出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第21話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

また、掲載に伴い、キャラクター設定集の改訂、追加を行っております。


第21話:1-A合同特訓!ーその2ー

出久side

 

 雷鳥兄ちゃんが飛ばした激に答え、僕達は3つのグループに分かれて、それぞれの特訓の方向性や内容について話し合う事にした。

 僕が担当するのは飯田君、砂糖君、障子君、尾白君、そして麗日さんだ。

 

「それじゃあ最初は…飯田君からやろうかな」

「緑谷君、よろしく頼む!」

 

 気合十分といった様子の飯田君を見ながら、僕は『明日の為に! 1-A研究ノートNo.4 飯田天哉編』の内容を思い出していた。自分で作った研究ノートだ。内容は一字一句残さず暗記している。

 

「飯田君の“個性”は『エンジン』。脹脛に備わったエンジンのような器官によって、50mを3秒で駆け抜ける程に走力を強化する。また、走力強化の副産物としてキック力も上昇する…この解釈で合っているよね?」

「あぁ、的確な分析だ! 流石だよ、緑谷君!」

「スピードを強化する。一見単純だけど、戦闘でも救助でも力を発揮する凄く強力な“個性”だと思うんだ」

「くぅ…ただ足が速いだけと揶揄する者も多い中、ここまで僕の“個性”を理解してくれるなんて…僕は今、猛烈に感動しているよ!!」

 

 何と言うか、飯田君は飯田君で苦労してるんだな…というか、一人称が『僕』になっているし…。

 

「で、でも! まだまだ伸び代は大きいと思うんだ! 例えば…()()()()とか」

「ッ! そこにも気が付いていたのか……その通りだよ。まだ僕は最高速に達するまでに5秒弱、距離にしておよそ85mが必要だ。兄さん…ターボヒーロー『インゲニウム』は3秒弱、およそ40mで加速しきっているのに…」

「そうなると、飯田君の課題は加速時間の短縮。それともう1つ。動き方の改善だね」

「動き方…走り方におかしな点は無いと思っていたが…」

「あぁ、この場合は走り方というか移動所作だね。飯田君の動きは速いんだけど、平面というか…2次元的に感じるんだ」

「もっと立体的に動く事が出来れば、文字通り変幻自在な動きになると思う」

「立体的か…そういった事は考えもしなかったが…いや、試してみる価値は十二分にある。早速やってみるよ!」

 

 飯田君の方向性としてはこんな感じかな。それじゃあ次は…。

 

「砂藤君、お待たせ」

「おう、よろしく頼むぜ、緑谷」

「砂藤君の“個性”『シュガードープ』は、一定量の糖分を摂取する事で、3分間だけ身体能力を5倍に増強する。シンプルだけど奥の深い増強型だね」

「あぁ…まぁな。だけど、緑谷はもうわかっているだろう? 俺の“個性”、3分経つと体が怠くなって眠くなって…長期戦には滅茶苦茶向いてねぇんだよなぁ」

「その事なんだけど、僕なりに調べてみたんだ。糖分の摂取で眠くなったり、怠くなったりするのは、血糖値の急激な上昇が原因なんだ。だから、血糖値が上がりにくい糖分を使えば、もしかしたら“個性”の副作用を緩和できるかもしれないよ」

「血糖値の上がりにくい糖分…俺はよく角砂糖を使ってるけど…グラニュー糖や黒糖を使えば良いのか?」

「ううん、グラニュー糖も黒糖も原材料は砂糖黍だから、血糖値の上がりやすさは角砂糖と大して変わらないよ」

「それよりも、砂糖大根(テンサイ)から作るテンサイ糖や、ココヤシの花の蜜から作るココナッツシュガー、ステビアや羅漢果から作られる天然甘味料を使うのが良いと思う」

「なるほどな! 色々試してみるぜ!」

「あと、砂藤君の“個性”で思いついた事があるんだけど…()()()()()()()()()()()()って出来ないかな?」

「………どうだろうな。試した事がねぇからわからねぇ」

「もし、それが出来るなら、全身を満遍なく強化するよりも高い増幅率を得られると思うんだ。体に負担がかかるから乱用は出来ないけど、もしもの時の切り札になると思う」

「…試してみる価値ありだな」

 

 砂藤君はこれで良し。次は-

 

「緑谷、頼む」

 

 障子君だ。障子君の“個性”『複製腕』は、肩から生えた2対の触手の先端に、自身の体の器官を複製できるというもの。

 轟君とタッグを組んでの戦闘訓練やUSJでの戦いでは、目や耳を複製し、索敵や情報収集に活躍していた。

 それに個性把握テストでは手を複製し、500kgwを超える握力を記録していた

。汎用性の高い“個性”と言えるだろう。

 

「障子君は、今の段階でも“個性”を上手く使えているから、戦闘技術を磨いていくのが良いと思うんだ。ちょっと僕と組み手をしてみようか。手合わせする事で分かってくる課題もあるし」

「わかった」 

 

 そう言葉を交わすと障子君は腕を複製して6本腕になり、僕は『フルカウル』を発動する。出力は10%といつもよりかなり抑えめだ。

 

「…いくぞ、緑谷!」

 

 そう言うと同時に僕へと突進してくる障子君。自らの間合いに入ると同時に、その6本の腕でフック、ストレート、アッパーと別々のパンチを繰り出してきた。

 うん、腕の数が3倍にすれば手数も3倍になる。そう考えるのはごく自然な事だし、間違ってはいない。だけど-

 

「甘いよ!」

 

 僕は6つの腕が繰り出す様々なパンチを見事に捌いてみせた。うん、驚いているね、障子君。

 

「ほら、隙だらけ!」

 

 わざと声をかけながら右の回し蹴りを繰り出せば、障子君は左側の腕3本を動員して、ガードを固める。だけど-

 

「反応が遅い!」

 

 途中で蹴りの軌道を変え、ガードしきれていない太腿に蹴りを見舞う。

 

「ぐぅっ!」

 

 強烈な衝撃に思わず膝をついてしまう障子君。うん、これで課題が見えてきたかな?

 

「緑谷…俺の課題は動きの精度か?」

「その通りだよ、障子君。6本の腕を使った攻撃は手数も増えるし、確かに強力だ。でもね。障子君本来の腕と複製した腕とでは、動きに僅かではあるけどタイムラグがあるんだ」

「一定以上のレベルに達した人なら、さっきみたいに攻撃全部を捌くくらいの事は簡単に出来ると思うよ」

「……ガードでも同じ事が言えるわけか…タイムラグのせいでガードが遅れてしまい、そこを突かれた」

「そういう事だね。体育祭までにこのタイムラグを解消出来るよう、頑張っていこう」

「よろしく頼む」

 

 

「尾白君。君の“個性”『尻尾』。これは凄い“個性”だと、僕は思うよ」

「ありがとな緑谷。地味だ地味だって言われてきたけど…お前からそう言われて、凄く嬉しいよ」

 

 尾白君、地味って言われる事を相当気にしてたんだね。でも、大丈夫。そんな前評判なんて吹っ飛ばせるくらい強くなれるから!

 

「この太くて、手足よりも長い尻尾。それから尾白君自身が磨いてきた格闘技の腕前を活かす形で特訓内容を考えていこうと思う。目指すは尾白猿夫流格闘術だよ!」

「尾白猿夫流格闘術…俺にそんな物が作れるのか?」

「作れるとも! 君の今までの努力は絶対に嘘をつかない! 目指せ! カンフーマスター!!」

「カンフーマスター…よし! やるぞ! カンフーマスターに、俺はなる!!」

 

 尾白君も良い感じに火が付いた。残るは-

 

「待たせちゃってごめんね。麗日さん」

「ううん! 全然待ってなんかないよ!」

 

 ここだけの話。麗日さんの強化プランは、他の皆よりも早く出来上がっていたりする。

 戦闘訓練の時にタッグを組んだ雷鳥兄ちゃんが、麗日さんに特訓を持ちかけ、承諾を得ていた関係で一足早く作成に取り掛かっていたからだ。

 

「麗日さん、君の“個性”、『無重力(ゼログラビティ)』は、使い方次第で幾らでも凶悪に出来る“個性”なんだ」

「そ、そうなん? 吸阪君も同じような事を言っていたけど、どうもピンと来ないんよ…」

 

 首を傾げる麗日さん。ここは少し説明してあげた方がいいかな。

 

「あのね、麗日さん…」

 

 僕は麗日さんに『無重力(ゼログラビティ)』の応用、その一例を話した。

 

「そ、そんな事が出来るん!?」

 

 驚きを隠さない麗日さん。ヒーローを目指しているとは言っても、雄英に入るまで荒事とは無縁だった彼女なら、当然の反応だ。

 

「勿論、今の麗日さんじゃ実行するのは難しいと思う。でも、体育祭までには実行出来る様に僕達がしてみせる」

「………」

「でも、大事なのは麗日さんの意思だよ。麗日さんが嫌だったら、別の方向で-」

「やる!」

 

 僕の声を遮る形で麗日さんの声が響く。

 

「私もヒーローの卵だから、荒事が苦手なんて言ってられないよ! お願い、緑谷君、私を鍛えて! 強くしてください!」

 

 そう言って頭を下げる麗日さん。君の気持ちはよく分かったよ。この2週間で君を強くしてあげるからね!

 

 

轟side

 

「これで全員か…」

 

 俺の担当だった青山、芦戸、口田、耳郎、葉隠の5人にアドバイスを送り、一息つく。

 まぁ、アドバイスを送ったと言っても、大部分は緑谷の作っていた研究ノートに書かれていた内容を話したようなもので、俺自身の意見は2割も満たないけどな。

 

「ホント、大した奴だよ…」

 

 研究ノートの完成度の高さに改めて、緑谷の凄さを思い知る。

 

「だけど…俺だって負けねぇ」

 

 昨日の夜、親父と本音をぶつけ合って、“個性”抜きとはいえ殴りあって、改めてヒーロー『エンデヴァー』の凄さを思い知った。

 エンデヴァーの息子として…今度の体育祭、無様な姿は見せられない。

 親父は言っていた。誰かに何かを教えるという行為は、自分自身をも成長させる。クラスメートを指導しながら、共に特訓を積む事は必ず俺の糧になる。と…。

 

「この合同特訓で、必ず俺は強くなる」

 

 その時、吸阪が俺達を呼ぶ声が聞こえた。 それぞれへの説明は終わり、これから実際の特訓に移っていく訳だ。

 

「負けないぜ、緑谷、吸阪」

 

 静かにそう呟き、俺は皆の元へと歩き出した。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それぞれへのアドバイスは終わり、次回は実際の特訓に移っていきます。

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