出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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第5話を投稿します。
短いですがお楽しみ頂ければ、幸いです。


第5話:ワン・フォー・オールの継承

雷鳥side

 

 君はヒーローになれる!!

 

 その言葉に、声にならない声をあげながら歓喜の涙を流す出久。オールマイトは、そんな出久にウンウンと大きく頷きながら―

 

「君なら、私の“力”受け継ぐに値する!!」

 

 と、先程話した俺達への用件。その最後の1つ『提案』を口にした。

 

「私の“力”を、君が受け取ってみないか!!」 

 

 …突然過ぎる、そしてあまりに突飛なオールマイトからの提案に、出久が文字通り『鳩が豆鉄砲を食ったような』顔をしたのは言うまでもない。

 

「…あの、オールマイト。『この中古のスマホ、もう使わないからお前にやるよ!』みたいなノリで、そんな事言われても反応に困るんですが…そもそも“個性”の譲渡なんて、出来るんですか?」

 

 衝撃で未だフリーズ状態の出久に変わり、俺がツッコミ混じりの質問をすると、オールマイトは己の持つ“個性”について話し始めた。

 

 この“個性”は聖火の如く引き継がれたもの。個性を“譲渡”する個性。その名は『ワン・フォー・オール』!!

 1人が力を培い、その力を1人へ譲渡。その1人が更に力を培い、また新たな1人へ譲渡。この繰り返しにより、極限まで磨き上げられた、まさに力の結晶!!

 元々、後継者は探していた。そして、緑谷出久(きみ)になら渡しても良いと思った! あの時、あの場で、誰よりもヒーローだった“無個性”の君に!!

 

「まぁ、しかし…全ては君次第だけどさ! どうする?」 

 

 最後に少しだけ空気を和ませて、オールマイトは出久の返答を求めた。出久の出した答えは…

 

「お願い…します!」

 

 

 それから2日後の早朝。俺と出久はオールマイトに呼び出される形で、海浜公園まで来た訳だが…。

 

「早速だが、緑谷少年! これを食え!」

 

 痩身状態(トゥルーフォーム)のオールマイトから差し出された髪の毛を前に、出久は戸惑い、俺は頭を抱えていた。

 

「オールマイト! いきなり髪の毛食え言われても、訳わかんないですよ! 説明! 説明Please!!」

「ん? あ、あぁ! すまない! 私とした事が説明を忘れていたよ! 『ワン・フォー・オール』を譲渡する為には、譲渡したい相手に自分のDNAを摂取させる必要があるのさ!」

「………だ、そうだ。出久、ファイト」

 

 そう言って俺は出久にミネラルウォーターのペットボトルを差し出し―

 

「…うん」

 

 それを受け取った出久は、覚悟を決めてオールマイトの髪の毛を口に含み、ミネラルウォーターで流し込んだ。

 

「2時間もすれば、髪の毛が消化されて変化が起きる筈さ。それまで、辺りを走るなりして体を温めておくといい」

 

 

 オールマイトの指示に従い、ランニングや柔軟体操などで時間をつぶしていると…“それ”はきた。

 

「ら、雷鳥兄ちゃん!?」

 

 突然、出久の全身を緑色の電気とでも表現できそうなオーラが走り始めたのだ。

 

「来たか! 緑谷少年! それが『ワン・フォー・オール』だ!」

「こ、これが…」

「ここからが肝心だ! いきなりグワァッ! とやったら体がもたない。グッ! と締めて、ジワァッと広げていく感じで流していく。わかるかな?」

 

 ………オールマイト、感覚で何とかしてきたタイプか。指導者には一番向いてないぞ! 出久も戸惑ってるし…

 

「出久! 水道だ! 水道の蛇口をイメージしろ!」

 

 仕方ない。俺なりの解釈になるが、通訳してみるか。

 

「いきなり全開にするんじゃなくて、少しずつ蛇口のハンドルを捻るように出力を上げていくんだ。そして、今の自分の限界ギリギリで止める。出来るか?」

「うん、やれそうだよ。雷鳥兄ちゃん」

 

 俺の説明で納得できたのか、出久は少しずつ『ワン・フォー・オール』の出力を上げていきー

 

「…今は、ここが限界みたい…」

 

 ある程度出力が上がったところでストップし、大きく息を吐いた。

 

「おぉ、まさかこれほどとは! 正直、予想以上だよ!」

 

 全身に緑色のオーラを迸らせる出久の姿に、オールマイトが感嘆の声を上げる。それにしても、()()()()ね…。

 

「オールマイト、予想以上と仰ってましたが、貴方の想定ではどの位だったんですか?」

「そうだね…私を100としたら、10…良くて15程度だと思っていたよ」

「じゃあ、現実は?」

「…20以上、25未満…まぁ、23といったところかな」

「なるほど…」

「これほどの逸材だったとは…いやはや、私も人を見る目がない」

「人を見る目はともかくとして、指導者としての才能には疑問符が付きますね。指示が感覚的過ぎるというか、擬音語に頼りすぎです」

「ぐはっ!?」

「名選手必ずしも名監督にあらず。なんて言葉がありますけど…オールマイトも名監督にはなれなかった…なんて、言われないでくださいね」

「あ、あぁ…努力するよ」

 

 俺のツッコミを受け、喀血しながら項垂れるオールマイト。だが、すぐに気を取り直し、俺達に指示を飛ばす。

 

「じゃ、じゃあ、これから君達にやってもらう事を伝えよう! 内容は簡単! それぞれの個性を使って、このゴミの山を綺麗にするのさ!!」

「ゴミ掃除って事ですか。たしかにこの辺りは海流の関係で漂着物がやたら多いし、それに付け込んだ不法投棄も多いですけど」

「そうか! 不法投棄された粗大ゴミなんかを使って、全身を鍛えるって事ですね!」

「それもある! だけど、一番の目的はそれじゃない!」

 

 そう言うとオールマイトは痩身状態(トゥルーフォーム)からマッスルフォームへ変わり-

 

「最近のヒーロー(わかいの)は派手さばかり追い求めるけどね」

「ヒーローってのは、本来奉仕活動! 地味だ何だと言われても! そこはブレちゃあいかんのさ…この区画一帯の水平線を蘇らせる!! それが君達のヒーローへの第一歩だ!!」

 

 近くにあった冷蔵庫を片手でペシャンコにしながら、そう宣言した。

 

「なるほど…『ワン・フォー・オール』を継承する出久だけじゃなく、俺まで呼び出したのは、そういう事ですか」

「うむ! 吸阪少年は『ワン・フォー・オール』の秘密を知ると共に、緑谷少年をここまで鍛えた実績もある。勝手な願いではあるが、私の精神を受け継ぐ者として、これからも成長していってほしいのだよ!」

「雷鳥兄ちゃん、やろう! 2人でここを綺麗にするんだ!」

「…OK、やるか!」

 

 こうして俺達2人による海浜公園清掃作戦が始まった。

 

 

「よっと!」

 

 『ワン・フォー・オール』で増大した身体能力をフルに活かし、大型トラック用のタイヤを軽々と持ち上げ、全速力で運んでいく出久。あれって、ホイール込みで80kg以上あった筈。それを軽々と運ぶという事は…。

 

「『ワン・フォー・オール』の効果、恐るべしだね」

 

 ぼやくように呟きながら、俺は自らの“個性”を発動。右手から磁気を放ち、近くにあった冷蔵庫を引き寄せると―

「まだまだ負けないぜ、出久」

 

 この前やったホバーボード擬きの要領で、地面から15cm程浮遊。そのまま冷蔵庫を牽引していく。

 ふむ、これは身体だけでなく“個性”の鍛錬としても良い感じだな。

 

 こうやって、放課後と休日に少しずつではあるがゴミを撤去し、海浜公園を綺麗にしていく俺達。そのスピードは決して速くはないと思っていたが…。

 

「10日でこれほどとは…いやはや、良い意味で予想を裏切ってくれる」 

 

 様子を見に来たオールマイトが思わず呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。そして半年後―

 

「「終わったー!!」」

 

 俺達は全てのゴミを片付け終えた。オールマイトから指定された区域だけじゃない。海浜公園全体のゴミを片付け終えたのだ。

 

「2人とも見事だ! これほどの短期間かつ、私が指定した区域以外の場所まで…もはや、驚き以外の何物でもないよ!」

 

 オールマイトからの称賛の言葉を背に受けながら、ハイタッチをかわす俺と出久。

 

「予定よりもかなり早いけど、ここからは更に踏み込んだ鍛錬を行っていく! 2人とも心の準備はいいかな?」

 

 そして、この日から雄英入試前日まで、互いの“個性”をフルに使っての猛特訓が始まるのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
気づけばUAが10000を突破!
更に、評価までしていただき、身が引き締まる思いです。

これからも皆様からの期待に応えられるよう、頑張ってまいります!!

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