出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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短編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第36.9話:休日の一幕。そして…

雷鳥side

 

 雄英体育祭の表彰式で、オールマイトが俺達の事を弟子であると公表した事により、世間は正に蜂の巣をつついた様な騒ぎになった。

 マスコミの皆さんは考えられるであろう全ての手段を駆使して、俺と出久の個人情報を調べ上げ…19時のニュースが始まる頃には、俺が姉さんと出久の家に居候している事や、姉さんが人気小説家の碧谷鸚鵡である事まで白日の下に晒してくれた。

 雄英高校が正式なルートを使って強く抗議してくれた事と、深夜にオールマイトがいきすぎた報道の自粛を求める会見を開いた事で、とりあえずは落ち着いたが…パパラッチの類は諦めずにここを見張っているだろう。

 

あの人(オールマイト)、こうなる事予測してなかったんだろうなぁ…天然な所あるし」

 

 溜息混じりに呟きながら、焼きあがったフレンチトーストを皿に盛り付ける。

 

「よし、完成」

 

 出来上がった朝食をテーブルに並べ―

 

「「「いただきます」」」 

 

 俺達3人は揃って朝食を食べ始める。ちなみに朝食のメニューは―

 

 ・フレンチトースト

 ・ミネストローネ

 ・ベーコンとホウレン草のソテー

 ・フルーツヨーグルト

 

 以上4品だ。

 

「出久、雷鳥。今日は私も完全オフだし、どこかに遊びに行く?」

「そうしたいけど…多分、出先でマスコミか野次馬に囲まれる事になると思うよ」

「間違いなくそうなるな…暫く経てば落ち着くだろうけど」

「そう…ナンバー(ワン)ヒーローの弟子も大変ね…」

 

 姉さんの小さな溜息が地味に辛い…。弟と息子がナンバー1ヒーロー(オールマイト)の弟子であるといきなり聞かされた上に、少しの間とはいえ無遠慮なマスコミから取材依頼が殺到したから、余計なストレスがかかっているんだよな…。

 少しでも姉さんに元気になってもらわなければ…よし。 

 

「まぁ、そういう訳だから、今日は1日のんびりしようぜ」

「姉さん、昼に食べたい物ある? 何でも作るよ」

 

 俺に出来るのは料理くらいだ。姉さんの食べたい物作って、喜んでもらうとしますか。

 

「そうね…何か麺料理が食べたいわ」

「麺か…うどん、蕎麦、パスタ…あとは、ラーメン」

「ラーメン…うん、ラーメンが良いわ。スッキリした醤油ラーメンを希望します」

「心得ました」

 

 

 朝食を終え、食器の片付けを終えた俺は出久を伴い、近所の商店街へ買い出しに繰り出した。

 

「えーと…鶏ガラスープは、この前作って冷凍しておいたやつが有ったし、煮卵は一昨日作っておいたやつが有ったから…」

 

 頭の中でレシピを照合し、買う物をピックアップしていく。あ、ついでに夕飯の買い物も済ませておくか。

 

「出久、夕飯何が食べたい?」

「うーん、昼にラーメンだから…中華繫がりで餃子!」

「良いチョイスだ」

 

 他愛も無い話をする間も道行く人達から話しかけられたり、スマホのカメラを向けられるが…まぁ、この程度は仕方ないか。スマイルスマイル。

 さて、ここからは別行動。出久に野菜の買い出しを頼み、俺は肉だ。行きつけの肉屋に到着っと。

 

「おっちゃん、豚バラ500g塊で頂戴。あと豚挽肉も500g」

「毎度! 兄ちゃん、昨日の雄英体育祭見たぜ! 大活躍だったじゃねえか! 同じ町内の人間として、誇らしいぜ!」

「ありがとうございます」

「ほい、豚バラ塊500に豚挽肉500、お待ちどうさん! それからこいつはウチからのお祝いだ! 遠慮せずに食ってくれ!」

 

 ガハハと豪快に笑いながら、おっちゃんは焼き豚の塊をオマケしてくれた。これは…チャーシューを作る手間が省けたな。

 

「ありがとうございます。遠慮なくいただきますね」

 

 思わぬ幸運を感じながら、出久が先行している八百屋に向かっていると―

 

「あら、吸阪ちゃん」

「梅雨ちゃん、ここで会うとは奇遇だね」

 

 梅雨ちゃんとばったり顔を合わせた。はて、梅雨ちゃんのアパートは二つ隣の駅近くだったような…。

 

「図書館に返す本があって、こっちに出てきたのよ。それでお昼ご飯を…と思って、この商店街に来たら、吸阪ちゃんとバッタリ。驚いたわ」

「なるほどね。あ、梅雨ちゃん。昼はもう済ませた?」

「いいえ、まだよ。パンにするかお弁当にするで迷っていたところだもの」

「そっか…だったら、家に来るかい? 姉さんや出久と一緒になるけど、昼飯食っていきなよ」

「ケロ…それは嬉しいけど…吸阪ちゃんのお姉さんや緑谷ちゃんの迷惑にならないかしら…」

「大丈夫大丈夫。出久はそんな事気にしないし、姉さんも歓迎するって」

 

 何故かは解らないけど…姉さん、この前差し入れを持って来た時から、梅雨ちゃんと麗日の事を気に入ったみたいなんだよな…。女同士で何か感じるものがあったのだろうか?

 

「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」

「OK、じゃあ出久と合流しますか」

 

 まぁ、この点は追々考えるとしよう。今は出久との合流が先決だ。そう考えて梅雨ちゃんと共に八百屋へ向かった俺だったが、そこには―

 

「あら、お茶子ちゃん」

「梅雨ちゃん…え、なんで?」

 

 何故か出久と一緒にいる麗日の姿が…出久、どういう事だよ。

 

「うん、実はね…」

 

 出久の話によると、少々ガラの悪い連中に声を掛けられ、困っていた麗日を偶然見つけた出久が、咄嗟に待ち合わせのふりをして助けたらしい。

 

「そうか…出久、よくやった」

「そうね。緑谷ちゃんがいなかったら、お茶子ちゃんに大変な事が起きていたかもしれないわ」

「いや、僕はただ夢中で…ごめんね、麗日さん。勝手に待ち合わせとか言っちゃって」

「う、ううん! 緑谷君のおかげで助かったよ! ありがとう!」

 

 初々しいねぇ…よしこれも何かの縁だ。麗日も昼食に誘うとするか。

 

 

 さて、梅雨ちゃんと麗日を連れて帰宅した訳だが…姉さんは2人の来宅をとても喜んでくれた。

 すぐに姉さん主導でお喋り会が始まり、俺達は台所へ追いやられてしまう。

 

「…ま、いいか。時間も丁度良いし、昼飯作りと参りましょう」

 

 大き目の鍋に冷凍しておいた鶏ガラスープを入れ、火にかけて溶かしていく。十分に温まった所で、カセットコンロの方に移動させて保温しておく。

 並行して、別の鍋にたっぷりのお湯を沸かしておき、中華麺を茹でていく。手打ち麺も出来なくはないが、まだまだ品質が安定しない為、今回は市販品だ。

 麺が茹で上がる30秒前にお湯で温めておいた丼へ、焼き豚のタレとみじん切りにした長葱、少量の胡椒を入れ、熱々のスープを注ぐ。

 そこへしっかり湯切りをした麺を入れ、手早く具を盛り付ける。薄切りにした焼き豚3枚に塩茹でしたホウレン草、ノリにメンマ、そして半分に切った煮卵。 最後に鶏ガラスープを作った時の副産物、鶏油(チーユ)を垂らして完成っと。

 

「雷鳥兄ちゃん、こっちも出来たよ」 

 

 出久の方もラーメンの完成に合わせて、チャーハンを完成させた。具は自家製アンチョビと玉葱、レタスとシンプルだが…これが美味いんだ。

 

「お待たせ、俺特製醤油ラーメンと出久特製のチャーハンセットだ」

「待ってました!」

「凄い…お店のラーメンセットみたいや!」

「ケロケロ、吸阪ちゃんも緑谷ちゃんも流石ね」

「さぁ、熱いうちに食べようぜ。いただきます」

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

 結論から言えば、ラーメンもチャーハンも大好評。姉さんはもちろん、梅雨ちゃんも麗日もペロリと完食してくれた。作った側からすれば、これほど嬉しい事はない。

 

 

 こうして俺と出久は連休の間、家でのんびりと英気を養った訳だが…最後の最後でとんでもない事件が起きてしまった。

 

「雷鳥兄ちゃん!」 

 

 夜、入浴中の俺へドア越しに呼びかける出久の声。その声からは焦りや困惑が滲み出ていて、とても普通の状態じゃない。

 

「どうした!」

 

 咄嗟に湯船から飛び出し、タオルで前を隠しながらドアを開ける。

 

「こ、これ…」

 

 そう言って、スマホの画面を見せてくる出久。そこには相澤先生から1-A全員へ一斉送信されたメッセージが映し出されていて…。

 

「通達。本日付をもって、1-A所属爆豪勝己を…除籍処分とする!?」

 

 おいおい、あの馬鹿は何をやらかしやがった…。

 明日から起きるであろう騒動を想像し、思わず頭を抑える俺だった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回から職場体験編に突入いたします。

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