出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第42話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
峰田side
オイラが職場体験先に選んだのは、新進気鋭の美女ヒーロー。Mt.レディ!
1週間の間に、きっと役得な事やラッキースケベな事もあると期待していたけど―
「ヒーロー活動はね。暇な時間を如何にやり過ごすかが重要なのよ。わかる?」
「は、はぁ…」
開始早々、やらされるのは掃除に買い出し。まるで家政婦扱いだぜ! 畜生、こんなプレイは好みじゃねえよ!
耳郎side
「はぁ、はぁ、はぁ…」
ウチを指名してくれたデステゴロさんの事務所へ、職場体験に来た訳だけど…。
「ヒーローは日々訓練、日々鍛錬…か」
まさかパトロールを常時走って行うとは思わなかった。何とか気合で食らいついたけど、流石にきつい…。
「ほれ!」
なんて事を考えていたら、デステゴロさんがミネラルウォーターの入ったボトルを手渡してくれた。
「あ、ありがとうございます!」
お礼を言って受け取るとキャップを外し、中身をがぶ飲みする。火照った体が一気に冷えていくのが心地良い。
「俺流のパトロール。初体験の奴は大体途中で脱落するんだが、よく付いて来たな! イヤホン=ジャック! 雄英体育祭での活躍は、伊達じゃないって奴だな!」
「いや、ウチなんて全然です。最終種目に参加出来たってだけで…実質、緑谷に一撃で倒されたようなものですから」
「何を言っている。雄英体育祭の最終種目、それに幸運や偶然で参加する事は不可能だって事ぐらい、俺にもわかる。もっと自信を持て!」
「は、はい!」
「まぁ、自信が持てないなら、この1週間で持てるように鍛えてやるまでだ! 気合を入れろよ! イヤホン=ジャック!!」
「よろしくお願いします!」
八百万side
「私が貴女達を何故指名したか…わかってる?」
私とB組の拳藤さんを指名してくださったスネークヒーロー・ウワバミさんに挨拶をする為、都内のスタジオへお邪魔すると、ウワバミさんからそのような質問をぶつけられました。
「それは…」
「私達のヒーローとしての資質を見初めてもらったからでは?」
「もちろんそうだけど…それだけじゃないわ」
「「え?」」
それだけではない…一体どういう意味なのでしょう?
「貴女達が可愛いからよ!」
「「はぁ?」」
ウワバミさんの言葉に、一瞬硬直してしまいましたが…いえ、これはきっと何かの比喩!
プロヒーローとして大切な何か、それを直接伝えるのではなく、比喩表現として伝える事で、私達を試している…きっとそうですわ!
「それじゃあ、これから撮影だから…付いて来てね」
「はい、たんと勉強させてもらいますわ!」
「気張ってんなぁ……」
切島side
「よし! ここまでだ!」
「あ、ありがとうございました!」
ゴミ拾いにパトロール、ついでに来客を想定しての対応訓練やお茶の淹れ方まで、様々な事を体験した後、1日の締めとして、フォースカインドさんと組み手をする事が出来た。
3分間だけの勝負だったけど、流石はプロヒーロー。俺は殆ど何も出来なかった。5発殴られる間に1発殴り返せれたかどうか…要するにボッコボコにされたって事だ!
「
「はい!」
「まぁ、現段階では合格点だ。今のまま鍛錬を続けていけ!」
「はい! ありがとうございます!」
「リアルスティール!」
「はい!」
「お前はまだまだだ! 硬けりゃ良いとでも思っているのか!」
「すいません! フォースカインドさん!」
「ただ硬いだけなら、限界は近い!
「はい! フォースカインドさん!」
硬いだけなら限界は近い。か…少し前まで俺も鉄哲と同じだったからな。考え方を変えてくれた吸阪達に感謝だぜ!
梅雨side
職場体験先に到着早々、私と障子ちゃんは事務所の主であるセルキーさんやサイドキックの1人で監督役に名乗り出てくれたシリウスさん。他のサイドキックの皆さんと一緒に筋トレや走り込み、水上での救難訓練などハードな訓練をほぼ休みなしで行ったわ。
そして、何事もなく今日の予定を終えた訳だけど…。
「
「「はい!」」
「いきなりだが、お前達。料理は出来るか?」
セルキー…船長と呼ぶように言われていたわ。船長からの質問はまさに予想外のものだったわ。
「ケロ…実家では弟や妹の世話をしていたから、家事全般は一通りこなせるわ。船長」
「俺も、簡単なものなら…」
「そうか! それを聞いて安心したぜ!」
私達の答えを聞いて、ポーズを決めながら喜んでくれる船長。何だか…可愛いわ。
「船長! そのポーズは全然可愛くないって言ってるじゃないですか!」
「そうですよ、船長。それじゃ子どもが泣きますって!」
でも、シリウスさんや他のサイドキックの皆さんには不評みたいね。
「えぇい、俺のポーズの事は良いんだよ。肝心なのは、2人は料理が出来るって事だ」
この辺りには飲食店が少ない事や、事件が発生した際に船で現場に急行しなくてはならない事等の理由から、食事は事務所や船内の厨房で作った物を皆で食べる事が慣例となっている。そう船長が教えてくれたわ。
「まぁ、一番の理由は同じ船に乗って、命を預けあう仲間同士、信頼関係を築くには、
「そういう訳でだ。今日の夕飯は
「…船長、質問を良いかしら?」
「なんだ?」
「まず、買い出しに行って良いかどうか、それから夕食の予定時刻を教えてほしいわ」
「買出しに関してだが、一昨日行っているから許可出来ん。まぁ、厨房にある材料で何とかしてくれ。時間は…19時には始められるように頼む」
「今は17時45分。制限時間は75分ね。何とかやってみるわ。ケロケロ」
「うっし、期待しているぞ!」
船長の声と共に厨房へ走る私達。期待に応えられるように頑張るわ。ケロケロ!
時間はあっという間に過ぎて、19時ちょうど。なんとか夕食の用意を間に合わせる事が出来たわ。
「おぉ! なかなか美味そうなもんが出来てるな!
「わかったわ船長。主菜はコロッケの2種盛り。俵型のが卵コロッケ、ボール型がトマトコロッケよ。副菜はキャベツとアンチョビのペペロンチーノ風炒めと、シメジとワカメのポン酢和え、汁物は玉葱とベーコンのスープよ」
「船長、
「ほぅ、そいつはすげぇ。だが、肝心なのは味だ! 食うぞ、お前ら!」
「「「「「はい!」」」」」
「いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
船長の号令で夕食が始まったけど…皆、何故か箸をつけようとせずに船長を注目しているわ。不思議に思っていると-
「この事務所で一番
シリウスさんがそう教えてくれたわ。審査されるなんて、ちょっとドキドキするわね。
「こう見えても、俺はコロッケには一家言あってな」
周囲からの視線を気にする事なく、船長はコロッケに箸を伸ばし-
「トマトコロッケ。どんな物かと思っていたが…なるほど、くり抜いたトマトにコロッケのタネを詰めて揚げた訳か。アイデアは面白いが………うめぇな! これ!」
「噛みしめた途端、半生状態のトマトから果汁が一気に溢れ出し、ホクホクしたじゃがいもをメインにしたコロッケのタネと混然一体となって…こんなジューシーなコロッケは初めてだ!」
「この卵コロッケはどうだ?」
「うぉぉぉぉぉっ! こっちは真ん中に卵サラダを仕込んで揚げてたのか! ソースなしでも十分美味い! こいつはアイデア賞だ!」
「キャベツの炒め物はアンチョビの塩気と唐辛子の辛味が抜群に良いし、この和え物は優しい味わいで箸休めにぴったりだ。そして…うん、スープも良い塩梅だ」
「それでは、船長!
「文句なし! 星3つだ!」
船長の採点を聞いた途端、皆、私達に大きな拍手を送ってくれたわ。ご飯を作ってここまで喜ばれるなんて、なんだかくすぐったいわね。ケロケロ。
そして、皆も食べ始めた訳だけど…皆激しい訓練でお腹が空いていたのね。大盛りの丼ご飯が吸い込まれるように消えていくのにはビックリしたわ。
「おい、お前ら! 美味い美味いと食ってるけどな! お前らもこのくらいの飯を作れるようになれってんだ!
「じゃあ、
「おぉ、シリウス! その手があったな! 2人とも頼めるか?」
「そんな事で良ければ、喜んで」
とは言ったものの…あのコロッケのレシピ。本当は吸阪ちゃんのレシピなのよね。
この前作ってくれたお弁当に入っていて、気に入ったから教えてもらったけど…あとで連絡をしておきましょう。ケロケロ。
黒霧side
「なるほどなァ…お前達が雄英襲撃犯…その一団に俺も加われと?」
「あぁ、頼むよ。悪党の大先輩」
「………目的は何だ?」
ステインとの会談に臨んでいるのが、先生ではなく死柄木弔だという事が不安を煽って仕方ありません。
雄英高校襲撃における敗北。その代償として重傷を負って以来、言動に多少の変化が見られるようになった死柄木弔ですが…内に秘めた巨大過ぎるほど巨大な破壊衝動は、まだまだ健在。ステインの機嫌を損ねるような事になれば…未だ車椅子の死柄木弔を守りながらの戦闘…非常に面倒ですね。
「目的……そうだな。
「………」
「オールマイト…あんなゴミが祀り上げられて…祀り上げないと回っていかないようなこの社会を、更地になるまでぶっ壊す。それが俺の目的だよ」
「だが、今の俺達には力が足りない。俺も今はこの様だ。だから、ヒーロー殺し。あんたの力が必要なんだよ」
おぉ、これは…先生もモニターの先で、さぞお喜びでしょう。さぁ、ステイン。貴方の返答は如何に?
「なるほど…それがお前か…」
「社会を正したい俺と、無に帰したいお前、目的は異なるが…
「お前の中に芽吹いたその歪な信念。それがどう育っていくのか、暫く観察させてもらうとしよう」
「同盟成立…だな。黒霧、酒だ。少々古臭いが固めの盃といこうじゃないか。あいにく俺は、
死柄木弔の言葉に、私は大急ぎでグラスに氷を入れ、店で一番高級なウイスキーを注ぐと2人に渡していく。
「乾杯だ。ヒーロー殺しに」
「
グラスが軽くぶつかる音と共にウイスキーを一気に呷る2人。素晴らしい…貴方の事を見直しましたよ。死柄木弔。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。