出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
短いですがお楽しみ頂ければ、幸いです。
“個性”の鍛錬を初めて1年と3ヶ月。俺の“個性”もかなり応用が利くようになったそんなある日、いつも通り“個性”の鍛錬に出かけようとした時に『それ』はやってきた。
そう、俺の甥である出久が病院で診断を受け、“無個性”である事を宣告されたのだ。
「ついに来たか…」
引子姉さんから連絡を受け、呆然とする父親、悲しみに暮れる母親の姿を見ながら、俺は静かに呟き、気合を入れる。
出久の運命を変える為のここが第一関門。失敗は許されない。
俺は両親に出久へ会いに行く事を告げ、財布片手に駅へと走り出した。背後から車で送ると言う父親の声が聞こえるが、それを無視して走り続ける。
「待ってろよ、出久!」
「来てくれたのね、ライト…」
「引子姉さん、出久は?」
憔悴した様子の引子姉さんに迎えられた俺は、挨拶もそこそこに出久のもとへ向かう。そこには…
「…出久?」
泣きながらモニターに映るオールマイトの動画を見続ける出久の姿があった。
「…ライトにいちゃん、見てよ。どんなに困ってる人でも、笑顔で助けちゃうんだよ…超カッコイイヒーローさ。僕も……なれるかなぁ…」
「……………!!」
涙をいっぱいに浮かべた瞳で俺を見ながら、モニターに映るオールマイトを指さす出久を、引子姉さんが抱きしめ、何度も謝罪の言葉を繰り返す。
思わず目を逸らしたくなるほど、悲しい光景。だけど…違う。出久が本当に欲しい言葉は、母親からの謝罪なんかじゃなくて…。
「出久…お前自身は、どう思ってるんだ?」
俺は出久の目をまっすぐに見ながら、問いかけた。
「ヒーローになりたいと心の底から、思っているか?」
「………なりたいよ…でも、僕は“無個性”だから…」
「“無個性”だから無理なんて、誰が決めた? 医者か? どっかの偉い先生か?」
「それは…」
「考えてもみろよ。“個性”なんて存在していなかった昔だって、お前と同じ“無個性”だけど、自分を鍛えて、磨き上げて、沢山の人から賞賛されるような凄い事をやってのけた人は、沢山いたんだぞ。“個性”持ちだけがヒーローになれるなんて理屈自体が間違っているんだ」
「………」
俺の言葉に何も答えない出久。いや、これは答えないんじゃない。考えているんだ。ならば、その考えを後押ししていくのみ。
「ついでにもう1つ。“個性”持ちが正しくて、“無個性”が間違っているんだとしたら…なんで、
「っ!?」
出久の顔が驚愕で彩られ、同時に目に力が少しずつ戻り始める。
「出久、そういうことなんだよ。“個性”なんか、所詮はあったら便利なオプション程度の物でしかない。そんな物の有無で、お前の価値を決められてたまるかよ」
「ライトにいちゃん…」
「出久、もう一度聞くぞ。お前はヒーローになりたいのか?」
「…なりたい…僕はヒーローになりたいよ!!」
俺の目をまっすぐに見ながら、己の願望を大きな声で口にする出久。そうだよ、それでこそ俺の甥っ子で、ヒロアカの主人公だ。
「よし…だったら決まりだ。出久、俺がお前を鍛える。元々そのつもりで鍛えてきたんだからな。引子姉ちゃん、悪いけど紙とペン、それとカッターナイフ持ってきて」
「え、えぇ…」
俺からの突然の頼みに、戸惑いながらも紙とペン、カッターナイフを持ってきてくれる引子姉ちゃん。それらを受け取った俺は、躊躇いなく紙に文章を書き記していく。出久にもわかるように全て平仮名か片仮名だ。
わたし すいさからいとは おい である みどりやいずくを りっぱなヒーローにするため ぜんりょくで かれをきたえることをちかいます。
文章を書き終えた俺はその脇に署名し、更にカッターで親指の先を切り、己の血で捺印する。
「出久、これは血判状って言ってな。誓った事を必ず実行する。その覚悟を形にしたものだ」
「けっぱんじょう…」
「これに誓って、俺はお前を強くする。だから出久、お前も強くなれ。いいな」
「…うん!」
こうして俺は、緑谷出久をヒーローにする為、行動を開始するのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。