出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第46話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

また、掲載に伴い過去に掲載した短編を〇〇.〇話と変更しております。


第46話:職場体験ーその7ー

飯田side

 

「ヒーロー…殺し…」

 

 怪我人を探して覗き込んだ路地裏で見たもの。それは、コスチュームを纏った男性の頭を片手で鷲摑みにしながら、ナイフを突きつける男の姿。間違いない…あいつが、ヒーロー殺しだ。

 咄嗟に頭を引っ込め、マニュアルさんに渡されていた緊急時用の通信機を起動させる。

 

「マ、マニュアルさん…」

『天哉君!? どうした? 何かあったのか?』

「ヒ、ヒーロー殺し…ヒーロー殺しを発見…しました」

『な、なんだって!? 無事なのか?』

「ぼ、僕は大丈夫です。し、しかし、ヒーロー…たしか、ネイティブさんが、左肩を刺される重傷を負っています。このままでは、あいつの餌食に…」

『天哉君、通信機の赤いボタンをすぐに押すんだ。それでGPSが起動して、君の位置を探知出来る』

 

 マニュアルさんに言われるまま、通信機の赤いボタンを押す。すると、ボタンが点滅を始めた。

 

『よし、君の位置が分かった。北東に2.2km…すぐに救援に向かうから、君はそこから動くな! 監視に徹するんだ!』

「し、しかし、このままではネイティブさんが…」

『君が飛び込んだ所で何になる! それこそ無駄死にだ!』

 

 マニュアルさんの叱責に、思わず唇を噛む。そうだ…インゲニウム()が敵わなかったヒーロー殺しを相手にして、僕なんかに何が出来る…。

 

『危険を感じたら、すぐに逃げるんだ! 未熟な君が逃げる事は、決して恥ずかしい事じゃない!』

 

 そう、僕は未熟。ここは指示に従うしか…。

 

「了解しま―」

 

 マニュアルさんにそう答えようとした瞬間、周囲に悲鳴が響いた。路地裏を覗き込めば、ネイティブさんの左太腿にナイフが突き刺さっていた。ヒーロー殺し(アイツ)がやったのか…。

 

「身体が…動かね…クソやろうが……死ね…!」

「ヒーローを名乗るなら、死際の台詞は選べ」

 

 ネイティブさんが放った苦し紛れの罵倒をそう切り捨て、大型のナイフを構えるヒーロー殺し。拙い、()()()()()()()

 

「やめろぉぉぉぉぉっ!」

 

 僕は思わず声を上げ、持っていた通信機をヒーロー殺しに投げつけた!

 

「………」

 

 頭目がけて飛んできた通信機をナイフの一振りで両断し、強烈な殺気と共にこちらを睨みつけるヒーロー殺し。

 見つかってしまった。もう、逃げる事は出来ないだろう。その時-

 

「…お前、たしか…マニュアルんとこの……よせ、()()が勝てる相手じゃねぇ」

 

 息も絶え絶えなネイティブさんが声を上げた。職場体験初日のパトロールで挨拶をした事を覚えていてくれたのか。

 すると、こちらに向けられていた殺気が急激に弱まり―

 

「ハァ…有象無象のヒーロー(贋物)ですらない()()()を殺す事に意味はない」

「さっきの行動は忘れてやる…すぐに消えろ…子どもの立ち入っていい領域じゃない」

「なっ!」

 

 ヒーロー殺しの言葉に反論しようとした瞬間、足元にナイフが突き刺さり、動きを封じられた。ナイフを投げる動きが…見えなかった…。

 

「もう1度だけ警告する。子どもは家に帰って、部屋の隅で震えていろ」

「くっ…」

 

 ヒーロー殺しの言葉に悔しさが湧き上がる。僕は標的とすら認識されていない…このまま()()()()()、ネイティブさんを見殺しにするしかないのか…。

 そんな訳…そんな訳あるか!

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 腹の底から声を絞り出し、更にマスクの上からではあるが、自分の両頬を思いっきり殴る! よし…覚悟を決める事が出来た!

 

「聞け! 犯罪者!」

「僕は…お前にやられたヒーローの弟だ!」

「…弟、敵討ちのつもりか。言葉には気をつけろ…場合によっては、お前も標的となる」

 

 弱まっていた殺気が再び増大し、思わず後退りしそうになるが、それを必死に堪えて、ヒーロー殺しを睨みつける。

 

「敵討ち…それを考えた事もあった! だけど、それは…兄の! インゲニウムの望む事じゃない!」

「最高に立派な兄さん(ヒーロー)の弟だ! だから、兄に代わりお前を止めに来た!」

「僕の名はインゲニウム! お前を止めるヒーローの名だ!」

「止めるか…ハァ、出来るならやってみろ」

 

 次の瞬間、ヒーロー殺しがナイフを持つ右手を振り上げた。狙いは…ネイティブさんの心臓!

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 防御を固めてヒーロー殺しに突撃した僕は、全速でヒーロー殺しとネイティブさんの間に滑り込み、自らの体を盾にして振り下ろされたナイフを受け止める!

 

「ぐぅぅぅぅ…」

 

 強化プラスチックと軽量金属で作られた手甲が貫かれ、ナイフの切っ先が左前腕に突き刺さるが、何とかネイティブさんへの攻撃を止める事が出来た。

 

「……自らの体を盾にしたか…だが、1度や2度なら贋物でも出来る事…ハァ、試してやろう。お前が本物か否か」

 

 僕の腕からナイフを抜き、距離を取ったヒーロー殺しは左手にもナイフを持ち、ジリジリと間合いを詰めてくる。

 

「ネイティブさん、動けますか?」

「駄目だ…奴の“個性”のせいなのか、指一本動かせん…こんな時に…」

 

 ネイティブさんの状態を確認し、自分の出来る事、出来ない事を確認していく。マニュアルさんから許可されているのは、怪我人の救助及び避難誘導目的に限っての“個性”使用。

 今の僕の行動は、この()()()()()()という目的を()()()()したものだ。攻撃は捨てて、防御に全ての力を注ぎ込む!

 救援が来るまで、僕がネイティブさんを守り抜いてみせる!

 

 

マニュアルside

 

「天哉君? 天哉君! 聞こえるか? ……くそっ!」

 

 耳障りなノイズしか返さない通信機を思わず軋む程握りしめる。最後に聞こえた声、あれはきっとネイティブを助ける為に…。

 

「頼むから無事でいてくれよ…」

 

 急いで天哉君の元へ向かおうとするが、次から次に現れる有象無象の(ヴィラン)やチンピラが行く手を阻み―

 

「-^p;@&#~!」 

「=~*|{*%#!」

 

 更に何処かから現れた黒い巨体の怪人と、翼を持った怪人が手当たり次第に暴れだした事で、状況は更に悪化する。

 

「ザ・フライがやられた! オイ、どうなってんだ!!」

「何が目的だ。この化け物共は!!」

 

 流れが(ヴィラン)側に傾き、浮足立つ俺達。拙い、このままじゃ天哉君を助けに行くどころか…。

 

「ダブルサンダー! ブレーク!」

不死鳥の羽ばたき(フェニックスフラップ)!」

 

 状況が変わったのは、その時だ。雷と見紛うばかりの電撃が、空を飛ぶ翼の怪人へ2発連続で命中して撃墜し、薙ぎ払う様に放たれた火炎が黒い怪人を包み込む。更に-

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 緑髪の少年が白いコートを靡かせながら放つ強烈な一撃が、黒い怪人を吹き飛ばした。そして―

 

「お前達! 何を浮足立っている! 冷静になれば、対応出来ない相手ではない筈だ!」

 

 俺達に檄を飛ばしてきたのはナンバー(ツー)ヒーローのエンデヴァー!? 彼も保須に来ていたのか!

 それによく見たら、怪人を攻撃していたのは、雄英体育祭1年の部で活躍していた子達じゃないか!?

 

「全員集結し陣形を組め! あの2体の怪人を倒せば、天秤は一気に傾く!」 

 

 流石はナンバー(ツー)ヒーロー。エンデヴァーの指示で、浮足立っていた俺達は冷静さを取り戻し、すぐにこちらに有利な陣形を築いていく。この状況なら…

 

「エンデヴァー! 実は―」

 

 

飯田side

 

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

 必死に呼吸を整え、崩れ落ちそうになる両膝へ必死に力を込める。

 ヒーロー殺しと対峙して、5分ほど経っただろうか。奴は同じペース…ほぼ20秒に1度の間隔で攻撃を仕掛けてきた。

 僕の死角や意識の外から繰り出される攻撃を、負傷覚悟でなんとか受け止めてきたが…正直言って消耗が激しすぎる。

 いつもならもっと長い時間動けているが…全身についた傷からの出血、そして強烈な殺気に晒され続ける事が、ここまで消耗を激しくするとは…予想外だった。

 

「ハァ…15回。お前は自らを盾に、俺の攻撃を受け止め続けた。致命的ではないが、決して浅くはない傷を負いながらだ。お前は…合格だ」

 

 背筋が震えるような笑みと共に、ヒーロー殺しはそう呟き…ナイフに付いた()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

 その瞬間、全身がまるで硬直したかのように動かなくなり、僕は地面に倒れてしまった。何だ、何が起きたんだ…。

 

「インゲニウム…お前は兄とは違い、本物に成り得る。だから生かしておく価値がある」

「お前の兄は弱かった…贋物だった。だから、俺に倒された」

「黙れ…悪党!」

 

 吐き捨てるような兄への侮辱。たとえ身動きが取れなくても、それを黙って聞いているほど、僕は…僕は!

 

「脊髄損傷で、下半身麻痺…もう、ヒーロー活動は叶わない」

「兄さんは! 多くの人を助け…導いてきた…立派なヒーローなんだ! 贋物だ何だと、お前が勝手に決めつけて、潰していい存在じゃないんだ…」

「僕に夢を抱かせてくれた…立派な、立派なヒーローだったんだ!」

「お前の評価などどうでもいい。贋物か否かは俺が判断する」

「くぅっ…」

 

 必死の叫びを切り捨てられ、悔しさと怒りで心の中がグチャグチャになる。このままじゃネイティブさんが…。

 

「全ては正しき社会の為に…」

 

 頼む、動け! 動いてくれ!

 

「ちくしょう! 黙れ…黙れ!」

 

 今動かなきゃ取り返しがつかない事になるんだ! だから!

 

「何を言ったって、お前は…兄を傷つけた犯罪者だ!」

「よく言ったぜ! 飯田!」

 

 そんな声が響いた次の瞬間。何かが風を切って飛来し、ヒーロー殺しの手からナイフを弾き飛ばした。そして―

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

「はぁっ!」

 

 衝撃波の弾幕と火炎放射が、ヒーロー殺しを一気に後退させる。この攻撃は…来てくれたのか!

 

「ヒーロー到着! 待たせたな飯田!」

「助けに来たよ! 飯田君!」

「あと少しだけ我慢してろ。こいつを拘束して、医者へ連れていく」

 

 吸阪君! 緑谷君! 轟君!

 

「お前達は、雄英体育祭の…ハァ、少し時間をかけ過ぎたか」

 

 少し離れた間合いで体勢を立て直したヒーロー殺しは、3人を見て再び笑みを浮かべた。強烈な殺気で、肌がヒリヒリする。

 

「流石はヒーロー殺し…1対1だと厳しかったな」

「うん、だけどこっちは3人。力を合わせればきっと!」

「あぁ、楽観は出来ねえが、悲観はしなくて済みそうだ」

「そう言う訳だ。3対1だが…卑怯と言ってくれるなよ? ヒーロー殺し」

「3対1か…甘くはないな」

 

 吸阪君達とヒーロー殺しは睨みあい…同時に動き出した!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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