出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第36話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

また、掲載に伴い、キャラクター設定集の改訂を行っております。


第36話:雄英体育祭! 最終種目!!ー決勝その2&表彰式ー

出久side

 

 -お前なら、俺の『予知』程度簡単に突破できる筈だぜ。さぁ、勝利の法則を掴んでみな-

 

 雷鳥兄ちゃんの不敵な笑みを見た瞬間、そんな事を言われた気がした。

 思わず両手で頬を叩き、気合を入れ直す。そうだ、相手は雷鳥兄ちゃん。この位の事はやってきて当然。

 そして、雷鳥兄ちゃんがあんな笑みを見せるという事は…攻略する方法が必ずあるという事だ。

 

「来ないのか? 出久…なら、こっちから行くぜ!」

 

 そんな事を考えている間に、雷鳥兄ちゃんの方から徐々に間合いを詰めてきた。ゆっくり考えるような時間はない…だったら―

 

「細かい事は、動きながら考える!」

 

 両足に力を込め、最初から最高速で走り出す。一気に間合いを詰めて、右の手刀を連続で振るう!

 

BAYONET(ベイオネット)スラッシュ!」

「ライトニングスラッシュ!」

 

 互いの手刀が幾度かぶつかりあい、どちらからともなく距離を取る。

 …駄目だ。攻撃の最中に腕や足、視線まで使って複数回フェイントを仕掛けたけど、雷鳥兄ちゃんは全く反応しない。『予知』で最終的な行動が解っているから、反応する必要がないんだ。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 円を描くように雷鳥兄ちゃんの周囲を高速で動き回り、フィンガースナップの衝撃波を撃ちまくる。その全てが電磁バリアで防がれるけど、足止めと考える時間を稼ぐ事は出来る!

 考えろ! 考えろ! 考えろ! 近距離(格闘)遠距離(射撃)も通用しない今、10年以上続けてきた分析が最後の武器だ!

 雷鳥兄ちゃんの『予知』は相手の生体電流を読み取る事で、その行動を事前に知る事が出来るという物。

 生体電流は微弱な物だから、感知出来る距離は…長くて精々数m。格闘戦の間合いでしか使う事が出来ないと見て、間違いない。

 もっとも、雷鳥兄ちゃんの“個性”『雷神』は遠距離戦も平均以上にこなせる。『予知』が使えなくても問題は無いだろう。 

 それにしても、格闘戦限定とはいえ相手の次の行動が丸解りになるというのは…正直言って反則の領域だ。相手が放つ攻撃のパワー、スピード、タイミングが予め解っているならカウンターが取り放だ………ん?

 

「予め解っている…もしかしたら…」

 

 脳裏に浮かぶ1つの仮説。確証は無い。だけど試す価値は十分にある。

 

「よし!」

 

 衝撃波の連射を止め、ゆっくりと構え直す。すると雷鳥兄ちゃんも僕の意図を察したのか、バリアを解除して構え直してきた。 

 

「改めて…勝負!」

 

 全速力で間合いを詰め、格闘戦に持ち込む。この仮説が正しければ、雷鳥兄ちゃんの『予知』を突破出来る筈だ!  

 

 

雷鳥side

 

 ゆっくりと構え直す出久の姿に何か思いついた事を察し、電磁バリアを解除して構えを取る。

 ………まずいな。出久の思いつきが何なのか楽しみで、笑みを止められそうにない。

 

「改めて…勝負!」

 

 声と共に真っ直ぐ突っ込んでくる出久。さぁ、来いよ。お前の解答を見せてみろ!

 

PARABELLUM(パラベラム)スマッシュ!」

 

 咆哮と共に放たれる連打を『予知』を使って捌いていく。左の5連打から右フック、その勢いを利用して左のバックハンドブロー。全て『予知』の通りだ。そして!

 

「カウンター、いただき!」

 

 最後に放つのは、右ストレート! これに合わせてカウンターを放つ! だが―

 

「がはぁっ!」 

 

 吹き飛んだのは俺。これまで100%の確率で成功していたカウンターが失敗したのだ。

 

「なんのっ!」

 

 空中で3回ほど回転し、闘技場に叩きつけられそうになるが、ターボユニットの応用で何とか体勢を立て直し、着地する。これは…いや、まだ判断するには早いな。

 

「ふぅ、ラッキーパンチを食らうとは、ちょっと油断しちまったかな。だが、2度目はないぜ」

 

 あえて軽口を叩きながら、出久を挑発。攻撃を促し―

 

「わかってるんだよ! お前の攻撃は!」 

 

 先程と同じように捌いていく。そして―

 

「はぁっ!」

「これだっ!」

 

 カウンターの一撃を囮にして、放たれた出久の攻撃を最大出力の電磁バリアで防御!

 

「…しまった!」

「やっぱりな…」

 

 ギリギリ持ち堪えたバリア越しに浮かぶのは、俺の不敵な笑みとどこか悔しさの滲む表情の出久。 

 

「出久、『フルカウル』の出力を上げたな! それもホンの一瞬だけ!」

「………」

 

 俺の言葉に出久は何も答えない。だが、この場合…沈黙は正解とみなされるぜ。

 

 

プレゼント・マイクside

 

「おぉぉぉっと! 緑谷が吸阪の『予知』を破ったと思ったら、吸阪も負けじとそのメカニズムを看破したぁ! っていうかイレイザー! 出力を上げたとか何とか言っていたが、どういう意味だよ?」

「………緑谷の“個性”『フルカウル』は、全身にエネルギーを纏う事で、身体能力を爆発的に高める“個性”。だが、その増幅率は一般的な増強系の“個性”とは文字通り桁違いのレベルで、10年以上鍛えてきた緑谷でも、“個性”を全開に発動する事は、体の激しい損傷と引き換えにしなければならないそうだ」

「その為、普段は自壊しない程度(・・・・・・・)かつ安定して発動出来る(・・・・・・・・・)出力で運用している」

「一方、吸阪の『予知』は相手の生体電流を読み取る事で、相手が次に取る行動を把握出来る。相手の行動が前以って把握出来ているから、発動を潰す事もカウンターを取る事も自由自在だ。想定外(・・・)の事さえ起きなければな」

「想定外? イレイザー、勿体ぶってないで説明しろよ」

「………簡単な事だ。緑谷は吸阪に『予知』されてから、実際に攻撃を発動するまで…それこそコンマ数秒の間だけ、自身の“個性”の出力を引き上げた。自壊しないが、安定した発動は望めない程度にな」

「…そうか! 100の攻撃が来ると想定しているところに、想定以上の…例えば105の攻撃が来れば、対応が遅れるか、最悪対応出来なくなる! なんてこった! 正に究極の後出しジャンケンだぁっ!」

「お前は何を言っているんだ…」

 

 俺の声に続くように 観客席のプロヒーロー達からも驚きの声が上がり始める。あんな芸当、プロでも出来る奴はそう多くないから、無理もない。

 だが…あの吸阪雷鳥の表情から焦りは感じられず、むしろ余裕さえ感じられる。そう、まるでまだ切り札(・・・)を持っているように…。

 

 

出久side

 

「出久! よく俺の『予知』を突破した! ここまでは流石だと褒めておこう!」

 

 電磁バリア越しに、どこか芝居がかった口調で僕を褒める雷鳥兄ちゃん。素直に嬉しいと感じる反面、間違いなく何かを企んでいる事に警戒心が治まらない。

 

「だが…『予知』を破った位で俺に勝てると思っていたら、大間違いだぜ! 見せてやるよ。これが俺の切り札(ジョーカー)だ!」

 

 次の瞬間。雷鳥兄ちゃんの全身から噴き出す電撃に、思わず距離を取る。嵐のように吹き荒れた電撃はすぐに治まり…。

 

「今の内に言っておく…コイツはそう長い時間使える訳じゃない…5分…いや3分持ち堪えたら、お前の勝ちだ!」

 

 青白いスパークを全身から迸らせた雷鳥兄ちゃんが姿を現した。

 

「じゃあ、いくぜ…Are You Ready(準備はいいか)?」

「いつでも!」

 

 僕がそう答えた瞬間、雷鳥兄ちゃんは軽く左手を動かして、姿を消した(・・・・・)。馬鹿な! コンマ1秒だって、雷鳥兄ちゃんから目を離してなんか…。

 

「ここだよ」

「っ!?」

 

 次の瞬間。背後から聞こえた声に振り替える間もなく―

 

「ダブルライトニングボルトォ!」

 

 僕は脇腹に強烈な衝撃を受け、派手に吹っ飛ばされていた。

 

  

雷鳥side

 

「ふぅ…」

 

 闘技場の中央から端まで吹っ飛んでいった出久を見ながら、諸手突きの構えからゆっくりと戻していく。

 最後の切り札として用意しておいたこの技。出久の『フルカウル』を参考に、全身の強化を図ってみた訳だが…まぁ、実戦初使用としては、上出来と言えるだろう。 

 もっとも…出久の『フルカウル』。そして『ワン・フォー・オール』の様に身体能力を超絶的に強化出来た訳じゃない。

 ぶっちゃけた話、身体能力の強化は精々3倍弱。一般的な増強系の“個性”の方が、増幅率は上と言って良い。

 この技の本質は神経系(・・・)の強化。反応速度や脳の処理速度を大幅に向上出来た点にある。だから、左手を軽く動かす程度の簡単な視線誘導(ミスディレクション)で作った、コンマ数秒にも満たない隙を突いて、出久の背後に回り込むなんて芸当が…。

 

「ん?」

 

 闘技場に落ちた血で、鼻から出血している事に気づく。

 

「…体への負担が想定よりも大きいか。こりゃ3分もたないと考えた方が良いな」

 

 右の拳で鼻血を拭い、自嘲気味に呟いていると―

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 

 気合の咆哮と共に出久が立ち上がった。その全身に迸るエネルギーから見て、『フルカウル』の出力を限界(35%)の更に上。体を自壊しない半歩手前…推測だが38…いや40%まで高めたな。

 

「はぁっ!」

 

 次の瞬間、闘技場が抉れる程の踏み込みと共に、出久が間合いを詰めてきた。

 傍から見れば、瞬間移動したかのようなスピード。ここまでくると『予知』で把握出来たとしても、速過ぎて(・・・・)対応が追いつかない。

 

「っとぉ!」

 

 事実、脳の処理速度が向上した関係で周囲がスローに見えている今ですら、気を抜けないレベルだ。細心の注意を払いながら、出久の攻撃を捌き―

 

「ライトニングプラズマァ!」

 

 連打(ライトニングプラズマ)を放つが―

 

「ぐほっ…」 

 

 出久も然る者。自らの被弾と引き換えに、強烈な一撃をボディに叩き込んできた。こっちの5発分を1発で帳消しにするような威力に、体が『く』の字に折れ曲がりそうになるが、気合で何とか堪える。そこへ―

 

「もらった!」

 

 俺が後退した事を勝機と捉えた出久が、追い打ちを仕掛けてきた。

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 放たれたのは出久の十八番(おはこ)。当たれば間違いなくKOだが…。

 

「焦ったな! 出久!」 

 

 そんな大技を黙って食らう程馬鹿じゃない。紙一重で攻撃をやり過ごし―

 

「ライトニングブラストォ!」

 

 カウンターの中段回し蹴りを叩き込む! 出久は吹き飛んでいくが、踏み込みが僅かに足りなかったのか、手応えが小さい。あれでは決定打には至らないだろう。

 

「ま、だ…だぁ!」

「やっぱりな…」

 

 振り絞るような声と共に立ち上がる出久の姿に、自分の推測が正しかった事を確認する。そして―

 

「そろそろこっちは時間切れだ…」 

 

 再び流れ出した鼻血に加え、耳や目からも微かな出血が始まった事に時間切れ(タイムアップ)が近い事を悟る。やれやれ3分どころか2分半程度しか持たないか。要改良だな、この技も…。

 

「これが最後の勝負…」

 

 静かに呟き、ゆっくりと構えを取る。それを見て出久も俺の意図を察したのだろう。静かに頷き、構えを取ってくれた。

 

「いくよ! 雷鳥兄ちゃん!」

「こい! 出久!」

 

 俺達は同時に走り出し―

 

50CALIBER(フィフティーキャリバー)!」

「ライトニング!」

「スマァァァァァッシュ!!」 

「ソニック!!」

 

 互いの最強必殺技を発動! 正面からぶつかり合った俺達は共に吹き飛び、場外(・・)へと落下した。

 

『おぉーっと! 両者の必殺技がぶつかりあった結果、同時に場外へ落下! これはどうなるんだぁ!? 主審のミッドナイト! 裁定をプリーズ!』

『…両者同時に場外へ落下した為、先に立ち上がり、勝ち名乗りを挙げた者を勝者とします!!』

 

 実況(プレゼント・マイク先生)主審(ミッドナイト先生)の声が響くと同時に、俺は残る力の全てを両足に込め、ゆっくりと立ち上がる。だが―

 

「うぁぁぁぁぁっ!」

 

 俺よりも早く、出久も立ち上がった。ゆっくりと右手を掲げ、勝ち名乗りを挙げていく。万事休すか…。

 

「僕の!」

 

 誰もが出久の勝利を確信した直後、勝利の女神が気まぐれを起こした。

 

「勝、ち…っぐぅ…」 

 

 勝ち名乗りを最後まで挙げることなく崩れ落ち、膝をつく出久。

 もはや体が限界だったのか。それとも勝利を確信して僅かに気持ちが緩んだ事で、堪えていたダメージが一気に噴き出したのか。

 真相はわからない。恐らく、出久自身にも。

 とにかく俺は、再び立ち上がろうとした出久よりも先に立ち上がると、右手を掲げ―

 

「俺の! 勝ちだぁぁぁっ!」

 

 高らかに勝ち名乗りをあげた。

 

「勝負あり! 勝者、吸阪君!」

『激闘、遂に決ちゃぁぁぁぁぁっく!! 今年度雄英体育祭1年優勝は! A組吸阪雷鳥!!』

 

 主審(ミッドナイト先生)の声、そして実況(プレゼント・マイク先生)の声と観客の大歓声を聞きながら、俺は立ち上がろうとする出久に駆け寄り、そっと手を貸す。

 

「ありがとう。雷鳥兄ちゃん……また、勝てなかったな」

「いや、今回は今までで一番苦戦したよ。正直、最後の勝負にお前が乗ってくれなかったら、俺が負けてた。正に紙一重って奴さ」

 

 悔しさを隠すように笑う出久の言葉にそう答えながら、俺は今回の勝因を思い返す。

 勝因は大きく分けて2つ。1つは攻撃に纏わせていた電撃が、多少なりとも出久に影響を与えていた事。そしてもう1つは最後の激突で選択した技の種類だ。

 俺は蹴り(ライトニングソニック)を選択し、出久は突き(50CALIBERスマッシュ)を選択した。威力の面では出久に軍配が上がるが、リーチでは俺の方に分がある。

 相打ちではあったが、リーチで勝る俺の蹴り(ライトニングソニック)の方が僅かに深く、出久の突き(50CALIBERスマッシュ)が僅かに浅く入った。これが互いのダメージに幾らかの影響を与え…結果的に俺が勝利したわけだ。

 改めて考えると薄氷の勝利にも程があるな…。今後の為にも立ち回りなんかを考えていかないと…。

 出久に肩を貸しながら控え室へと向かう間、そんな事を考える俺だった。

 

 

「それではこれより! 表彰式に移ります!」

 

 無数の花火と歓声の中、ミッドナイト先生の進行で始まった表彰式。表彰台の3位には轟、2位には出久、そして1位には俺が、各々なりに堂々とした表情で立っている。

 

「本来なら3位にはもう1人、飯田君がいるんだけど…ちょっとお家の事情で早退になっちゃったので、ご了承下さいな」

 

 マスコミのカメラに向けて、セクシーポーズを決めながら飯田の不在を告げるミッドナイト先生。八百万の話では、決勝戦の直前に飯田の親御さんから連絡があり、急遽早退する事になったそうだ。何事も無ければいいんだが…。

 

「それでは、メダル授与よ!」

 

 おっと、メダル授与か。気持ちを切り替えないとな。

 

「今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!」

「私が! メダルを-「我らがヒーロー! オールマイト!!」-きた…」

 

 …見事に被ったな。格好良く登場したオールマイトだったが、これじゃグダグダだよ…。

 まぁ、一瞬凹んだものの、すぐに持ち直したオールマイトがメダルを手に、俺達へ順番に声をかけていく。

 

「轟少年、おめでとう。炎と氷を自在に操り戦う姿は実に美しく、そして強かった。見事だ!」

「ありがとうございます。親父…エンデヴァーの後継者として相応しいヒーローになれるよう、これからも頑張っていきます」

「うむ! 君なら必ずや、素晴らしいヒーローになれるだろう!」

 

 轟へのメダル授与を終え、出久の前に立つオールマイト。

 

「緑谷少年。最後は残念だったね」

「オールマイト…」

「だが、君の実力は多くの人が認めるところだ! これからも努力を重ねていきたまえ! 君なら必ず強さの極みに至る事が出来るだろう!」

「…はい!!」

 

 出久の首に銀メダルをかけ、ハグをしたオールマイト。遂に俺の番か。

 

「そして最後! 堂々1位の吸阪少年! 優勝おめでとう!」

「ありがとうございます!」

「今回のA組の快進撃も、きっかけは君の音頭だと聞いているよ。強さだけでなく、人を導く力もまたヒーローには必要なもの! これからの活躍も期待しているよ!」

「はい!」

 

 オールマイトが首に提げてくれた金メダルを手に、優勝したことを改めて実感する。長い戦いだった…。

 

「さァ!! 今回は彼らだった!! しかし、皆さん! この場の誰にも、()()に立つ可能性はあった!!」

「今表彰台に立つ者達の順位も、何かの拍子で変わっていた可能性も十分あった!! ご覧いただいた通り、競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」

 

 高らかに響くオールマイトの声に、俺達を含む全1年生が大きく頷き、観客席からも歓声が上がる。

 

「そして! ここからは個人的な話をひとつ!」

 

 …ん? ()()()()()だと…。なんだか猛烈に嫌な予感が………。

 

「ここにいる緑谷出久、そして吸阪雷鳥は…私の弟子です!!」

「えっ!?」

「はっ!?」

 

 オールマイトの突然すぎるカミングアウトに、その場にいる全員…当然俺達も驚きを隠せない。

 

「オールマイト、カミングアウトがいきなりすぎるでしょう! こういう事は、相応の手順ってものをですねぇ!」

「HAHAHA! いずれはバレる事なんだ。だったら早いに越した事はないだろう?」

 

 ………あー、そうだ。この人は理屈じゃなくて感覚で動く人だった。こりゃ、色んな意味で覚悟を決めるしかないな…、

 

「さて…私の弟子という事で、この2人に何らかの忖度があったと考える人もいるかもしれません! しかし、それは絶対に無い! という事を私、オールマイトの名に懸けて宣言いたします!」

「彼らは近い将来、私の後継者としてその名を世間に轟かす事になるでしょう! そして、先程も述べたように才能溢れる金の卵達は着実に育っている! てな感じで最後に一言!!」

「皆さんご唱和ください!! せーの!!」

「「「プル」」」

「「「プルス」」」

「「「Plus」」」

「おつかれさまでした!!」

「「「「「…そこはプルスウルトラでしょう!!」」」」」

 

 …最後の最後でやらかしてしまったオールマイトに飛び交うブーイング。こうして雄英体育祭は幕を下ろすのだった。

 

 

爆豪side

 

「ここにいる緑谷出久、そして吸阪雷鳥は…私の弟子です!!」

 

 オールマイトの発言を聞いた瞬間、俺は頭の中が真っ白になり…同時に心の中で何かが壊れた気がした。

 そうかよ…そういう事かよ…デクだろうと“没個性”野郎だろうと、オールマイトの指導を受ければ強くなれるって訳かよ。卑怯な裏技なんか使いやがって…。

 オールマイトもオールマイトだ。なんで、デクや“没個性”野郎なんかを…ナンバー(ワン)ヒーローの目は節穴かよ!

 見返してやる…調子に乗ってるデクも! “没個性”野郎も! オールマイトも!

 呑気に『Plus Ultra』なんてほざいてる奴らを尻目に、俺は心にそう誓った。ナンバー(ワン)になるのは俺だ!!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回から短編を少々挟み、職場体験編に突入いたします。

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