出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第44話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
オールマイトside
緑谷少年達が職場体験に出発した日の夜。塚内直正君が私と根津校長に伝えたい事があると、雄英を訪ねてきた。
22時という遅い時間ではあるが、事前に連絡を貰っていた為、その点は問題なかったが…。
「どうしたんだい? オールマイト。ずいぶん酷い顔じゃないか」
「んぐっ!」
私の顔を見るなり、塚内君はそんな事を言ってきた。酷い顔…うん、
「いや…少し前まで、
「エンデヴァーが!? 君に!? ………明日、嵐になったりしないよね? そもそも、用件は一体何なんだい?」
「あ、それは…だね…」
「弟子の育て方に関してのクレームだよ!」
こ、校長! そんなアッサリと!
「育て方の…あぁ、なるほど」
塚内君も! それだけでアッサリ納得しないでくれ!
「いやぁ、所々漏れ聞こえていたけど、エンデヴァーの怒りは至極もっともだね!」
「ぐはっ!」
校長の容赦ない一言に思わず喀血してしまったが…それも自業自得だ。
緑谷少年、吸阪少年の優秀さに甘え、自らの不器用さ、指導者としての未熟さを放置した結果なのだから…。
グラントリノから随分とお叱りを頂いたし…
-オールマイト。ライコウ…吸阪君から聞かせてもらったぞ。貴様、あの才能溢れる少年達に対して、随分と適当な指導しかしていないようだな-
-貴様が何故そんな真似をしているのか、皆目見当がつかんが…後継者の育成では、俺が先を行かせてもらう-
-そして、俺自身も必ずお前を越えてみせる。覚悟しておけ!-
エンデヴァーからも改めて挑戦状を突きつけられてしまった。今更かもしれないが、少しでも指導者として成長出来るように頑張らなければ!
「それで、塚内君。今日
私がそんな事を考えている間に校長が発した問いかけ。それに塚内君は真剣な表情で頷き―
「えぇ、警察として雄英高校に協力を依頼している訳でもありませんので…これは情報漏洩になるのですが…」
「僅かではありますが、黒幕への手掛りが見つかりましたので、オールマイトと根津校長にはお伝えした方が良いと判断し、お伝えに来ました」
来訪の目的を話し始めた。
「オールマイトの弟子である緑谷君と吸阪君。それにエンデヴァーのご子息である轟君の活躍で捕らえる事が出来た、あの脳無という怪人ですが…奴は口がきけない等というレベルじゃない」
「何をしても無反応…文字通りの思考停止状態。素性を調べる為にDNA検査を行ったところ、傷害と恐喝の前科を持つ…まぁ、どこにでもいるチンピラが該当しました」
そう言って、塚内君はそのチンピラの写真を見せてくれたが…その写真に写る顔は、あの脳無とは似ても似つかない平凡な顔つきだった。
「これが、あの脳無かい? 変形型の“個性”だとしても、ここまでの変身は…」
「えぇ、単なる変形型の“個性”ではありません。更に高度な検査を行った所…奴の身体には、
「…………それ、本当に人間かい?」
「更に、薬物の大量投与による肉体改造の形跡も見受けられました。安っぽい言い方をすれば、『複数の“個性”に見合う身体』にされた改造人間」
「脳の著しい機能低下はその負荷によるものだそうだが…本題は、身体の件よりDNA。“個性”の複数持ちの件」
「DNAを取り入れたって、『馴染み浸透する』特性でもない限り、“個性”の複数持ちなんて事になりはしない」
「それは…つまり……」
「オールマイト、『ワン・フォー・オール』を持った君ならわかるだろ…。恐らく、“個性”を与える“個性”の持ち主がいる」
『“個性”を与える“個性”の持ち主』。それを聞いた瞬間、私の中で前々から抱いていた悪い予感が一気に大きくなるのを感じた。アイツが…まだ生きていたのか…。
死柄木side
俺達
固めの盃を交わした後も、暫く酒を酌み交わしながら色々と話をしていたが、ウイスキーのボトルを3本ほど空けた所で―
「…そろそろ保須へ戻るとするか。
そう言って、フラリと立ち上がった。
「保須に? あぁ、そう言えば、1つの街で4人以上のヒーローに危害を加えるのが、やり方だったか」
「そうだ…あの街にはまだ…犠牲がいる。ヒーローとは、偉業を成した者にのみ許される“称号”! 多すぎるんだよ…英雄気取りの拝金主義者が!」
「この世が自ら誤りに気づくまで、俺は現れ続ける」
「なるほど…だったら、同盟を結んだ誼み。
俺はそう言いながらパソコンのモニターに視線を送り―
「先生…」
そう問いかけた。すぐさまモニターが灯り―
『なんだい? 死柄木弔』
先生が答えてくれた。いつもなら声だけなのに、今回は姿を見せてくれた。なるほど、そういう事か。
『ヒーロー殺し、ステイン。初めまして。私はそこにいる死柄木弔の、そう…指導者にして後見人のような者だ。名を…オール・フォー・ワンという』
「オール・フォー・ワン…“異能解放軍”指導者デストロ、稀代の盗人張間歐児に匹敵、いやそれらをも上回る暗黒界の超大物…なるほど、とんでもないバックがついていたものだ」
『本来なら、直に会って挨拶をするのが、礼儀というものなのだが…この通り、気軽に外へ出歩けない身体でね。モニター越しの無礼を許してほしい』
無礼を詫びる先生に、ステインは無言で頭を下げ…2人の顔合わせも無事に済んだ。話を進めるか。
「先生、頼みがある」
『言ってごらん』
「脳無は今、何体出来ている?」
『雄英襲撃時程の奴はいないが…6体までは動作確認完了しているよ』
「6体か、思っていたより少ないな」
『すまないね。とあるルートからスカウトした
「有能な新人?」
『あぁ、君のような
「わかった。それで脳無の事だが…何体か使わせてほしい」
『何故?』
「同盟相手のヒーロー殺し、ステインへの援護に使いたい。ステインの活動開始とタイミングを合わせて、脳無を保須市で暴れさせる。街はパニックに陥り、ステインも活動がしやすくなる。このアイデア、どうだろうか?」
「…なるほど、素晴らしいよ。死柄木弔。ならば、脳無3体をいつでも出せるようにしておこう」
「ありがとう、先生。ステイン、聞いての通りだ。アンタの活動開始に合わせて、
「感謝する。死柄木弔」
「黒霧! 保須市までお送りしてくれ」
「かしこまりました」
黒霧のワープゲートを潜り、保須市へと戻っていくステイン。それを見送った俺は-
「あぁ、楽しくなりそうだ」
そう呟きながら、グラスに残っていたウイスキーを一気に呷り、興奮を鎮めるように息を吐く。
次に連絡があった時が、
出久side
「よし、今日はこの位にしておくか!」
「はい! ありがとうございました!」
慌ただしくも規則正しいスケジュールをこなしていく職場体験も3日目が無事終了。
僕とグラントリノは、すっかり祖父と孫のような良好な関係を築けていた。
「どうだ? 俺とばかり組み手をするのも、そろそろ飽きてきただろう?」
「そんなことないです! グラントリノの動きは正に縦横無尽。まだまだ予測が追い付かない事もしょっちゅうです! 出来れば、もっとお願いしたいくらいです!」
「いや、
「フェーズ2…ですか?」
「あぁ、明日は朝から渋谷に行くぞ!」
「渋谷ですか!?」
「そうだ。ここいらは過疎化の影響で、犯罪率も低い。都市部にヒーロー事務所が多いのは、それだけ犯罪が多いからだ」
「人口密度が高けりゃ、それだけトラブルも増える。渋谷あたりは小さなイザコザ日常茶飯事なわけよ」
「なるほど!」
「そういう訳で明日に備えて英気を養うぞ! 夕飯は何が食いたい?」
「あの、昨日も一昨日もご馳走になりましたし、今日は僕が作っても良いでしょうか? これでも、雷鳥兄ちゃんに一通り仕込まれていますし」
「ほぅ、それならグリュンフリートの腕前を見せてもらうとするか!」
グラントリノのOKを貰った僕は、コスチュームから普段着に着替え、早速買い出しに出発する。さぁ、何を作ろう?
雷鳥side
「前例通りなら、保須市に再びヒーロー殺しが現れる可能性は極めて高い! 故に明日より暫しの間、保須市に出張し、活動する! 保須市市役所をはじめ、関係機関への連絡を今日中に済ませておけ!」
「「「「「はい!」」」」」
「アブソリュート! ライコウ! お前達も保須市への出張活動に同行してもらう。準備を怠るな!」
「「はい!」」
職場体験3日目の終わりに、エンデヴァーから発表された明日以降の活動予定に、俺は内心
前世の記憶によると、保須市でまず飯田がヒーロー殺しと遭遇、怒りに任せて攻撃を仕掛けるも返り討ちに遭いかけ、それを出久、轟の順番で助けに入るんだったな。
「
「あぁ…」
更衣室でそんな事を話しながら普段着に着替えていく。更衣室を出れば、おそらく炎司さんが待っていて、今日も美味い物をご馳走してくれる筈だ。
「おぉ、出てきたか」
うん、やっぱりね。
「今日は豚カツを食いに行くぞ。少し歩くが良い店がある」
「あぁ」
「なんか、すみません。俺まで毎回ご馳走になっちゃって」
「気にするな。2人ともベテランのサイドキックに負けない働きをしてくれている。この位しなければ、こちらの気が済まん」
そういう事でしたら、遠慮なくご馳走になります!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。