出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
短いですがお楽しみ頂ければ、幸いです。
出久side
「諦めた方が良いね」
「この世代じゃ珍しい…何の“個性”も宿っていない型だよ」
4歳の誕生日に、医者から告げられたその言葉で僕、緑谷出久の人生は最悪なものになる事が決定した。
世界全人口の8割が何かしらの“個性”を持つ現代において、“無個性”で生まれてきた者がどのような扱いを受けるか、改めて確認するまでもない。
進学、就職、そして結婚。人生のあらゆる選択で大きなハンデを背負い、場合によっては何らかの意見を口にすることすら許されない。
草むらに潜む虫のように、ただただ静かに息を殺して生きていく事を強制される。そんな人生が待ち構えているのだ。
その事実に僕は絶望し、母さんもそんな僕を見て、泣きながら謝り続けた。
絵に描いたような悲惨な光景。だけど…そんな僕達を救ってくれた人がいた。
叔父さ…雷鳥兄ちゃんは、電気と磁気を自在に操るという強力な“個性”を持っているのに、“無個性”の僕が抱いていた夢を認めてくれた。それどころか血判状まで作って、僕を鍛える事を約束してくれた。
雷鳥兄ちゃんのおかげで再び立ち上がる事が出来た僕は、ただひたすらに自分を鍛え続けた。
最初は心配していた母さんも、僕の努力する姿を見て覚悟を決めたのか、全面的に協力してくれるようになった。
瞬く間に月日は流れ、僕は中学3年生になった。
「そのざわざわがモブたる所以だ! 模試じゃA判定!! 俺は
「あのオールマイトをも超えて俺はトップヒーローと成り!! 必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」
ホームルームの途中で机の上に立ち、
たしかに、彼の“個性”は強力で、それを使いこなすだけのセンスもある。でも、それだけだ。人間としての器は雷鳥兄ちゃんの方がはるかに大きい。文字通り月と
「そいやあ緑谷も雄英志望だったな」
そんな事を考えていたら担任がそんな事を口走り、全員の視線が僕に集中した。
「おいおい、委員長。流石に無理っしょ!!」
「ただの人間じゃヒーロー科は入れねえんだぞー!」
周囲から聞こえてくる心配半分、呆れ半分の声。その声に内心ウンザリしながらも反論の為、立ち上がるが―
「こらデク!!!」
僕が喋るよりも早く爆豪君が怒りの形相で右掌を机に叩きつけた。咄嗟に回避するのと同時に机が爆発に包まれ、破壊される。
「“没個性”どころか“無個性”のてめぇが~…何で俺と同じ土俵に立てるんだ!!? 雑用係兼任な委員長やってっからって、調子にのったか? あぁっ!」
返答次第では、いや何と答えてもぶち殺す! そう言わんばかりの顔で、僕を問い詰める爆豪君。はっきり言ってヒーローよりもヴィランの方が似合ってるよ。
「何でって、雄英の入試要項に“個性”の有無は記載されていない。だから“無個性”の僕が雄英を受けてはならないという理屈は存在しない」
「んだと…」
「君は知らなかったみたいだけど、模試なら僕もA判定。試験を受ける権利は僕にもある。合格の判定を決めるのは雄英の先生方なんだ。もしも雄英側がNOと言うなら潔く諦めるよ」
静かに、だがはっきりとした声で爆豪君にそう答え、壊れた机の予備を取りに教室を出る。背後で彼が何か罵詈雑言を叫んでいるが一切無視だ。
机を抱えて戻ってくるとさすがに彼も落ち着いたのか、静かになっており、そのまま授業が開始される。
そして放課後。帰ろうとした僕の前に彼が取り巻き達と共に現れた。
「話まだ済んでねーぞデク」
そう言うと彼は、机に置いていた僕のノートを取り上げ、問答無用で爆破。突然の事に言葉を失う僕を嘲笑いながら、彼は焼け焦げたノートを窓の外へと投げ捨てた。
………器物破損は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金、だったかな。正直、怒りよりも先に憐れみが湧き上がってくる。
「一線級のトップヒーローは大抵、学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な私立中学から初めて!唯一の!『雄英進学者』っつー“箔”を付けてーのさ。まー、完璧主義者なわけよ。つーわけで一応さ、雄英受けるな。ナード君」
こんなみみっちい事を言っている彼を見ていると、頭の中が氷点下並に冷え、思わず溜息が漏れる。だけど、彼らはそれを別の意味に受け取ったのだろう。
「いやいや…さすがに何か言い返せよ」
「言ってやんなよ。かわいそうに中3になってもまだ彼は現実が見えていないのです」
そんな事を口にしながら教室を後にしていく。そして―
「そんなにヒーローに就きてんなら、効率良い方法あるぜ。来世は“個性”が宿ると信じて…屋上からのワンチャンダイブ!!」
その言葉を聞いて、僕は改めて決心した。何としてでも雄英に合格し、こいつの鼻を明かしてやろうと。
学校を後にした僕は町外れの倉庫に顔を出し、そこで2つ隣の駅から電車で移動してきた雷鳥兄ちゃんに合流していた。ここは雷鳥兄ちゃんがお爺ちゃんの伝手を使って、格安で借りている秘密の練習場。
ここで僕達2人は将来の為に秘密特訓を行っているのだ。
「なるほど…よく耐えたな。出久」
準備運動をしながら学校の出来事を話すと、雷鳥兄ちゃんは笑顔で僕の髪の毛をワシワシと撫でてくる。年は3ヶ月しか離れていないけど、こういう所は叔父と甥なんだなと思う。
「しっかし、器物破損に自殺教唆…そいつホントにヒーロー志望か? ヴィラン志望と言ったほうがシックリくるぞ」
「一応ヒーロー志望だよ。高額納税者になるとか、将来設計はみみっちいけど」
「みみっちいねぇ………出久、一応確認なんだが…」
「何?」
「お前が望むなら、その爆豪とかいうクソガキ、俺が潰してもいいぞ」
「いっ!?」
「通り魔のヴィランにでも襲われた事にして…骨の4、5本でもへし折ってやれば、大人しくなるか? いや、いっその事、脳に過度の電流を流して…」
「いやいやいや、いいよ! 雷鳥兄ちゃん! そんな事しなくて! アイツなんかの為に兄ちゃんが罪を犯すなんて馬鹿らしいから!!」
「おいおい、本気にするなよ。軽い冗談だ」
そう言って準備運動を終えた雷鳥兄ちゃんは、笑いながら縄跳びを取りに倉庫の一角へ移動していった。軽い冗談。雷鳥兄ちゃんはそう言っていたけど…僕にはわかる。
「あの目は…
雷鳥side
軽い冗談と言ってごまかしたが…本当の所は
あの時、出久が俺を止めるのを少しでも躊躇したり、同意していたら…俺は即座に爆豪を潰しに行っていただろう。だが…
「出久がああ言ったから、今回は大目に見てやる。よかったな、爆豪なんとか…寿命が延びたぞ」
静かにそう呟き、縄跳びを開始する。如何に強力な“個性”を持っていようと、使いこなせなくては何の意味もない。体作りは大切なのだ。
余談ではあるが、10年以上の鍛錬によってヒロアカ原作では165cm程度だった出久の体格は大きく様変わりしていた。
身長174cm、体重71kg。ボクシングの階級で言うならミドル級ってところか。
ちなみに俺は176cm、73kg。スーパーミドル級に該当する。
縄跳びや鏡の前に立ってのシャドー、筋トレなどをみっちりとこなし、本日最後の練習の時間となった。
「出久。今日の仕上げだ」
出久にそう告げ、俺はリングに上がる。今からやるのはそう…組み手だ。
「時間は通り5分間。“個性”の使用と金的、目潰しはなしで、あとは何でもあり」
「いつも通りのルールでしょう? わかってるよ、雷鳥兄ちゃん」
「まぁ、念のための確認だよ。それじゃあ…始めるか」
「うん!」
その直後、予めセットしておいたタイマーが鳴り、俺と出久は様子見をする事なく、互いに突っ込んだ。
「出久も強くなったなぁ」
倉庫からの帰り道、俺は後ろをついてくる出久を見ながら、そんな事を口にしていた。
「そうかな? でも、雷鳥兄ちゃんにはまだまだ敵わないよ」
「当たり前だ。少なくともあと4年は、お前の前に立ちはだかる壁になってやるよ」
「4年ってことは…雄英を卒業するまで?」
「最低でもな」
そんな他愛もない事を話しながら、駅への道を進む俺達。その途中高架下に差しかかったその時―
「Mサイズの…隠れミノ…」
そんな声と共にマンホールからヘドロ状の何かが湧き出て、俺達に覆い被さってきた。
「っ!」
前にいた俺はギリギリ回避が間に合ったが、後にいた出久はヘドロに纏わりつかれ、もがき苦しんでいた。
「出久! このヘドロ、ヴィランかよ!」
ヘドロヴィランに捕らわれた出久に何とか近づこうとするが、なかなか上手くいかないまま時間だけが流れていく。
「大丈ー夫。
ヘドロヴィランの言葉を聞きながら、俺は必死に考えていた。
たしか、原作では出久がこのヘドロヴィランに襲われたのは日没前だった筈。だから、夜の今なら大丈夫だと思っていたが…俺が何か忘れていた? くそっ、こんな事ならもっとしっかり原作を読み込んでおくべきだった!
「仕方ない…正当防衛だ」
原作と違う展開になった今、『彼』の助けは期待できない。だったら!
覚悟を決め、“個性”を発動しようしたその時!
「もう大丈夫だ、少年!!」
「!?」
「私が来た!」
マンホールの蓋を吹き飛ばし、巨大な影が飛び出して―
「
拳の一撃、それも直接当ててすらいない風圧でヘドロヴィランを吹き飛ばし、出久を助け出していた。
「出久!」
おそらく気絶したであろうヘドロヴィランを回収する彼を尻目に、俺は出久へ駆け寄り、状態を確認する。呼吸、脈拍…どちらも異常なし。外傷…なし。意識は…。
「ん…んん…」
それから10秒もしないうちに目を覚ます出久。その視線の先には俺と…。
「トぁあああ!!?」
「いやあ悪かった!!
HAHAHA! と笑うNo.1ヒーロー、オールマイトの姿があった。
これが俺達とオールマイトとの初めての出会いだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。