出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第28話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第28話:雄英体育祭! 最終種目!!ー1回戦その3ー

雷鳥side

 

『1回戦第5試合!』

『気は優しくて力持ち! 糖分が俺のパワーの源! ヒーロー科、砂藤力道!!』

(バーサス)! 1-A推薦入学者の1人! あらゆる物を創造するクリエイティブガール! ヒーロー科、八百万百!!』

『レディィィィィイッ! スタート!!』

 

 そんな実況と共に始まった1回戦第5試合。先手を取ったのは八百万だ。

 試合開始とほぼ同時に小ぶりの人形を創造し、砂藤へ投擲。当然、砂藤はそれを払い落とそうとするが、その直前で人形は2つに割れ、中に仕込まれていた閃光手榴弾(スタングレネード)が炸裂!

 大音響と閃光に、砂藤は視覚と聴覚を一時的に封じられ、その動きを止めてしまう。 その隙に、八百万は手早く網を創造。投網の要領で投げつけて、砂藤を網で絡め捕った!

 

『おぉーっと! 開始早々八百万が流れるようなコンビネーションを披露! 相手を網で搦め捕る姿は、古代ローマの円形闘技場(コロッセオ)を彷彿とさせるぅ!』

閃光手榴弾(スタングレネード)そのままでは、相手に警戒される恐れがある。それをマトリョーシカに仕込む事で克服。さらに視覚と聴覚を塞ぐだけでなく、投網で動きも封じてしまう。実に合理的な戦術だ』

 

 実況(プレゼント・マイク先生)解説(相澤先生)の声が響く間に、八百万は新たなアイテムを創造した。第1種目でも使っていた回転弾倉式のグレネードランチャーだ。

 網から逃れようともがく砂藤に狙いをつけ、トリガーを引けば、次々と発射される弾丸。それは一定距離を飛んだところで炸裂し、内部に充填していた大量のトリモチをぶちまけた! 

 網に搦め捕られた上から大量のトリモチをぶちまけられた砂藤。おそらく観客の殆どが砂藤の戦闘不能を予感した。だが…。

 

「このくらいでぇっ!」

 

 次の瞬間、力強い咆哮が響き、同時に砂藤から放たれる圧力が一段階増した。

 

「このくらいで…俺が、止められるかよぉ!」

 

 トリモチがかかっていない部分からわずかに見える砂藤の腕。それは先程よりも巨大化していた。第2種目で障子の攻撃を防いだ時のように、一部分だけを増強しているのだ。

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 力任せに自分に張り付いたトリモチと網を剥ぎ取り、投げ捨てる砂藤。力業にも程があるが、見事な脱出だ。

 

『コイツはスゲェェェッ! 脱出不可能と思われた拘束から砂藤脱出! レベルを上げて物理で殴る! こいつに勝るものはないのかぁ!?』

『お前は何を言っているんだ…』

「八百万! 覚悟してもらうぜ!」

 

 右腕を振り上げ、八百万へ突進する砂藤。あの勢い、生半可な方法じゃ止められないぞ…八百万、どうする?

 

「覚悟するのは貴方です! 砂藤さん!」 

 

 八百万の選んだのは迎撃だった。グレネードランチャーを再度構え、砂藤に向けて弾丸を発射する。

 

「トリモチなんかでぇ!」

 

 そう、発射された弾丸が先程と同じトリモチ弾だと()()()()()事が、砂藤の敗因となった。

 弾丸が炸裂し、充填されていたゲル状の物体が周囲にばら撒かれる。その直後―

 

「す、滑る!? と、止まらねぇ!」

 

 それを踏んでしまった砂藤が、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()、場外へ向けて滑り始めた。 

 

「水と陰イオン界面活性剤、そしてポリアクリルアミドを混合したゲル状の液体。これが撒かれた地面は、摩擦係数が0.01以下にまで低下します」

 

 摩擦係数が0.01以下って…確か氷でも0.05はあるから…スケートリンクよりも滑るって事か。そんな所に猛スピードで踏み込めば…あぁなるのは必然って事だな。

 

「のわぁぁぁぁぁっ!」

 

 何とか踏ん張ろうと焦った結果、転倒してしまった砂藤は、そのまま場外までノンストップで滑っていき…。

 

「砂藤君、場外!! 八百万さん、2回戦進出!!」」

『2回戦進出!! 八百万百ー!!』

『砂藤も驚異の怪力を見せたが、それを多彩なアイテムを使った八百万が上回った! っていうか、最後のアレは一体何なんだぁ!?』

『たしか、米軍が非致死性兵器として研究している機動阻止システムだな。大雑把に言えば、相手の動きを封じる事で、戦闘不能にする類の物だ』

『なるほどぉ! あらゆる知識を網羅するクールビューティな八百万百に、エビバディクラップユアハンズ!!』

『おい、私情入り過ぎだ』

 

 まさか、米軍が研究中のシステムまで網羅しているとはな…八百万の知識は1-Aでも随一と言って良いだろう。

 

 

 続いての第6試合だが…これは何と言うべきなのか…。

 発目の口車に乗せられた飯田が、全身にサポートアイテムを装着して現れた時点で嫌な予感はしていたが…。

 始まってしまえば、それはまさに発目の独壇場。向かって来る飯田をのらりくらりとかわしながら、自身の開発したアイテムのプレゼンを繰り広げ―

 

「もう思い残す事はありません。降参します」

 

 やりたい放題やった後は、さっさと降参してしまった。

 

「発目君! 騙したなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ………うん、飯田。ドンマイ。

 

 

 サポートアイテムのプレゼン会場になってしまった第6試合とは一転、第7試合は凄まじい打撃戦となった。

 切島とB組の鉄哲。『硬化』と『スティール』という似た“個性”を持つ2人は、初対面の時から互いに対抗意識を燃やしていたらしく、開始早々闘技場の中央で足を止めての殴り合いを開始したのだ。

 

「てめぇにだけは負けねぇぞ!」

「それはこっちの台詞だ!」

 

 前の試合とは全く違う派手な殴り合いに、大いに盛り上がる観客。だが、1-A(おれたち)は知っている。

 あからさまな防御こそしていないが、切島は鉄哲の攻撃を肩や肘などを上手く使って受ける事で、自身の受けるダメージを軽減している事を。そして、その積み重ねは-

 

「ぐぉぉぉっ! こ、拳が!」

 

 先に鉄哲の拳が限界を迎えるという形で結果を出した。

 

「もらったぜ! 鉄哲!」

 

 そして、その隙を見逃さなかった切島は鉄哲に飛びつき―

 

「うぉぉぉりゃぁぁぁっ!」

 

 お手本のような飛びつき式腕挫十字固を決める!

 

「ギ、ギブアップ…」

「鉄哲君、降参!! 切島君、2回戦進出!!」」

「よっしゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

 熱い戦いを見せてもらったぜ、切島。さぁ、次はいよいよ出久の試合だ。相手は耳郎…決して油断は出来ない相手だ。

 

 

出久side

 

『1回戦第8試合!』

『第1種目第2種目共に1位通過! 1-Aトップ3の1人! ヒーロー科、緑谷出久!!』

(バーサス)! ! パンキッシュなロックガール! ヒーロー科、耳郎響香!!』

『レディィィィィイッ! スタート!!』

 

 実況(プレゼント・マイク先生)の声と同時に、耳郎さんは僕へ一直線に向かって来た。

 ヒーローコスチュームを纏っていない耳郎さんは、遠距離からの衝撃波攻撃を行えない。僕を仕留めるには接近戦しかないんだ。

 今迎撃するのは簡単だけど…僕はあえてそれをしない。正面から迎え撃つ!

 

「やぁぁぁっ!!」

 

 凛々しい声と共に耳郎さんが連続で繰り出してくる手刀を捌き続ける。この鋭さ、気合と相まって、決して侮れない威力だ。

 

「ッ!」

 

 背中を走る悪寒、咄嗟にその場を飛び退けばコンマ数秒の差で、耳郎さんのコードが僕のいた位置を通過した。

 危ない…障子君の『複製腕』より数は少ないけど、その分タイムラグもなくコントロール出来ている。これは…要警戒だぞ。

 

「流石だね、緑谷。でも、いつまでも避け続けていられる?」

 

 正面からは耳郎さん、左右からはコード。事実上3対1の戦い…この状況を打破するには-

 

「これだ!」

 

 僕は耳郎さんの攻撃が途切れる僅かな隙をついて、全力でジャンプ!

 

50CALIBER(フィフティーキャリバー)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 ()()()へ向けて空中を思いっきりぶん殴った! 直後、強烈な衝撃波が闘技場に炸裂し、着弾点を中心に猛烈な暴風が放射状に発生! そして-

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 

 耳郎さんはその暴風に耐え切れず、場外へと吹き飛ばされていった。

 

「耳郎さん、場外!! 緑谷君、2回戦進出!!」

『果敢に攻めた耳郎だったが、勝利したのは緑谷! ちゅーか、何ちゅう力ずく!』

『とにかく! これで1回戦全8試合が終了! 休憩を挟んで2回戦の開始は15分後だ! ドンビーレイトォ!』

 

 実況(プレゼント・マイク先生)の声を聞きながら、僕は闘技場の外で座り込む耳郎さんに駆け寄っていた。

 

「えっと…耳郎さん」 

「あーあ、少しはいけると思ったんだけどなぁ…っていうか、緑谷…無茶苦茶すぎ」 

「え、あ、その…ごめんなさい」

「なんで謝んのさ。これでも感心してんだよ?」

 

 無茶苦茶すぎるという評価が、感心している事になるのか…女の子の心理はまだよく解らないなぁ。

 

「とにかく、ここまできたら優勝しなよ? でないと負けたウチの立場ないから」 

 

 そう言いながら、僕の胸を軽く拳で叩く耳郎さん。そうだ…勝ち進むという事は負けた人の思いを背負うという事。耳郎さんの為にも無様な試合は見せられないぞ。

 

「うん、全力で頑張るよ。耳郎さんの為にも」

「う、うん…期待、しているから」

 

 何故か顔を赤くしながら行ってしまった耳郎さん。変な事は言っていない筈だけど…やっぱり女の子の心理はよく解らない。

 そんな事を考えながら、ここまでの試合結果を確認する。優勝まではあと4勝か。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 オールマイトとの約束を果たす為にも頑張らないと…僕は改めて気合を入れるのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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