出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第20話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

また、今回の掲載に伴い、第19話のタイトルを変更しております。


第20話:1-A合同特訓!ーその1ー

轟side

 

「失礼します。1-Aの轟ですが、相澤先生はいらっしゃいますか?」

 

 母さんの見舞いに行った次の日。俺はいつもより少し早く登校して、職員室に顔を出していた。その目的は…。

 

「おう、ここだ」

 

 相澤先生とオールマイトに話しておきたい事があるからだ。

 

「失礼します」

「何か用か、轟…って、その顔はどうした?」

 

 俺の顔を見て、先生の顔が僅かに動いた。まぁ、顔に幾つか青痣作っているから無理もない。

 

「昨日の夜、親父と少し……ちょっとした()()()()ってやつです」 

「…そうか」

 

 ()()()()の一言で、先生も全てを察してくれたのか。それ以上は何も聞いてこなかった。よし、本題に入ろう。

 

「親父と俺の事で…先生とオールマイトが、色々動いてくれてたんですね」

「…エンデヴァー……お父さんから聞いたのか?」

「いえ、親父が母さんに手紙を書いていて、それに…」

「……そうか」

「まだ、どことなくギクシャクしてるし、互いに手探りな状態だけど…何とかやっていけそうな気がします。色々、ありがとうございました」

 

 そう言って、俺は先生に深々と頭を下げた。

 

「…家庭環境の問題を放置するのは、生徒の成長への妨げになる。ああした方が合理的だから動いたまでだ。礼を言われる程の事はしちゃいない」

 

 相澤先生は相変わらずそっけない対応だが、今ならわかる。この人は厳しくも情のある人だ。

 

「用が済んだんなら早く教室に行け。これから職員会議なんでな」

「はい、失礼しました」

 

 再度一礼し、出入口へと歩き出したその時――

 

「一部を除く全員に言える事だが…お前達には期待している。励めよ」

 

 耳に飛び込んできた先生の呟きに、胸が熱くなるのを感じながら――

 

「はい!」

 

 そう答えて、職員室を後にした。

 

 ………そういえば、俺と先生が話している間、近くにいたミッドナイト先生がやたらニヤニヤしていたが…何かあったのだろうか?

 

 

雷鳥side

 

 本日の授業も無事終了し、放課後を迎えた俺達19人は、相澤先生の名前で借りた体育館γに移動し、雄英体育祭に向けての合同特訓を開始していた。

 それにしてもこの体育館γ、別名がトレーニングの()台所()ランド()……なんだろう、USJといい、何処かに思いっきり喧嘩を売っている気がする。

 まぁ、その事は一旦置いておくとして…特訓に集中しますか。

 

「皆、ちょっといいか?」

 

 皆の準備運動が終わった頃を見計らい、集まってもらった所で話を始める。

 

「一応、俺と出久、轟の3人で他の皆を指導する形になると思うんだが…それで構わないか?」

「はい、悔しいですが私達の実力は、吸阪さん達3人よりかなり劣っていると言わざるを得ません。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。どうか、私達を…鍛えてください」

 

 皆を代表して八百万がそう答え、俺と出久、轟を除く16人が一斉に頭を下げる。

 

「よし、お前らの気持ちはよく分かった。全力で鍛えていくから、最後まで付いて来いよ!」

 

 俺の声に残る18人が一斉に声を上げる。さぁ、特訓のスタートだ!

 

 

 今日は初日という事もあり、それぞれと特訓の方向性について話し合い、特訓内容を考えていくという流れだ。

 16人に5~6人程度の3グループに分かれてもらい、俺、出久、轟がそれぞれ1グループを担当していく。俺担当の1人目は…。

 

「よし、まずは…峰田。やってみるか」

「お、おう!」

「あー、出久が作っていた『明日の為に! 1-A研究ノートNo.19 峰田実編』によるとだな…」

「ちょ、ちょっと待った! そのノートなんだよ!?」

「あ、これか? 出久曰く『こんな事もあろうかと、入学式の日から皆の“個性”を観察して、その長所や短所、応用方法なんかを考えて、纏めていたんだ!』だそうだ」

「所謂『虎の巻』ってやつだな。これによると…峰田、お前の“個性”『もぎもぎ』は――」

 

 ・頭の球状の物体をもぎ取る事で発動。

 ・生成速度に制限があり、取りすぎると出血するが、ほぼ無尽蔵に生み出す事が出来る。

 ・強い粘着力を持ち、水に濡れても粘着力は落ちない。また、自分にはくっつかない。

 ・自分が触れるとゴム毬のような弾力を発揮する。

 ・相手にくっつける事で動きを封じる。垂直の壁に貼り付けての移動補助などが考えられる。

 

「と、ある。間違いないか?」

「よ…よく調べてるな…」

「応用次第では幾らでも使い道が出てくる。凄い“個性”だと思うぜ」

「で、でもよぉ…オイラの“個性”は戦闘力がないから…」

「ふむ…戦闘力ね。そこも応用次第さ。峰田、『もぎもぎ』1つくれ」

「お、おう…」

 

 俺がやろうとしている事がわからないのか、首を傾げながら『もぎもぎ』を差し出す峰田。

 何事も応用力が大事って事を見せてやるよ。

 

「さて、ここにありますは、何の変哲もないビニールロープ。こいつを『もぎもぎ』にくっつけると…ロープの先端に『もぎもぎ』がくっつく。ここまではいいか?」

「お、おう…」

「このロープ付き『もぎもぎ』に外から持ってきた砂利を塗せば…はい出来上がり」

「それはまさか…鎖分銅か!?」

「常闇、大正解。その場にある材料で作った即席品だけどな」

 

 そう言いながら皆と少し距離を取り、即席の鎖分銅を振り回し簡単な演武を披露する。

 最初は単純に振り回し、次第に足や首を使って軌道を変化させていき…最後は勢いがついた分銅を用意された的に叩きつける!

 

「…とまぁ、こんな感じだな」

「すげぇ…オイラの『もぎもぎ』にこんな使い方が…」

「この使い方はあくまでも、応用の一例に過ぎない。あとは自分で考えてみな。お前の課題は『もぎもぎ』の応用と、その応用を活かす為の体の動かし方だな」

「わかったぜ! 吸阪、ありがとな!」

 

 これで1人目は終了。2人目は――

 

「次は切島だな」

「おう! よろしく頼むぜ!」

「お前の“個性”『硬化』はわかりやすい。だからこそ、特訓の方向性はシンプルだ」

「もっと硬度を上げていくんだろう? シンプルで分かりやすいぜ!」

「うん、そう答えると思っていた。でも、それは正解でもあり不正解でもある」

「なっ…じゃあ、どんな特訓をやるんだ?」

「まぁ、これは口で言うより実際に体験した方がわかりやすいな。切島、体を硬くして構えてみな」

「お、おう」

 

 怪訝な表情を浮かべながらも、全身を硬化して構える切島。俺も“個性”を発動し――

 

「電パンチ!」

 

 拳に電撃を纏わせてパンチ! 鈍い音が体育館に響く。

 

「くっ、なかなか強烈だけど…耐えきれない程じゃないぜ!」

「結構本気で打ったんだけどな。大した硬さだ…じゃあ、もう1回同じ事をやるから、受けてみな」

「おう、何度でもきやがれ!」

 

 気合を入れて再度構える切島に、俺は再度攻撃を仕掛ける。だが、今度はパンチじゃない。掌を用いて放つ打撃、掌打だ! 

 

「ぐ、ごほぉっ!」

 

 掌打が命中した瞬間、膝を床に着き崩れ落ちる切島。うん、出久の()()()()だったな。

 

「な、なんでだ…」

「今の攻撃はさっきのやつと打ち方を変えた。1発目は単純な打撃だが、2発目は掌打…大雑把に言えば、衝撃を内部に徹す打ち方だな」

「な、内部に?」

「出久の『明日の為に! 1-A研究ノートNo.7 切島鋭児郎編』によるとだな。切島の『硬化』は、肉体の表面を硬化させていると考察されている。目まで硬化させているのは大したもんだが、これは要するに全身鎧(プレートアーマー)を装備しているのと同じ訳だ」

「そ、そうだな」

「単純な打撃なんかは鎧で防げる。だが、今の掌打みたいに防御を浸透して内部にダメージを与える攻撃には無力って訳だ。あと、関節技や投げ技にも無力かもしれないぜ」

「そうか…そんな攻撃がある事自体、考えた事もなかったぜ…」

「もちろん、硬度を上げていくっていうのも間違いじゃない。だが、硬度を上げるだけは対応できない事もあるって事は覚えておいてくれ」

「そういう訳でお前の特訓は、相手の攻撃を見極める目を養う事だ。攻撃の内容を瞬時に見極め、防ぐのか避けるのか、それとも捌くのか判断する。それが出来るようになれば、お前の戦闘能力は格段に進歩する筈だ」

「なるほどな…サンキュー吸阪! 燃えてきたぜ!」

 

 さて続いては…。

 

「瀬呂、いってみようか」

「おう、頼むな」

「お前の“個性”『テープ』も峰田の『もぎもぎ』と同じ系列だな。トリッキーな使い方が出来るが攻撃力に乏しい」

「そうなんだよなぁ…まぁ、峰田にやって見せた鎖分銅? あんな使いかたを考えていけばいいか?」

「それも1つの方法だし、あとは相澤先生の使う捕縛布みたいな使い方も面白いだろうな。拘束した敵そのものを振り回して武器にする。敵の質量その物が武器になるから、強力だぜ」

「それもいいな! 見た目も派手そうだ!!」

「あとは射出したり切り取るだけじゃなく、巻き取る事が出来る点を活かして、疑似的な飛び道具としての使い方もあるな。たとえば先端にスローイングナイフをくっつけて射出。外れたら巻き取って再使用。とか」

「アイデア次第で利用法は無限大ってやつか!」

「そういう事だ」

 

 瀬呂のアドバイスはこんな感じだな。

 

「次は…常闇だな」

「あぁ、よろしく頼む」

「“個性”は黒影(ダークシャドウ)…まるでスタ〇ドだよ…」

「スタ…なんだ?」

「あ、いや。こっちの話。伸縮自在の影のような存在をその身に宿しており、その攻撃範囲は非常に広い」

「この影…と呼ばせてもらうが、攻撃範囲、攻撃力に優れ、大概の物理的攻撃を無力化する事から防御も優秀…凄い“個性”だな」

「恐悦至極」

「だが、常闇…お前自身はどうなんだ?」

「ッ! やはり、そこが見抜かれていたか…」

「敵を近づかせない戦い方が出来るって事は、逆を言えば懐に飛び込まれると弱いって事だからな。常闇自身の地力に不安があるなら、猶更だ」

「そうなると…俺の特訓内容は」

「接近戦だな。黒影(ダークシャドウ)を用いる場合と用いない場合、両方を想定してやっていく」

「委細承知!」

 

 

「さて、次は八百万の番だな」

「よろしくお願いいたしますわ。吸阪さん」

「八百万に関しては…まず聞いてみるか。八百万、自分の強みは何か言ってみてくれ」

「強み…ですか? そうですね、相手の行動に対して臨機応変に対応出来る事…でしょうか?」

 

 あぁ、やっぱりそう考えていたか。

 

「うん、それも間違ってはいない。でも、それじゃ50点だね」

「50点…ですか」

「考えてみな。相手の行動に対し臨機応変に対応するって事は…戦闘では相手に先手を取られてるって事だよね? もし、相手の“個性”が()()()()()()だったらどうする?」

「そ、それは……何も出来ないままやられてしまいます」

「ご名答。だから、こと戦闘においては、先手を取る事が重要だと俺は思う」

「で、ですが…それでは相手の情報が入手出来ないのでは?」

「そこが勘違いなんだよ。とにかく何でもいいから先手を打つ。それが通用すればそれでOK」

「効かなかったとしても、それで相手の情報が何かしら入手できる訳だ。色々考えるのはそこからで良い。入手した情報を活かして、矢継ぎ早に仕掛けていけば、八百万のペースで戦いを運んでいける。どうかな?」

「よくわかりましたわ。戦い方を変えられるように努力してまいります」

 

 八百万もこれで良し。最後は…。

 

「待たせたね。梅雨ちゃん」

「大丈夫よ吸阪ちゃん、皆へのアドバイスを聞いてるのも良い勉強になったわ」

「そう言ってもらえると助かるよ。さて、梅雨ちゃんに関してだけど…正直、これと言って弱点がないんだよね。強いて言えば、寒さに弱いことだけど…これはどうしようもない(さが)みたいなもんだし」

「ケロ…そうなるとどうすればいいのかしら?」

「簡単だよ。弱点がないなら、長所を伸ばしていけばいい。その方向で特訓内容を考えていこう」

「よろしくお願いするわね。ケロケロ」

 

 さて、俺が担当する6人には方向性を伝え終えたから、特訓内容を考えて-

 

「そうそう、吸阪ちゃん」

「ん? どうした、梅雨ちゃん」

「私思った事を何でも言っちゃうの。だから気を悪くしないでね…電パンチって、ネーミングがそのまますぎて…どうかと思うわ」

「…そっか」

 

 …まずは技の改名からだな。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

思ったより長くなりそうだったので、特訓回を数回に分けてお送ります。

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