーを淹れてきてくれた姉さんに袋を渡す。
「むむっ、ワッフルとシュークリームが取られたか。じゃあ、私は…プレミアムロールケーキ!」
「何気に一番高いやつ取ったな」
いつもよりおどけた感じの姉さん。きっと、母さんの前では努めて明るく振舞っているんだろう。
「そういえば焦凍。雄英に入ってから変わったよね? なんかこう…明るくなった」
ロールケーキを食べ終えた姉さんが、唐突にそんな事を聞いてきた。明るくなった…か。
「そう、かもしれない…いろんな奴がいて、その中には…俺を変えてくれた奴もいたから」
それから俺は、学校での事を母さんと姉さんに話したけど…戦闘訓練で緑谷に負けた事を話すと、2人とも本気で驚いていた。
「焦凍が本気で戦って勝てなかったなんて…その緑谷君って凄いんだね」
「凄い奴だよ。尊敬しているし、本気で越えたいとも思ってる」
切島や砂糖が、緑谷、吸阪、そして俺が1-Aのトップ3だ。なんて言っていたが、客観的に見て、俺が3番手なのは間違いない。
けど、だからこそ俺はいつか緑谷と吸阪を越えたいと思ってる。
「正直、親父が母さんにした事を許すつもりはないし、俺は今でも親父が嫌いだ。でも、受け継いだこの“
「それが焦凍の決めた事なら、お母さんは一生懸命応援する。でもね………1つだけわかって欲しい。お父さんも自分の過去と向き合おうとしてることは確かだよ」
「………母さん、なんで親父を庇うんだ…」
「庇っているつもりはないわ…私だってまだあの人が怖い」
「じゃあ、なんで…」
母さんは、何を言っているんだ? 意味が解らず、混乱する俺に母さんは窓辺の花瓶を指さした。
「このお花、私が好きって言ったの。初めて会った頃、たった一度…」
「……お父さん、来たの…!?」
馬鹿な…あの親父が母さんの見舞いに!?
「焦凍が来た次の日と一昨日に来た
「だからあの人、その花と手紙を先生に預けていったわ」
「手紙…」
母さんから差し出された手紙を受け取り、急いで目を通す。そこに書かれた内容は文字通り驚きだった。
「相澤先生とオールマイトが、親父に…」
戦闘訓練で俺が緑谷に負けた次の日の夜、親父の事務所に
-犯してしまった過ちは、もう取り返しはつかないかも知れない。だが、これから向き合い償っていく-
-今更でも償い…返す他に道はないと考えている―
-だからどうか、俺を見ていてくれ-
手紙の最後にそう記されていた。
「あの人も少しずつだけど、歩み寄ってくれている。今からでもきっと私達は『家族』になれる筈よ」
静かな、でもハッキリとした母さんの声。俺はただ頷く事しか出来なかった。
また会いに来る事を約束し、病院を後にした俺は姉さんの車に同乗して、家路についていた。
「…親父も変わろうとしているのか?」
「…きっとそうよ。私はそう信じたい」
「………そうだな」
車に揺られながら、俺は親父と向き合わなければならない事を覚悟していた。
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