出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
なお、今回の短編を製作するにあたり、幾つかのグルメ漫画やレシピ本を参考にしました。
雷鳥side
心操が1-Aに編入してきて3日。最初は気負いのせいか、どこかぎこちなかった心操だったが、A組の雰囲気にも慣れてきたのか、少しずつ柔らかい部分も見せるようになってきた。
「麗日や芦戸、葉隠には感謝だな。3人が率先して心操とコミュニケーションを取ってくれたから、あいつもクラスに早く馴染めたんだと思う」
昼休み、大食堂でサンドイッチ弁当*1を振舞いながら、そんな事を呟いてみる。すると―
「いやぁ、そんな風に評価されると、なんだか照れますなぁ…」
「うんうん、頑張ったよー!」
「心操君とも友達になりたかったからね!」
三者三様の反応を返してくれる麗日達。それはそれとして…葉隠の背後にニコッ! という擬音が浮かんでいるような気がするのは、俺だけだろうか? 閑話休題。
「それでさ、吸阪…職場体験初日に言ってくれた事…覚えてる?」
「初日に…あぁ、食事会の事か?」
「そうそう! よかったー! 吸阪、ちゃんと覚えてたよー!」
俺の返答に手を叩いて喜ぶ芦戸。周りを見れば、その場の全員…麗日や梅雨ちゃんも笑顔を浮かべている。これは…俺の予想以上に楽しみにしていたようだな。
「一応、計画は立てていた。でも、来月に入るとすぐに期末試験だし…やるなら早い方がいいな。皆の予定次第だが、今度の日曜はどうだ? 会場は体育祭の特訓で使った倉庫なら、すぐに用意出来るぞ」
俺が日時と会場を提案すると、その場にいた全員が即答で参加を表明。
更に教室に戻るや否や他のクラスメートにも情報が伝わり、昼休みが終わる頃には心操を除く全員から参加の意思が示された。
そして、相澤先生に呼ばれていた関係で、大食堂では俺達と入れ違いになった心操も…。
「歓迎…会? 俺の?」
「あぁ、職場体験お疲れ様会も兼ねて…に、なっちまうけどな」
「………いいのか? その、俺なんかの為に…」
「良いに決まってるだろ。お前だって、A組の一員なんだぜ。自信持てよ。心操人使」
「あ、ありがとう…じゃあ、参加させてもらう」
無事に参加を承諾してくれた。これで全員参加。さて、メニューはどうしようか?
梅雨side
日曜の朝。私はいつも通りに起きて、身支度を整えたら、そのまま駅へと向かったわ。
行先は吸阪ちゃんと緑谷ちゃんのお家。
「あっ! 梅雨ちゃーん!」
駅でお茶子ちゃんと合流して、さぁ、お宅訪問といきましょう。ケロケロ。
「さぁ、どうぞ」
吸阪ちゃんのお姉さんで、緑谷ちゃんのお母さんである引子さんに案内されてダイニングキッチンへ足を運ぶと―
「おはよう。麗日さん、梅雨ちゃん」
「2人ともおはよう。朝から悪いな。もうすぐ出来るから座っててくれ」
お出汁の良い匂いを感じると同時に、吸阪ちゃんと緑谷ちゃんが、キッチンから挨拶をしてくれたわ。そして―
「はい、お待たせ」
5分もしないうちに、私達の前へ並べられる特製の朝ごはん。具沢山な醤油仕立ての汁物、焼き鮭、大根おろしの添えられた厚焼き玉子、ホウレン草のお浸し。そして、炊きたてのごはん。うん、完璧な和の朝ごはんね。
「よし、食べようか。それじゃあ、いただきます」
「「「「いただきます」」」」
吸阪ちゃんと緑谷ちゃん特製の朝ごはん。何から食べようか迷ったけど…まずは汁物からいただくわ。
「あぁ……美味しい。吸阪ちゃん。これ、けんちん汁ね」
「
私の問いにそう答えて爽やかに笑う吸阪ちゃんを見ながら、けんちん汁をもう一口。うん、優しい味わい。具も沢山*2入っていて、これとご飯だけでも立派な朝ごはんになるわね。
暖かい汁物を口にしたおかげで、お腹が温まってきたわ。次は何を食べようかしら?
お茶子side
「美味しい…」
目の前の焼き鮭に箸を伸ばし、一口食べた私は思わずそう呟いていた。
一見普通の焼き鮭に見えたけど、いつも食べる塩鮭みたいな単純な塩味じゃなくて…ふっくらした身に上品な塩気と甘さがあって…こんな焼き魚食べた事ない!
「吸阪君。この鮭、すっごく美味しいけど…何か、凄い鮭なの?」
思わず前のめりになりそうなのを必死に堪えながら、吸阪君に質問してみる。もしも、特別な材料なんかを使っていないなら、家でも真似出来るかもしれない!
「あぁ、そいつは西京焼き。白味噌に酒とか味醂を加えた味噌地に漬け込んで焼いたものさ」
「西京焼き…」
「…麗日、気に入ったんなら、レシピ教えようか?」
「うん! お願い………します」
吸阪君の申し出に、思わず食い気味に答えたところで、我に返る。皆の暖かい視線が地味に辛い。
「ご、ごめんね。変なところ見せちゃって…」
顔が赤くなっているのを自覚しながら、照れ隠しも兼ねて、厚焼き玉子に箸を伸ばし…。
「美味しっ!」
またもや声を出してしまう。あぁ、またやっちゃった…。
「あ、麗日さん。気に入ってくれた? よかった。今日の卵焼き、僕が作ったんだ」
「そ、そうなの!? 凄いよ! 緑谷君!」
緑谷君の告白に三度声を上げてしまうけど…もう仕方ないよね! このまま美味しいご飯を堪能しよう!
雷鳥side
朝食を終え、食器の片付けを終えた俺は出久、梅雨ちゃん、麗日を伴い、近所の商店街へ買い出しに繰り出した。
「それで吸阪ちゃん。今日の食事会は何を作るのかしら?」
「こんな物を作ります」
梅雨ちゃんからの問いかけに、俺は1枚のメモを差し出す事で答える。
「梅雨ちゃんなら、これを見ればすぐにわかると思うぜ」
「薄力粉、強力粉、豚挽肉、キャベツ、ニラ…これは、
「そう、今日の食事会は、餃子パーティーさ! そんな訳で出久。麗日と一緒に野菜の調達を頼む。肉と魚は俺と梅雨ちゃんで回るから」
「わかったよ。雷鳥兄ちゃん。それじゃ、麗日さん。行こうか」
「う、うん! よ、よろしくね!」
「え、あ…こちら、こそ」
なんとも初々しいやり取りをしながら、八百屋の方へ向かう出久と麗日を見送りー
「それじゃ、俺達も行きますか?」
「そうね。お肉屋さんまでの案内をお願いするわ。吸阪ちゃん」
「心得ております」
俺達も肉屋へ歩きだした。
出久side
「こんにちは」
「おや、出久ちゃん。いらっしゃい。今日は可愛いお嬢さんを連れて、デートかしら?」
「デ、デデ、デートだなんて!? いや、あ、あの、今日はクラスの皆と、しょ、食事会で、そ、その準備で、買い物を!」
子どもの時から僕を知っている八百屋のおばちゃんから、予告無しに投げ込まれた爆弾発言に、僕も麗日さんも、思わず顔を真っ赤にしてしまう。
「ウフフ、そういうことにしておこうかね。それで? 今日は何が欲しいんだい?」
「え、えっと…このメモに書いてある野菜を」
「あいよ。
支払いを済ませ、おばちゃんから野菜の入った袋を受け取って、八百屋を後にしたけど…なんというか…。
「えっと…ごめんね。麗日さん。あのおばちゃん、良い人なんだけど…
「あ、謝らなくても…いいよ。緑谷君の彼女だって、思われるんなら…本望? だから」
「え………」
麗日さんの発言に、思考が一瞬フリーズする。僕の彼女だと思われるなら、本望って…え? えぇ!?
「いや、その…そういう…事、です」
「麗日さん。その…
「緑谷君
あぁ、僕はやっぱり駄目だなぁ…麗日さんが、こんなに僕の事を想ってくれた事に、気がつかなかったなんて…
「………緑谷君?」
「麗日さん!」
「は、はいっ!」
「あの…こんな僕だけど、改めてよろしくお願いします!」
「あ、こ、こちらこそっ!」
お互いに頭を下げて、僕達はどちらからともなく笑いだした。そして―
「それじゃあ、行こう。雷鳥兄ちゃんと梅雨ちゃん、きっと首を長くして待っているよ」
「…うん」
僕達は雷鳥兄ちゃん達の元へ急ぐのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、調理パートです。